35:可愛いお花を作ろう

トンデモフラワーをたくさん作り出してしまった翌日。
レナ達とパトリシアは、可愛い花を創るためのアドバイスを求め、とある女の子の元を訪れようとしていた。

彼女らの目の前には、壁に緑のツタを這わせた趣(おもむき)のある大きな洋館。
以前、レナ達がペットのアゲハ捜索を手伝ってあげた、天涯孤独の少女が一人きりでここに住んでいるはずである。
彼女は、アリスという名前の、オレンジ髪の快活な女の子だ。
亡くなったお爺さんの育てていた花を今も大切に守っている、花好きで可憐な彼女。きっと残念乙女2人よりかはアレンジメントのセンスもあるだろう。
そう勝手に想像して、ご主人さま達は心に不要なダメージを負っている…のは、余談か。

洋館の前の大きな門の前で、まずパトリシアが唖然と呟く。
レナも口をポカンと開けていた。

「ここ…なのか…?本当に?」

「えーと…そうみたいだよ。
この間教えてもらった住所に間違いが無いなら、このお屋敷のはず…。
おっきいよねぇ」

『『『すごーく大きいですー!』』』
『……むにゃーー…』

「だなぁ。コレ、私らが入って大丈夫な所なのか?」

「た、多分…」

レナ達が尻込みするのも無理はない。
そもそもこの辺りは高級な住宅ばかりが並んでおり、なおかつ、アリスの記した地図のお屋敷は他の家々とは明らかに格が違ったのだ。
古めかしくも、とても手の込んだ豪華な造りで、庭も広々している。
花壇でない所に草が伸びかけているのは、幼い少女一人では広い庭の管理が難しいからなのかもしれない。

「リリーちゃん…お願い」
『はーい、任せてなの、ご主人さまっ』

レナがリリーに遠慮がちに声をかけると、彼女は心得たとばかりに蝶の姿になり、屋敷の壁をヒラヒラと飛び越えて行く。

モスラに声をかけたらしく、魔物になりかけの賢いアカスジアゲハと、それを追うアリスがすぐに屋敷の外に現れた。

「…あっ!お姉ちゃん!」
「久しぶりー」

どうやら、地図は間違っていなかったらしい。
一瞬疑ってしまったことを心の片隅で詫びつつ、レナ達はホッと息を吐いて、家主の案内で大きな門をくぐり、お屋敷へと入って行った。

***

お屋敷は2階建て。
部屋数はそこまで多くは無いが、一つ一つがやたらと広くて、客間らしきものまで存在した。
廊下には、レナたちではもう価値の分からない、すごーく高そうなオブジェがたくさん並んでいる。
白~茶色、時たま差し色の深緑で統一された館内は、随所に金の装飾も施されておりとても豪華で上品だ。
残念乙女二人は完全に雰囲気にのまれて、縮こまっている。
アリスはそんなお姉さんたちを見て、クスクス笑った。

「ビックリした…?お姉ちゃん。
私を孤児院から引き取ってくれたお爺さんって、装飾品専門の有名なバイヤーだったのよ。
とってもお金持ちだったの。
お客様からの要望に応じて、より良い品を見極めてお取り寄せして、顧客間の橋渡しをするのがバイヤーのお仕事。
孤児院から私が引き取ってもらえたのは、[鑑定眼]ギフトを持っていたからなんだ。
後継者を育てたかったんだってー。
お爺さんの子どもたちは[鑑定眼]を受け継いでいなかったから…今は、貿易の仕事をしているよ」

「そ、そうだったんだ」
「へぇー……そういう世界の事はよく分んねぇわー…」

あまりに大人びた物言いをする少女に対して、人生の転機が訪れるまではのほほんと育ってきたお姉さん達は、ドモリながら返事をしている。
10年と少ししか生きていない女の子が口にする小難しい単語群に驚いていた。
幼い彼女の人生には、すでに様々な出来事が起こっていたようだ。

「ふふっ。
…完全に善意だけで引き取られたわけじゃなかったし、商業のお勉強は難しくて厳しかったけど…お爺さんとは、すごく仲良しだったんだ。
モスラにも出会えたし。
育ててもらえて、感謝してるの!
だからお姉ちゃん達、そんなに複雑そうな顔しなくても大丈夫だよ?」

