62:レア・クラスチェンジ!

呪術師イヴァン、そしてドラゴンと死闘を繰り広げた翌日。
疲れきっていたレナたちは、1日中のんびりと宿に引きこもって過ごした。
従魔たちのクラスチェンジは気になっていたが、宿の部屋でうっかり巨大モンスターなどに変化してしまったら困るので翌日に持ち越した。

贅沢にも朝からイズミ・シャワーを浴びて、全員で楽ちんなバスローブに着替える。
淫魔のお宿♡のこだわりの品だけあってさすがの着心地だ。
バスローブの下には下着をきちんと身につけていると言っておこう。
貞操感がかなり足りない格好だが、ここにいる天然たちはまるで気にしていない。
ルーカもすっかりレナパーティに馴染んでいた。

キッチンを借りて手持ちの食材でおいしい料理を作って食べて、ロング枕サイズになった羊ハマルに背を預け、レナとリリー、ルーカはごろんとベッドに横になる。
クーイズはまたスライム姿に戻っており、それぞれのんびりくつろぎ始める。
朝ごはんのグーグー鳥の卵のオムレツはふっくらフワフワで絶品だった…お腹いっぱい食べたので、ちょっぴり苦しいくらい。
身も心もとても満たされている。
柔らかい金色の羊毛に頬をすりつけて、誰ともなしにふぅ、と至福の吐息を漏らす。
贅沢な休暇だ。

卵の鮮度を考えた結果、朝食のメニューはオムレツになったのだが、これはすっかり卵料理ファンになったルーカを予想外に喜ばせたと言っておこう。
限界状態で食べたオムレツがよほど印象的だったらしい。

昨日頑張ったからいっぱい褒めてほしいのー!と甘えてくる従魔たちを、主人はこれでもかと撫でくりまわす。
体調が万全ではないので、鞭叩きのお願いは「こ、今度ね」と却下した。
レナも従魔もどちらも幸せそうで、表情がとろけている。

クーイズのぷよぷよボディに指をつぷっと差し入れて、核のジュエルをくりくりと爪先で引っかいてやると、ボディを粟立たせてからくにょーんとつきたて餅のように伸びた。
気持ちよかったらしい。
リリーはヒト型で抱きしめられて、髪を梳(と)かすように頭を撫でられるのが好き。
ハマルは耳の付け根が快楽ポイントである。

思う存分いちゃつく主従たちを、ルーカはどこか遠い目で眺めている。
先ほど魔眼でチラッと従魔を鑑定した結果、またしてもとんでもない進化をすると先に知ってしまったのだ。
ドラゴンを倒し、精霊の加護を与えられ、さらに主人の女王様気質が開花したせいで成長期待値が異常に膨れ上がっていた。
レナはかなり驚くだろうなー…と考えて、なんだか愉快な気持ちになってきたらしい。
ふふっ、とこっそり笑う。

『『あー。ルーカがまた笑ってルゥーカッ』』

「クスクスクスクスッ!…ざぶとん、10枚!」

『んー? ルーカ、誰かが面白いことでも考えてたのー?』

最近では、スマホさんでお笑い系の番組も観始めている。
めざとく笑い声に気付いた従魔たちが、速攻でルーカをちゃかしにかかった。

ハマルの発言は、ルーカが誰かの心を覗き視している前提のもの。
心を視られていてもどうせ分からないし、特に問題もないので自己責任で自由に覗いてどうぞーと、パーティ内での心読みはゆるーく許可されていた。
ルーカはとても驚いたが…レナ達らしい、とおかしそうに笑い、「僕に心を許してくれてありがとう」と誠意を込めて感謝の気持ちを伝えた。
もちろん、本当に必要な時しか覗き視はしないつもりだ。

…魔眼持ちの王子として過ごした、祖国での過去の話。
瞳を気味悪がって、目を合わせてもくれない人はとても多かった。
欲深く冷たい視線にいつも晒されておりながら、そちらを振り向けば顔を背けられる毎日。
実の親とて思考を覗かれることを嫌がり、必要な時以外は息子を遠ざけていたのである。
王子のそばに人が寄って来るのは利用目的か、容姿に魅了されたときだけだった。

成長して、やさしい仲間に囲まれている現状を考える。
ルーカは心が満たされている事を自覚して、素晴らしく恵まれた環境にいるなぁ、人生って楽しいものなんだね、と思いまたふんわり微笑んだ。

