57:ドラゴンと呪術師

イケメン呪術師をしばくため、冒険者たちは渾身の遠距離攻撃をしかける。

戦士の[斬撃波]、槍使いの[遠槍]、武芸家の[投擲]チャクラム、格闘家の[回転棍]、弓使いの[風弓]、魔法剣士の[雷剣]……

ラチェリの街まで届くほどの凄まじい攻撃音が、森に響き渡った。

ルーカの雷の光で冒険者たちも一瞬目をくらませられるが、そこは、リリーが味方のいる場所にだけほんのりと[黒ノ霧]を発生させることで視界を確保してみせた。
魔眼コンビの流れるような連携は実に見事である。
敵と周囲のモンスターの目のみを潰せたなら、それは戦いの場において大きなアドバンテージになる。

冒険者たちは青白い光と土煙に包まれた一角を睨みつけていた。
ルーカが苦い声で現状を告げる。

「…敵は結界ですべての攻撃を防ぎきりました!
反撃の可能性があります。警戒を!」

言い切って、すぐさま自らも魔剣を構えなおす。

「チッ!なんつぅヤツだよ…!
結界が張れる者は、魔法使い様と宿り木をつつんでおいてくれ!
戦闘は専門職にまかせろ。
おう、みんな!追加攻撃を仕掛けるぞッ」

「「「おおおおっ!」」」

「…そろそろ光と土煙が消えます。
敵は自身の闇魔法で視界を確保したため、眼を潰されてはいない。
ドラゴンはしばらくの間は眼が見えず、がむしゃらに動くでしょう。不意打ちが使えます」

「あんがとな、にーちゃん。
…っしゃあクソイケメン見えてきたぁ!いくぞ![斬撃波]、[斬撃波]ッ」

「結界張ってのんびり様子見とは、えらく余裕だなぁー!?[投擲]っ!」

「よくも森を穢したなー…許さねー![乱れ打ち]!」

再び、いくつもの斬撃が呪術師たちに向かっていく!だが…

「”汝、闇の領域に足を踏み入れるべからず”…[シャドウ・ホール]、拡張せよ」

「!?」

呪術師が晶文(しょうぶん)付きの特別な呪文を静かな声でとなえると、彼を守っていた黒い闇結界は数倍にその守備範囲を拡げる。
大きさは、なんと半径約4Mほどにもなった。
ドラゴンでさえ余裕ですっぽり覆ってしまう大きさである。
冒険者たちの攻撃は、闇結界の表面を滑るようにして後方の森へと受け流されて行く。
木々の倒れる音と、とばっちりに当たった運の悪い魔物の断末魔が聞こえてきた。
…自分への攻撃全てを、呪術師は完璧に防いでみせたのだ。

晶文(しょうぶん)について説明しよう。
特定の魔法・スキルを極めた才能ある者だけが、手持ちの呪文にさらに晶文を付与することができる。
詠唱時に余剰魔力で”輝く(=晶晶)”から、晶文と名付けられた。
魔力はかなり食われるが、その追加効果は絶大であり、ひとつ晶文を扱えるだけでも国に直接仕えることさえ容易く叶う実にスペシャルな技能だ。
例えば、フレイムに晶文を加えると辺り一帯を木が炭になるほどの威力で焼くことができる。
アクアの場合なら、大雨を降らし大洪水を引き起こす…などの実例がある。

呪術師は未だ焦った様子ひとつみせていない。
新人ギルド嬢が真剣な顔で「なんてクールなの…」とつぶやいているので、おそらく顔色も変えず詠唱をしてのけたのだろう。
言っておくが、さすがに彼女もこんなヤバイ現場で呑気に目をハートマークにしてはいないのでご安心を。
呪術師は器用に効果を絞って結界を少しだけ拡張したようだ。
晶文までしてこの拡張効果のみ、ということは無いはず。
少し、でこの効果…晶文の凄さがよくうかがえる。
ちなみにだが、晶文効果を数百年間重ねがけしたものがシルフィーネの精霊結界の正体だ。

冒険者たちもさすがに勢いにまかせた攻撃の無駄打ちをやめて、厳戒姿勢のまま相手の出方をうかがっている。
皆、悔しそうに顔を歪めていた。
ギラギラとした数多の目で睨みつけられた呪術師は、ローブのフードをゆっくりとした動作で脱ぐ。
…クソイケメン!!

