87:ブートキャンプ3

公園で特訓を行うこと数日、レナたちそれぞれの潜在能力は十分に高まった。
そろそろ実戦で経験を積み、レベルアップしよう!

▽レベルを上げて スキル取得を目指そう!

公園に関しては、スマホアプリ[アルバム]内の、”空間”というカテゴリに収納されている。もちろん、写真や動画などのカテゴリも存在する。
切り取り保存した空間の展開方法は、まあスマホに直接申しつければいいのだが、手動でアルバムを開いて公園の画像をタップすると、スマホカメラの先に光の筋で展開範囲が示される。
画面に<ここに展開しますか?>と表示されるので、もう一度タップすると公園が出現する……という手順だ。
展開範囲が示された時にスマホを動かしカメラの向きを変えると、光の筋も、同じ方向に移動する。遠近感は画面のスライドで調整が可能である。スマホってなんだろう。

ちなみに、スマホ本人がこれらの動作を行うよりも、レナが直接操作してやるほうが、効率よく経験値を取得できるらしい。
レナの体質は、従者が主人と絆を深めるほど成長促進効果が高まるのだ。
それに、スマホもよろこぶ。過剰に。

<ああっ! マスター・レナの触り方が優しいっ!>

「ど、どういたしまして!?」

▽レナは 困惑している!

だいたいいつもこんな感じである。
個性豊かな従者の中でも、スマホの性格のぶっとび具合は尋常ではない。誰よりも長くレナの側にいたせいだろうか? いや、なんでもかんでもレナの影響のせいにするのはよくない。もともとこのような性格だったのだろう。

余談が長くなってしまったが、戦闘訓練の実況に戻ろう。
ルーカ教官は、本日は鞭ではなく魔剣を手にしている。万が一強い魔物の襲来があった場合に備えているのだ。

「称号[調教師]セット。よし。じゃ、今日の訓練を始めようか!」

「「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」」

レナたちは元気よく挨拶をする。
従魔たちは、初めてのヒト型での戦闘だ。
ウサギがぺこっと頭を下げる。ごくりと生唾を飲み込み、のどが鳴った。

「それぞれの戦闘訓練メニューについて伝えておくね。まず、第一優先はステップラビットのレベルアップ。僕が弱い魔物を探すから、倒してみよう。
従魔たちは、魔人族の身体を戦闘に慣らそう。これから先、魔人族姿でトラブルに巻き込まれることがあるかもしれないから。それぞれが戦いやすそうな相手を見つけたら、戦闘開始の指示を僕が出す。自分の判断で飛び出していかないこと。約束できるね?」

全員が「はーい!」と返事をした。リリーは数日前の失敗をごまかすように、てへっと可愛さ増しで微笑んでいる。ウサギはこくこく頷いている。
ルーカ教官の指導は、最後のセリフだけ聞くとまるで保育士のようだ。

レナパーティは仲良く森林に向かった。
▽魔物を 探そう!

***

ルーカ教官が先頭を歩く。【☆7】魔眼での索敵は、相変わらずさすがの一言につきる。
森林地帯に入ってすぐのところで、さっそく木の陰に隠れるゼリー状の魔物を発見した。

▽スライム・モムを 見つけた! ×1

「丁度いい相手がいたよ。スライム・モム。スライムの中で、最も弱い種類だと言われている。モンスター未満、という意味で”モム”と名付けられたんだ。まあ、立派に魔物ではあるから皮肉なジョークだね」

「確かに……プチスライムのように丸くなくて、ドロドロしてて、アメーバみたいですね。核もやわらかそう」

レナが、ルーカの背後からひょいっと顔を出し、指差されている木を覗き見る。
スライム・モムは攻撃力もなければ、知能も低いそうで、木の陰に隠れているつもりなのだろうが、思いきり半身がはみ出していた。
ただでさえ弱いスライムの中でも最弱、ということは、ステップラビットの初めての獲物となるだろう。ウサギはつぶらな目をスッと細める。

スライム・モムは木の皮を溶かして、内部でこっそり生活していることが多い。ゼリーボディは木の道管(どうかん)をつなぎ水分をスムーズに供給することができる。寝床とした木をイタズラに枯らしてしまうことはないそうだ。
木の表面に空いた穴からスライム・モムを吸い出す魔物がいるので、たまに胃袋の中で戦うのだとか。消化されるのが先か、胃袋で暴れて吐き出されるかという、なかなか切羽詰まった戦いをする。かなり独特な生態だと言えよう。自発的に相手を攻撃することはほとんどない。
目の前にいる個体のように、木の外部にいるスライム・モムを目にすることは珍しいとのこと。まさに木の表面を溶かして、寝床を作ろうとしている最中だった。

「レナ。アメーバはラナシュでも認識されてるから問題ないけれど……」

「あ。しまった。あんまり故郷独自っぽい名称は口にしないよう、気をつけますね」

「うん。(魔眼で他人の称号を確認できる者もいるから……[異世界人]なんて取得しちゃうと、間違いなく騒ぎになる。貴方が誘拐される可能性もでてくる。まあ、従魔たちが守ってくれるだろうけど、危険はないほうがいいよね)」