レナにぴっとりとくっ付いた従魔たちは、随分と表情が柔らかくなったルーカにイタズラっぽい眼差しを向けている。
レナも首を傾げて、彼を見ていた。
ルーカはつられて少しだけ小首を傾けると、にこっと明るく笑う。

「えーと。言うなれば想像笑い、かな?」

『『きゃーーっ!ルーカはむっつりスケベよー!』』
『「不潔ぅーー!」』

「え。酷くない?」

「どんな楽しいことを想像なさってたんですか?」

「貴方が盛大に表情を崩してるところだよ。…ふふっ!」

「私のヘン顔ってことですか!?や、やめて下さいよ!」

『『!…ねぇねぇ』』
「クスクスクスッ」
『おー。いいねー』

なにやら企んでいる様子の従魔たち。瞳をカマボコ型にしてにやにやしている。

▽クーイズは ヒト型になった!
▽ハマルは スフィンクスシープ状態になった!

「「「「ルーカティアス、覚悟ーっ!べろべろばーーっ」」」」

▽クーイズ・リリー・ハマルの 渾身の 変顔攻撃!
▽ルーカの腹筋に クリティカル!

「っ……あははははははは!」

「ぷっ。…ふふっ、もう、みんなせっかく可愛い見た目なのに思いきり良すぎだよー!
全力のヘン顔は、ぷふっ、効くねぇー。
クレハとイズミはきちんとバスローブを着なさいね?
ふぅ。それにしても、ルーカさんがポジティブになって本当に良かったね」

『『『「ねーーー!」』』』

「…ふはっ……わ、笑いすぎてお腹がいたい…!」

小さく震えながら金色もふもふに顔を埋めるルーカを、仲間たちはなんとも優しい瞳で眺めている。

のんびりのほほんとした雰囲気のまま、皆は1日のほとんどをベッドの上でダラダラと過ごして休日を満喫した。
“ほとんど”以外のちょっとした部分は、主にご飯とお風呂とスマホ投影動画鑑賞である。
スマホさんの成長のため!と言い訳して、たくさんの動画を鑑賞して楽しんだ。
これから更にパロディネタが捗りそうだ。

翌朝。ささっと外出の支度を終えたレナパーティは、従魔たちをクラスチェンジさせるために森へと向かった。

***

呪い騒動の収まったラチェリの森は、以前よりも随分と静かで、穏やかな時が流れている。
木の葉が風で擦れる爽やかな音が、皆の耳をやさしく撫でていく。

腰を落ち着けられる広場を探して、レナたちは森の浅いところを中心に歩いている。
乙女の宿り木のある広場には現在、上位冒険者たちが常駐しており、厳重な結界が解かれたことを知った悪党が近づかないよう交代で警備をしていた。
そのため、従魔のクラスチェンジをそちらの広場で行うことはできない。

人前に姿を現すことはできない姉シルフィーネだが、声を届けることは可能なので、ラチェリ領主・ギルド長と共に特別な精霊祭の打ち合わせを行っておりなかなか忙しいようだ。
妹のシルフィネシアはたびたび王宮まで出張しては王様に決め事を伝えたり、他の姉妹たちの元へと伺い、挨拶をして周っている。
1日のうちにあちらこちらを周るので、こちらもかなり忙しそう。
しかし、空のお散歩を楽しんでもいるらしい。
精霊たちは数百年ぶりにヒト族との交流が復活したことを心から喜んでいた。
夜になるとレナたちが泊まる宿を訪れる大精霊シルフィネシアは、とびきりの笑顔で『今日はここにいってー、こんな人と話してー、たくさんの素敵なことがあったんだよー♪』と幸せそうに語ってくれた。

極上の美少女大精霊シルフィネシアの噂はまたたく間にアネース王国中に広まり、風と水の乙女たちへの信仰心はこれでもかとうなぎ昇り真っ最中である。
その可憐な姿を目にすることが出来た者のもとには幸運が訪れる、というジンクスまで早くも出来上がってしまったほどだ。
誰もが明るい顔をしており、アネース王国中の者が精霊祭を心待ちにしていた。
精霊を歓迎する証の色鮮やかなタペストリーが街中に飾られており、風にひらりひらりと揺れている。

レナ達は30分ほど歩いて、ようやく小さな広場を見つけることができた。
索敵をして周囲に人がいないことを確認し、倒木に腰掛け、ギルドカードを取り出す。
現在レナのギルドカードには、従魔進化のお知らせ文字が4つ縦に並んで表示されていた。
まるで、早く早く!とせかすように赤くチカチカと光っている。
とても嬉しそうにその赤文字を眺めた主人は、従魔たちそれぞれをまた優しく撫でてやった。
空間にポワッと花が咲く。

