80:レナパーティ珍道中

ジーニアレス大陸にたどり着いたレナたちは、港街グレンツェ・ジーニで旅支度を整え、魔王国を目指して再び歩み始めた。
ジーニアレス大陸は場所によって年中猛暑だったり、凍える寒さだったり、かなり土地のクセが強いが、この港街から魔王国への街道周辺は一年をとおして気候が穏やか。
ゆっくりと変化の乏しい四季が巡る。
夏はやや太陽光がきつく感じ、冬は冷たい風が吹く程度のちがいだ。
ゆえにとても旅をしやすい。
そういう土地を仲介するよう計算して、シヴァガン魔王国と港街グレンツェ・ジーニは昔に作られたのだった。

レナたちはきちんと舗装された大きな街道を歩いている。
他の旅人ともよくすれ違うので、ハマルに騎乗してはいない。みんなで仲良く歩いている。
レナは新たに、赤い膝丈ブーツを着用していた。アリスから贈られた……いや、購入したものだ。元呪いのアイテム。
ルーカが鑑定したところ、[疲労軽減(微)]、[脚力+]の効果があるらしい。素晴らしい。
ハマルが『試し踏みにはどうぞこの毛玉をお使い下さいー!』などと言ったのはいつもの事である。もちろん却下しておいた。

レナの足取りは以前よりかなり危なげない。もう、小石を踏みつけてもフラつく程度で転びはしないだろう。
足元に関しては、ほんの少しだけ、ドジっ子ではなくなっていた。
得意げに足を片方ずつ前に出す様子はレナをさらに幼く見せている。仲間からもすれ違った旅人たちからも、微笑ましげな視線を向けられていた。

途中途中にある小さな宿場街を訪れながら(観光するだけで、夜は野外でゴールデンベッドで眠った)、順調に旅を進めて、数日が経った。
魔王国までは、まだあと数日はかかるだろう。
しかし、かなり近くまで来たと言える。
……そろそろルーカと旅をする一番の理由がなくなる、ということだ。

彼を旅に誘う際、レナたちは「魔王国まで一緒に行きましょう」と声をかけていた。
自身に対して多大なコンプレックスを持っているルーカが、仲間入りを遠慮しないように、と気を遣ったのである。
もし単に「パーティメンバーになってよ!」とだけ声をかけていたら、ルーカは重度の根暗を発動させて、同行に頷かなかったかもしれない。

「……魔王国、楽しみですねぇ。かなり広くてお店もいっぱいあるって言うし、お買い物が捗りそう。ジーニ大陸は香辛料(スパイス)が安く買えるそうです。どんなのがあるかなー」

レナがどこかしんみりと、何度目かの「楽しみ」を口にした。
従魔たちは『レナの新たなご飯レシピー!』とはしゃぎ始める。

「まずブレスレットを買うのを忘れないようにね? 必要なものから買うこと」

「うっ。資金に関しては安心なんですけどね。お財布潤ってるし。高級店にアリスちゃんの紹介状で入っていくのかー……緊張するなぁ……」

「頑張れ」

目を彷徨わせるレナを見て、ルーカはおかしそうに表情をほころばせる。
ただ、彼の眼差しもどこか憂いを帯びていた。
旅の終わり、を意識しているのだ。

まあ、運[測定不能]から離れたら抑圧されていた悪運が噴き出して、ルーカにたいへんな悲劇が起こる……ことが乗船中に分かった今となっては、彼がレナパーティにいる明確な理由などそれで十分すぎるくらいなのだが。
理由が理由だけに、ルーカは激しく恐縮するだろう。

なんとかぎくしゃくしないように上手く説得して、パーティに引き留めたいな……とレナたちは考えていた。
その最善策をえんえんと模索しており、ルーカはルーカで「悪運制御なんて事情まで出来ちゃって、残留したいとか厚かましすぎるよね……」と考えて悩み、結局、込み入った話し合いをしないまま、ここまで旅をしてきてしまった。

みんな気持ちは同じ「楽しいから一緒にいたい」のだが、それだけでずっと一緒にいるには、それぞれが抱えている事情が複雑すぎる。
理由も必要。デリケートな議題なのだ。

旅の最中、今後のことを考えて、全員が沈黙することがたまにあった。
そんな時は、すこし切なげな空気がただよう。
そのうち誰かしらがさりげなく明るい話題を提供するのだが、今回、口を開いたのはレナだった。