「……今以上にステータスが大変なことになるのは嫌ですー!」

「穏やかな生活が貴方の目標だもんね」

レナとルーカは頷きあうと、個性豊かな従魔たちを眺めた。
この子たちとの穏やかな生活なんてとうてい無理そう……いやいやいや。
賑やかなのは良いことなのだ。ただ、厄介な者に狙われる事などなく、日々平穏であってほしいと願っているのである。

「スライム・モムを倒すのはステップラビットだよ。心構えはいい?」

『……もちろん。倒してみせる!』

ルーカ教官に応えるウサギの表情は凛々しく、戦闘に怯えている様子はない。
ルーカはにっこり笑うと、緊張してこり固まっていたウサギの肩をトントンと軽く叩いてやった。
▽ウサギは へにゃりと 地にひれ伏した。

『うあぁぁ…………な、何するのーーっ!?』

「余計な肩の力を抜いてあげようと思って、貴方の脱力のツボに触れました。リラックスできたよね?」

『う! ……あ、ありがとうございましたっ』

ウサギは大変不服そうにお礼を述べると、しっかりと力強く立ち上がる。
確かに余計な力は抜けているので、無遠慮な触れ方も許してあげることにした。

「戦闘方法は?」

ルーカ教官が真剣な顔で、ウサギに尋ねる。
相手を先に発見していて余裕がある場合は、戦術を考えることも大切だ。
今はまだレナの従魔ではないので、ウサギ本人が戦い方を考えるべきである。レナと従魔たちも、静かにウサギを見つめている。

『私が今使えるスキルは[逃げ足]と[スピン・キック]……。加速をつけて、あのスライムの近くにある木を途中まで駆け登る。速度と落ちるときの衝撃を合わせて、威力を増した[スピン・キック]で確実に仕留める!』

ウサギがふんっ! と鼻息を吐いて、ドヤ顔で作戦を話すと、ルーカがそれを皆に通訳する。
地形を見てよく考えられているね、確実性を取ったのもいい、と褒めたあと、未熟な部分を指摘した。

「[逃げ足]は、何者かにすでに追われている時にしか使えないよね」

『あっ』

日々幼児たちに追いかけ回されていたウサギは、すっかり[逃げ足]を加速手段だと認識してしまっていたようだ……。へにょん、と耳とヒゲがうなだれる。

「でも、今使える手段をよく分かっているよ。大丈夫。[逃げ足]スキルは使えるから。ね?」

ルーカ教官はリリーと顔も見合わせ、にこーーっと笑って見せた。
ウサギの頬がひくっと引きつる。
方法を察し、声には出さなかったものの『この鬼教官!』と表情で語った。なかなかレベルの高い変顔である。

「リリー。少し手間をかけるけど……また妖精姿に戻って、ウサギを追いかけてあげて。ヒト型のままだと足音でスライム・モムに気付かれてしまうからね。ステップラビットがレベルアップしてから、また変身して戦闘訓練しよう」

「はーーい! 私に、おまかせ……なの!」

ルーカとリリーは一緒にウサギをじーーっと見つめる。
ウサギは覚悟を決めて、眉間に皺を寄せ心に汗をかきながらも『よろしくお願いしますっ』と口にした。
全員が満足そうに頷く。性格も成長したね、と言われているようで、ウサギはこそばゆそうに短い尻尾を揺らした。

「戦闘準備に入るよ」

『はーい!』

『ん!』

ルーカが周囲を視回(みまわ)し、ステップラビットの初戦を邪魔しそうな魔物がいないか索敵する。状況は問題なし。
ハイフェアリー・ダークとステップラビットに微笑みながら頷いてみせると、生徒たちはそれぞれの配置についた。
スマホが初戦を記録しようと張り切り、キラリとレンズを光らせる。

<よおーーい……ドンッ!! で御座います!>

脳内に声を響かせることができるスマホの掛け声を合図に……ステップラビットが強く地を蹴った!

▽戦闘開始!

あとに続いて、妖精リリーがクラウチングスタートをキメる!
翅をたたんで地面をとったたとったた走っているので、グングン引き離されているが、ウサギが一度だけスキルを使えたらいいのだ。

『おりゃおりゃおりゃーーーっ!』

『スキル[逃げ足]ッ!』

▽ステップラビットは ぐんっと加速した!

体勢を低くして、鋭く地を駆けていく。目の前の茂みを突っ切った!
視界が開けると、もそもそと木の表皮を溶かすスライム・モムが目前に現れる。
いきなり暴走する魔物が現れて、スライム・モムは驚いたようにぐにょん!? とゼリーボディを揺らした。

▽ステップラビットが 現れた! (スライム・モム視点)

ウサギはほぼまっすぐにスライム・モムに向かって駆けていく。
この速度でぶつかられたら大きなダメージを負う、あいつは敵だ! と判断したスライム・モムは、包み込んで溶かしてしまおう……と体の表面を広げ始めた。
ぐにょぐにょ、と蠢(うご)めくゼリー状の壁がウサギの前に立ちはだかる。
ゼリーボディに獣の身体が触れ、スライム・モムが[溶解]スキルを使用した時、ウサギは大きなダメージを受けることになる。
ゼリーボディがぐあっと広がり、ウサギを飲み込もうとした……!

