347:キラとハマルの進化舞台

「レアクラスチェンジ、ひっそりやるか、ドカンとやるかー?」
「ってとこなんですよね」

ハマルとキラが神妙に打ち明けたかと思えば、これであった。
かまえていたレナはずっこけてしまった。

「ドカンて」
「あ、ドカンの方行っときます?」
「わかりましたー。ボクの夢のストックがうなりますー」
「ステイステイ。ツッコミしただけだから。えーとね、二人が自分の進化について考えて言いに来たのはえらかったよ? そしてどうしてそう考えたの?」

後ろでルージュが『その流れ良いですわ!』と応援している。

二重三重に教育体制が整っているレナパーティである。
そうでなければ育成が追いつかないのだ。
世間の時の流れに対して、レナたちの成長は早すぎるから。

キラが手を挙げた。

「ドカンを提案したのは、今回はおそらく”地味”だからです。私はアップデート、ハマルさんはリトルから成羊に。魔物型が大きくなって、しかし人型の成長は見送られるでしょうね」
「これまでもそうだったもんね〜」

魔物が進化のための経験値を溜めるには、数年から数十年かかるものだ。そのため進化したら人型にも一気に反映される。
しかしレナの従魔は長くて数ヶ月で進化しているので、ラナシュ世界情報はいつもしばらくたってから反映されている。

今度はハマルが手を挙げた。

「それでねー。地味なうちに”レナパーティの進化といってもこんなもん”って印象を与えておいたらいいかなってー考えたのですー」
「なるほど」

ハマルが若干うっとりした顔をしているのは、自分たちだけで状況を独り占め、ということにご満悦なのだろう。
シュシュは憤慨して「ご主人様のすごさを分からない奴を増やすなんて!」と言っているので、ようは塩梅と頷いているルーカ宣教師を見習ってほしいところである。

▽シュシュの宣教師取得が 先送りにされた。
▽利益不利益を 学ぼう!

「私たちが外に出るたびに、視線を感じるもんねえ」

レナが考え込む。
ちょっと買い出しに出る時、町歩きだけでなく、草原など広い場所にいる時であっても。
複数の視線を感じるようになった。
護衛よりももっと無遠慮な、好戦的な視線。
おそらく話題のレナパーティがどのようなものか、町の外に出る冒険者たちの間でも騒がれているのだろう。

レナもそれに気づくくらい感覚が研ぎ澄まされてきたのだ。えへん。

「隠されるから知りたくなってしまうってとこ、あると思う。スカーレットリゾートを開くのも、木を隠すなら森の中、が理由だしね」

これはいけるぞと思ったキラとハマルが、ニコリとした。
▽可愛い!!!!!!

「じゃあドカンといくー?」
「ドカンといきたーいですっ」

「いいよ」

「「わあい!」」

▽先に 方法を聞いておいたほうがよかったかな。
▽でも可愛かったもんね!

レナの心理をよく理解しているハマルとキラからのお願い事でよかった。
これがチョココやミディであったなら、後出しでめちゃくちゃな提案をされただろう。

▽ちょいちょい他の従魔が出てきすぎじゃない? って思った?
▽だって大広間で合同会議だから。
▽大所帯だよ、レナパーティ

「どうドカンといっとく?」
「「ぱふぱふ〜♪」」
「繰り返しの法則というものが御座いますから」
「もう一回、紙芝居しよー?」

▽紙芝居とは。
▽レナが[かみつかい(弱)]として活躍して。
▽変則型紙細工人形劇ラナシュ版一コマ劇場 を行うことの総称である!(まとめた)

「うおおおおお〜ーーーーーーーー!」

スカーレットリゾートの広場に、また観賞者が集められた。
思いがけず二日連続のゲリラライブとなり、ラッキーだった人々は歓喜した。

ラッキー。
それは赤の女王様を慕うものたちの間で、もっとも説得力をもつ言葉。
昨日のチケットを取れたのもラッキーであれば、全く想定していなかった今日この時にラビリンスに居合わせたのも、遠征によってスカーレットリゾートにお試し宿泊していたのも総じてラッキーなのだ。

今日の鑑賞を逃した者には「それもまた運命」という宣教師のありがたいお言葉がある。

(ほんとうによくできた集団ですよ、レナパーティって)
(勝っても信仰心が上がる、負けても信仰心が上がる)
(政府じゃできないことですよねぇ)

聖霊対策本部の面々がシヴァガン王国から戻ってきたら、これである。
遠い目をして愚痴を語るのも、しかたがないことだろう。

さらには、最後尾よりももっと後ろの建物の壁にもたれかかって、舞台を半眼で眺めるカルメンが気にかかる。

(何を考えていらっしゃるのやら……)

聖霊(・・)対策本部として、報告しなくてはならないので胃が痛い。

「それにしてもすごい熱気だねえ」

黒子の衣装に着替えたレナが、待合室まで聞こえてくる歓声に驚いてつぶやく。
シンプルな漆黒の衣装だが顔は見えているのは、「レナが」「かみつかい」と認知してもらうため。
利益不利益の法則である。

(レナ様には言えないが、魔物の進化ってストリップショー的なところがあるからな……)
(魔人族にとっては娯楽だし、ヒト族にとっては珍妙な芸だと思う。同じく主さんには言わない)
((ややこしくなるから))

レグルスとオズワルドは頷きあうと、上手い火加減で炎の輪をつくった。

レナがそこに紙飛行機をとばして、紙飛行機が輪をくぐりぬけたところで登場した。

「「「いいぞーーー!」」」

▽昨日の今日で ハードルは極限まで下がっている!
▽がんばれレナちゃん!!

