58:女王様のご回答

「ずいぶん勝手な要望ばかり突きつけてくるのね。
私を側に置きたい?
この場を収めたいなら一緒について来い?
ふざけないで。
まず…貴方は勘違いをしているわ。
私はね、誰かの手中に収められる側の人間ではないの。
私のそばに、従属を望む者たちが自ら集ってくるのだわ」

『『『『し、従えてぇーーーー!!』』』』

堂々と勝気に言ってのける女王レナ様。
その可愛らしい声には自信があふれ、威厳あるオーラがこの場にいる誰も彼もの目に映っているほどだ。
国属魔法使いの爺様たちも背中越しにセリフを聞いて、あんぐりと口を開けている。
凄まじい女王様感だ。

従魔たちなんて言うまでもなく大興奮で、『レナ様にお仕えできて幸せですぅーー!』『ああん、ご主人さまぁステキーーッ!』などと口々に敬愛を叫んでいる。
スライムとリリーはノリノリで、ハマルはガチ勢と言っておこう。
冒険者たちはあまりに熱い空気にドン引きしており、ルーカにいたっては腹筋がもう瀕死だった。
いつもの控えめなレナが内心「違うの!こんな言い方するつもりじゃなかったのぉー!」と悶えているのを、またも魔眼で覗いてしまったのだ。

呪術師は、はたき落とされた手のひらをさすりながら、鋭い目をわずかに見開いて不思議な少女を凝視している。

「ふふっ、ほらね!
私の従魔たちって、とても可愛いでしょう?
それに強いのよ」

レナ様は呪術師など無視して、心底愛おしそうに、カワイイ我が子たちを見つめてみせた。
…主人にここまで言わせて、恥をかかせるわけにはいかない!と、ハマルとスライムはさらに頑張る!
メンタル鼓舞されたとでも言うべきか。

ドラゴンに押し負けていたはずの巨大ヒツジは、ぶるるっ…!と力強く鼻息を吐き出すと、脚に力をぐっと込めて、ついに…気合いでドラゴンを押し返し始めた!

力ずくで押し返されたため、ドラゴンのおでこの鱗がズルズルと崩れ剥がされていく。
スライムガードに当たっている部分の鱗と腐肉は、クーイズたちがじわじわ溶かして喰べていった。グロい。
やがて白い骨が顔を出し…ドラゴンはあまりの痛みに、大きな咆哮を上げる。
ここぞとばかりに冒険者たちが足元に攻撃を加えて、屈強な片足を地に着かせた!
これでしばらくは、乙女の宿り木が危険に晒される事はないだろう。

リリーはポカポカと、主人を隔離している闇結界を蝶々のか弱い手で叩いて攻撃している。

「ふむ。
魔物が何を言っているのかは分からないが…確かに、お前は主として随分と慕われているようだ。
言葉ひとつでこうもやる気を出させたか。見事だな」

呪術師は感心したように、善戦する巨大ヒツジたちを眺めた。

「お前、なんて気に入らないわね。
レナ様とお呼び」

「…実に面白い。レナ様、ね」

「あら。素直な者は好ましいわ。
ただ、貴方はその好感度を余裕で塗りつぶしてしまうほどの外道だから、あいかわらず嫌悪感しか抱けないのだけど」

「構わない。
ベタベタくっ付いて媚を売ってくる女より、サッパリしていてよほど良い」

「…見下ろしながら話さないで下さる?」

「では、実力で跪(ひざまず)かせてみせろ。
猶予はやろう。
…いいな。実に楽しい」

呪術師は女王様に対して、かなりの興味を抱いたようだ。
このような対応をしてくる女性になど出会ったことがなかった。
当たり前だ、サディスティック女王様なんてそうそう巷に溢れていてたまるか。

呪術師の細められた黒の瞳には暗い光が宿っている。
口の端をわずかに歪めて、ニヤリと笑った。
かなり不気味な笑い方だが…それでもイケメンというだけで十分様になっており、冒険者の男たちは世の理不尽を知った。

「その笑い方の方がよほど嫌らしくて、貴方らしいわ!」
とレナが言うと、とても満足そうに頷いてみせる。
偽りの爽やか笑顔を貼り付けるのは、あっさりとやめた。
望んだ対象にモテ効果がないならば、無駄にモテるだけうっとおしい、と考えたらしい。爆ぜろ。