▽スライム・モムの 包み込み!

▽ステップラビットの 素通り!

微妙に進路をズレさせていたウサギは、いっそう強く地を蹴ってスライム・モムの真横ギリギリを駆け抜ける!
あれ? と言いたげに、ゼリーボディがぐにょっと傾く。こういう色々ノロいところが、低脳だと評されてしまっているのだ。

公園で追い回され続けたウサギはかなり地力がついている。
[逃げ足]で全速力を保ったまま、なかなかの距離を走りきると、目標地点である木に狙いを定めて一気に駆け上がる!
垂直の木から足が離れ始める前に、ぐっと膝に力を込めた。首を限界まで回してスライム・モムを見下ろし、核に狙いを定めた……!

『スキル[スピン・キック]!』

ガッ! と木の表面を蹴り……眼下のスライム・モムに、強烈な蹴りをくらわせる!

▽ウサギの 加速スピン・キック!

回転しながら足先をスライム・モムの核に叩き込んだ!

<はたして、結果は……!? おおーーっと!>

脳内実況のスマホがかなりやかましいが無視して、下半身にねっとりとスライムゼリーをまとわりつかせたウサギは、はあっ! と大きく息を吐き出しながらすたっと着地した。足裏をしっかりと地面につけている、見事な着地だ。
ウサギの赤い目は興奮して見開かれている。
ーー確かな感触があった!

周囲のゼリー状の塊を、大きなものから蹴飛ばして壊していくウサギ。
スライムのトドメは入念に、なのだ。

▽スライム・モムが溶けていく……

足先で強く蹴とばした核は壊れて、弾力のないただの栄養豊富な水分となった。
地面にゆるやかに吸収されていく。
今後この場所生えた木や草の芽は、周囲よりもひとまわり大きく頑丈に育つのだろう。

マラソンを続けていたリリーがようやく追いつき、ゼリーボディの飛び散る殺戮現場を見回すと、晴れやかな笑顔でぐっ! とウサギに親指を立ててみせた。
ウサギはぶるっと身体を震わせて、くっついていたスライムゼリーの大部分を払い落とすと、片腕を上げてみせる。視線の先には戦友(リリー)。
獣であるウサギは指を立てることは出来ないが、同じ意味を持つ仕草を返したかったのだろう。

粘液で濡れた地面を踏みしめて、ウサギがリリーの正面までゆっくりと歩いていく。

『<……ありがとう。勝ったよ! リリー>』

ウサギは瞳を潤ませて、満足そうに柔らかく微笑んだ。このような穏やかな顔つきになったのは、出会ってから初めてのことだ。

もちろん、リリーからは笑顔とあたたかな言葉が返ってくる。ウサギが期待していたとおりの優しい褒め言葉。

『<どういたしまして! よく、頑張ったね。後輩よ……!>』

『<あなたたちのおかげ。色々、たくさん手伝ってくれたから。……まだ後輩じゃないけど>』

『<うむうむ! ……感謝の気持ち、大変、けっこうなの! お返しは……貴方のカラダで、返してくれて、いいのよ?>』

<きゃーーっ! リリーさんの言い回しがえっちーー!>

感動の場面がスマホのこのノリのせいで台無しである。
ルーカに通訳してもらいながらほんわかと漢女(オトメ)たちの交流を見守っていた(レナは号泣していた)ギャラリーは、揃ってずっこけた。

通訳しつつ、自分もときおり会話に飛び込んでくるスマホの存在を忘れてはならないのだ。いつだって絶妙なタイミングでボケをかますことを、もはや生き甲斐にしている。
一連の流れが笑いのツボに入ってしまったルーカが、口元とお腹を押さえて震えている。

『<……。うん、分かった。もう少しだけ待っててほしい>』

ウサギは落ち着いた声音で話し、リリーとスマホを見つめた。
カラダで払う、つまり従属する気があると明言したのだ。その瞬間をウサギ自身目指して鍛錬している。

またひとつ、心の障害が取り除かれた。
残るケジメは、あとふたつ。

ウサギは軽やかなリリーの抱擁を受け止めつつ、走り寄ってきたレナと先輩従魔たちを眩しそうに目を細めて見つめていた。
ふと、ピン! とうさみみが真上に立つ。

<ステップラビットのレベルが上がりました! +1>
<スキル[|駿足(しゅんそく)]、[ステップ]を取得しました>

ウサギの頭の中で、先日と同じ、明るい音色の世界の福音(ベル)が響く。
日々の特訓によりじわじわと経験値を溜めていて、スライム・モムを討伐したことで早くも二度目のレベルアップとなった。
スキルもふたつも取得している! 超効率的で的確な指導のおかげだろう。
ウサギはお礼を言おうと、感極まった表情でルーカ教官を見上げる。じっ……と見下ろしてくる紫の瞳と視線が交わった。
驚いてピキンと固まってしまう。

