328:鍛冶場のてつだい1

「鍛冶場はここだあ」

レナたちが通されたのは、カルドグラン城の最上階。
火山側。

「火山の岩肌に沿うように建てられているとは思ってたけど……」
「お部屋の壁がそのまま岩なんてネ〜! キャー!」

走り出しそうになったミディを、レナが抱きとめる。
そのまま「炉」に突っ込んでクラーケンの丸焼きになりそうだった。

岩壁の三箇所が、ちいさな洞窟のように掘られていて、そこには煌々と燃えるマグマが溜まっている。
金属を溶かす「炉」だ。

「炉のマグマは、このまま下に流れているの?」
「……そうです! マグマ溜りにしばらく止まったら、管のように掘られている通路を通って、ドワーフ街のマグマ川に合流します。上方に住むドワーフたちは名匠で、より新鮮なマグマを使えます。下方にいるドワーフたちはあまり綺麗じゃないマグマを使うんだけど、鍛錬してそのマグマでもいいものを作れるようになると、マグマの質が上がった時に一気に素晴らしいものを作るんですよ」

ガルボが説明しつつ、寡黙な父を「父ちゃんっ」と叩いた。ゴツン。

「……ガルボちゃん痛いよう」
「ちゃんとしゃべり!」
「へえへえ。最初に流れるマグマを使えるっつーのは王の特権でよう。コレはとびぬけて熱いから、どんな金属でも溶けるし、作るもののクオリティも幅も飛躍するからさあ。俺みたいな人見知りでもさあ、王を目指すよなあ」
「父ちゃんは引きこもり気質なだけでしょ」

はあ。
ガルボがため息をついてみせるが、親子の会話がこれだけ弾むのであれば根は仲良しなのだろう。
レナはほっこりと目元を和らげる。

「それで、私は何をすればよろしくて?」
「その格好だからなあ……ヴーン……」

▽赤の女王様ドレス!!!!
▽防御力と温度調節機能に関してはピカイチなのだ。

「汚れくらい弾くわ」
「そういう問題じゃねえよう。そのヒラヒラで動かれちゃ気になるだろうが。めんこい女の子がそんなに足を出してまあ……俺あスカートはロンスカに限るし足首チラリズムの美学が」

「拳の準備はしてますからね」
「「スライム溶解でドロドロに溶けるぅ?」」
「氷漬けはどうじゃ」
「髭燃やしていいよな」
「えーとえーと、そのツナギもウォーターカッターで切ればレナ様とお揃いになれるヨ?」

「やめとく」

王はふるふると頭を振った。
会話するのをやめとくのと、自らのツナギが短パンセクシーになるのをやめとく。

レナをからかうと従魔たちが面倒くさい、ということをドワーフ王は学んだ。

「これなら?」

従魔たちの暴走をおさめるために、レナは自ら着替えをする。
ローズミスリルのブレスレットを光らせた。

[赤ノ祝福ヲ賜リシ覇衣]、軍服風ワンピース、ロングブーツ。なつかしきミレージュエ港で購入したコーディネートである。

「うおおおおおおその金属!……後で触らせてくれ! 後で! お願い! ドワーフ王一生のお願い!」
「使うな!! あんたの一生は何度あるんさ、やめい! もうぅ〜だから会うのも見るのも嫌だったのに〜すみませんレナさんすみません!」

なんともしまらない親子である。

金属フェチの父を持った苦労人のガルボを、レナがそっと撫でた。ついつい。
▽ガルボの 懐き度が 上がった。

「後でブレスレットを見せて差し上げるわ。これから冷静に作業なさるのが条件だけれど?」
「やるやる。──その格好なら大丈夫だろうなあ。温度耐久はあるのか?」
「このマントに付与魔法がかかっていて一定気温を保つから問題ないわ」
「じゃ、こっち来なあ」

部屋の中央にドワーフ王が歩いていくと、腰にくくっていた厳(いかめ)しい大槌を構えた。

床に「ゴン!」と槌を打ち付ける。
ぐわんぐわん、重く部屋に反響する。

魔法陣が現れて、透きとおったわずかに黄色の壁が視認できるようになった。炉と入口の間にあり、部屋を分断するように存在している。
「ふん!」
ドワーフ王が扉を開ける仕草をすると、壁がなくなり、

──ぶわっ

と熱波がレナたちに襲いかかる。

「ッッッッッ」
「レナお嬢さんはこの中でも平気か。さすがだなァ」

ガルボと親方が足をふんばって汗を流している。
従魔たちはキサの冷風でなんとか体調を保つ。

レナ女王様はやはり、堂々と立っていた。
覇衣がレナを守っている。

「やはり、ドワーフ国王が頼む気になっただけあるわい」

参謀の爺がやってきて、にこやかにレナの手を取った。

「さあさ、どうぞ。あやつは作業に入るともっと寡黙になりますからの、儂も手伝いましょうぞ」
「よろしくね。ああそれと汚れても構わないから」
「ええ、ええ」

レナが熱波の元に足を踏み入れる。
氷の聖霊杯は、わずかにガラス面がぱきりと鳴った。

ドワーフ国王の持つ金属の柄杓の中で、|どろり(・・・)と、海底産オリハルコンが溶け始めている。

▽鍛治のお手伝い スタート!

 

 

 

 

 

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