「ご、ごめんね…?
いや、アリスちゃんが大人っぽすぎてビックリしたんだー。
この間モスラを探してた時とはずいぶん雰囲気が違ったから」

気遣いのセリフと大人びた苦笑までおくられたレナは、慌ててフォローを入れた。
驚きからくる反応を、同情と受け取られたかと心配したのだ。
住む世界が違いすぎると感じたパトリシアは、額に手を当てて、もはや天を仰いでいる。

対するアリスは楽しそうにクスクス笑っているので、どうやら自らの外見と中身のギャップを自覚して発言しているらしい。
またしても、レナはクセの強い人物との縁が出来たようだ。

アリスは少しだけ顔を赤らめて、照れたようにほんのり微笑む。

「…この間は、モスラがいなくなって気が動転してたから、小さい子どもみたいに話しちゃったの。
助けてくれて本当にありがとう、レナお姉ちゃん!
モスラはどんな高級な美術品よりも、お金よりも、私にとっては価値のある大切な存在だから。
報酬はどれだけでも払うつもりだったけど…手を差し伸べてくれたのは貴方だけだったね。
心から感謝しています…!」

綺麗な淑女の|お辞儀(カーテシー)まで見せられてしまったレナ達は、顔を見合わせてもはや苦笑いしている。

「可愛いお花のアレンジメントだったよね?
私にまかせてっ!」

確かな美的感覚を持つアリスは、[品種改良]の最高のアドバイザーになってくれそうだ。

***

所変わって、ここは広ーい客間。
レナとパトリシアはなぜかソファの上で正座していた。
彼女らの前の机には、昨日おふざけで作ったえげつない性能の花の種が複数置かれており、それらの説明を聞いたアリスからお説教を受けているのだ。

目尻を釣り上げるオレンジ髪の女の子は何とも可愛らしかったが、その小さな口から出る言葉は実に辛辣(しんらつ)である。
痛いところを、容赦無くチクチク突いてくる。

「まず…この花の種は、普通のお花屋さんで売られているような代物じゃないよね?
それは、分かっていますか?」

「はい…」
「お、おっしゃる通りです…」

アリスは本気(マジ)になると敬語が出るタイプらしい。
ますます、年相応の子どもらしさがなくなっている。

「どうして売られていないのか…?
珍しい種の掛け合わせだからというのもあるけど、単純に需要が無いからです。
花を売る商店を開けば、そこに集まるのは花を買いたいお客様でしょう?
例えば、お祝い用とか、庭を飾るためとか…花を買いに訪れてくれる理由を、店員はしっかり想像しなくちゃいけない。
武器や劇物を求めてお花屋さんを訪れますか?」

「「行きません…」」

「おもしろグッズ専門店をやりたい訳じゃないなら、お客様に必要とされるきちんとしたお花を創りましょう。
経験値を上げるための作業だったからこれくらいいいでしょう、という考えは、言い訳だと思いましょうね。
時間は有限なの!
お花屋さんを早く開業しなきゃ、パトリシアお姉ちゃんも収入が確保できないし、生活出来なくなっちゃうよ?」

「「その通りでございます…」」

もはやぐうの音も出ないオトナ組は、がっくり頭垂れて、深く反省しているようだ。
アリス…恐ろしい幼女である。
お爺さんから受けた高度な教育により、彼女の思考はもう立派にバイヤーとしてやっていけるほど自立していた。
開業できるのは普通なら成人してからだが、有名バイヤーのお爺さんがアリスを後継者として認める旨(むね)の書面を遺したことから、数ヶ月後にある商業取引試験にさえ受かれば、幼いアリスが起業することも出来るらしい。

起業を心待ちにしている顧客もすでに大勢いるとか。
特に親しい間柄のお客様とは、お爺さんの商取引に付いていって顔合わせも済ませてあった。
各国の要人や富裕層など、商売人からすると垂涎ものの面々が、将来の取り引き先として名を連ねている。

