354:レナもダンジョン行きたいもん!!

 

(ドリュー視点)

この腑抜け猫娘(レグルスゥ)!!!!

レナさんに会いたかったのはわかるけど骨抜きにもほどがあるって。

それからさー、

「勝手に決められちゃ困りますよ……ミッションは魔王国司令ですし。というかペラペラ話していい内容でもないんですけど。当事者であろうとも、ちょっと上官の許しがないことにはね〜」

「ドリュー」

「というかレグルスもここに入室するの、顔見るだけって話だったんだからな。遠征前にたまたまレナさんが起きて、ちらっと挨拶したらもう行く予定だったじゃん?」

「不可能だ、ドリュー」

「まあ見てたら分かったけどさあ、分かっちゃだめなやつなんだよぉぉ……」

レグルスめ、顎の下を撫でられてゴロニャーン。
服の裾を掴んでまで離れようとしやがらねえ。
レナさんを連れてくつもりが満々だな?

んー、話す矛先を変えよう。

近づいて見下ろすと、レナさんはあまりにも小さい。
こぢんまりと上目遣いに見てくるのは、なんだか子リスって印象だよなあ。
従魔たちを率いていたときには、あんなに大きくしっかりした存在感だったのにさ。

これ、連れてって大丈夫じゃないだろ。

「レナさん、ご無沙汰しています。ドリューです」
「ドリューさん、お久しぶりです……! なんだか雰囲気がすごく変わりましたか? しっかりしてるっていうか、芯があって頼もしくて大きく見えますねっ」

欲しい言葉を探してまっすぐに与えるプロか??
あ、やばい、久しぶりにそんな風に褒められたからちょっとにやけてしまう。
これだから魔物使いに絆される従魔外のやつも多いんだろう。絆す本質をわかってるヒト族が、魔物使いになれるそうだから。ルージュ館長からそう聞いた。

「俺も背が高いですけど!?」

レグルス、張り合うな。
尻尾白炎で燃えてんぞ。
急に抱え上げられてレナさん悲鳴あげてるから。

<私も硬質さなら負けませんけどお!? ダイヤモンドも真っ青になる硬度に創造中……創造中……>
「キラーーーーーっ!」

キラさん、そこ求められてないと思います。
一瞬で体作り変えられるって何者ですかね?
ほらレナさんガチの悲鳴あげてるから。

「レナ様、もっと大きな声で俺の名前も呼んでください」
<ずるいですずるいですーっ>

…………レナさん困ってる。

これまで従魔がずるいって言ったこと、なかったんだっけ?

従魔契約っていうのは、複数の従魔が暴走しないように、感情の高ぶりが総じて「友情的な好意」に感じられるらしい。しばらく契約魔法が薄くなっていたから、キラさんやレグルスには一ヶ月間の感覚が残ってるんだよ。

こんなやつら全員の制御とかほんとどうなの……できるのか……?
オズワルド坊ちゃんも荒れてたし……。

「二人とも?」

どっちも大好きだよ、くらいで収まるもんスかねえ。

「スキル[従順]落ちついて。ひとつだけあげる。欲しいものはなに?」

「……。……また、レグルスのことを頼ると、仰って頂きたいです」

<私にもたくさん話しかけて下さいぃぃ。マスター・レナの新しいお言葉も息遣いも行動も、すべて録音録画したいので御座います>

は!? こうきたか!

そっか、たしかに、望んで従魔同士で喧嘩するわけない……か。
オズワルド坊ちゃんは荒れてたけど……。

レナさんはとびきりの笑顔を作ってる。
俺がみても「ぱあああ」って感じだし、これ従魔にとっては希望の輝きってレベルなんじゃないか?

「いいよ! レグルスのことを頼りにしてるから、魔王国に打診をするの手伝ってくれる?」
「仰せのままに!」
<マスターが主導となってサディス宰相にOHANASHIなのですね! いっぱい録音できるヤッターーーッ!>

こらあああああああっっ!?

