367:神未満と話し合い

 

「まさかあなたが、あの、光の人型の中でもまとめ役のような、どっしり構えていたその人だったなんて……比較的尊敬していたのに……」
「やめろおおお!そんな目で見るなあああ!」
「見られないとでも思っていたんですか?」
「……」
「やめときなよ主さん。この岩魔物じゃなくて自分のためにね。またマゾヒストを増やすよ」
「従える気もないのでしょう?ですよね?」
「うちのパーティにやってきたら一番下になるから嫌だよな、ほら、嫌って言って」
「おやめさない三人ともチンピラみたいになってるからね?」

レグルス・オズワルド・ジレがジト目で絡んでいる。
主人が、衣装を焦がすほど頑張ってしまったので、イラっとしている気持ちのやり場が必要だったのだ。

▽もこもこ着膨れているレナを見て癒された。
▽あれ自分たちの上着なんです。
▽トラウマが根深い。

「マスター。おそらくこのダンジョンは”私室”のようなものです。外では立派に見える人ほど、私室ではだらけていたりするでしょう? 例の光の人型|(ケッ)というのは外面だったのですよ。根っこの部分はこんなにも繊細|(フフッ)だったのです」
「モスラみたいに分析する役割も従魔パーティには必要だったんだよね、きっと。キラ、請け負ってくれてありがとうね」
「世界はバランスでできています。光栄なことですよ」

キラは整った笑みを浮かべた。

▽しばらく不在にしていると役割を取って代わられるぞ、気をつけろ!
▽主人愛重症を克服して早めに復帰を遂げようね、みんな。

(絆、か……。見ているのもキツイ……)

ダンジョンマスター・リヨンは打ちひしがれる。
こんなときに支えてくれる身内は彼にはいない。

もともと相方であった聖霊は消えた。
ダンジョンモンスターたちを制御するには制御室に行かなくてはならない。
自らの意思で行う以外は、助けてくれるものなんてないのだ。
その意思でさえ、レナに「昔ながらの教えに従順なだけなのでは?」と言われてグラグラしてきている。心が弱っているときにはどんなに強硬な意思であっても揺らぐことがある。
一ヶ月間、従魔たちの忠誠心が暴走していたように。

だんだんと鎮火してきた白炎を見ながら、レナがつぶやく。

「私、あなたに尋ねるつもりだったんですけどね。神様ってどうやって育てたらいいかな?って」

ひょっこりとマシュたんがキラの腕の中から頭を出す。
まだまっさらだ。
さっきまではキラキラした白炎を触りに行こうとしてしまいキラに拘束されていた。

何が良いのか危ないのかわからず、言われたことを素直に吸収するばかり。これまでだってレナの側にいて「従えて」を当たり前のように覚えてしまったが、はたして神様育成にはそれが適切なのか? 分からないから前例としてリヨンたちを参考にしようと思っていたのだけれど。

「けれどまさか神未満という存在だったとは〜。じゃあマシュたんの育て方ってよくわからないのかも」

(その通りだ)
そんなことを考えつつも、リヨンは(どうやってこの会話の主導権を握ろうか)と検討している。
神様未満であれ、この場でダンジョンマスターの発言といえば最重要といっても過言ではないのだから。

苔岩がもぞもぞしたので、レナは念を入れて、縄をギュッギュと締め上げた。締めやすいように端っこは外側にすこし長めに垂れている。
(俺が編みました)とレグルスは得意げになったり、レナに構ってもらえるダンションマスターに嫉妬を覚えたり。