子どもらしからぬ苦笑をして、アリスは、掛け合わせのアイデアをスラスラと口にしていく。

「えーと…まずオススメなのは、ラッキークローバーの色をピンク色にする組み合わせかなぁ?
ピンクのチューレを掛け合わせるといいと思う。
四つ葉のクローバーは女の子なら誰でも好きだから、より女の子ウケする色に改良してみよう。
次は…シミールゴールドの香りを変えたいねー。
花自体はすっごく綺麗だから、普通のローズと掛け合わせるのはどうかな?」

「うわぁ…なんか、マトモだーー!」

「だなー。
聞いただけで、もう、すごく可愛い花が出来る予感がする…」

「もう。
結構思いつき易いアイデアだと思うけどなぁ?」

それは、一般的な思考を持つ乙女の場合なのである。
サバイバル生活に随分馴染んでしまった異世界人レナさんと、もともと漢前(オトコマエ)なパトリシアとでは、このような組み合わせは思いつけなかった。

アリスのアイデアにより生み出された、新種の可愛らしいお花を紹介していこう。

・ハッピークローバー(株には必ず四つ葉のクローバーが混じる。葉の色は桃色、花は白)

・ビューティゴールド(とても大きな大輪の花をつけるマリーゴールドの一種。バラの様な香りがする)

・くるくるレンゲ(茎から上、花の部分がくるくると風車のように回るレンゲ。グミのような甘酸っぱい香りを周囲に拡散させる)

・カーテシーローズ(蕾(つぼみ)状態の花弁に触れると、まるでお辞儀をするように優雅に花が開く。数分でまた蕾(つぼみ)に戻る。色はルージュ・レッド、ミルキーピンクの2種類)

…などなど。
ハッピークローバーの葉の色は、結局チューレではなく唇花から色を移した。
マトモな花の種が出来るたびに、パトリシアは感動したように「おおっ!」と声をあげている。
アイデア力は無くても、可愛いものが好きなのだ。
頬を淡く染めて、自らの作り出した花の種を熱く見つめていた。
[花鑑定]を使うと、花が咲いた時の姿が脳内予測できるらしい。

いくつかの種を乙女たちが創りあげた所で、門に備え付けてある鐘がカランカランと高い音を響かせ、郵便物が届いたことを知らせる。

アリスは一言お姉さん達に断りを入れると、モスラと愉快な従魔たちと共に部屋を出ていった。
従魔は、モスラと短時間で随分仲良くなったようである。
アカスジアゲハが魔物に進化するのもすぐかもしれない。

にぎやかな魔物たちが立ち去って、静かになった部屋の中で、パトリシアは頬を染めてレナを見つめた。

「…私も、何か、可愛い花を創ってみたいなぁ。
オルキス・シミアとオジギソウの組み合わせとかって、レナはどう思う?」

どうやらアリスの生み出す可愛い花々のアイデアに、創作意欲を刺激されたらしい。
レナはニッコリ笑うと、賛成の言葉を贈った。

「うん!いいと思うよー。
オルキス・シミアって、あのゆらゆら揺れてたコビト型の白いお花だよね?
コビトがお辞儀したら、きっと可愛いと思う!」

「そ、そうだよな…!」

パトリシアはレナの言葉が嬉しかったらしく、鋭い瞳を優しげにゆるめて、ほんのり乙女のように微笑んでみせた。

魔物化しかけていたオルキス・シミアを素材として選んだのは、魔物花には[品種改良]時に一定の制限があることが分かったからである。
試しにモンスターフラワーの種をベースの魔法陣に置いてみた時に、このようなエラーメッセージがパトリシアの頭の中に響いた。

『エラー:魔物花の種はベースとして使用することができません。
付与魔法陣に置き換えてください。
なお、知能は受け継がれず、消滅します』

知能を持つモンスターフラワーを改良する際には、ベースとしては使用できず、付与で使用しても受け継ぐのは特徴のみで、知能は受け継がれないようだ。
花としての特徴のいずれか一つが、ベース種に反映されるらしい。

だからこそ安心して、オルキス・シミアを素材として選んだのである。
魔物化”しかけている”花をベースに選んでも、またエラーが出るか、知能は反映されないと考えた。
…乙女2人は張り切っている!