「レベルアップして取得したのは[|駿足(しゅんそく)]と[ステップ]か……。よし、使いやすい攻撃スキルを覚えたね。効果を説明するよ。
[|駿足(しゅんそく)]……パッシブスキル。常に足の筋肉の動きに補正がかかり、駆ける速度が速くなる。全力で走り続けても疲れにくい。
[ステップ]……ジャンプもしくは方向転換する時、地面を蹴る力とバランス感覚に補正がかかりスムーズに動ける」

<すべて計算通り、という事で御座いますね! さすがルーカティアス教官。かゆいところに手がとどく、説明サポートまで完璧!>

「スマートフォン、貴方も指導なんかは得意だと思うけれど? 通訳も索敵もね。
僕にパーティでの役割を残しておいてくれてるのかな、ありがとう。甘えさせてもらってる」

<いえいえそんな、リアルタイムで情報を取得するには、ラナシュのデータ更新は遅すぎるので御座います……それゆえ、私よりもルーカティアス教官の方がどれもお上手でいらっしゃいます。
ほほほ、気遣いだけで役割をお譲りしている訳では御座いませんよ。[調教師]の称号効果もありますしね。
それにしても、なんという根暗発言!
リリーさぁーん!>

『はーーい! しょーがないなぁー……? ルーカ、もーっと、ポジティブになぁれ! スキル[飛び蹴り]っ! ……威力弱めに、しとくね!』

▽リリーの 飛び蹴り!
▽ルーカは 蹴りを受け流した!

『<かわしたぁッ!?>』

リリーが目を剥いて、スマホがレンズをチカチカ光らせて驚いている。
ルーカは苦笑する。

「はい。スキルを使った蹴りはけっこう威力があるから、避けました。
今、自然の中にいるのに僕がダメージを負うのはよろしくないでしょう? 魔物が不意打ちで襲ってこないとも限らないんだから。索敵はしっかりしておかなくちゃいけない」

『むーー! 今までの、蹴りも、その気になれば……避けられたんだね……? 悔しいっ!』

<自分自身の気分転換のためにあえて蹴りを受けていた、ということで御座いますね? そのうち新たな称号を取得してしまっても知りませんよ!>

「僕もレベルアップして成長したってところが大きいかな。
あとは心構えの変化もある。指導中の教官が、簡単に生徒に負けるようじゃ示しがつかないからね。
リリー、あとで僕が組手の相手になるよ。その時に、今の悔しい気持ちを発散するといい。もちろん、僕は避けるけど。いつか当てられるようになるかもしれないね?」

『今に見てなさいー、ルーカ教官……!』

「元気が良くて大変結構」

ウサギはぼんやりと、じゃれるルーカ、リリー、スマホを眺めている。
自分自身が強くなったことを実感する前に、新スキルの詳細な効果を暴かれてしまい、怒涛の勢いでコントを見せられ、呆れかえっていた。

「よく頑張ったね。すっごくカッコよかったよ!」

ふと声がかけられウサギが上を見上げると、優しい黒の瞳と目があう。黒髪黒目の少女の側は、とても……居心地がいい。
照れくささを隠すため、つん! と自慢げに鼻をあげて、リリーにしてみせたようにウサギは腕を掲げた。レナがふふっと微笑む。
『おめでとぉーーっ!』と甲高い歓声とともに、クーイズとハマルが駆け込んでくる。公園での追回しを思い出しびくっと肩を跳ねさせたウサギだが、おとなしく撫でられていた。
撫でられ褒められ、ウサギは自分の頬がゆるむのを自覚した。

***

ルーカが改めてステップラビットを視た結果、ステータスは体力値が+2、素早さが+1上昇していた。
もしまた弱い魔物がいたら倒してみよう、と話しながら、一行はのんびり森を進む。

「それにしても、さっきの言葉は明らかに失言でしたよね……ルーカさん、めっ!」

「レナに言葉選びを注意しておきながら、実に申し訳ない。自分の運の悪さを軽くみていたなぁ……」

「いや、それはないんじゃないですか? ルーカさんはご自身のことをよく理解していますよ。リリーちゃんのポジティブキックで暗黒オーラを取り除かなかったのが原因だったり?」

「まさか。そこも関係してくる? ……完璧に否定できないのがつらい」

『ほーら、ほら! ルーカ、キックして、あげようか……!』

「今はダメ。危険だから。……でもあとで一応お願いしようかな。スキルは使わないでね」

『えー。じゃ、組手まで……我慢しとくね』

この会話。どういうことなのかお分かりだろうか。
ちなみにレナパーティは全員この内容を理解している。
ステップラビットも、緊張して青ざめており、短い毛をぶわっと逆立たせていた。
先ほどのルーカの「魔物が襲ってくるかも」という発言は、なんと遭遇フラグになってしまったようだ。

背後から、ガサガサ……と茂みが不自然に揺れる音が聞こえている。
……だんだん近づいてきている!

