320:後輩三人の姿

 

▽赤の聖地に 帰還した。

「じゃあ進化していこうー!」
『『『お、おおー……』』』

レナが拳を天につきあげて、赤くなったジレ・アグリスタ・マイラもひかえめに挙手した。
ジレは太めの尻尾で、アグリスタは前足を上げることで、マイラはゴーストの手をそうっと持ちあげた。

初めての進化は不安だろう。
レナがすぐそばにいてあげる。
手を伸ばせばすぐに抱きしめてあげることも、ぎゅーーーー!
▽フライング!

『『『レナ様!?』』』
「名残を惜しんでる……この姿の3人から変わるんだもんね〜」

アグリスタは子馬、スケルトンな体に透明な毛並みはつるりとした触り心地。浮きだした骨の部分がコツっと手に触れる。

マイラは目玉がこぼれ落ちたのをカポっとはめてあげて、前髪の隙間から目を合わせて微笑みあう。

ジレは毒消しを先に飲み、異世界人の称号で体を強化してから抱きしめた。オオサンショウウオのようなずんぐりした蜥蜴(トカゲ)は体表がゴツゴツとしていて、裂け目からはトロリと滲む毒。それでも抱きしめたくて挑んだ。

見守る先輩従魔は苦笑している。
それがどれほど優しいふれあいかわかっているから、ハラハラしていても止めなかった。

エントランスホールにみんなが集い、思い思いの姿勢でリラックスしている。
[ダンジョンメイキング]により、まるで外のように柔らかな草が茂っている。
高い天井から落ちてくる浄化(パージ)の陽光に、エリクサーのシャボン。

ここなら大きくなっても大丈夫。
進化時の成長痛も、緩和されるだろう。

『しょぼん……』
「しょんぼりしないのアグリスタ。そういう痛みは心地よさの範囲外ってハーくんが言ってたよ……」

▽なにやってんだか

「さあ進化をはじめましょう!」

▽レナが ギルドカードを 取り出した!

進化先が三つ、赤の文字で輝いている。

【Gーレックス・リトル】……レックス種。ドラゴン・ワイバーン種からの派生で、翼を持たず大地でたくましく活動する。1000年前に絶滅していた火山地帯の魔物種遺伝子が混ぜられている。
特殊スキル[煉獄火蜥蜴]を進化時に取得する。

【スレイプルート・リトル】……スレイプニル種。子馬から徐々に体が完成していき、リトルの時は六本脚、やがて八本脚の最高の騎乗馬となる。ルートの呼称には導きの歩みとなるように、という祈りが込められている。
特殊スキル[スレイプルート]を進化時に取得する。

【シルキー・リトル】……妖精種。家事を好み、家を守る。食器を洗えばうつくしく光らせ、塵履きで家中の異物を一掃する。織りあげた布地は空気のように軽やか。家事スキルを上げることで[魔法の指先]へと変化する。
特殊スキル[幸福の指先]を進化時に取得する。

「私が創りました☆」

▽キラクオリティ。

(((そんな気軽に……)))と後輩3人は思ったが、黙っておいた。レナが変わりに聞いてくれているので。

「キラ、いじったでしょ?」
「創ったという言葉通りで御座います。なりたい姿をイメージしつつ、この世界の情報から適したものをひっぱってきて、繋ぎ合わせて、言葉のニュアンスを変えて。あとはひたすら世界構成に”聞かせまくった”くらいでしょうか?」

つまり、最近キラがおとなしかった時にはダンジョン管理ルームにこもり、世界構成に語り続けていたというわけだ。
それは「認識の強化により新たな常識が生まれる」称号取得のやりかたをベースにしていた。

「さあいくよ?」
『『『はい』』』

3人が、ゴクリと生唾をのんで頷いた。

▽レナが ギルドカードをタップした!

従魔の体がカッと内側から熱くなる。
ぐんぐんと血がめぐり、細胞が湧きたち、創り変わっていくのを実感する。

<進化を安全に促進します>
<鈍色の球 に従魔をいれますか?>
<はい・いいえ>

「えっ!?」

レナがキラを見た。
後光が眩しい。

「ギルドカードをタップして下さいまし、マスター・レナ。この度のさらに特別なレアクラスチェンジのために、システムを追加しました」
「……安全に促進するんだよね?」
「間違い御座いません」

レナは、身をよじらせて耐えている三人をみた。

できればこのまま側にいてあげたかったけど……三人が見つめ返してくれた目力の強さを、レナは信じることにした。

▽<はい>を タップした!

床の下から浮かび上がるように現れた鈍色の球が、三人を包んだ。
真っ暗な中でひとりぼっち、大丈夫だろうか──。

「暗闇はあいつらの定番の場所だからな」

ふと、小さな声が聞こえてくる。
ギルティアの呟きは「慣れた場所だからむしろ落ち着くはずだぜ」ということだろう。
レナが振り返って微笑むと、ギルティアはリリーの後ろに隠れてしまった。

それからしばらく時間が過ぎる。
10分ほどが、1時間にも感じられるようだった。
…………。

『あの』
『レナ様ぁ……』
『成長、とまりました、多分』

三人の声。
同時に福音(ベル)が響き渡る。

<種族:煉獄火蜥蜴→Gーレックス・リトルに進化しました!>
<種族:スケルトンホース→スレイプルート・リトルに進化しました!>
<種族:シルクゴースト→シルキー・リトルに進化しました!>

<<<ギルドカードを確認して下さい>>>

<スキル[煉獄火蜥蜴]を取得しました>
<スキル[スレイプルート]を取得しました>
<スキル[幸福の指先]を取得しました>

▽クラスチェンジ 完了ー!