「いいですか、身内だけで決定しちゃダメ!!」

ふりだしに戻る、だ。
レナパーティと話していると時間が溶ける。
ついでにノリもレナパーティらしく染まる。

なーんにも進んでないのに、なんだか全部上手くいきそうな気がしてきちまう。

ほんと、この一ヶ月で俺も成長したと思ったのにさ、せっかく肩肘張ってた緊張がぜーんぶ抜けてっちまったんだけど。どーしてくれんの?

こういうときに、魔物は「してやられた。従えられたい」って思うもんだって、そうして戦わずして意識を変えられるのは上級魔物使いなんだって、ルージュ館長が言ってたなあ……。
あの人もレナさんいない間暇だったらしくて、俺たちに魔物使い学をめちゃくちゃ説いてきたから……。

レナさんがビミョーーに頷きに当てはまらないくらい首を傾けたけど、しっかり言質もらうまで逃がしませんよ。この場を任してくれたロベルト隊長とクドライヤ|さん(・・)に叱られちまう。

「身内だけで決定しちゃダメ」
「どうしても?」
「ダメ!」
<マスタァー♡ サディス宰相に連絡とりましたぁ♡ さらに最新通信技術のセットアップ完了で御座いますぅ♡>
「えらい・えらいね・ちょうえらい!」
<三段活用……!ごちそうさまです永遠にリピートします>

もおおおおおおお!

(レナ視点)

無茶を通してるとは思う、ごめんなさいー!
けどやれる時にやれることをやっときたいので、後ろ盾を頼らせてもらいます。

一ヶ月経ったけど、きっと魔王国のみなさんは以前のようにいてくれる……よね?
……甘いかなあ。
こんな時、相談できる仲間も共感してくれる仲間も脅してくれる仲間も、遠くにいるから正直心細い。
けれどだからって私が動かなかったら、進まないから。

頑張ろう、私。

私にとっての一ヶ月は光の中の一瞬だったから、どんなふうに従魔に頼ったらいいか、まだよく覚えてる。
みんなの様子はちょっと変わってるけど、私の話を聞いてくれる余裕があるなら、なんとかなる。ううん……従えてあげましょう──。

服の下で「マシュたん」がもぞもぞしてる。
いろいろ話がまとまるまで、もう少し待っててね。
あなたのことをこれから育てるにあたって、ダンジョンにいるであろう神様に聞いたら、きっと為になるはずだから。

それにカルメンも心配。カルメンがたった一人で戦うところを見たことがないし、海水ダンジョンでどれだけ活躍できるかわからない。早く迎えに行ってあげよう。これだけは私のところに置いていった、白炎聖霊杯(カンテラ)を持って。

「キラー。サディス宰相も元気そうだった?」
<激務続きでずたぼろって感じでしたね>
「あの宰相が……!?」
<しばらくエリクサー頼りの環境だったせいで、つい仕事を受けすぎていたようです>

な、なるほど。
影蜘蛛のトップをも乱れさせるエリクサーの効能よ……。

<またエリクサーを差し上げる代わりに、このたびの連絡を承認してもらいました>
「宰相の時間をエリクサーで買ったんだね。あちらの時間をキラが高評価してることがわかったよ」
<マスター……! ちょっと、叱られてしまうかもと思っていました……>

キラはそれが欲しいわけじゃないからね。

「欲しいというから取引するまで。貰うかの判断はサディス宰相次第じゃないかなあ。本当に崩壊しそうなら本人がやめると思うし、それでも落っこちそうなら魔王様も止めてくれそうじゃない?」
<魔物をよく見ている、10000000点!>
「いえーい」

あ、ドリューさんが白眼になってる。
レグルスがゴロゴロ喉を鳴らしてる。可愛い。

<サディス宰相とは短文のやりとりになります。ご了承下さいませ、とのこと>
「はーい」

パッと、キラウィンドウの画面が切り替わった。

後ろ姿の宰相が映ってる。
それだけでもなんか苦労がうかがえるっていうか、肩幅がなんか狭くなったような気がするし、髪のツヤもなく……あ、白髪発見。元気がなさそうに見えるのは主に姿勢が悪くなっているからみたい。前かがみで、髪をくくった首の後ろには爪で引っ掻いたような跡もある。ストレスかなあ。