「……あ。そういえば、以前採ったグーグー鳥のタマゴをそろそろ消費しちゃわないと。カステラなんてどうかなぁ」

『なにそれ!? 初めて聞いた!』
『カステラって? 美味しい?』

クーイズが体内をぷくぷくと泡立たせながら、新しいご馳走の予感に興奮した声をあげる。

『じゅるり……』

リリーが口元を拭う仕草をした。モーションだけでヨダレは垂らしていない、と乙女の名誉のために言っておこう。

「カステラって甘いお菓子なんだよね? 確か。ふわふわで、黄色い見た目なんだっけ? 食べたことは無いけど、卵の味が濃厚って聞いた事がある……」

『ぷぷっ! ルーカぁ、ネコミミがすごーく喜んでるよー? あと、目が輝いてるー。この卵好きめー。
ボクと見た目が似てるの?』

レナが歩きながら、ハマルの金毛を撫でる。

「そうかもね、ふふっ! 似てるかも。ハーくんも、ふわふわで金色だもんねー。兄弟みたいなふわふわカステラは、可哀想で食べられないかな?」

『レナ様がボクに提供してくれるならばー、似てる兄弟だろーが問題なく、お腹におさめてみせますー! むしろ喜んでー!』

ハマルをからかったレナの発言は、数倍の威力で打ち返されてしまった。

「言い方が……!? 話をふったのはこっちだけど、もうちょっとなんとかしよう! 私、すごく極悪な人みたいになってるから!」

『その、お菓子……ハーくんに、そっくりなの……? じゅるり』

『『喰べちゃうぞーー! うへへ!』』

『ああっ、先輩、こっちは甘くないヒツジです、ご容赦をーーっ』

主人に構ってもらった後輩を羨んだクーイズリリーが、ハマルに絡み始める。
金毛を軽く引っ張り、もしゃもしゃと口に含むフリをして、くすぐり倒す。
街道で従魔たちはひとまとまりになり、転げてしまった。うひゃひゃ、と笑い声が響く。
あまりにもコミカルで、レナとルーカが目を合わせて、ぷっ、と吹き出す。クスクス肩を震わせながら、やんわりと仲裁してやる。

「道から逸れて、林の中でお料理するのはどうでしょう」

レナが従魔たちみんなを腕の中に収めて、ルーカに話しかけた。ハマルは現在、大きめのぬいぐるみくらいの体型なので問題なく全員収まっている。

「賛成。さっそく移動しよう。すぐさま移動して、作り始めよう。ああ楽しみだなぁ」

「うわっ、すごくノリノリだ! 珍しい。そう言ってもらえると、提案して良かったですー。
グーグー鳥の卵は大きいから、大きなカステラが出来そうですね。私は熟成魔法も覚えたし〜、うふふ、お料理が更にはかどるぅーー!」

「さすがに、これだけ仲間がいると料理支度も楽だよね。火力はクレハ、水源はイズミ、レナが手順と熟成。僕が火力の見極めと手伝い、リリーとハマルが見張り番。
旅の最中にこれだけ揃う事は珍しいよ。冒険者パーティでも、いつでもこんなに大所帯な所は珍しいし」

「うちは従魔のみんなが小さいですからね。コンパクトに旅ができます」

「貴方も小さいしね」

「ルーカさんも?」

「…………」

「あっごめんなさい。もー、拗ねないで下さいよー。私たちから見たらルーカさんも十分長身なんですから。というか、男性平均よりも身長低めなこと、気にしてたんですね」

身長172cmのルーカはこの世界の男性としては小柄な方で、それも少しコンプレックスだったようだ。
レナのフォローで機嫌はなおった。

レナたちはいったん話を終えると、街道を逸れて、人目につかない林の中に入っていった。
気分はるんるん。
▽巨大カステラを 作ろう!