▽冒険者たちの 怒りのボルテージが 上がっていく!

呪術師のよく通る低い声はどこまでも涼しげだった。
感情が全くこもっていない、とも言える。

「ほう。…ソレが風と水の乙女シルフィーネとやらか?
精霊はヒト族と変わらない姿をしているのだな。
ふむ。興味深い。
それとも、堕とした影響で精霊らしさが抜け落ちているのだろうか」

深緑の短髪に鋭い黒の瞳。
男たちの嫉妬と羨望をいかにも買いそうな整った顔立ちの呪術師は、首をかしげて、治療を受けるシルフィーネをじっくりと観察している。
いやらしい視線ではなく、まるで実験生物を眺める目だった。

目の前の冒険者などひたすら無視し続ける様に、戦士が「いい加減にしろ!」と荒い口調で彼を問い詰める。

「なァ。お前が、森に呪いをばら撒いてたんだよな?
…なにが目的でこんな残酷な事をしでかしてんだよ!?」

「ん。俺の目的が知りたいか」

呪術師は視線を姉シルフィーネに固定したまま、淡々と問いに返答する。
ギフトにより精神が成熟しすぎているため、まるで老齢した者のような口調だ。

「せっかくアネース王国に来たのだから、名物を観光しようかと思ってな。
精霊シルフィーネを観てみたかった、というのが主な理由だ。
だが、精霊は悪人の目には映らないと言うだろう?
だから、堕とした場合ならどうなのか…という実験をした。
上手くいってよかった。
闇職の俺にもシルフィーネの姿が見えている。
実に興味深い現象だ。
精霊が穢れに弱いということ、堕ちる存在であるということ、姿はヒト族そっくりだということを知り…俺は、とても満たされた気持ちになれた。
つまり、知識欲に基づいた行動、ということだ」

なにが「ということ」なのか…
この呪術師は対人対話センスが壊滅的なようである。
逆に、狙わずとも相手の神経を逆撫でする発言という点では神がかっていた。
冒険者たちの額にピキリ!と盛大に青筋が浮かぶ。

「おおぅ、そうかい…!?
…そんじゃあ、シルフィーネ様の御姿を目にしたお前は今すぐここを立ち去るということか?
気持ちが満たされたってんなら、そーなるよなァ!」

「先ほどは”主な理由”と発言し、シルフィーネを観たかったからだと述べた。
目的はまだもうひとつある。
できた、と言うべきか」

「ちッ!外道が……!
その腐りかけのドラゴンに関することか?」

「違う。
これは、お前たちにけしかけるために用意しただけだ。
目くらまし用としてな。
生態がすでに解き明かされている魔物に興味などない。実につまらない。
知られていない世界の仕組みを新たに知るからこそ、楽しいのだ」

「………」

なんとも無感動な「楽しい」発言もあったものだ。
あまりにぶっ飛んだ呪術師の思考を知り、冒険者たち全員がドン引きしている。
彼は、悪い意味でどこまでも研究者気質なのかもしれない。
こういうタイプは、放っておくとまた必ずろくでもない事件を起こす。
…ここで始末しなければ。
上位冒険者たちの目つきの鋭さが増した。

呪術師は、精霊シルフィーネと戦士にはもう興味が無くなったというように、ふいっと真横に視線を逸らす。
目を痛めてしまい唸り声を上げているドラゴンを見やった。

「解放してやるぞ。存分に暴れろ」

“グルウゥゥゥゥ…ッ!!”

