83:説得

レナたちの「仲間になろうよ」という申し出を拒絶したウサギは、再び[快眠]スキルで強制的に寝かしつけられた。
別室に移動したレナ、イズミ、ルーカがふぅ、とため息を吐く。

「なかなか、思ったように心を開いてくれませんねぇ……。それだけ心の傷が深いってことなのかな」

「そうだね。今回正面から攻撃されたことで、少年に執着している現状はよろしくないと、ウサギも気付きかけてはいるんだ。
だけど、新しく差し伸べられた手に捕まるのを怖がってる。かなり重症。本当に救われるのか……状況が良くなるのか分からないから、保証のない変化を恐れているんだね。
時間をかけて信頼を得るしかないだろう」

『ままならないですなぁ……。イズたちを見てたら、レナに従属する生活がどれだけ楽しいか分かると思うのにー。毎日大笑いだよっ!』

「ふふっ。ありがとうイズミ」

『おうともよー! ……早くウサぴょんが、精神的に楽になるといいねー。あの子、笑ったらきっと可愛いもん!』

「そうだね。リリーが張りきってるから、まずそれを応援しよう」

ウサギを寝かしつけた部屋の隣で、レナとルーカ、イズミがこそこそ会話している。
今回は高めの宿に宿泊したため、室内はリビング・寝室とふたつのスペースに分かれていた。
寝室にはウサギと、説得を買って出たリリー、取り押さえ役のクレハ、寝かしつけ対応のためのハマルがいる。
レナたち三名はウサギを余計に刺激しないよう、いったん退席していた。

「ギフトなし、かぁ。そんな事もあるんですね……。
ギフトがなくて、スキルも[逃げ足]のみ。白魔法適性があるけれど、まだ魔法呪文を使えない。逃げることでなんとか生き延びていたなかで、あの男の子にテイムされた。
う、うーん、巡り合わせが悪かったというか何というか……」

レナは難しい顔をしている。
自分が魔物使いとしてスムーズにレベルアップ出来ているのは、強力なギフトのおかげだという自覚はある。
弱い魔物を育てるには、本来ならたくさんの時間と労力が必要で、ただなんとなく「レア職じゃんラッキー!」と魔物使いに就職した少年がそこまでの覚悟を持っていたかと考えると……違ったのだろうな、と分かった。

しかし、レナならば、スライムたちが即座にレア進化をしなくても、一度テイムしたからには責任を持って、主人として従魔に寄り添ったはずだ。
魔物としての生き方を自分が変えたのだから、と考えて、歩み寄る努力をしただろう。
だから、どのような思考だったのか理解はしても、少年に共感はできなかった。
ルーカが、思いつめてしまったレナの背をトントン、と励ますように叩く。

「弱い魔物に限定すると、ギフトを持っていないこともそう珍しくはないんだ。
ヒト族や魔人族、それなりに強い種族の魔物なんかはほぼギフト持ちだけれどね。
ウサギやネズミ、虫などの子をたくさん産む低級魔物は、弱い個体を生みだしやすい。その弱点を繁殖数で補っているということ。
運良く生き残ってつがいを見つけたものだけが、また、次世代への種を残すことができるんだ」

「あ、そのあたりは、私の故郷でも同じです。
攻撃手段が乏しいかわりに、種族を後世に確実に残せるよう子沢山って特徴をもっている。それを重視して進化した種族、と言えるのかな……? 小動物なんかは。
ほかの生き物のご飯になる、って意味でも、世界にそういう存在は必要なんだろうって理解しています……。動物型の魔物に限らず、草食獣のごはんになる草木だったり、小魚の餌になる微生物も数がとても多いですよね。私たちもその恩恵を受けてる。
でも、頭ではそう思っていても。こうしてギフトやステータスに生まれ持った力が明確に記されているのを見てしまうと……なんだか複雑な気持ちになります……。
特に、あのウサギさんはそれで悩んで苦しんでいるのですから」

『プチスライムだったイズたちが、ギフトを持っていたのはとっても幸運だったのー。プチスライムって、本来すーっごく弱い魔物なんだもん。
もしギフトが無かったら、毒殺ヘビの毒でそっこーオダブツだったし、お腹を空かせて飢えて溶けてたかもー?
レナに会う機会にも恵まれなかったと思うー』