▽鈍色の球が ぱちりと消失した。

現れた三体は、明るい室内に目を細めている。

Gーレックス・リトルは、いかにも恐竜という外見。前頭部は丸みのあるラインで煉獄火蜥蜴のなごりを残している。
金の虹彩が現れた黒の瞳が、じいっと自らを観察する。
ずんぐりした体は約2メートル、尻尾は1メートルほどだ。レックス種らしく立ち上がってみようとしたら、まだ慣れていないためバランスを崩した。
四本足でしっかり着地すると、部屋が揺れた。脂肪よりも重い筋肉が詰まっている。

スレイプルート・リトルは、繊細なかがやきの白銀の毛と闇色の毛をあわせ持つ美しい馬。ゆたかな紫のたてがみに、隙間からうかがうような緑の瞳。
首元にぶら下がっていた因縁の縄が消失している。
そのことに気づいて怯え出したので、レナが至急、ジェネリック古縄を首にかけてあげた。
前よりも首が太く体格はしっかりしていて、六本足で床を捉えている。しかしやはり動き慣れていないので、転んだ。

シルキー・リトルは、ふんわりと白いメイド服を揺らしている。着用していたメイド服がマイラの一部として馴染んで、ゆらゆらと丈が長くなったり短くなったり……不安定だ。そこにいるのだが家と一体化するように存在感がなく、やすらかな安心感をみんなに与えてくれる。
手袋に包まれた指先は桜色に染まっている。

「みんな、わりと小さいね?」

レナが尋ねる。
望んだ進化をできているかな? と心配になったのだ。

三人はじいっといじらしくレナを見つめた。

『はい。望んだ通り、通りすぎというか……はい。毒も漏れてないですよね?』
「うん。そう見えるよ」

『縛ってもらえる脚が増えたぁ……』
「こら」
『首に縄もかけてもらったしぃ』
「……照れると体がスケルトンになるんだね。新しい発見だなー……」

『この身長だと、レナ様がまだわたしを抱っこしやすいかなって思いました』
「うっっっっ」

▽レナの心にクリティカルヒット!
▽鼻を押さえている。

『ご主人様の望みを叶えるのが、家妖精シルキーみたいなんです。おいで下さいませ』
「ま、魔性のママみ……!」

レナがふらふらと引き寄せられるようにマイラの元に行って、小さな両手を広げた女の子をそっと抱きしめた。そのまま背中をさすってもらう。

「幸福気分!!!!」
『あの、キラ先輩。幸福の指先ってこういうことでしょうか……?』
「いいえ違いますね。家事として触れたもの作ったものに運プラスの効果が付与されるはずで御座います。今はただただ、マスター・レナが幸福なだけ……」
「ほにゃああああああ」

ゆるっゆるに懐柔されたレナ。
こう来るとは、と先輩従魔が戦慄している。
家妖精シルキー、おそるべし。

マイラに共感したアグリスタの心が凪いで、すりすりとおでこをすり寄せてきた。
ちょんと生えた一本角が、素直に好意を伝えてくる。

遠慮しているようだったジレを強引に手招きで引き込み、毒が出ないのをいいことに今までで一番強くレナは抱きしめた。

つまり小さな体だったのは、みんな主人に抱きしめられることを想定していたため!
可愛いに決まってる!!!!

「はーー。三人とも本当によく頑張ったね! これからもよろしくね、私の可愛い従魔たち」

『『『し、従えてーーー……!』』』

▽進化後の従魔たちは 主人愛が向上する(参考:赤の教典これまでの旅路)
▽三人は 心から打ち明けた。

▽レナは嬉しそうに微笑んで、頷いてあげた。

「名前:ジレ
種族:G-レックス・リトル♂、LV.19
装備:華族の衣装、毒消しエプロン、毒消しグローブ、園芸ブーツ、M服飾保存ブレスレット(黄)、※従順の首輪
適性:赤魔法[炎]、黒魔法[闇]

※体力:42
※知力:33
※素早さ:34
※魔力:28
※運:11

スキル:[切り裂き]、[暗躍]、[地を這う黒炎]、[毒溶岩]、[煉獄火蜥蜴]
ギフト:[体幹]☆5
称号:遺族、魔人族、精霊のトモダチ、犯罪者」

「名前:マイラ
種族:シルキー・リトル♀、LV.15
装備:Mメイド服、ストラップシューズ、羅美亜の鱗、M服飾保存ブレスレット(黄)、※従順の首輪
適性:青魔法[水]、黄魔法[付与]

※体力:22
※知力:39
※素早さ:27
※魔力:34
※運:14

スキル:[炎耐性]、[浮遊]、[スプリングシャワー]、[アクアボム]、[幸福の指先]
ギフト:[虚無]☆3
称号:魔人族、精霊のトモダチ、犯罪者」

水の極大魔法[ティアコール・シャボン]……涙を流すことにより、シャボン生物を喚ぶ。

「名前:アグリスタ
種族:スレイプルート・リトル♂、LV.16
装備:Mケープローブ、首縄、長袖シャツ、半ズボン、ヒールシューズ、M服飾保存ブレスレット(黄)、※従順の首輪
適性:黒魔法[闇]

※体力:30
※知力:26
※素早さ:44
※魔力:34
※運:8

スキル:[怨嗟の声]、[暗躍]、[幻覚]、[ネガティブオーラ]、[疾走]、[ロックオン]、[イートトラップ]、[スレイプルート]
ギフト:[共感]☆4
称号:魔人族、精霊のトモダチ、犯罪者」

 

 

 

 

 

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