「「「!」」」

戦士は会話で時間稼ぎをしていたのだが…それも、ここまでのようだ。
チラリと後方を見やると、さいわいにも、仲間が突貫工事で作り上げた宿り木を守る簡易結界がきちんと見えている。
これなら、戦闘での流れ弾(石)や砂埃、スキル余波を気にせず戦うことができる。

「ま、あとは俺たちがドラゴンを倒して呪術師をしばくだけということだな…!
想定してた展開と何も変わってねぇ。
ふん。上等だ。やったろうじゃねぇか!」

「「「うおおおおおっ!」」」

鎖を解かれたドラゴン、冒険者たちの怒涛の戦闘が始まった!

▽ドラゴンの 怒りの咆哮!
▽ドラゴンの 先制攻撃!なぎ払い!

ドラゴンはまず、その高さ6Mはあろうかという屈強な身体でヒト族たちを蹴散らそうとする。
太くて棘だらけの尻尾がグリンッ!と回転して数名を打ち、大きなダメージを与えた。
ドラゴンは自分を呪った呪術師、そして奴と同じヒト族たちに対して激しい怒りを抱いているようだ。
冒険者にしてみればとばっちり極まりないが、攻撃をしてくるというのなら撃退するまでのこと。
尻尾は呪術師にも当たるはずだったが、縮小した闇結界が彼を守り、攻撃をはじいていた。

「…連携いくぞ![地割り]ッ」

▽冒険者たちの 反撃!

戦士が斧を地面に叩きつけ、ドラゴンの足元にいくつもの大穴を開けていく。
ドラゴンは前足を穴に突っ込んでしまい、ガクン!と体勢を崩す。

「スキル[縫い弓]!」
「スキル[雷弓]!」

足元を集中的に狙い、弓使いたちの矢がドラゴンに突き刺さった!
硬いウロコが剥がれた部分を器用に弓が穿っている。
ドス黒い血がドバッと溢れ出て、腐臭と、雷で肉の焦げたイヤな臭いがあたりに漂う。

この穢れも精霊シルフィーネに悪影響を与えてしまうのだ…。
血が地面に染み込んだ分だけ乙女は苦しみの吐息をもらし、魔法使いの爺様たちが必死で[浄化(パージ)]魔法をかけ続けている。
妹シルフィーネも顔を青ざめさせていて気分が悪そう。

ドラゴンの身体に傷をつけないよう戦う余裕はさすがにない。
幻黒竜は上位冒険者たちにとっても、かなりの強敵なのである。
できるだけ早急に倒し、この場が落ち着いてからまた新たに浄化要員を呼ぶべきだと各自結論を出した。
冒険者として唯一 [浄化(パージ)]を扱えるルーカが、ドラゴンの攻撃を器用にかわしながら、血が特に大量に染み込んだ地面に限定して浄化を施している。

ドラゴンの、耳が痺れるほどの大きな咆哮が森に響く。
ラチェリ出身の索敵特化冒険者が声をあげる。

「…まずい!確か、幻黒竜はドラゴンブレスを使う種族だぞ。
突貫の結界は壊されかねない…!
誰か、なんとかならないか!?」

「リリーちゃんお願い。魔力多めでいくよ…スキル[鼓舞]!」

レナがリリーに一言で指示を飛ばす。阿吽の呼吸だ。

『んっ、了解なの、ご主人さま!こうだよね?
スキル[魔吸結界]ーー!』

ドラゴンがぐわっと大きく口を開け、鋭い牙を見せつけるようにしながら高威力のブレスを吐き出す!
熱のこもった光線がまっすぐに伸びて、突貫結界の上方をかすめ溶かそうとした!が…リリーの[魔吸結界]が絶妙のタイミングで重ねがけされる。
宿り木にも当たる予定だったブレスは、[魔吸結界]にぐんぐん吸い込まれて行く。

『…まけないもん!』

数秒の間、リリーの結界は見事に持ちこたえてみせ、ついにブレスを防ぎきった!
冒険者たちが歓喜の声をあげて、ドラゴンは苛立った様子で頭をふる。

吸収されなかった残りの光線だけが、はるか遠くの空に向かって消えていった。
ドラゴンの体調が万全ではなかったため、元々ブレスの威力が低かったようだ。
幸運さんのおかげかもしれない。
腐化の呪いの影響があり、無理やりブレスを吐いたドラゴンの喉内部はドロドロに膿んでしまう。
もうこの戦闘中にブレスを吐くことは叶わないだろう。