イズミがレナの膝に乗り、ぷよんっ、とボディを逸らして見上げた。可愛いので抱きしめられた。

「弱い個体のほとんどは、ただ本能のまま、生きるために生きて、そのような個々の能力の差に悩む暇もなく淘汰されていく……。
それが自然の摂理だと本能で納得している、って一応言っておくね?
力が無いと悩むことが出来るほど、知能が育っている状態が珍しいんだよ。イズミたちにしても、あのウサギにしても。
レナのやるせない気持ちは、良くわかるけれど」

「……あ、ルーカさんも落ち込んでる。猫耳がへにょんとしてますよー。
ルーカさんは別に冷たいわけじゃなくて、ただ冷静に真実を見つめられるんだと思います。わざわざハッキリ言い切ってこちらの反応を気にして下さるくらい、優しいですよ」

『そーだぞ! この根暗ぁー。もっと自分を好きになってあげなよ? 自虐大好きダークネスルカにゃんって呼んじゃうぞ!』

「この耳、本当に敏感に反応するなぁ……ちょっと恥ずかしいんだけど。あとイズミ、その呼称めちゃくちゃ恥ずかしいから勘弁して。ごめんなさい」

『すぐに謝っちゃうルーカってばちょっと暗いんでない!? にゃーにゃー』

「これはひどい」

空気がしんみりしていたが、イズミのおふざけのおかげでレナもルーカもふふっと笑うことができた。
寝室の扉をじいっと見つめる。
再びウサギが起きたら、リリーが説得をすることになっている。
どうか良い方向に進展しますように、と全員で心から祈った。

***

ウサギが白い瞼を持ち上げる。
ーー知らない天井、じゃなかった。赤い瞳が映しだしたのは、山盛りの野菜サラダだった。

『っ!?』

ただの野菜サラダと侮るなかれ!
葉を噛めばそこから水分が溢れ出してくるほど新鮮な、色とりどりの野菜が大皿にこれでもかと盛られている。ちなみにどれも栄養豊富な高級栽培野菜。
気にしたのはそこではない? 失礼。
大暴れしはじめたウサギはまた強制快眠させられ、30分ほど、眠りこけていた。
現在、寝室にはウサギ一人きりのようである。

野菜サラダを目前にして、空腹のウサギは喉がヒリつくのを自覚する。食べ物を口にしたいと、本能が激しく主張し始めたのだ。
自分の身体があの赤スライムに温められていないことに気付く。拘束が解かれている!

脚をそろりと持ち上げて、自由に動けることを確認した。ホッと安堵の息を吐き出す。
やはり、縛られているのは不愉快……というか、怖かった。
温かさを失ったことに『残念だ』という感情を抱きかけ、あわてて頭を振る。そんなことない!

さあ逃げ出そう……と思うものの、扉は閉まっているし、何よりも豪華な野菜サラダに視線が釘付けになっていた。

『…………』

食べてみる? でも、これを用意したのはおそらくあのヒト族たち。

(……私をご主人様から引き離した。……とても嫌……! 嫌いっ!)

金色ヒト族を思い出したついでに、元主人の少年が自分を殺そうとしたことを強く意識してしまって、ズキズキ痛む心から必死で目を逸らした。
先ほどルーカがわざわざ口にした、愛されていなかった、という的確な言葉がいつまでも頭を巡っていた。

レナたちは、助けた白い”女の子”を仲間として受け入れようと決めた。
もちろん、レナの従魔契約をウサギが受け入れるかはまだ分からないが。
ウサギと話し合った結果、ウサギがどのような結論を出すにしても、一度手を出したからには最後まで誠意を持って対応しようと決意していた。
現実から目を逸らして耳を塞いで、ひたすら夢物語に囚われ続けているウサギに、きちんと考えてほしくてルーカはきつい言葉を口にしたのだ。アドリブで自分を悪者にしたので、あとでレナたちに怒られてしまったが。

熱を持ち始めた瞳を瞬きでごまかして、涙で目元を湿らせると、ウサギは困ったように野菜サラダを見つめた。
……食べたいなぁ。心のなかでしばらく葛藤する。

『ふっふっふ……。美味しそう、でしょう? たらふく、食べると、良いのだよ!』

『!』

▽ハイフェアリー・ダークが 現れた!