「まあこれは後にして」

「後にぃ!?神のこと後にぃ!?」

思わず素っ頓狂な裏声が出てしまったリヨン。古岩が軋むような擦れた音がした。
だってあんまりにもあっさりとダンジョンマスターを軽視するものだから。心が大揺れだよ。

大地が揺れて、おっと、とレナがよろめいた。

▽従魔たちが支えてくれて、美しき支え合いのおしくらまんじゅうが完成した。

「んー、優先順位つけるのって実はわたしあんまり得意じゃなくって……どう思いますか?魔王様(と書いて直感とよむ)」
「我の出番だな!」

嬉しそうだ。白炎に焼かれて穴あきだった高級服のボタンが「パァン」と内側から弾けて、上半身が裸体になった。

「ここまで派手に動けば、聖霊の片割れとやらももう出てくるのではないか? なにせ片方がそんなに会いたがっているのだ。もう片方も似たようなもののような気がする」

「なるほど。世の中には、双子なのに性格が全く正反対!ギャップ萌え、双子だから同じようなことを交互に話す!リンク萌え、などありますが──どちらにしても、片割れには特別な感情を抱いているものですからね」

キラの分析にやたらと説得力がある。
と感じるのはレナが[物語の主人公]であるからして、お約束というものの理解をしやすいからだろう。

レナはたくさん被せられた服の前をそっと開いて、すると幼女サイズのカルメンがすっぽりと収まりつつ見上げてくる。
そうなのかな?あちらも自分と会いたいかな? と不安そうに、|緋々色黄金(ヒヒイロカネ)の瞳が潤んでいる。

▽ここでそのピュアさはずるい。
▽レナはお子様に弱い。

「カルメン。ここで私たちが一緒になったこともきっと運命だから、探すのを手伝う。それが終わったらまた暮らしてくれる?」

(氷の聖霊にはアレだけ凍土を勧めておいて我には赤の聖地を望むと……?と・く・べ・つ。きゅうううん!)

ボッッッッッッッ、とカルメンが白炎を立ち上らせた。
仮契約をしたレナでもさすがに熱さを感じるほどで、みんなの上着が消し炭になった。

これによって、レグルス・オズワルド・ジレも上着のない完全水着姿での攻略を余儀なくされた。
波に乗るべくキラも脱いだ。

「あっつあ!!うわぁみんなの髪がほとんど白になってる」
「聖霊につられるみたいですね」

オズワルドたちは白炎色に髪を煌めかせながら、熱に耐えている。

<従魔:レグルスのレベルが上がりました!+1>
<従魔:オズワルドのレベルが上がりました!+1>
<従魔:ジレのレベルが上がりました!+1>

「我のマントの下に隠れるんじゃない、図々しいぞ、ドリューよ」
「オレだって嫌ですよ魔王様裸体ですもん、でもあれ、流石に熱気をあびたら焼き魚になりますってぇ! ホラみて下さいダンジョンマスターが所々金の像みたいになってる」

「なぜこうなるのだぁ!?」

「何を叫んでいるのやら。正面から戦えば傷を負うのは当たり前だというのに。もしや後方にいて罠ばかり使うタイプのモンスターだったのか? であれば良い経験を積んだな! ふはははははは」
「魔王様が魔王様としての素質がありすぎるよなぁ」

「レナさま」

カルメンが小さな手でレナの手を掴む。契約をしていなかったら、ここでレナの手そのものが消し炭になっていたに違いない。レナがヒクヒクっと頬を引き攣らせた。シンプルに恐ろしい。笑顔は気合い。

「我はそばにいてあげる。だから帰るね」
「うんっ」

(──あ、世界の情報が歪むのでカルメン様は七日目までに仮契約解除して下さいませね)

キラがそのように横槍を入れようとしたときだった。

熱されていた岩が砕けて──どばんっっっっっ!!
外部の海水が流れ込んできた!

海底ダンジョンは稀に外部の”海底のどこか”と繋がり、海水や砂・岩・珊瑚や財宝を運んでくる。

それが今、起こったようだ。白炎であろうとも激流でねじ伏せるようにして、押し寄せてくる。みんなが一瞬で波に飲まれた。

そのときレナとカルメンは、ギィィンと金属が擦れる音を聴いた。

『姉上えーーーーッッ!』

本当にあっちからやってきた。と思った時にはレナは海流によって意識朦朧としていて、さいごにドリューが進化する光をみた。

 

 

 

 

 

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