ルーカも自身のギルドカードを取り出して眺めており、称号欄に目を留めて苦笑している。
なりゆきで[話題のイケメン]称号を取得してしまい「うわぁ自分で自分の首絞めてるー」と己に呆れていた頃が既になつかしい。
まさか速攻で使う機会が訪れるとは夢にも思わなかった…
まぁパーティのためになるならいいや、はい運命運命、と頷き、気持ちを切り替えてレナに話しかける。
宣教師がかなり板についてきていた。

「僕のステータスも見ておく?」

「あ。拝見します」

どうぞ、とカードを差し出すルーカ。
仲間を信頼しているため、詳細な情報も全て”オープン”されていた。

「ギルドカード:ランクG
名前:ルーカティアス
職業:魔法剣士 LV.21
装備:高級ローブ、シャツ、スラックス、厚底靴、Mバッグ、魔剣+5
適性:白魔法[光、雷]

体力:40(+10)
知力:57(+7)
素早さ:47(+10)
魔力:41(+8)
運:5

スキル:[身体能力補正]、[瞬発]、[感電]+1、[雷剣]、[雷光]
ギフト:[魔眼]☆7
称号:麗人、制雷マスター、器用裕福、話題のイケメン、赤の宣教師、精霊の友達」

安定の高ステータス。そして豊かな技能に恵まれている。
一人きりの強制悪運ブートキャンプにより、かなり急激なレベルアップを果たしていた。
20レベルを境に、ステータスボーナスポイントも付加されている。

新たな称号について説明しよう。

ーーー
[器用裕福]…あらゆる物事をスマートに成し遂げる者に贈られる称号。
手先が器用になる。スキルなどを使用する際に、自由度が上がる。

[赤の宣教師]…赤の女王様を讃えよ。その素晴らしさを世に知らしめよ。それこそが宿命。
赤の女王様について話す際、信仰心を集めやすい。
ーーー

[赤の宣教師]の効果がぶっ飛んでいる。赤の女王様限定の称号のようだ。

[精霊の友達]の効果は以前述べた通り、精霊たちに無条件に好かれるというもの。
この項目をタップすると、[創造樹シルフィネシアの加護]の表記が表れた。

運ステータスだけは相変わらず上昇していない所が哀愁を誘うが…レナ達と共にいる間は悪いこともそう起きないだろう。
幸運さんは、つよい。
ギルドで依頼を受けることが叶わなかったため冒険者ランクこそ低いが、純粋な戦闘力だけなら既に上位冒険者にも迫る勢いである。
そのうえ、とってもチートな☆7魔眼持ち。

『『ひゅーひゅー!お兄さんつよいですなぁーっ』』

「褒めてくれるの?ふふっ、クレハ、イズミ、ありがとう」

宿でルーカの腹筋を狙い撃ちした主犯であるスライムたちは、ちょっぴり気を遣ってかなり大げさに彼を褒めていた。
連続ヘン顔で何度も撃沈させてしまって、息も絶えだえに金色毛皮に埋もれるルーカを見て、さすがに悪いことをしちゃったなーとほのかに反省したのである。
後悔はしていない。
そんなスライムたちのささやかな思惑をルーカはなんとなく読み取っていたが、嬉しそうにお礼を言う。
こういったなんでもない掛け合いが、いちいち楽しくて仕方ないのだ。

レナのステータスも記載しておこう。

「ギルドカード:ランクF
名前:藤堂(とうどう) レナ
職業:魔物使い(モンスターテイマー)LV.19
装備:麻のシャツ・キュロットスカート・ブーツ・鞄・Mバッグ・赤ノ祝福ヲ賜リシ覇衣(ハゴロモ)
適性:黒魔法・緑魔法[風]

体力:32(+5)
知力:63(+2)
素早さ:22(+3)
魔力:65(+4)
運:測定不能

スキル:[従魔契約]、[鼓舞]+1、[伝令]、[従順]、[従魔回復]+1、[みね打ち]、[友愛の笑み]