スマホがスッとルーカの前に出てカメラを反転させ、背後を写す鏡になり、ルーカが魔眼[透視][遠視][観察眼][鑑定眼][心眼]を発動させた。
読み取った情報をスマホに[テレパシー]で伝えて、スマホが全員に内容を伝達する。

「(マッスルモンキー、Lv30! まだそれなりに遠くにいるけど、スキル[瞬発]と[筋力強化]を持ってるから一瞬で距離を詰められかねない。要注意!
ギフトは【☆4】[|怒髪衝天(どはつしょうてん)]怒りが臨界点に達した時、頭の毛が逆立ち、ステータス値が2割上昇する。モンキーが怒る間もないほど、一瞬で仕留めなければならない)」

レナパーティを狙っている魔物の実力を知り、皆、表情を引き締める。
嫌な汗を滲ませていた。
モンキーに気づいていることを悟られないよう、前を向いたままゆっくりと歩き、横目でさりげなく目配せする。

「(レナの判断を聞いてもいいかな? 力を合わせれば、今の僕たちならマッスルモンキーも倒せるだろう)」

「(良かった! 絶体絶命ではないんですね。……分かりました。作戦、こういうのはどうでしょう?
クレハとイズミが、今ヒト型だから……まずイズミが口から高圧放水。相手を怯ませて、こちらに向かってくる速度を緩める。リリーちゃんが[黒ノ霧]で視界を奪って、クレハが火炎放射。毛が湿ってると燃えにくいだろうけど……ルーカさんが[サンクチュアリ]にモンキーと炎を閉じ込めてくれたら、確実に燃やせる。よろしくお願いします!)」

「(相変わらず容赦のない素晴らしい発想力。瞬時にこれを考えつくなんて……さすがです女王様。もちろん僕も手伝うよ。じゃあそれでいこう)」

「(たまに宣教師を浮上させるのやめてもらっていいですか!? でも、作戦褒めてもらえて嬉しいです教官! スマホさんー)」

<通訳と撮影とネタ振りはこの私にお任せ下さいませ、マスター・レナ!!>

作戦が決まった。
ハマルはウサギを背にのせて、緊急時に備えることになった。

レナたちが、少し歩く速度を速める。
モンキーが(狙われていることに気付いたか?)と思考したのを、ルーカはスマホごしに読み取った。

ヒト族そっくりなモンキーのアーモンド型の瞳がキッ! と鋭くなる。足に力を込めている。獲物を逃すまいと、襲いかかってくるつもりなのだ。
レナたちも、ぐっと地面を力強く踏みしめる。

「スキル[鼓舞]!」

レナが鞭[赤ノ棘姫(いばらひめ)]を手に、スキルを発動させる!
その声を合図にモンキーがスタートダッシュし、レナたちはくるりと振り返り、恐ろしい形相で胸毛を風になびかせるマッスルモンキーと向き合った!

▽戦闘開始!!

…………結果だけをズバリお伝えしよう。
隙のないレナの作戦と確かな仲間たちの実力により、ほぼ完璧な勝利を収めることができた!

▽レナたちは マッスルモンキーを 倒した! ×1

戦闘内容については、ほぼ作戦そのままだったので描写を省かせてもらった。危なげない見事な戦いであった。

モンキーはギフト効果を発揮する間もないほど、瞬時に強力な攻撃をあびせられ、光の聖結界に閉じ込められて炎に焼かれたのである。
ルーカが音声を遮断していたが、結界内部ではおぞましい悲鳴が上がっていたことだろう。
筋骨隆々の丸太のような腕で[サンクチュアリ]を殴っていたモンキーだが、さすがに大精霊からの贈り物である魔法はびくともしない。
術者ルーカの実力も上がっていたので、マッスルモンキーの攻撃でもそこまで負担にならなかったようだ。
レナパーティの異常さが天井知らずで……もういいや。

レナたちの脳内では、やかましいほど世界の福音(ベル)が響いていた。

<従魔:クレハのレベルが上がりました! +1>
<スキル:[火炎放射]を覚えました>

<従魔:イズミのレベルが上がりました! +1>
<スキル:[鉄砲水]を覚えました>

<従魔:ハマルのレベルが上がりました! +1>
<スキル:[頑丈]を覚えました>

<<<ギルドカードを確認して下さい>>>

クレハとイズミの新たなスキル取得については、想定通り。
ヒト型の時には口から魔法をスキルとして放出でき、魔物姿の時はくぼみを作ってそこから炎や水が吐き出される。

リリーは今回は経験値がわずかに足りず、レベルアップとならなかった。
後ほど、ルーカとステップラビットとの組手でレベルアップし[|軽業(かるわざ)][護身武術]というスキルを取得する。
ステップラビットもその時にまたひとつレベルアップして[|暗躍(あんやく)]というスキルを得る。
ウサギのレベルが低く、手加減しているとはいえ対戦相手が高レベルなので成長しやすいようだ。

それぞれのレベルアップ後のステータスを記載しておこう。

「名前:クレハ
種族:スター・ジュエルスライム(赤)LV.25
適性:赤魔法[熱]

体力:53(+3)
知力:42(+2)
素早さ:47(+2)
魔力:30(+2)
運:22(+1)

スキル:[溶解]+2、[超硬化]、[伸縮自在]+1、[火達磨]、[火炎放射]
ギフト:[全状態異常耐性]☆4
称号:魔人族、悪喰(あくじき)」

「名前:イズミ
種族:スター・ジュエルスライム(青)LV.25
適性:青魔法[水、氷]