「いくぞ。…スキル[品種改良]、”アレンジメント”!」
「わくわくするねー!」

彼女らが張り切るとロクな事がおこらない気が…げふん!

魔力を込められた魔法陣がキラキラと輝き、オルキス・シミアにお辞儀の動作が付与されていく。
早く花が咲いた姿を見たいと思ったパトリシアとレナは、出来上がった「オジギスル・シミア」に、さらに”超速アルファルファ”を掛け合わせた。

▽「超速オジギスル・シミア」が 出来上がった!

パトリシアが手のひらに水球を作り出し、そこに種を埋め込む。
水をたっぷり吸い込んだ種は、みずみずしい芽を出しぐんぐんと1M程にまで成長していった。

「「おおーーっ!」」

白いコビト型の花を咲かせた超速オジギスル・シミア。
マトモそうな花が出来たことに、レナ達は手を取り喜び合っている。

“超速オジギスル・シミア”は、自らの揺れる動作で花弁を茎から落とした。
花は絨毯の上で一列に並んで、優雅なお辞儀を披露しようとする。
しかし、細い脚に負担がかかりすぎたのか…カーテシーの動作は途中で止まってしまった。
そのまま数分待つと、花は茶色くなってしおしおと枯れてしまう。
成功を期待していたぶん、レナ達はガックリと肩を落としていた。
パトリシアが顎に手を当てて、うーん、と唸(うな)っている。

「後もうちょいだったのになぁ。
なんか、花鑑定によると、強度が足りなかったらしいぜ。
改良が必要だな…」

「強度かぁ。
頑丈そうなお花の種は持ってないもんねー。
……………。
あっ。コレ使ってみる?」

▽レナは 乾燥マッチョルーム茸を 取り出した!

…アーーーッ!出てしまった。
これは…何かが起こる予感しかしない。
ほぼ全てレナさんのせいである。

ガチガチの腹筋を持つ真紅の乾燥キノコを見たパトリシアは、怪訝そうに眉をしかめた。

「えっ。…何コレ…キノコか?
気持ちは嬉しいけどさー、レナ。
花職人の[品種改良]スキルは、花の咲く植物専門だぞ」

「うん。
このキノコねー、枯れる前に白い花を咲かせるらしくて。
ホラ、サボテンなんかも花職人さんの取り扱い範囲だっていうしさ。
キノコも試してみない?」

▽レナさんの 悪魔の 誘惑!

「そうなのかー…。…それなら、何とかなるのかも。
もらっていいの?」

「うん!」

「ありがとなー」

むしろ持ってても扱いに困るからぜひ貰って欲しい、とご主人さまは頭の片隅でちょこっと考えていた。
もちろんパトリシアに対する善意が大半なのだが、少しの下心もある。
人間ってそんなものだ。

パトリシアは素直に友人から乾燥マッチョルーム茸を受け取ると、付与魔法陣の中にそっと置いた。
ベースとする方の魔法陣には、”超速オジギスル・シミア”が置かれる。

「”アレンジメント”!」

さて、どうなるのか!
▽パトリシアは 呪文を 唱えた!

…出来上がったのは真っ白な種だった。種の色=花色なので、純白の花が咲くのだろう。
水球を作り出したパトリシアが、種に水を吸わせる。
これまた真っ白な芽が、チロリと顔を出した。瞬時に1.5Mまで成長していく。

そして、可憐な花が咲いた!

可憐な………!マ、マッチョだーー!

案の定、結果はひどいものだった。
コビト型の花は、全てが見事な逆三角形ボディに超変化していたのである。
純白肉厚マッチョボディだ。
ゆらゆら揺れると、反動をつけてシュタッ!と運動選手並みのキレの良い動作で床に着地する。10点!