呪術師は広場の隅から、ぼうっと戦闘を眺めていた。
バタフライが[魔吸結界]を使った時だけわずかに片眉をあげてみせ、また涼しい顔にもどる。
そして、視線は…バタフライの主人に向けられた。

「…一人のんびり観戦とは、随分いいご身分じゃねぇか!」

「……」

ガツンッ!と、槍が呪術師の闇結界に突き立てられる。
[極み突き]という強力なスキルを使ったのだが、結界はびくともしない。
槍使いは引きつった顔で舌打ちをして、[三点突き]、[回転突き]と攻撃を繰り返していく。
武闘家、拳闘師も加わり結界を壊そうとスキル攻撃をするが…敵の鉄壁の防御はどこまでも揺らがない。
感情の抜け落ちた顔が、必死な形相の冒険者をバカにするでもなくただ見つめた。

「さすがに、うっとおしくなるな」

「「「!?」」」

呪術師がかなり高価そうなマジック・ロッドを一振りすると、三名の腕にチクリとした痛みが走る。
黒い闇の針が数本突き刺さっていた。

「スキル[腐化の呪]」

冒険者たちの指先から手首までがほの黒く染まり、ところどころ膿み始める。
このまま放っておけば指が腐り落ちてしまうだろう。
痛みをこらえる呻き声があがった。

「[腐化の呪]は普通、触れた者にしかかけることができない。
しかしこの杖はスキルの遠隔化を可能にするのだ。
良い品だろう?
魔道具を収集することに長けた知り合いがいてな」

「…んなこと、聞いてねぇッ!どうでもいいわ!」

「すぐ怒鳴る。実に短気な者だ」

逆撫で名人、の称号でも与えてやりたくなる手腕だ。失礼。
呪術師は激しい戦闘を繰り広げるドラゴンと巨大ヒツジを横目でチラリと見る。
現在は、突進攻撃をしようとしたドラゴンとスライムガードを額に貼ったハマルがおでこで力比べをしているところ。
ずり…ずり…と、徐々にだがハマルが押されている。
種族、レベルの差はとても大きい。
ハマルという個体がかなりアレなので忘れがちだが、ヒツジモンスターはもともと戦闘向きではないのだ。

頑張れ!頑張れ!と一生懸命ハマルとスライムを応援しているご主人さまは、呪術師に背を向けた状態。
時たま呪術師をチラ視して思考を読んでいたルーカが、ハッとした様子でレナに向かって叫んだ。

「ーーレナ!呪術師は貴方をねらってる…!」

「……ええ!?」

[並列思考]ギフト持ちの呪術師の思考は実に読みづらく、何通りものパターンの中からルーカがレナの危機を察した時には、もう彼は動きだしていた。
せめて進行を阻もうとルーカが足を踏み出すが、風を纏った呪術師のほうがよほど速い。
それどころか、[影縛り]の魔法を使ってルーカの足をその場に縫い付けてしまった!
一体、いくつの魔法を扱えるというのか…!

ハマルとスライムたちは動けない。
リリーも先ほどの全力の[魔吸結界]でかなり疲労してしまっており、翅をパタパタと必死で動かすものの、呪術師に追いつくことはできなかった。

青ざめるレナのすぐそばに、呪術師が圧倒的な存在感をまとって降り立つ。
レナと自分だけを囲う大きさの[シャドウ・ホール]を出現させる。

「称号[話題のイケメン]セット」

そしておふざけとも思える称号をおもむろにセットした。
なぜだ。
レナは不気味な者を見る目で、背の高い呪術師を見上げている。
彼は今まで見せたこともない爽やかな笑みを顔に貼り付け、少しだけ高めの声でレナに明るく話しかけた。