従魔:クレハ、イズミ、リリー、ハマル、モスラ

ギフト:[レア・クラスチェンジ体質]☆7
称号:逃亡者、お姉様、赤の女王様、サディスト、精霊の友達」

称号欄が圧巻のラインナップである。…すごい。
初めてこれを見た人は確実にレナという人物を誤解するはずだ。

新しいスキルはこのような効果。

ーーー
[友愛の笑み]…パッシブスキル。
好意を持ってやさしく笑いかけることで、相手の警戒心を解きやすくなる。
ーーー

ヒツジへの[みね打ち]祭りで取得した[ヒール]は緑魔法なので、緑魔法項目にその記載が納められている。
[ヒール]を極めていけば、上位互換の治癒魔法をいずれ取得できる。
そう時間はかからない、とルーカ先生は告げていた。
その瞬間にヒツジが期待した目でレナを見つめて、レナは目を逸らしたと言っておこう。

まあ、それは置いといて。
レナはわくわくした表情で、自分のギルドカードをみんなに見えるように掲げる。

「では。クラスチェンジと洒落込みましょう!」

『『ドンドンぱふぱふーーっ』』

毎度おなじみ、クレハとイズミの口頭ファンファーレを合図に、怒涛のクラスチェンジ祭りが始まった。

▽レア・クラスチェンジ!

全員が必ずレア種に進化するという破格の☆7ギフト。今回は従魔たちをどのようなクラスチェンジに導くのだろうか?
レナがノリノリで拳を天に突き上げる。

「みんなー、心の準備はいいかなー?」

『『『『おおーー!』』』』

即座に応える従魔たち。
さすがのコンビネーションだ。よく教育されている。
ルーカが生暖かい瞳で彼女らを眺めている。

「うーん。…誰から進化させるかなんて決められないよ…!
一気に全て押しちゃおうっと。そぉーーれっ」

▽ポチッとな!×4
まさかの連打展開に、みんなが驚く。

『ご主人さまっ!?…ああーんっ
思い切り良すぎぃーー!』
『そんな貴方にシビレちゃうわぁーっ』

『…ん、身体が…熱くなってきたぁ…』

『うー、ちょっと辛いですー…。
でも、この熱もレナ様が与えてくれたご褒美だと思えばー、幸せになれる』

…マゾヒストとは最強の存在なのではないか、と考えるレナであった。
そんな彼女はサディストである。
ふと真顔になったレナの思考をちらっと読んだルーカがぷるぷると震えだした。が、なんとか今回は堪えた。
[ |悪運持ち(バッド・ラック)]の称号をイヴァンに移したものの、ルーカの運ステータスは未だに5なのでまた随分と間が悪い。

内側から湧き上がってくる熱に耐えている従魔たちが、その姿をだんだんと変化させていく。
声援をおくる主人。
ほのかな光を纏って…従魔たちはついに、新しいモンスターに進化した!

<<種族:ミニ・ジュエルスライム→スター・ジュエルスライムに進化しました!>>

<種族:ダークフェアリー(幼体)→ハイフェアリー・ダークに進化しました!>
<スキル[消費魔力軽減]を取得しました>

<種族:ゴールデンシープ→夢喰いヒツジに進化しました!>
<スキル[夢喰い]、[夢吐き]を取得しました>

<ギルドカードを確認して下さい>

案の定みんなすごそう。
順番に説明していこう、まずはスライムたちから。
進化先はこのようなレア魔物だ。

【スター・ジュエルスライム】
…ジュエルスライムの上位種。その身体はきらめきを増しており、ボディ表面には6本の光の筋(スター)が見られる。
1日おきに、普通の宝石(ジュエル)と、スターの輝きを持った宝石(ジュエル)を吐き出す。

大きさは少し体積を増しており、メロン大になっている。片手に余るくらいのサイズだ。
種族説明文のとおり、ボディは以前よりもさらにきらめいている。
表面には6方向に光の筋を伸ばすスターが見られた。
双子スライムは誇らしげにぷよん!と胸を張る。