***

林の一角にレナたちは調理器具を広げる。
サバイバル用の折りたたみ机は、レナが夢見たものをハマルの”夢吐き”で取り出した、地球設計の便利品。ラナシュには存在しない金属も使われているため、うかつに他人には見せられない。
広げられたお菓子用の調理器具は港街グレンツェ・ジーニで購入した。魔力を込めたら宙に浮いて混ぜ続けてくれる泡立て器など、魔法効果がかかっているものもある。少々値がはったが、これしきでレナの懐は痛まない。

「じゃあ、お料理を始めましょう!」

『『ぱふぱふーーっ!』』
『『はーーい!』』

レナとルーカはきちんとエプロンを身につけている。
従魔たちはくるりとご機嫌に一回転してみせた。

「卵を割るところからだね。まかせて」

机の上にゴロリと置かれた大きなグーグー鳥の卵は、ミレー大陸の港街を訪れる前に、草原で採取したものだ。
あれから一週間ほど経っているため、そろそろ消費しなければならない。
ルーカはネコミミを楽しげに揺らしながら卵の前に立つと、分厚い殻をコンコンとノックして、手をかざした。

「光魔法[サンクチュアリ]。卵モード、小さめ薄めでいこう」

相変わらず超便利な光魔法、サンクチュアリ!
極小の光の聖結界が、卵の殻の片側だけを貫通するように出現する。
▽卵の上殻に 穴が空いた!
結界の使い方のおかしさ、ルーカの非常識さが増している気がする……。
極薄の結界を対象物範囲に出現させ、円形に切断するという超絶技法をいつのまにか身につけていたルーカ。器用もここまでくるともうよく分からない。
この技法の用途は主に卵割りである。

円形に切断された殻が、白身の上に浮いている。その殻を取り去ると、そのままボウルの代わりになるのだ。
泡立てても卵が溢れないよう、レナは少しだけ白身をおたまですくう。夢産のタッパーに保存しておいた。明日、ハンバーグを作る際のつなぎにしよう。そう言うと、みんなが歓喜の声を上げる。平和だ。
魔道具の泡立て器が宙に浮かび、砂糖が加えられた卵をふわっふわに泡立てはじめる。

「クレハ。殻に貼りついて、ほんのり温めていてくれる?
カステラは卵液を温めながら泡立てるの」

『あいあいさーー! お任せあれ!』

クレハがぴっとり卵殻に貼りついたので、赤いボウルになった。しゃかしゃかと泡立て器が働いている。

「今日はどの蜜がいい? リリーちゃん」

『……んーとねっ、クローバーの蜜! 蝶々が、集めたのが、いいなぁ』

「そうしよっか」

料理に蜜を使う時は、どれにするかリリーに決めてもらうことにしていた。せっかくリリーの好物なのだから、という我が子が可愛いだけの理由である。
嬉しそうにえへへと微笑みほっぺを押さえるリリーを見て、仲間たちも表情をゆるめた。

バタフライハニーを卵液に入れて、なじませたら、強力粉を混ぜる。今度はふつうの泡立て器で底からすくい上げるように混ぜて、これで生地が出来上がった。

「イズミ、四角のケーキ型になって欲しいな。クレハはオーブンスタイルに変身をお願い」

『ういっす!いくぜ、まずはイズがケーキ型にへんしーん!……あひゃぁーーーっ、ムズムズ、変な声出ちゃうぅ!』

▽水色ケーキ型に 生地が注がれた!
ほんのり温かいホイップ卵液のしゅわしゅわした感触に、イズミがくすぐったそうな声を上げる。
数回セルフバウンドして、卵液の中の余分な空気を抜いた。

『熱魔法[ヒート]! おっしゃ、余熱完了だよー、レナ!』

「よし。じゃあ、よろしくお願いしまーす!」

▽クレハオーブンに 生地入りイズミが入室した!
魔物の使い方が……いやいや、スライムとは便利な存在なのである。
【状態異常耐性】ギフト持ちのイズミは、火傷状態にならない。170度くらいの熱部屋ならサウナのようなもので、余裕で耐えられるらしい。

あとはカステラが焼けるのを待つだけ。
クレハオーブンの火力加減に関しては、まだ温度がブレがちなのだが、ルーカがバッチリ目視して指導してくれる。
じいっ、と赤い半透明オーブンと紫の瞳がかち合う。
今回はルーカ自身が大好きな卵料理ということもあり、ことさら気合いの入った視線が注がれている。
ほんのり、オーブンの赤みが増す。