「さあ、ここからどうする。
レナ様とやらは、従魔の力以外の手札を持っているのか?
それは…俺の知らない面白い技術か?
少し待っててやる。全て見せてみろ」

これまた盛大な煽り文句だが…レナは尊大な態度はそのままに、冷静に”勝つため”の作戦を考えていた。
負けてやる気などない。
最悪でも引き分けて、この場から追い払わなければ。
腐化の呪いをかけられた冒険者たちとシルフィーネたちがそろそろ危ない。

この厄介な呪術師にまず一撃を加えるためには…やはり、興味を持たせて自ら一歩引かせるのが正解。
[観察眼]スキルにより、わずかな動作にも速攻反応する彼への不意打ちは不可能、がむしゃらに力任せの攻撃をしたところで闇結界で防がれてしまうだけ…
結界の内部にすでにレナがいて、なおかつ相手がレナを殺す気がない今が唯一の反撃チャンス!
レナが使える中で、一番確実かつ高威力のカードを切らなければならない。……。

チラリ、とレナは視界の端にいたルーカに一瞬だけ目を合わせる。
彼を従魔たちへの伝令役に使ったのだ。
ルーカはレナに念話で「(了解)」と告げると、ハマルとスライム、リリー、そして妹シルフィーネに視線を送る。
リリーにはついでに、ルーカ自身の作戦も追加で伝えられた。
かなり驚いていたが…リリーは愉快そうに翅をパタパタとはばたかせ、いったん闇結界から離れると、シルフィーネの結界近くに移動し空中待機する。

そして入れ替わりで、結界越しのレナのそばに妹シルフィーネがふわりと降り立つ。
妹シルフィーネの姿は呪術師には見えていない。

場は整った。
呪術師は己の規格外な実力をよく理解しており、余裕のある表情で、目前の小柄な女王様の反撃をあえて待っている。

「これをご存知かしら?」

「…いや。知らない魔道具だな」

「お花の種が入っているのよ。最近発売されたばかりの魔道具なの」

「なるほど、そうか。
だが、それがレナ様の最後の手札だと言うなら、俺は失望するが?」

「その点は私を信じてよろしくてよ。
きっと、貴方はすぐ跪(ひざまず)くことになる」

「ふむ」

呪術師は満足そうに口角を上げた。

レナが自信満々に取り出したのは、真っ白いカプセル状の魔道具。
皆様に大好評の、アレな花の種が入っている。
小さな手のひらに乗せて、目の前の呪術師にもよく見えるよう掲げてみせた。

呪術師はマジック・ロッドに手を添えながらも、レナの言葉により待ちの姿勢を見せている。
あちらから先制攻撃してくる様子はない。

戦いながら、双方のトゲトゲしい言葉の応酬をチラチラ見守っていた冒険者たちが、ゴクリと生唾を飲み込む。
女王レナ様はすうーーっと大きく息を吸い込むと…まるで晶文(しょうぶん)を彷彿とさせる詠唱を、高らかに桜色の唇からつむぎ始めた。
これはあくまで、呪術師を惹きつけるための演出である。

<地球ネットワークからかっこいい魔法詠唱例文を検索中……検索中……ダウンロードが完了しました>
<マスター・レナの知識にトレースを開始いたします>
<完了しました>

しかしスマホさんが主人のためを思って、甲斐甲斐しく余計な一手間を加えてしまう。
もともと派手めに考えられていた詠唱文は、黒歴史方面にさらなるクラスチェンジを遂げてしまい、内なるレナの気持ちをいたずらに高揚させた。
内心では悶えている。
まだまだ。
妹シルフィーネが友達の気持ちの高揚に気づいてしまって、サービスサービス!と言わんばかりに華やかな輝く風のエフェクトをプレゼントしてくれた。

▽キターーーーーーー!