『『とくとご覧あれ!これがスタージュエルっ!』』

『普通の宝石とスタージュエルを、交互に作れるのよー。毎日宝石を吐くからねっ』
『スタージュエルにはつよーい魔法がいっぱい付与できるのだ!』

「え!?すごいね…またアリスちゃんに連絡しなきゃ。
魔法付与…?」

『『ドンドンぱふぱふーーっ』』

「はい、丸投げですね。
では僕が説明しましょう。
魔道具の装飾に使われている宝石にはさまざまな効果を付与することが可能です。
例えば魔力増強、素早さアップ、魅了効果など。特定の攻撃魔法、結界魔法を仕込むこともできます。
いくつの効果を付与できるかは、宝石の質と大きさによって異なります。
もちろん、宝石が大きいほど容量があり、たくさんの効果を付与できる。
そして不純物が混じっていない純度の高い宝石には、強力な魔法を仕込むことが可能です。
これらを併せ持っているスライムジュエルは最高級の逸品。
でも、さらに特別な条件がある。
きらめきの強い宝石には、込められた効果を増強する力があります。
魔道具用の宝石を美しくカットするのは、これが理由。
ただし、石が小さくなるのが難点。
そしてカドが多くなるほど輝きは増しますが、角ばった宝石には付与魔法がとてもかけづらい。
よって幾重にもカットがかさねられた美しい宝石は、貴族の宝飾品用としてささやかな効果のみを付与され、アクセサリーになることが多い。
もし、丸い形のままで、なおかつ輝きの強い大きな宝石が生み出せるならば…それは素晴らしい価値を持つでしょう。
素のままで輝きの強い宝石は、通常なら内部に特別な不純物が含まれていて光の屈折により輝くものです。
不純物が多い宝石は価値が下がる。
…しかし、スライムのスタージュエルは通常の鉱物法則を完全に無視している、と視ました。
スライムが吐きだす宝石は構造そのものが自然界の宝石とまったく異なっており、不純物を一切含まずに、なおかつスターの輝きを持つ。
モンスターの核の複製物、とでも捉えておいてください。
これは強欲な商人に知られたらとてもヤバイ代物です。
気をつけましょう。以上」

「な、なんというものを…」

『『褒めてもいいのよーー♡』』

「クレハもイズミもクラスチェンジよく頑張ったねぇ、えらーいっ。
生み出した宝石については絶対アリスちゃんに扱いを聞こうねっ!」

『はーーい!』
『レナのためにたっくさん素敵な宝石作るのよー!』

「わ、わーい」

「名前:クレハ
種族:スター・ジュエルスライム(赤)LV.21
適性:赤魔法[熱]

体力:50(+17)
知力:40(+15)
素早さ:45(+12)
魔力:28(+6)
運:21(+7)

スキル:[溶解]+2、[超硬化]、[伸縮自在]、[火達磨]
ギフト:[全状態異常耐性]☆4
称号:魔人族、悪喰(あくじき)」

「名前:イズミ
種族:スター・ジュエルスライム(青)LV.21
適性:青魔法[水、氷]

体力:49(+18)
知力:37(+12)
素早さ:49(+14)
魔力:29(+7)
運:20(+6)

スキル:[溶解]+2、[超硬化]、[伸縮自在]、[氷のつぶて]
ギフト:[全状態異常耐性]☆4
称号:魔人族、悪喰(あくじき)」

スキルと称号効果はこちらのとおり。
ーーー
[火達磨]…体に灼熱の炎をまとう。本体へのダメージはない。
込める魔力により炎の温度、大きさが変わる。

[氷のつぶて]…体と同じサイズの氷の塊を複数創りだし、降らせたり、一方向に跳ばすことが出来る。
込める魔力により氷の数が変わる。

[ 悪喰(あくじき)]…究極のゲテモノ喰いに贈られる称号。
どのような物質でも消化することができる。
ーーー

主人のえげつない作戦に映えそうなスキル群、称号である。
今後の戦闘が楽しみであり、また獲物が哀れでならない。

お次はリリー。
種族項目に記載されていた(幼体)の表記は消えていた。
大人への階段を登ったのだろう。

【ハイフェアリー・ダーク】
…闇属性に特化した、フェアリーの上位種。
魔法の扱いがとても上手く、適性のある様々な上位魔法を使いこなす。
フェアリー・コントラクトの自由度が上がり、一度に複数人と契約を結ぶことが可能となった。
フェアリーとしての進化はここまで。王族になる素質のある者だけが、さらなる成長を遂げることができる。
特殊スキル[消費魔力軽減]を進化時に取得する。

リリーは最初のレアクラスチェンジの時点ですでに王族候補フェアリーの大きさだったので、これからも更なる進化を期待できる。
50cmだった身長は少しだけ伸びて、現在は60cmほどだろうか。
しかし翅(ハネ)も含めるとかなりの大きさで、優雅な存在感がある。
美しい少女の容姿、青い翅の神秘的な輝きにより誰もの目を惹きつけてやまない存在になっていた。
[幻覚]を常用するか蝶々姿でいる対策でもしなければ、間違いなく大騒ぎになるだろう。

幼女から少女の容姿に成長したリリーが、美しくにこっと微笑む。
それだけで空気が香り立つような錯覚すら抱いてしまう。
スラリと伸びた褐色の手足、ふわりと上体を包む絹のような純白の髪、鮮やかな青の瞳。
黒のミニドレスが妖艶な雰囲気にとてもよく似合っていた。