「お前を旅の友として連れていきたい。俺と一緒に行かないか?」

この称号の効果は”周囲の注目を集める、モテ度3割増し(当社比)”。
きらめく笑顔を見てしまった新人ギルド嬢は「はうッ!」と幸せそうな断末魔をあげて気絶し、呪術師をうっかり見てしまった冒険者の男たちも一瞬だがポッと頬を染めている。
そののち、俺はなにを反応しているんだ…!?と、悲痛な声をあげていた。
なんて恐ろしい称号なんだ。

そして話題のイケメンにまっすぐに見つめられたレナはどうなのかと言うと…うわ気持ち悪っ…と考えていた。
無遠慮にジロジロと自分を観察する光の宿らない濁った目と、無理やり爽やかぶった笑顔がアンバランスすぎて気持ち悪い違和感しか感じられなかったようである。

レナの乙女度は限りなくオカン寄り。
そのうえ、イケメンも麗人も美女も美幼児もかなり見慣れている。
ぶっちゃけ、顔の作りもオーラも息子モスラの方がイケメンだもん!と…心の中ではいつもの親バカぶりを発揮していた。
このタイミングでレナの思考を覗いてしまった運の悪いルーカが、腹筋を押さえてプルプルしている。

イケメン効果に反応しないレナを見て、呪術師はおや?と首を傾げながらも、つらつらと話を続けた。

「以前、呪ったツツツキをけしかけた時、お前はまるで精霊シルフィーネがそこにいるかのように話しかけていたな?
そして、お前を守るように不思議な風が吹いた。ツツツキの攻撃は防がれてしまった。
精霊が見える特別な人間なのではないか…と考え、興味をもったのだ。
お前がいると有意義な旅になる予感がする。
だから、俺と共に来い。
そうしたらこの場を引いてやる」

にっこり、と笑みを深める呪術師を見て、レナはゾッと背筋を凍らせる。
呪術師イヴァンが、興味を持った、と言った…。
彼は知識欲を満たすためならどんな残酷なことでもしてのける男だ。
風魔法[ウインド]で、レナの以前のごく小さな呟きを拾っていたらしい。

…どうしよう!とレナの気持ちが焦る。
この人と一緒に行くなんて、絶対に嫌だ。
どう答えれば自分にとって最善の結果が導き出せるのか…必死で頭を回転させる。

「ゆっくり待つのは嫌いではない。
が、あまり長引かせるとお前の従魔が持たないぞ。
まあ、俺としてはあの魔物らは潰されようがどうでもいいが。
素直にこの手を取ってほしい。
無理やり引きずって連れて行くのはかなり面倒くさい」

あまりに暗い目を真正面から見てしまい、うまく言葉が出て来ず、レナは瞳を潤ませる。
ふざけたことを言うな!と、言い返したいのに…!
こういう時に、使えるものが、なにかなかったか…。
レナの桜色の唇がうすく開く。

「…称号[お姉様]、[赤の女王様]セット」

「ほう?」

▽キターーーーーー!

これらの称号は、レナの心の内を強気な言葉で(無理やり)表してくれるものだ。
初めて聞く称号、目の前のいかにも弱そうな少女が女王様?という点が呪術師の好奇心をわずかに刺激し、動きを止めさせた。

不躾な目に見下ろされながらも、[お姉様][女王様]が目覚める。
大きくてパッチリした黒い瞳には覇者の風格が宿り、堂々とした動作で赤いローブの裾をバサッ!と華やかにはらってみせた。
唇の端を勝気にきゅっと上げて、とてもキレイな笑顔で呪術師に右手を差し出す。
呪術師は驚いた様子で「そうか」と少しだけつまらなさそうに言い、そして満足した表情になって、自らの左手を差し出した。

互いの手がついに触れ合う、その瞬間。

バシッ!!
と、レナ様は悪党の手を思いきり払いのけてみせる。
可憐な少女らしい声が高飛車に言葉をつむぐ。

「一体何様のつもりなのかしら…。頭が高くってよ!!」

場の空気が氷点下にまで凍り、ルーカがついに堪えきれずにぶふぉっと吹き出し、従魔たちが「女王様万歳!」と高らかに口にした。

▽Next!女王様のご返答

 

 

 

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