『そ、そんなにじいっと熱く視つめられたらぁ……て、照れちゃうじゃないーっ』

「あ、温度が一度上がった。クレハ、少し火力弱めて」

『ああんっ、流すなんて、このサディストー!』

クレハとルーカが戯れている。

「……いや、こっちを横目で見ないで下さいよルーカさん。私は確かにサディストの称号持ってますけど、事故のようなものですからね?」

「そっか」

「まるで納得してなさそうな声音なのですが。そう言う事にしておいてあげる、みたいな。先ほどの仕返しでしょうか?
火種を投げ込んでおいて放置とは、なんという鬼畜の所業。
……ああもう、ハーくんが釣れちゃったじゃないですか……」

レナが余計な巻き添えを食らった。
激しく頷いているハマルの頭で、リリーがロデオして遊び始める。

そんなこんなしていると、カステラの生地がぷくーーっと膨れ上がり始めた!
オーブンは半透明なので、全員が興味津々に成長中のカステラを観察している。

『あふぅ……視線が熱いわぁぁ……』
『いやん。照れちゃうわぁ』

「クレハ、温度が上昇してるよ。イズミは底が少したゆんでる」

『『やーーん! 手厳しいー!』』

「全ては完璧なカステラのために」

ルーカが真顔でそう言うと、全員がそれぞれのガッツポーズで応えてみせた。完全同意。美味しいは正義なのだ!
このパーティはお料理研究会だっただろうか。
きいろい柔らかい生地がふくふく……ふくふく……

「ここだ! 加熱終了、クレハ」

ルーカがノリノリである。

『あいよっ!……ふあぁ、いい匂い〜!!』

▽クレハオーブンの 上部が開いた!
▽熱と匂いが 放出された!
▽元の 赤スライムに戻った。

イズミが下腹部を滑らせるようにして、お皿の上にそろーりそろーりと移動する。

▽元の 青スライムに戻った。

ぽふん! ふよよん! とカステラが大きなお皿の上に落ちた。
湯気を立てるきいろいふわふわ巨大カステラ。甘い芳香が、皆の鼻をくすぐり幸せな気持ちにさせる。
ここでレナは濡らした薄い布をカステラにそっとかけて、生地の乾燥を防いだ後、そっと両手をカステラの真上にかざす。
熱が手のひらにじんわり伝わった。

「ふっふっふ……。ここで、必殺のこの魔法ですよ。私が取得を望んでやまなかった緑魔法。
普通ならば、完璧な美味しさを引き出すために3日は寝かせろというワガママなカステラ様を、即効で、最高の状態に仕上げてみせましょう!」

『『ひゅーーひゅーー! レーナ! レーナ!』』
『きゃーーっ! 女王様の、おおせの、ままにー!』
『調教してーー!』

「……いきます。緑魔法[ 熟成(エイジング)]!」

今は女王様・ドエム発言に構っている暇はないのである。

レナが新たに覚えた魔法[ 熟成(エイジング)]は、黒魔法と緑魔法の適正両方を持っているものが取得できる魔法。分類が緑魔法なのは、ラナシュがそう判断したからなのだ、としか言いようがない。
主に生産職の人々が活用している。
肉や、チーズなどの発酵食品の熟成を早める効果があるのだ。命ある者に対しては使えないので安心してほしい。
この魔法を覚えた時、レナは歓喜した。
またお料理の幅が広がった!……と。やはり、お料理研究会なのかもしれない。

カステラのしっとり感を出すのに必要な”寝かし”の時間。それも、熟成で補うことができる。
レナはべらぼうに魔力を込めることで、ベストカステラを短時間で誕生させてみせた。
止める者などここにはいない。全員が食べ頃になるのをひたすら待ちわびている。

カステラにかけられた布が、より水分を含んできた。
レナがキラリと目を光らせる。

「! ……みなさん。出来上がりですーー!」

『『『『やったーーー!』』』』

「お疲れさま、みんな」

布をとると、少しだけ高さが低くなったカステラ。しかし十分大きい!長さ50cmもの正方形。お腹いっぱい、甘いふわふわが食べられる!
バタフライハニーを入れた黄色の生地はちょっぴりキラキラしていて綺麗。