『…どうかな?ご主人さま。…私のこの姿。好きって、言ってくれる…?』

「リリーちゃん大好きぃーー!最高に可愛くて、美しいよ!さすがウチの子っ」

『えへへ…』

親バカ主人が両腕を広げており、リリーはレナにふわっと抱きつく。
そして、顔に当たるふたつの柔らかい膨らみを偶然感じてしまったレナは世の不平等を知った。
リリーは確実に成長していた。

「名前:リリー
種族:ハイフェアリー・ダーク♀、LV.20
適性:黒魔法、黄魔法

体力:27(+9)
知力:34(+15)
素早さ:31(+11)
魔力:56(+15)
運:24(+9)

スキル:[幻覚]+2、[吸血]、[魅了]、[黒ノ霧]、[紅ノ霧]、[魔吸結界]、[消費魔力軽減]
ギフト:[フェアリー・アイ]☆4
称号:魔人族、サポート上手」

称号の効果はこのようなもの。
ーーー
[サポート上手]…たくさん誰かの手助けをした者に与えられる称号。
状況判断力が磨かれる。補助のために魔法を使う際、消費魔力が少なくてすむ。
ーーー
リリーはとにかく省エネな妖精に成長したようだ。
後方支援役としてとても頼もしい。

最後はハマル。
実は、今回一番のトンデモ進化を遂げている。

【夢喰いヒツジ】
…幻のヒツジモンスター。眠る者の夢を喰べ、その夢を吐き出す事で”実現”させてしまう能力を持つ。
詳しい生態は不明。
特殊スキル[夢喰い]、[夢吐き]を進化時に取得する。

ルーカ曰く、完全な新種ではないものの珍しすぎて存在定義があやふやなのだろう…とのこと。
これはラナシュ世界の曖昧さが今後もやらかしかねない。

戦闘に特化した希少種の魔物ならば、スムーズに成長して世界にその名を轟かせる事があるが、うつくしさのみに特化した希少種魔物は、自然界では目立ちすぎてしまううえ大して強くないので、速攻で淘汰されてしまう場合がほとんどらしい。
そのような希少な存在がさらに進化した例は、非常に稀なのだ。

ジュエルスライム種、ゴールデンシープ種は今までにも生まれたことはある。
しかし、ジュエルスライムは核を砕かれる事で死亡し宝石の欠片しか残さないため、今までヒト族には存在が認知されていなかった。
生きた個体が目撃されることは、たまたまなかったようだ。
ゴールデンシープは死んだ状態で発見された例しかない。
美しい剥製や毛皮はとんでもない高値で取引されており、国宝になっている国もあるらしい。

ヘビモンスターなど、敵との相性によってはスライムは勝ち続けることが出来るが…
群れで行動し、数で対抗するヒツジモンスターはほとんどが個々の戦闘能力に恵まれないうえ、色で目立って群れの足を引っ張る存在は、仲間はずれにされてしまう。
ゆえに、ゴールデンシープ以上の存在が生まれた例は、世界が出来上がってから今まででほんの数例だったのだろう。

余談が長くなってしまった。
ハマルの進化の話に戻ろう。

ふわふわキラキラの白金色の毛皮は進化後も引き継がれている。
後になって、毛質が変化するかもしれなかった可能性に気付いたレナは身震いしていた。
もうハマルのゴールデンベッド無しには寝られないほど、あの金毛の感触に惚れ込んでいるのだ。

進化したハマルの毛皮は相変わらず見事なふわっふわキラキラの白金色。
体つきは丸みがあって愛らしい。
長距離の移動にも耐えられるよう、足はヒツジにしては太くて頑丈そうだ。
小さめだった角も成長しており、星の輝きを纏っている。
何よりも特徴的なのは尻尾。ゆらゆらと色の変わる藍色の毛が、綿雲状にまとまっている。
レナが触れてみるとふわっと手が飲み込まれるものの、毛の質量は感じられない。本当に雲みたいな存在のようだ。
色とりどりの小さな光が内包されていて、とても綺麗。
そう告げると、ハマルは尻尾を得意げに揺らしてうっとりと一言。