山になった野菜の後ろから、リリーがにんまりとした笑みを浮かべて顔を出した。こっそり様子をうかがっていたのだ。

ウサギはビクゥッ! と数cm跳び上がって驚く。
そんなウサギを安心させようと、リリーは野菜を一切れつまんで口に含んだ。

『んむんむ……。んっ!』

シャリ、と歯が葉の繊維を噛み切る音がする。
長い耳でその音を拾ったウサギは、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

リリーは千切られたレタスの葉一枚を、全てお腹におさめた。フェアリーにしてはなかなかの量を一度に食べきったと言えよう。

『けふっ。ほーら、毒は……ないよ! お食べ!
……て言っても、私の声は、ウサギさんには、聞こえないのか。そんな時は、これっ!』

▽チャララーン♪
▽リリーは スマホを 取り出した!

リリーは自分の背の三分の一ほどもあるスマホ本体を野菜サラダの後ろからずりずり引きずってくると、よっこらせと抱き抱えて、つん、と液晶画面を指でつつく。
ぱあっとスマホの画面が明るく光った!
現在、寝室は間接照明の控えめな明かりのみが灯っており、薄暗い。ウサギが眩しそうに目を細める。

<はい。何かご用でしょうか? リリーさん>

『ああん。つれない、言い方だねっ? ……スマホ先輩! もうっ……私の、お願い事。分かってるくせにぃ』

<ほんのお遊びでございます。ははは。大変失礼致しました。では、例のアプリのダウンロードを開始致します>

『わーーい!』

<”ラナシュネットワーク”に接続中……接続中……。完了しました。
通訳アプリ・[フェアリンガル]、[うさリンガル]をダウンロード中……。……完了しました。起動致します>

スマホさんが、レナパーティの誰よりも恐るべき成長を遂げている!
異世界ラナシュの構成(・・)に直接干渉して、読み取った情報を通訳アプリとして独自にアレンジ、自らの能力としてダウンロードしてみせるというトンデモ技能を身につけていた。
やってみたらできた、というハイスペック天才ぶりである。

最終的にはどれほどの境地まで行き着いてしまうのだろうか……レア進化後の姿がまるで想像できない。
ただ、主人たちが強烈に頭を悩ませる展開であろうことだけは、既に確定している。

リリーはスマホを得意げに抱えあげて、ドヤ顏でウサギに語りかけた。

『<ワレワレはー、藤堂レナ様の、従魔デアル!>』

知っている。二度目の自己紹介乙である。

『<えへへ……一度、言ってみたかったの!>』

やはりか。

『<!? ……また、言葉、理解できる。貴方も他の種族と話せる……?>』

『<ううん。私はね、本来、従魔仲間と、ご主人さま、ルーカとしか……お話できないよー。
……だけどね、この、スマホ先輩の、通訳アプリのおかげで! ウサギさんにも、声を、届けられたの>』

『<……>』

<初めまして、ステップラビットさん。マスター・レナとはもうかれこれ5年ほどお付き合いがございます。従魔方の先輩といえばこの私、この私! スマートフォンと申します。よろしくお願い申し上げます>

『<リリーだよー! 二度目、まして!>』

リリーがにこっ! と笑い、スマホが画面をチカリと光らせると、ウサギは一歩後ろに退いた。表情は曇っている。
多技能持ちのスマホと、あまりに美しいフェアリーを羨ましく思い、また劣等感に苛(さいな)まれていたのだ。

……ウサギは自己紹介を返さなかった。
テイムされていても名前を贈られておらず、少年にはそのまま”ラビット”とだけ呼ばれていた。
リリーたちの誇らしそうな笑顔が眩しくて、また心がズキッと痛んだ。

『<これ、食べて? リリーたちが、作ったの。野菜をいっぱい、使った特製サラダ!>』

リリーがスマホをいったんベッド脇のサイドテーブルに置いて、サラダの山からまずは薄切り桃人参を抜き出し、両手でウサギに差し出した。
心を通わせるためには、まず美味しいもので餌付けするのが一番だ。レナのご飯のとりこになっている仲間一同で、そう意見が一致した。
生物としての本能に訴えかける、最強の作戦なのである! SS(スペシャルサービス)!