体力:51(+2)
知力:39(+2)
素早さ:52(+3)
魔力:31(+2)
運:21(+1)

スキル:[溶解]+2、[超硬化]、[伸縮自在]+1、[氷のつぶて]、[鉄砲水]
ギフト:[全状態異常耐性]☆4
称号:魔人族、悪喰(あくじき)」

「名前:リリー
種族:ハイフェアリー・ダーク♀、LV.24
適性:黒魔法、黄魔法

体力:28(+1)
知力:35(+1)
素早さ:33(+2)
魔力:61(+5)
運:25(+1)

スキル:[幻覚]+3、[吸血]、[魅了]、[黒ノ霧]、[紅ノ霧]、[魔吸結界]、[消費魔力軽減]、[飛び蹴り]、[|軽業(かるわざ)]、[護身武術]
ギフト:[フェアリー・アイ]☆4
称号:魔人族、サポート上手」

「名前:ハマル
種族:夢喰いヒツジ♂ 、 LV.27
適性:黒魔法

体力:50(+2)
知力:39(+1)
素早さ:40(+2)
魔力:32(+1)
運:33(+1)

スキル:[体形変化]+1、[駆け足]、[快眠]+2、[周辺効果]+2、[跳躍]、[夢喰い]、[夢吐き]、[頑丈]
ギフト:[鈍感]☆5
称号:魔人族、ドラゴンキラー、マゾヒスト」

なぜ、ハマルまでレベルアップして新たなスキルを取得しているのか?
レベルアップに関しては、乗船してからこれまでの間にも戦闘していたため、経験値が積まれていた。記述こそしていなかったが、数回に分けてベルが鳴っていたのだ。

スキルについて「今回の戦闘ではハマルは後ろに控えていたはず」と疑問を抱いた方も多いだろう、説明しよう! この状況は!

なんてことはない。
マッスルモンキーと騒がしく戦っている間に、別の魔物が襲いかかってきたのでハマルとウサギが撃退していたのである。
とっさに魔物型に変身して対応したため、着ていた服が破れてしまったが、致し方ない。ストックとしていくつか似た服を買ってあるので、ひとつふたつ破れたところで問題はないのだが、早く服飾保存ブレスレットを手に入れたいものだ。

ウサギはヒツジに騎乗していただけだったが、ついでに少し経験値を得ることができた。
実力で倒したわけではないのに、良いのだろうか……と唸っていたが、リリーの『<経験値、今さら手放すことなんて、出来ないんだし……じゃあ、考えてるだけ、時間の、無駄じゃない? やったね!>』というザックリした真理を聞いて悩むのをやめた。
このフェアリー、実はすごく頭が良いのだろうか? とちょっと見直したウサギだが、実際はリリーが底抜けにポジティブで能天気なだけである。

ふいうちで襲ってきていたのは、”トマレナイノシシ”。
種族固有スキル[|猛進(もうしん)]を持つ、なかなか強い魔物だ。今回遭遇した個体は、身体がかなり大きな強者だった。
トマレナイノシシはレナたちを獲物に定めたというより、進行方向にたまたま存在したので襲ってきたのだが、盾ダンゴムシヘルメットを装着したハマルが進撃を許さなかった。
巨大化して、迎え撃つ!
ただのヒツジと思うなよ、レナ女王様の僕(しもべ)の夢喰いヒツジだぞ!

▽トマレナイノシシの 突進!
▽ハマルの 頭突き!

ズゴォンッッ!! と激しい衝突音を響かせ、この付近でほぼ無敗を誇ってた巨大なイノシシは、さらに一回り大きいヒツジに撥(は)ね飛ばされた……!
地面が震えるほどの衝撃、気合いでしがみついて落ちなかったウサギも大したものである。

▽ハマルは トマレナイノシシを 倒した!

レナたちの周辺があまりにも騒々しかったため、森林に生息している虫も動物も魔物も、揃って付近から逃げ出していった。
これにより、モンキーとイノシシ以外の魔物に襲われることはなかった。
もし多数の魔物に一斉に襲われていたら、いかに成長したレナたちといえどピンチに陥っていただろう。幸運幸運。

このような事情があり、ハマルもレベルアップしていた。公園のブランコでの縛られ特訓が実を結び、[頑丈]スキルを取得した!

それではここで、魔物たちそれぞれのスキルの詳細をご覧いただこう。

ーーー
[火炎放射]……高温の炎を勢いよく一直線上に吹き出す。温度は込めた魔力量による。

[鉄砲水]……冷水をすさまじい勢いで放出する。放出の威力は込めた魔力量による。

[|軽業(かるわざ)]……身体が空気に浮かぶように軽やかになり、アクロバットな動きを可能にする。関節の柔軟さが上昇する。

[護身武術]……攻撃こそが最大の防御。打って、打って、打って、敵を撹乱(かくらん)し制圧すべし! 何者かに狙われている時のみスキルを発動可能。体力値、素早さが上がり、興奮状態になる。