そのまま、お辞儀を披露した。
むちむちの脚は力強く筋肉こぶを作り、むん!と効果音が聞こえてきそうなポーズが決められる。
そして…サイドチェスト!からの反対を向いて更にサイドチェスト!バックポーズからの、振り向いてダブルバイセプス!
(※全てボディビルダー用のポーズです)
どうやらこれが、マッチョ流最敬礼らしい。ひたすら暑苦しい。

お花の名前は”超速ホワイト・マッチョマン”。
…恐ろしいものが出来上がってしまった。

レナとパトリシアは顔を引きつらせて、目の前の惨状を茫然(ぼうぜん)と眺めていた。
生唾を飲み込んで、パトリシアが発言する。

「…なんかさー。
もしかして、こいつら、命令とか待ってない?
敬礼したまま動かないんだけど…」

「ええっ!?
でも、知能は受け継がれないはずじゃないの…?」

「うーん。
魔物に”なりかけ”だったからなー。
そんなのの種なんて、普通はまず見つけられないし、[品種改良]の前例が無いから分かんねぇよ…。
試してみるか?
えーと、その場でくるくる回れ」

種の作成者のパトリシアが命令してみると、マッチョフラワーはその場でリラックスポーズを決め、ギュルギュルと回り出した。
まるでバレリーナのごとき超回転である。絨毯がすり減りそう。
ご主人さまとパトリシアの精神力がゴリゴリと削られていく。

「「うわ……」」

困り果てた表情で途方に暮れる残念乙女2人は、ひたすら回り続けるマッチョたちを、ただ見ていることしかできなかった。

▽超速ホワイト・マッチョマンの種×8を 手に入れた!
▽山分けした!護身用のお守りにしよう。

「…あーーーっ!お姉ちゃんたち、また変なお花創ってる。
ダメだって言ったじゃないー」

「「ごめんなさい!」」

アリスに 見つかった!
謝罪は条件反射だった。実にダメな大人たちだ。

またも短期集中砲火型のお説教を受けたパトリシアとレナは、息も絶え絶えになっている。
自尊心などとうの昔に打ち砕かれていた。

アリスのお説教は、一歩間違えると余計なお世話になりそうなほど辛口だったが、これもパトリシアの将来を思ってのことだ。
全てが正論なので、オトナ組はひたすらガマンして苦言を聞き続けている。
アリスも、こうして厳しく教育されたのだろう。

ようやくお説教は終わり、部屋の空気は和やかなものに変わる。
家主のアリス本人が、高そうなお茶とお菓子を用意してくれた。

悪いよ!とレナ達が遠慮するものの、私が食べたいからなの!というアリスの主張に負けてしまう。
皆でお菓子を美味しく頂いた。

アリスは憂鬱そうに、手にした白い封筒を眺めている。

「…その封筒って…?
あ、ごめんね。聞かない方が良かったなら、今の聞き流して?」

「大丈夫だよ、レナお姉ちゃん」

控えめに声をかけたレナに対して、アリスは苦笑を幼い顔に浮かべる。

「…えーとねぇ。
コレは、お爺さんの血の繋がった息子さんたちからの手紙なの。
孤児の私をバイヤー後継者として認めないから、お金を置いてすぐに出て行けって。
はあ。
…預金のうち、お爺さんが息子さんにって遺したものは、もう全部渡したんだけどな。
私の財産は、生活費と起業資金、それとこのお屋敷くらいなのに、催促が止まらないんだ。
何度もそうお返事を出してるんだけど、諦めてくれなくて…。
困っちゃう!」

「それは…」
「…酷いもんだなぁ…」

「ね!
息子さん達には悪いけど、私はお爺さんから受け継いだバイヤーとしての知識や人脈をムダにするつもりはないんだー。
だって、彼の後継者は私だけなんだもん。
受け継がなくちゃ。
それが、不自由なく育ててもらった恩返しだと思っているから…。
いろんな商品に出会うのも、もちろん楽しいしね!」

レナとパトリシアは幼い少女が無理をしていないかと心配したが、明るい笑顔を見てホッとしたようだ。
アリス自身が、バイヤーの仕事をしたいと心から望んでいるのが伝わってきた。
「応援するよ」「何か困ったことがあったら相談してね」と、協力する旨の言葉を添える程度にとどめた。

再び和やかな雰囲気に戻った室内で、お茶とお菓子を堪能して、乙女トークをして、皆はそれぞれの家へと帰っていった。

▽Next!不穏な足音…

 

 

 

 

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