「紙ふぶき!」

▽レナがばさばさと七色の紙ふぶきを放る。
▽よっ、かみつかい!

「キラでーす」
「ハマルでーす」
「「ふたり合わせて”電気羊”!」」

▽ペア名をつけていくことにしました。

ばっちりポーズを決めているキラとハマルは赤の衣装。いてくれたエリザベートにちょっとだけ作業してもらって、衣装の裾を伸ばしてもらった。
つまりこれから成長するということ。

「うおおおおお〜ーーーーーーーー!」

▽観客たちのテンションが 上がった!

「それでは魔物型に戻りますので」
「だってボクら魔物だからさ〜」

「オウ〜〜〜〜……」
「うおおおおお〜ーーーーーーーー!」

▽テンションが 二分割された。

ヒト族たちは美少年たちが消えてしまったので残念そうにしつつ、珍しい魔物を水鏡ごしにしげしげと眺めている。
魔人族たちは現れた美しい魔物たちにさらにテンションが上がった。

「すげえ毛並みのいい白(・)羊だ……!」
「あの小さなゴーレムの表面もきれいに磨かれているな」
(あんなふうに大事にされるなら従魔っていいなあ……)

リリーとマイラの[幻覚]の腕の見せどころである。さすがに金毛羊を登場させるわけにはいかないので、白羊のように見せかけている。先輩に手伝ってもらいながら、マイラも覚えたての技能を磨く。

▽紙芝居は チープであればあるほどいい。

チョココとミディがタンバリンを叩く。
ジレとアグリスタは笛を吹く。
ギルティアが、ドッカーン!とやけくそ気味に太鼓を叩いた。

舞台上で、キラとハマルがるんたったとステップを踏む。

レナが撒きちらす紙ふぶきを浴びて楽しそうだ。

紙を全部撒きおわると、レナは空っぽの籠を持って礼をした。その籠の影に隠れて、キラウィンドウが現れている。

進化項目を、レナがポチッと押した。

<種族:夢羊アルテミスリトル→夢羊アルテミスに進化しました!>

<種族:パンドラミミック[|黙示録(アポカリプス)ver1]→パンドラミミック[|黙示録(アポカリプス)ver2]に進化しました!>

<<ギルドカードを確認して下さい>>

(そのギルドカードが無いからこその応急処置なんだけどね!)

レナの目の前で、キラたちは踊り続けている。
地味な進化とはいえ、体がつらいはずだ。
虹色のオーラをまといながら、うっすらと冷や汗をかいている。

「スキル[従魔回復]──」

レナが魔力で包んであげると、二人はレナの方をこっそり向いて、へにゃりと笑った。
羊の目がやわらかく和んで、キラウィンドウには(>▽<)と表示された。

観客たちは固唾をのんで見守っている。

▽進化完了!
▽見た目では変わったように見えないが……

▽ヒト型になってみせた。
▽キラのメタリックな光沢の銀髪は伸びていて、ハマルが前髪をかき上げると小さなツノが生えていた。

水鏡の向こう側が一気に沸き立った。
魔人族たちは微笑ましそうに「おめでとうー」と声援を送る。

「あのモコモコの羊毛の中に小さなツノが生えてたのか。ワハハ!」
「子どもの最初の進化ってこんなものよね。おめでとう」

「めちゃくちゃ綺麗じゃん! アイドルじゃん!」
「ネッシーと電気羊のコラボしてくれええええ!」

「「マネージャー通して下さーい」」

「誰!?」
「どこ!?」

「「アネース王国トイリア在住のモスラ・トリアエズ・スチュアートさんです」」

野次が黙った。
シン……としたあとボソボソと行儀のいい話し合いが聞こえてきたので、モスラは牽制によし・商談によしのちょうどいい立ち位置として大国で認知されているようだ。

ドッカーーーーーーン!!

ギルティアが細腕全体を叩きつけるようにして太鼓を鳴らす。

終了の合図だ。

「たぁくさん声援くれたからきっと快眠できますねー♡」
「あなたの激励を正確に記録して差し上げます♡」
「「電気羊でしたー」」

▽利益のためなら媚を売るタイプのペアであった。

▽レナの [かみつかい(弱)]の 認知度が高まった!
▽ハマルとキラが 進化した!

▽ラビリンスキューブを 観察しよう!

「名前:ハマル
種族:夢羊アルテミス♂ 、 LV.40
装備:ミディアムジャケット、短パン、もふもふコート、ブーツ、M伸縮リボン、M服飾保存ブレスレット(藍)
適性:黒魔法[闇]

体力:90(+15)
知力:55(+5)
素早さ:66(+14)
魔力:51(+2)
運:48(+8)

スキル:[体形変化]+1、[駆け足]、[快眠]+4、[周辺効果]+2、[跳躍]、[夢喰い]、[夢吐き]、[頑丈]、[突進]、[夢狩り]、[月光浴]
ギフト:[鈍感]☆5
称号:魔人族、ドラゴンキラー、マゾヒスト(極み)」

「名前:キラ
種族:パンドラミミック[|黙示録(アポカリプス)ver2] LV.27
装備:ジャケットコート、短パン、ショートブーツ、赤のタスキ
適性:白魔法[光]、黒魔法[空間]、緑魔法[風]、青魔法[水]

体力:28(+2)
知力:99(+20)
素早さ:23(+2)
魔力:88(+20)
運:33(+4)

スキル:[空間創造][スペースカット][スペースペースト][テレフォン][投影][音響][ステルス][|理(ことわり)の理解][撮影技術][魔力探知][ダンジョンメイキング][トライ・ワープ]
ギフト:[アース・データベース]☆7、[創造者]☆7
称号:魔人族、ダンジョンマスター」

 

 

 

 

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