[頑丈]……身体が丈夫になる。骨や筋肉の強度が上昇するが、与えられた痛みは軽減されないので要注意。

[|暗躍(あんやく)]……存在感を消すことで、察知されにくくなる。対象の視野の外にいると効果が高まる。効果継続時間は込めた魔力量による。
ーーー

……スキル内容に対する数々のツッコミはそれぞれにお任せしたい。

過剰火力により炭になったマッスルモンキーと、撥(は)ね飛ばされて土まみれになり口から紅色の血を噴き出しているトマレナイノシシの前で、レナたちは手を合わせて数秒沈黙した。森林の中なので、目は開けたままだが。
ウサギもそれに倣う。
慣れない習慣だったが、自分たちが生きるために殺(あや)めた生き物に対する礼儀のつもりなのだ……と説明されて、真似したいと思ったのだ。
先ほどスライム・モムを倒した後にも、水溜りに向けて手を合わせていた。
弱い個体が倒されたことにも、意味があると思いたかった。たとえ生き残った側の高慢だとしても、逝った者を想ってくれるのは……ありがたい事だと、我が事のように感じた。

しんみりした空気を吹き飛ばすように、スタージュエルスライムが明るくきゃっきゃとはしゃぎながら、マッスルモンキー炭を[溶解]していく。こちらは、魔物姿になっても服は破れていない。回収してあとで着回した。
それにしても、いい加減悪喰にも程がある。

ウサギがひそかに戦慄していると、レナがうきうきと「今晩は久しぶりにお料理したい! 牡丹鍋(イノシシ鍋)にしよう!」と告げた。お醤油など日本の調味料も揃っているので、とても美味しく出来上がるだろう。
仲間たちが嬉しそうに同意する。
食欲たくましいパーティである。

スライムたちが巨大イノシシの解体を終え、かなりの数の肉塊を作り上げた。
これを食べきる前に腐らせてしまうな……という心配はもはや無用である。
スマホが高らかに声を張り上げる。

<さあ、お持ちのマジック・バッグに塊肉を収納して下さいませ! そこから空間を繋いで、私がきちんと管理致します。
もちろん経過時間を止めておくので、腐らせる心配もございません。あら便利。
取り出す際には私に申しつけて頂くか、[マジックバッグ]フォルダの中の[食材]項目をタップしてご覧下さい。画像で内容物をご確認頂けます。まあ便利!
マスター・レナが使いやすいよう新たにアプリを取得し、レイアウトも工夫してみました!>

「ありがとう、すごく助かるよー」

<お褒めにあずかり光栄の至り!>

悟り目のレナは、もうスマホの急成長にかなり慣れたようだ。
おおらかな心で対応しないと、このパーティのご主人様は勤まらないのである。
日々驚愕の連続なので、これくらい柔軟でないと心が疲労状態になってしまいかねない。

夕飯を手作りするとなると、早めに街に帰還したほうがいいだろう。従魔たちもそれぞれ魔物姿に戻ってしまっているし。
レナたちは本日の狩りレベリングを切り上げることにした。
美味しい食べ物が絡むと、全員判断を躊躇(ちゅうちょ)しない。

森林をそろそろぬけようかという時……公園を出現させていた広場を通りかかった。
公園は芝生ごとスマホの異空間に収納されているので、現在この場所は、茶色の土肌が晒された更地となっている。
ここで昨日まで鞭打ちの練習に励んだなぁ、大変だった、とレナが感慨深く頷いていると、肩にポンと軽い衝撃。えっ。

……このパターンは身に覚えがありすぎる。
嫌な予感に汗を滲ませながら固まっていたレナだが、背後の人物も動く様子がまるでない。
仕方なく、ぎぎぎ……と振り返ると、ルーカ教官が綺麗に微笑んでいる。

「やっぱりね!」

「何がやっぱりなんだろう? あ、僕がこれから言う事を察したの? すごいね、レナ。
今日は貴方のレベリングが出来なかったけれど、あとほんの少しで鞭スキルを覚えられそうだと視たんだ。
というわけで、ここで区切り良く仕上げしていこうか!
大丈夫、レベルアップまでそんなに時間はかからないよ」

「ひーー! お、仰せのままにーー!」

『レナ様ー。それ、ボクのセリフですー』

鞭スキル取得、ルーカ教官、ハマル。この組み合わせに覚えがありすぎるレナは、頭を抱えた。
ラチェリの森で特訓した時と同じ組み合わせだ!

先輩従魔たちが『ひゅーひゅー!』と囃(はや)し立て、スマホがわくわくと空中待機し、ウサギが首をかしげる中、ハマルは恍惚とした表情でレナの前に足を進めた。
ずいっ!
……レナが一歩後ろに引くと、ずいずいっ! とまた程よいポジションまで距離を詰める。
ハマルの程よいポジションとは、鞭がちょうど良く当たる位置のこと。

『スキル[体型変化]、[頑丈]ー!』

「さあ、レナの心の退路を塞いだよ。思いきり、鞭打ち特訓の成果を発揮してね!
ハマルは素晴らしいタイミングで[頑丈]スキルを取得したなぁ」

「この鬼教官とマゾヒストぉーー!」

「『その通り』」

『レナ様ぁ、ボク頑張ってイノシシやっつけましたー! ご褒美下さいー』

「…………大変よく出来ました。くっ、称号[お姉様]、[赤の女王様]、[サディスト]セット」

『『『きゃーーっ! レナ女王様ー!』』』

『ふああぁもう最高ですーー! 称号[マゾヒスト]セット! 従えてぇーー!』

▽舞台は完璧に整った!!