キラキラの風を纏って、赤いローブを優雅にはためかせる女王レナ様の英姿は、冒険者たちの記憶にハッキリと刻まれた…!
大惨事である。
ルーカがもう涙目で笑いの衝動を堪えている。

「きらめく風は緑と青の精霊のしらべ
我を慕うゆえに白銀の風が吹く、それは必然
赤紅色(あかくれない)の神聖なる衣は我を守りしイージスにして黄金剣(ハルパー)
我の言葉をこの世界が復唱し、祝福する、それは運命
我が名はレナ
あらゆる祝福・幸運を一身に集めし魔物使い
女王様とお呼び
真白に輝く我がしもべたちよ、今ここに、その雄姿を現さん
ーー月の光に導かれ…!」

ムーンライトパワー。ド昼間だが。

「束の間の生を謳歌(おうか)せよ、超速ホワイトマッチョマン!!」

『お水をあげましょ そぉーーーれっ♪』

レナがザッ!と片足を引いて、魔道具のオープンスイッチをとてもかっこいい仕草で押してみせた!
妹シルフィーネが花の種を水球でくるりと包む。
真白の種は、まばゆく光り輝く…

▽ミラクル!
▽超速神聖ホワイトマッチョマンが 誕生した!×10

純白のマッチョボディは神秘的な白銀の光を帯びており、顔部分には超大輪の白薔薇が咲いている。
彼らはお花なのだ。
身長は驚愕の40cm級、通常ホワイトマッチョマンよりかなり大きく育ったため、個体数そのものは少なめ。
だが、その一体一体がおそるべき身体能力と聖なる力を秘めている!
全員の動きを合わせて…ダブルバイセップスポージングッ!!

現在、闇結界の内部はミニマッチョたちでぎゅうぎゅうすし詰め状態。
あまりの窮屈さに、呪術師は三歩後ろに下がりレナから距離を取ると、闇結界をあっさり解除してみせた。

「…面白い!
レナ様はサモナーではなかった筈だな?
それなのに、なぜ、このような者達を召喚する事が出来る。
なぜ、アクアの魔法やスキルを使わずとも水球を出現させられた?あの弱っている精霊の力を借りたのか。
適性魔法は黒と緑と読んでいたが…青属性をも操る”トリプル”だった…?
詠唱にはいったいどのような特殊な効果が秘められていたのだろう。
あのような晶文(しょうぶん)は、俺も聞いたことがない。とても興味深い!」

考察お楽しみ中に水を差すようではあるが、あれはただのセルフ羞恥プレイである。

知識欲を今すぐ満たしたい!とばかりに呪術師は矢継ぎ早に問いかけるも、しもべに囲われた女王様はツンッ!と顎を上げて、静かに微笑むばかり。
ハリボテだらけの手中を、ご丁寧に敵に説明してやる訳が無いのである。
呪術師はピクリと眉を跳ね上げる。

「教える気は無い、か?
ああ…残念だ。
以前盗賊職だった時には、[鑑定眼]スキルを取得していたというのに。それがあれば、お前のステータスのほぼ全てを視る事ができたものを。
ふむ…俺は普段はかなり運に恵まれているのだが、どうにも今回ばかりは巡り合わせが悪いな」

「幸運はいつでも私の味方なのよ?
ふふっ、相手が悪かったと思いなさいな」

「そうなのか。まあ、いい。
お前を手に入れたなら、全て分かるのだろう?」

目に暗い好奇心の光をギラリと宿した呪術師が、ついに動く…!
マジック・ロッドに自分の魔力を素早く流し込む。

「スキル[腐化の呪]」

まずは、様子見。
神聖ホワイトマッチョマンたちの周りに、数十本はあろうかという闇の針を出現させた。

「…神聖の名が示す内なる力を、解放せよ!」

レナはまたもデタラメな詠唱をしつつ、しもべを侍らせて迎え撃つ。
鞭をピシンッ!としならせると、マッチョマンと従魔たちを[鼓舞]した。
ぐーん!とテンションを上げる従魔たち。
種から花咲いた状態のマッチョマンたちも、レナの従魔として認められるようだ。

闇の針は一斉に鋭く降下し、マッチョマンの美しい筋肉に突き刺さる!
はずだった…。
ーーそれら全てが純白の肌に刺さる直前、闇属性の抜けたただの鈍色の針に劣化させられ、さらに、マッチョのムチムチ筋肉にパチンッ!と弾かれてしまったのだ!
ウワーーーォッ!