『縛ってみますかー…?』

「雲みたいで掴めない尻尾だから無理だよ、うん…。ハーくんも撫でてあげようねーおいでー」

『たくさん愛でて下さいませ女王様ーーっ』

「レナ様、でしょう?」

『あ。…お仕置きでしょうかー?』

ノンストップ・マゾヒツジ。
頼むから今以上には目覚めないでほしいな…と思いながら、さらなる沼落ちを防ぐべく、レナは純粋な愛情をこれでもかと注ぐのだった。
ここで再度言っておくが、レナ様呼びは普通ではない。

「名前:ハマル
種族:夢喰いヒツジ♂ 、 LV.24
適性:黒魔法

体力:48(+15)
知力:38(+11)
素早さ:38(+17)
魔力:31(+10)
運:32(+7)

スキル:[体形変化]+1、[駆け足]、[快眠]+2、[周辺効果]+2、[跳躍]、[夢喰い]、[夢吐き]
ギフト:[鈍感]☆5
称号:魔人族、ドラゴンキラー」

新能力についてまとめて説明しよう。

ーーー
[夢喰い]…眠っている者の夢を喰べ、食料に代わる自分の糧とすることができる。
尻尾に夢をストックする事が可能。
夢を喰べられた者は、その内容を忘れてしまう。

[夢吐き]…喰べた夢を”現実のもの”として吐き出す事ができる。
現象、物質を吐き出す事はできるが、生き物は実現化させられず、吐き出された時点で生を終えてしまう。

[ドラゴンキラー]…ドラゴン討伐の功労者に贈られる称号。
ドラゴンとの戦闘時、体力・素早さ2割増し、威圧の効果がある。
ーーー

対ドラゴン特化の草食獣とは恐れ入る。
ヒツジとは一体何だったのか。

『ハーくん小腹空かなくなるの?いいなー』
『夢ってどんな味なんだろうねっ?』
『お菓子が、いっぱいの夢とか…美味しそう!』

『えへへー。先輩方の夢見に期待してますー。
もし美味しいお菓子の夢だったら、[夢吐き]して皆様にもおすそ分けしましょうー』

『『わお!これは頑張ってお昼寝せねば!』』
『リリーにも、おまかせあれ、なの♡』

従魔たちがきゃいきゃいと可愛らしい会話をしている。

夢喰いヒツジの特別なスキルを見たレナは、興奮したようにパッと華やいだ顔をルーカに向けた。

「ルーカさん!
このスキル、もしかして私の故郷の食材なんかもお取り寄せできたり…!?」

「そうだね。貴方がそれを夢見たならば、可能だと思うよ。
ただし、生鮮食品の類は厳しいと思う。
試してみなければ確実な事は分からないけど…おそらく野菜、肉、魚なんかは夢から出された時点でドロドロに腐った状態になってしまう。
菌類は加工された物なら平気だけど、鮮度が落ちるのは故郷よりもかなり早いだろうね。
そういう調味料は持ってひと月ってところかな」

便利が過ぎる男、ルーカティアス。
成長して、ただでさえ凄い魔眼の精度がさらに上がっている。

「それでもかなり嬉しいですー…!
ふふっ、やったぁ。これでお料理がもっとはかどるっ!
魚やお肉のテリヤキ、お味噌汁にー、お漬物とかもいけるのかな?
カレールーもいいよねっ。ああ…夢が広がる…!」

「ちょ、ちょっとレナ。しー!
ラナシュにない食べ物の話は、まだしちゃ駄目だよ。
世界が余計な称号を貴方に与えかねないから、気をつけて。
実際に夢から食材が取り出せたなら、もう口にしても大丈夫だと思う。それまでは我慢してて。
うん、貴方の料理は楽しみだ」

『ご主人さまの、新しいお料理…!』
『『あの美味しいチョコレートもお取り寄せ可能なのー!?』』

「あっ、クレハ、イズミ。チョコの話はまずい……でしょうか?ルーカ先生?」

「いいえ、レナさん。
かなりの高級品ですがこの世界にもチョコレートは存在するので、問題ありません。
チョコレート・モンスターがいます」

「そんな存在が!?」

『食材でもー、思い出の品でもー、夢の中の物ならボクにおまかせあれですー。ふふーんっ。
えっとね、あんまり大きすぎる物は取り出せないけどー、夢に入り込んだボクが受け取れるサイズの物なら実現可能みたいー。
ただ、夢で巨大化はご法度みたいですー』

「おおー。じゃあお鍋やフライパンなんかもいけるかな。
ラナシュの安価なお鍋はやっぱりちょっと焦げつきやすいんだよね」

『おおせのままにー!』

「ありがとう!楽しみ」

「ミレー大陸には新しい物が多くて流行の移り変わりも早い、ジーニ大陸の品物は伝統的でしっかりした作りの物が多いんだよね。
大陸を渡ればドワーフ製の鍋なんかも比較的安価で売られてるらしいよ。
まあ、それでも貴方の故郷の品には敵わなさそうか」

「故郷の品にはかなり色々な工夫が施されてますからねー。快適に長く使えます。
ほんと、研究者さんや職人さんには感謝しなくちゃ。
美味しいご飯のため。頑張って眠りましょうー!」

『『『えいえいおーーっ!』』』

▽地球の品が お取り寄せ可能になった!