ぱち、と瞬きした時に、私の瞼が引きつってびっくりした。
一ヶ月くらいずっと瞼をつむっていたからか、目の乾燥をよく感じる。
あ、それ以上に、私が目を見開きすぎていたかもしれない。だってルーカさんがいないと思うと、視定めるのも自分でやらなくちゃって……ほどほどにできる分だけ、していこうっと。

『魔物使いレナ様?』
「はいっ、そうです。サディス宰相、お久しぶりです」
『──一ヶ月間眠っていたことへの、ご自覚は?』
「えーっと、自覚は正直ありませんでした。気絶して、夢を見ていたような。そして目覚めてからは体力の低下以外は変化なしです」
『……夢を。そうですか、まず、お元気ならなによりです』
「ありがとうございます!」

ぺこーっとお辞儀したんだけど、サディス宰相あっち向いちゃってるからわからないよね。
いや、気配は感じられたらしくて、片手をあげてくれた。

どうして背面なのかはあとでキラに聞こう。
今、時間がないらしいから。
顔見せないのはやつれてるからとか、キラがカメラの位置を変えてるからとか、そんな事情だと思うし。

「レグルスたちがダンジョン[深海の遺跡]にカルメンを探しに行くと聞きました。私も同行したいんです」
『そちらにいるメンバーはなんと?』
「ドリューさんはダメだって。レグルスはいいって」
『レグルス・カーネリアン。なぜ許可をしましたか?』

宰相の声がグッと低くなって、押し潰されそうな重圧を感じる。
ちょ、脚がガクガクになってきた。
衰えた筋力と、そして宰相が本気で圧をかけているのがわかるから……。

レグルスが私の腰に手を添えて、支えてくれた。

「申し上げます。従魔としてレナ様の魔物使いのスキルを受け、ステータスの向上を実感しました。あちらにいる聖霊カルメンにアプローチするには、彼女が居ることが強力な武器にもなります。なんとしてでもカルメンを取り戻したいところですが、ダンジョン[深海の遺跡]は強力なダンジョンモンスターも多く、我々でも全滅の可能性がありましたよね。総合的に見て、レナ様がいらっしゃることを推させて頂きます」

『そこに、従魔としての”一緒にいたい”私欲は?』

「……あります」

『であれば必死に魔物使いレナ様を守るのでしょう。その行動を信用しようと思っています』

なんと!
わりとすんなりと許してもらえた。

『レグルス・カーネリアン。ここひと月の間、魔王様とも手合わせをできるようになりましたね。あなたの実力を認めております』

「あ、ありがとうございます」

レグルスの声に、グッと熱さがこもってる。
そっか、頑張っていたんだね。

レグルスの手の甲をそっと撫でた。

よーし私も。

「行く先にダンジョンモンスターがいるんですよね? だったら魔物使いの[仮契約]が有効活用できます」
「『!!』」

従魔がこんなに決意してるんだから、私だってやらなくっちゃ。

従魔契約は自分が扱えるぶんだけ、大事にできる子だけ、その気持ちは変わってない。

できるだろう、って今なら不思議と思うんだ。

どうしてだろう? 昔はどうして、あんなに怖かったのかな。私なんかの手に余るからって思いつめちゃってた、ガララージュレ王国で追われたことがとっても怖かったからかなあ……?

ぽっかりと失ったような胸が空いた感じがあるんだけど、それを振り返ってさぐるのはあとにする。

『それほどのお覚悟がおありですか……。全員帰還率がグンと伸びたような気すらしますね。ちなみに、従魔のメンバーはどのように? こちらにオズワルドがいますが』

がったんごとん、ドタンバタン、と何かが落ちたような音がする……え、なに?

▽Next! ホログラム顔合わせから始めて主さんに慣れようぅぅぅおおおあああああぁぁ慣れることができるかよ慣れたいッ!!!!

 

 

 

 

 

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