ウサギがひくり、と切なそうに鼻を動かす。

『<……あのヒト族が作った、違うの? 魔物たちが、これ作った?>』

『<うん。お野菜ちぎる、だけなら。リリーたちでも……出来るもん。あ、でもねっ。ちょっと、ナイフも……使ったんだよ! 今回、初めて! この桃人参、私が切ったの。上手に切れてるかな?>』

<とてもお上手でした、リリーさん。初めてのナイフでのお料理、バッチリ動画に収めてありますよ>

『<えへん!>』

スマホさんがちゃかすので、話が脇に逸れまくる。
スマホはどうやらかなりマイペースでユーモア大好き、そして後輩思いなようだ。容量(キャパシティ)は無限大なので、いつだって写真・動画撮影に余念がない。
自我が芽生えたのは従魔たちよりかなり後になるが、レナとの付き合いが一番長いので、仲間内の先輩という位置づけになっているらしい。

ウサギは思わずふらりと人参に惹き寄せられそうになり、慌ててまた半歩さがる、という動作を繰り返している。

『<むぅ……。貴方に、食べてもらいたくて、頑張って作ったんだよ>』

▽リリーの ダメ押し!

『<……っ。私に……>』

『<毒は、ないから。さっき、私が……食べてみせたでしょう? ……恩に着せたりも、しないから。食べて。
食べないと、体力も、戻らないよー? 身体、虚脱感あるでしょ……。早く、治そう。お話するのは、それからでも、大丈夫。全部聞くから>』

『<! ……どうしてこんなにしてくれるの! 見返り、ないよ。私、何もいいもの持ってない。
……それに、ご主人様はあの人だもん>』

苦しそうに表情を歪めるウサギを、リリーは静かに[心眼]で視つめていた。
弱々しい魂の光が、大きく揺らいでいる……。激しく動揺、混乱しているということ。

ご主人様、と口にした時には魂が輝きを増した。好きだから? 分からない。でもとても強く執着している事だけはよくわかる。
この子がそこまで元主人にこだわる理由は、何か……ルーカが読み取ったウサギの経歴と照らし合わせて、リリーは一生懸命考える。

レナたちヒト族が相手だったなら、ウサギは警戒してここまで自分の気持ちを素直に口にしなかっただろう。
リリーたち魔物が相手だからこそ、敵意も薄れているし、野菜サラダに興味があるそぶりも見せているのだ。

……元主人の少年は、魔物使いの当時もけしてウサギを大切にしていなかった。
テイムした直後にステータスを見て「使えない!」と冷遇を決めこみ、勝てないであろう魔物にひたすら戦闘を挑ませては、ウサギをいたずらに傷つけた。効率よく一気に経験値を得ようとしたのだ。
テイムされたての弱いウサギはそれに応える事ができなかった。
ウサギに合った育て方を知らなかった……と言うことも出来なくはないが、丁寧に気持ちを寄り添わせなければ、従魔それぞれにふさわしい成長のさせ方など分かるはずもない。
魔物と真正面から戦わせて、勝って経験値を得る方法だけではなく、例えば地道な体力作りだったり、土地の構造を利用した作戦への参加などでも、魔物を少しずつ成長させることはできる。
少年は、ウサギとの歩み方について一切考えなかった……。

思いやりのない元主人の指示で痛い目を見たという経験が、ウサギの見知らぬヒト族に対する警戒心、恐怖心を、無意識下ではね上げていたのである。
それなのに、元主人には執着したまま。
心の傷は……深いようだ。

『<……ん、そっか。とりあえず、ご飯、食べて欲しい。萎びちゃうから。
あのね。貴方に……優しく、してるのは、さっきみんなで話した通り。一番の理由は……仲魔になることを、前向きに考えて、欲しかったからなの。レナパーティ、楽しいから。
サラダは私たちの、贈り物だから、見返りは要求しないよ>』