呪術師は目を見開き、その不思議な光景をほんの僅かでも見逃すまいと凝視して「なぜ」を何パターンも思考している。
とても楽しそうに唇の端を釣り上げた。

この間、守りを捨てた呪術師に対して数本の弓矢が飛んできていたが、それらは全て彼がロッドで力ずくで叩き落としている。
やはりとんでもない。

神聖ホワイトマッチョマンはまたもポージングを決めると、ボディ全体を内側から神秘的にピカーッと輝かせる。

『ーーあっ!』

その輝きにほんのり触れた妹シルフィーネが自らの胸に手を当てて、驚きの声を上げた。
穢れの影響でずっと重苦しかった身体がふわっと軽くなり、呼吸がラクになったのだ。
レナのギフトにより特殊進化した神聖ホワイトマッチョマンの秘められた効果は、”闇払い”。
知能持ちのお花の種は発芽した瞬間に主人が望む方向に進化(クラスチェンジ)し、さらに、特別な力をひとつ取得するらしい。

「ーー行きなさい!」

ピシッ!と鞭を地に叩きつけた主人の命令を受け、マッチョマンたちはついに進撃を開始する。
剛脚で地を蹴りつけ、ハイジャンプ!
一気に呪術師へと距離をつめる。

「[シャドウ・ホール]」

呪術師は落ち着いて闇結界をはるも、彼も知らぬマッチョマンの特殊効果は”闇払い”。
まず、最初に結界に到達したマッチョマンが渾身の空中とび膝蹴りをぶち当てる。
同じポイントに、集中してマッチョマンたちの蹴りやら拳やらが次々当てられていく!
闇の加護を受けた堅牢な結界には、致命的なヒビが縦におおきく入ったーー呪術師の闇結界は、ついに壊された!
今回は晶文(しょうぶん)を使わなかったところを見ると、呪術師なりに久々の緊迫感のある戦闘を楽しんでいるのだろう。

その油断と、マッチョマンたちをのんびり観察していた余裕がアダとなる。
レナたちは全力なのだ。
マッチョマンたちが、剛腕を大きく振りかぶる。

▽神聖ホワイトマッチョマンの アッパー!
▽呪術師の 腹部にヒット!

呪術師は「ぐっ」と苦しそうなうめき声を漏らし、背の高い身体を勢いよくくの字に折り曲げる。
剛力アッパーの衝撃で、足が地面から少し浮いていた。

▽神聖ホワイトマッチョマンの 右ストレート!
▽呪術師の 頬にヒット!

マッチョマンの拳に頬を思い切り下向きに殴られ、ついに…呪術師はその無礼な頭を地に付けることになった。
受け身をとりつつも、無様に倒れこんでしまう。

冒険者たちからはまるで怒号のような歓声があがる。
この瞬間、呪術師の集中が切れて、ルーカの足を縫い付けていた[影縛り]効果も消滅した。

一気にたたみかけるべし!と、拳を振り上げ筋肉を見せつけるマッチョポージングをした純白戦士がすっ飛んで来る。
が、呪術師も大人しくやられっぱなしでいる訳はない。
上体を軽く起こした状態で短剣を鞘からスラリと抜き、驚きの速さと重さを纏わせて、横薙ぎに振るう。
同じ動作を数回。
その斬撃の全てがマッチョマンの身体の急所を深く切り裂き、純白戦士はみるみる身体を茶色く枯れさせて、小さく萎んでしまった。
…今生を終えたのである。

呪術師はペッ、と口から血を吐き出し鼻血を拭った。
マジック・ロッドに手を伸ばして、短い晶文付きの闇結界を再構築する。
「”汝、闇の領域に足を踏み入れるべからず”…」
今度の結界は、ホワイトマッチョマンたちの拳でも速攻破ることは出来ない。
ただ、パンチを繰り出すたび小さなヒビが結界に徐々に広がっているので、時間をかければ壊す事はできるのだろう。
驚愕の光景だ、と言わんばかりに、呪術師は声を出してとても楽しげに笑ってみせた。

「…くくくっ!いいな![影縛り]」

『『!』』

地面からドス黒い触手がうねうねと這い出して、マッチョマンたちのボディにみっちりと絡みつく!誰得なのか。

ついでとばかりに、呪術師はこの戦闘中に新たに取得したスキルを発動させた。

「スキル[怨増し]」

“グギャウウウウウウゥ…!!”