レナ女王様がピシッと地面に軽く鞭を打ち付けてみせると、音を聞いたハマルがゾクゾクと背中の毛を逆立てる。
最近この展開ばかりで、レナの黒歴史の増加が著しい。

「ふふっ! 私の可愛い子が望むなら、応えてあげなくちゃね。
私色に染まりなさい[赤の棘姫(いばらひめ)]、ひらめけ華麗なる運命の一撃! さぁご覧あそばせ! ーー薙(な)ぎ打ちッ!」

▽レナの手にする鞭全体が赤く染まる
……
▽レナの 鞭打ち!

パシーーーンッ……と鞭がヒツジに打ち付けられる音が高らかに空に響く。

『ありがたき幸せぇぇ……』

相変わらずレナの攻撃力は大した事がなかったが、サディスト女王様に鞭打ちを頂いたマゾヒストヒツジは心から幸せそうに吐息を漏らすと、ズゥン……と地に平伏した。
[頑丈]スキルも発動させていたため、ハマルの身体に物理的なダメージは入っていない。ちょっぴり痛みを感じたのが最高だったらしい。
▽ハマルは メロメロ状態!

高笑いするレナの内心は瀕死の重傷を負っている。
先ほどレナの精神が強くなったような事を言った気がするが、あれは嘘だった。

<マスター・レナ、素晴らしい鞭打ちで御座いましたー!>

スマホの記録宣言が、レナに最期の追い打ちをかける。黒歴史が……積まれていく……。まだまだまだまだ序の口である。

<職業:魔物使いのレベルが上がりました! +1>
<スキル:[薙ぎ打ち]を覚えました>
<ギルドカードを確認して下さい>

これだけ恥を晒して、成果がなければやってられない!
とても心が荒んでいるレナの現在のステータスはこちら。

「ギルドカード:ランクF
名前:藤堂(とうどう) レナ
職業:魔物使い(モンスターテイマー)LV.22
装備:麻のシャツ・キュロットスカート・赤ノブーツ・Mリュック・赤ノ祝福ヲ賜リシ覇衣(ハゴロモ)、赤ノ棘姫(いばらひめ)
適性:黒魔法・緑魔法[風]

体力:37(+5)
知力:68(+5)
素早さ:25(+3)
魔力:69(+4)
運:測定不能

スキル:[従魔契約]、[鼓舞]+1、[伝令]、[従順]、[従魔回復]+1、[みね打ち]、[友愛の笑み]、[|薙(な)ぎ打ち]

従魔:クレハ、イズミ、リリー、ハマル、モスラ

ギフト:[レア・クラスチェンジ体質]☆7
称号:逃亡者、お姉様、赤の女王様、サディスト、精霊の友達」

ーーー
[|薙(な)ぎ打ち]……横薙ぎに大きく鞭を振るい、広範囲に打撃を与える。上手く振ると、全員に均一のダメージを与えられ、わずかに威力が増す。
ーーー

レベル20の壁を乗り越えたので、ステータス値が大幅に上昇している。
赤色ブーツも幸運進化の真っ最中のようだ。

「称号[サディスト]に[マゾヒスト]。サディスティックな言動をしてみせた時に魅力が増す、威圧効果がある。マゾヒストは、自分好みの行為を受けた時に色気が増す、トラブルを呼び込みやすい。
……そして、お互いに相性が良く巡り会いやすい……か」

「おだまりッ!」

余計な説明を付け加えたルーカ教官が、レナ女王様に叱られた。
例の称号の効果はこのようなものであった。驚愕である。
今後、レナたちに厄介な影響がなければいいのだが……。

ルーカは地球式にレナの肩を叩いて「ドンマイ」と慰めてやりたかったのだが、「気安く触れないで下さる?」などと返されそうだったので思いとどまる。
笑い死にそう……いやいやレナの心への負荷を気遣ったのだ。その気遣いをもう少し前に発揮してやって欲しかったもが、現在のルーカは[調教師]。生徒の教育に手を抜くわけにはいかないのである。
教官としてこなすべき役割は、これだ!
深呼吸して肩の震えをなんとか抑えて、レナに穏やかに微笑みかける。

「大変よくできました。レナ、すごく頑張ったね」

「まあ! 貴方、何様のつもりなのかしら!」

「きょ、教官のつもりで……ふはあッ……!」

▽ルーカは 地に平伏した。

彼は笑いを堪えきれなかった。
[快楽(微)]は、立場が上の者に対しては効果が薄いらしい。
このルーカの醜態も、スマホにこそっと記録されている。

この後はひたすら似たようなやり取りが繰り返されたので、もう割愛させていただこう。
今日は皆がまた一段階強くなり、夕飯の牡丹鍋はとても美味しかった。
はい、まとめ終わり!

▽Next! ステップラビットのケジメ

 

 

 

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