『<…………>』

『<美味しいもの、食べると、とりあえず元気になれるよ! 幸せな、気持ちになるの>』

リリーはにっこり笑ってみせた。

幸せって、なんだろう?
ウサギは喉をひくつかせるばかりで、こみ上げてくる自らのよく分からない衝動を、言葉にする事が出来なかった。ご主人様、と呟きかけたが、口の中で音は消えてしまった。

……とりあえず、差し出された桃人参とやらをびくびくと受け取り、ぴゃっ! と数歩ぶん後ろに避難して齧り付く。
……なにこれ!?
今まで味わった事がないほどの芳醇な甘みがガツンと脳を直撃し、食べろ! という本能に支配されるまま、ひたすら夢中で人参をむさぼった。
久しぶりのまともな食事があまりにも豪華で、頭がクラクラしている……高級品とはいえウサギが摂取可能な種類の野菜なので、栄養豊富すぎて悪影響があるという事はないだろう。

これは、美味しすぎる。もうたまらない! もっと食べたい。
……気まずそうに、じっとりとした目付きでウサギが後方を振り返ると……フェアリーはニヤニヤ満足そうに笑っている。
……なんだか悔しい。
リリーは得意げに、サラダの皿を指差す。

『<これ、ぜーーんぶ貴方のよ! どうぞ! 私たちは、ちょっと……向こうで、休んでるからねー>』

なんという誘惑。相手からわざわざ遠ざかって、一人きりで食事させてくれるそうだ。
一瞬で煩悩に支配されたウサギはたまらず、じり……じり……とサラダに忍び寄った。
食欲には勝てなかったよ……。

スマホを抱えたリリーはふわっとサイドテーブルを飛び立ち、ソファの上の金色毛玉に腰掛ける。もっふん!
サラダと妖精しか目に入っていなかったウサギはやっと毛玉の存在に気付いて、大慌てで目を凝らす。

リリーは毛玉に寄りかかると、何事か話しかけていた。毛玉からは顔が覗いている。……従魔のヒツジ! 側にはあのあたたかい赤スライムの姿も見えた。
……もしここで暴れていたら、また取り押さえられて、強制睡眠させられていたのだろう。
そう気付いて、ウサギはゾッと背筋を凍らせる。
……ひとまず思考を中断して、目の前の野菜の山を片付ける事にした。

途中で『<そのサラダを、作ったのは……リリーたちだけど。お野菜は、ご主人さまが……買ってくれたんだよ!>』と声をかけられて、元主人とともに元々の生活圏から離れた場所に移動して、口に合わない硬い野草を無理やり食べるしかなかった自分を振り返り、ひどくやるせない気持ちになった。
……お腹は満たされた。

***

食事を終えたウサギのもとに、スマホを抱えたリリーが舞い戻っていく。
ハマルとクレハは、こそこそと会話した。ヒツジとスライムの言葉は、スマホが通訳しない限りウサギには理解できない。

『ウサギちゃん、ごはん食べてくれて良かったねー。……表情はまだ幸せそうじゃないけど。んでも、あれは幸福な気持ちを必死で顔に出さないようにしてる気がする!』

『そうかもー。だってー、あの野菜味見したら、どれもすごく美味しかったもん。草食獣が幸せにならない筈がないのですー』

『やっぱり!? あのいじっぱりめー! ふふん、その内、絶対爆笑させてやるんだからねー!』

『根暗と爆笑……ルーカとキャラが被っちゃうよー。ぷふっ!』

『あ、そーかもね! あははっ! ……でもさ、ウサギちゃんがリリーを攻撃してこなくて良かったよね? まーたクーたちが取り押さえしちゃったら、心開いてくれるの遅くなっちゃいそうだしぃー』

『ですねー。今はもうお腹も膨れてるだろうしー、リリー先輩と話しても、荒ぶった対応はしないんじゃないかなー。
お腹が幸せだとー、気持ちも優しくなるもん。一安心できそうー』

『うむ! よきかなっ!』

ハマルとクレハは穏やかに話を終えた。
そして、視線をベッドの上に向ける。

ーーウサギとハイフェアリーが壮絶に足で蹴りあっていた。

『『な、何事ッ!!?』』

▽Next! 説得(物理)と反論(物理)

 

 

 

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