対象は、すでに満身創痍の腐化ドラゴン。
鼓膜をビリビリと刺激するほど咆哮を聞いたレナが、バッと従魔たちの方を振り返り見る。

ドラゴンは湧き上がる激烈な怒りに飲まれて、もはや身体の痛み、腐肉が崩れることなどお構いなしに、がむしゃらに暴れ始めていた!
おでこで力比べしていたハマルは、ドラゴンが現状を顧みずに踵を返したことで、バランスを崩して前のめりになっている。
なんとか前脚で踏ん張り、身体を地面に付けることはギリギリ避けた。

「…しっかりなさいな!
私の従魔が頭を地に付けさせられる光景なんて、見たくないわ。分かってるわね?
ハマル。勝ったら…鞭叩き!」

レナが喝を入れる。

『ありがたき幸せぇぇーーーっ!!女王様万歳!』

「「「勝ったら!?」」」

冒険者の男たちがそろってツッコんだ。気持ちは分かる。
だがハマルは確実にメンタル鼓舞されている。
…レナの魔力にも余裕はあまり無い、言葉のご褒美でもってやる気を出させる方法も取らざるを得ないのだ。
けして楽しんでいるわけではない。

ドラゴンは駄々を捏ねる子どものようにバタン!バタン!と身体を地に倒し回転させ、上位冒険者たちを蹴散らしていく。
腐った身体や血に触れたら呪いに感染してしまうため、冒険者たちは遠距離攻撃をしかけ反撃するものの、かなりの苦戦を強いられていた。
地面も血まみれなので、うっかり倒れこんでしまってはいけない。

ドラゴンの視力が回復してきていたため、リリーが[黒ノ霧]で頭部分をすっぽり覆った。

呪われた血が大地にたっぷり染み込み、姉シルフィーネが悲痛な悲鳴をあげ、爺様たちが額に脂汗を浮かべながら魔力を絞るように[浄化(パージ)]をかけ続けている。

緊迫した状況の中、再び呪術師が動く。

「お前が欲しい」

「この無礼者ッ!!」

「そうか。レナ様。これでいいのか?」

そこじゃない。
身体の側面にロッドをピッタリとくっつけるように持ち、短剣を片手に、呪術師が駆け出す!
誘拐対象のレナまでの距離は約6M。障害となるマッチョマンは7体…視界の端の魔法剣士も警戒範囲に入れておく。

▽呪術師の 短剣闘舞!

スキルなどではない、規格外な身体能力を存分に生かしたゴリ押しの力技だ。
向かってきたマッチョマンを一体一体、確実に突き殺していく。
横薙ぎに切り裂くよりも剣をただ突き出した方が動作が少なくて済むうえ、命を散らせたマッチョマンは枯れてペラペラになってしまうので、剣を引き戻す動作も必要ないのである。
こればかりは、呪術師に都合のいい展開だった。

レナの元まで、あとすこし。
マッチョマンの護衛は2体のみ。魔法剣士は近づいては来ているものの、なぜか歩みが遅い。

短剣が最後の純白戦士の命を、刈り取る…!

鞭を持った手を下げて仁王立ちしたまま、レナは上目遣いに呪術師イヴァンをキツく睨んでいる。
黒い瞳が、互いを映す。
呪術師の長身がレナを覆った…。

「捕まえた」

ニヤリと笑う呪術師。

「私に触れることを許可した覚えはなくてよ、悪党。
身の程をわきまえなさいな」

この絶望的な状況で、まるで敵わない相手に対して、まだ、このような口を叩く度胸があるとは!
呪術師はひどく愉快そうに「くくくっ」と喉奥で笑う。
そんな彼を、レナはどこまでも強気な瞳で見つめ続けている。

「まさか、もう勝負に勝ったつもりでいるのかしら…?」

「!」

レナの称号”赤の女王様”が、本当の意味でついに…目覚めた。
赤い、恐皇のローブに触れている呪術師の手のひら表面が、ジュッ!と焦がされる。
広間にまばゆい光が満ちた。

▽Next!戦いのゆくえ、赤の覚醒

 

 

 

 

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