かなり凄いことだ。
醤油、みりん、味噌、カレールー、ケチャップ、マヨネーズ、固形スープの素、豆板醤、ソースまで…なんでもござれ。
レナの脳内はとりあえず食料品のことで埋まっていた。

レナが夢に見る事さえできれば、危険な化学兵器でさえ持ち出す事が可能ということだが…このメンツではそういう発想はまず生まれない。
そういう子で良かったなぁ、とルーカはホッと肩の力を抜いて微笑む。

もし”呼び出された”異世界人が黒い魂を持つ者だったならば…きっとラナシュ世界は大変な変動を迎えていただろう。
そう考えて、瞳を伏せた。
ルーカが暗号論文をむりやり読み解かされた、ガララージュレ王国の闇魔法の実験。…この一件についてはすでにレナたちに全て伝えてある。
それでも、自分を拒絶せずにあたたかく迎え入れてくれた時は涙がでるほど嬉しかった。
あの幸せな気持ちは絶対に生涯忘れられない。
この仲間たちを何があっても守ろう、と決めて…まずは自分にできることから、とルーカはお得意の的確なアドバイスを口にした。

「夜は[快眠]スキルでしっかりと眠りたいでしょう。
でも[快眠]中は眠りが深いから夢を見ないし、1日に2回くらいお昼寝の時間をとる?
外での移動中にもウトウトしてて構わないよ。ハマルの背中で寝ちゃっても、落ちないように後ろから支えるから。安心して。
周囲の索敵もまかせてね」

「あ、そうですね。さっすがルーカ先生ー!とても助かります」

『ではお言葉に甘えてー。クーとイズもレナとお昼寝しちゃおうっと!』
『毒殺ヘビ肉の夢見るんだー♪
あやつら、ダナツェラらへんにしかいないんだもんっ。ちょっと恋しくなってきちゃったの』

『私も、索敵、手伝うねー。
うふふっ、クラスチェンジして、魔眼の能力も…こうじょうした、の!すごい?』

「リリーちゃん凄い!難しい言葉知ってる!」

『えへん!』

褒めて育てるタイプのオカン、レナ!

『移動中でも夢に干渉できるみたいだからー、寝てもらって大丈夫だよー。
しっぽに夢をストックできるの。
旅路では、ボクの背中でウトウトしてて下さいー』

「ありがとうハーくん。……えっとね。ご、ご褒美、欲しい…?」

『ふああぁぁっ、はい!!鞭を所望しますぅーーっ』

肝心なところで甘やかすダメな癖のあるオカン、レナ。
レナもなかなか、自分で自分の首を絞めがちだ。
ルーカから向けられている視線が実に生ぬるい。
圧巻の称号群をセットすればさらなるご褒美になり、主人の精神は容易に逝くだろう。

従魔たちのトンデモクラスチェンジは無事に終わった。

ちなみにスマホさんを視てもらったところ、「数年かかると見積もってたけど…なんか、予想より成長がかなり早い」とのお言葉を頂いてしまったので、こちらもしばらくすると魔物化するのかもしれない。
新種の超すごーい魔物になる予定なのだ。
今から、レナの驚く顔が楽しみである。

赤の女王様はすっかりラチェリ上位冒険者の間で有名になっており、赤いローブのフードをかぶっていても即バレて街中で敬礼されてしまう。
ポーズは最敬礼か、力こぶを見せつけるマッチョマンポージングだ。
駆け出し冒険者たちがぎょっとした顔でレナパーティと先輩を交互に見やる光景が、最近のラチェリ名物になっていた。
レナは小さく会釈を返しては、そそくさとその場を後にする生活を送っている。

…この女王様熱が冷めるまでは、しばらくラチェリからは距離をおいたほうがいいだろう。
シルフィーネ、シルフィネシアとのお別れは寂しいが…精霊祭が終わったあと、レナ達はアネース王国を発つことにした。

 

 

 

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