従魔たちが大慌てで魔人族姿になり、子供用バスローブをはおる。
この光景も、ブレスレットを手に入れたら夜しか見られなくなるだろう。レナは光景を目に焼き付けておいた。
ルーカがカステラをカットし、レナはお皿と飲み物、フォークを並べる。

ここは野生生物のはびこる林の中である。
しかし、[サンクチュアリ]で自分たちの周囲を囲って小部屋をつくり、[幻覚]で結界内の光景を消して対策した、内緒のお食事会を邪魔する者などいなかった。
のんびりとした雰囲気の中、パーティがはじまる。

「それではみなさん、手を合わせて。いただきまーす!」

『『『『「いただきます!」』』』』

▽レッツパーリィ!
皆が一斉に、ふわん!とカステラを口に含む。
そして頬をピンク色に高揚させ、輝かんばかりの笑顔を浮かべる。

卵の豊かな風味とバタフライハニーの優しい甘さ、しゅわんと口の中でとろける食感は極上。
歯で嚙みしめて、ふわふわのスポンジ生地を楽しむ。
ミルクを口に含み、カステラの甘さの余韻と合わせて味わい、表情をとろけさせた。もう、さいっこう!

『うまうまぁーー……!』
『これはズルい! ほっぺが落ちちゃうっ』
『共喰いも致し方ない美味しさですー!』
『ふわぁ……ほあぁ……ナイスハニー……うふふ……』

「美味しすぎて涙にじんできた……」

「うん、美味しくできたね。大満足ぅ! 熟成の魔法、使えるなぁー。これからも活用しよっと。おかわり欲しい人ーー?」

『『『『はーい!』』』』
「ぜひ」

「ふふっ、喜んで! じゃあ、お皿を下さいなー」

瞬く間に空になったお皿に、レナが一切れずつカステラを置いていく。
全員に行き渡ったところで、スマホを取り出した。

「記念撮影しておこう。”皆ではじめてのカステラ”!」

「僕が撮ろうか?」

ルーカが撮影係を申し出る。従魔たちはカステラを前にもうウズウズしている。

「ええ? でも……」

みんなで一緒に撮りたいしなぁ、と悩むレナ。しかし自分も入らなければ、集合写真とは言えない。自撮りする?
そんな悩ましい気持ちを全力でサポートする存在がいた。
機械的な音声が空間に響く。

<マスター・レナ。撮影ならば私にお任せください>

進化途中だというこの存在! そう、スマホさんである!
忘れていた人、挙手。

スマホはひとりでに宙に浮くと、カメラ機能をオンにして、チカリと画面を光らせた。ウインクしているのだろうか?
ルーカが「予想よりも成長が早すぎるんだけど」と顔を引きつらせている。
レナは呟きを聞かなかったことにして、スマホに「じゃあ、お願いね」と話しかけた。
また、嬉しそうにスマホの画面がチカリと光る。
全員が仲良く寄り添って、スマホの方を向いて笑顔でピースサインをした。

<では。撮影いたします。かけ言葉は……女王様万歳!>

『『『『「女王様万歳!」』』』』

「ちょっと待って!」

レナ以外はみんなとてもいい笑顔!

<撮影が完了いたしました。マスター・レナ、驚いた表情も大変お可愛らしいですが、是非、笑顔を向けていただきたく>

「あ、ありがと……。って違う!かけ声が斬新すぎるからだよぉ!」

<この世で一番尊いお言葉だと認識しております。間違いはございません>

「もーーーー!」

先輩従魔たちにも増してご主人様至上主義なスマホさんは、時々こういうことをする。
魔物に進化してもっと感情豊かになった暁にはどうなることやら、今から色々と心配である。

この後、みんなが笑顔で映った写メを撮って、美味しくて幸せなお茶会はのんびり続いた。
もう、先を急ぐ旅ではないのだ。
ゆっくりと一緒の時間を過ごして、思い出を増やして、仲間と共に笑いあうことの楽しさを感じればいい。
“別れない”理由は、魔王国にたどり着く頃には見つかるだろう。
共にいることが運命だというならば。

 

 

 

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