286:鞭の訓練します!2

『レナ様はどのような鞭スキルを?』

▽ルージュ先生の 現状確認!
▽レナは 冷や汗をかきながら返事をするしかない。

「な、薙ぎ打ちとみね打ちを少々……」
『なるほど。謙遜はけっこうですわ、薙ぎ打ちとみね打ちができる! と自信を持ってまいりましょう』

▽レナは 気まずそう。

『他には?』
「ノーマルなタイプの鞭打ちができます……」
「はううっ」
「ハーくんちょっと静かにね。スキル[従順]落ち着いて」

▽ハマルは 気持ちを落ち着けるために 昼寝を始めた。

『なるほど……なるほど……。レナ様は鞭スキルだけでなく、話し合いや縁によって魔物を従えてきたのですよね』

ルージュがあたたかな微笑みでレナをフォローした。

「えっとね。正直に言います。運[測定不能]にとっても助けられたような気がしています……」
『それもあるでしょう。でもまず、魔物と話をしてみようという勇気はレナ様のものでしたよ』

レナは、赤青プチスライムと出会ったときのことを思い出してじわーっと胸が熱くなるのを感じた。
ルージュはレナの表情を見ると、うんうん、と満足そうに頷く。

『自信を持つことは大事ですわ。レナ様、どうか誇ってください。自分が使える力を。主人が堂々としていると従魔は嬉しいものです』
「そうだよね……それはわかる。従魔が見ているから! って思うと勇気が出るくらいだもん」
『まあ。レナ様は経緯がすべて逆ですのね。立派だから従魔の上に立てる、よりも前に、従魔の上に立ったからこそ立派でありたいと思う……』

ルージュは自分の言葉を噛み締めて、上を向いた。
なにかに想いを馳せるような表情だった。

『……魔物使いとして、とても成熟した考えです。経歴の短さを考えると、レナ様は天才的ですね』
「なりゆきだよ。でも、自信もつね」

レナがクスッと笑った後、腕を曲げて、ささやかな力こぶを作ってみせた。

「押忍!!!!!」

シュシュがとびきり元気よく真似した。

「落ち着こうねシュシュ。スキル[従順]落ち着いて」

▽バッサバッサと翼を動かしていたシュシュが おとなしくなった。

『切り替えてまいりましょう。最初の訓練は正確に打つことです、シュシュさんが冷静に作業をしてくれると助かりますものね』
「ちょうどよかったってー!」
「わーい!」

▽切り替えていこうね。

▽基礎訓練 開始!

シュシュがステップを踏んで、ジャンプしながら屋敷裏訓練場を走ると、自由の翼がハラハラと数枚ずつ宙を舞う。

レナが鞭を握る。

「まずはスキルなしで……そりゃっ!」

レナが鞭を振るうこと数十回。
羽根のなごりが、すべて打ち落とされた!

「はあはあはあ……どうですかルージュ先生!?」
『努力しています。しだいに精度が上がっていった。つまりはタイミングや羽根の動きの規則性に慣れれば、鞭打つだけのコントロール力がレナ様にはあるということです』
「嬉しい……!」

レナはびっくりして目を丸くした。

これまで運動関係では、ダメ出しをされることが多かったし、自分でも苦手意識があったので。

「鞭の素振りをしていたのが効いたのかなぁ」

嬉しそうに微笑むレナ。

(((可愛い!!!!)))

従者と従魔がギュンとときめいた。
ハマルとシュシュは膝をついてダウンしたが、ルージュはふらついただけなのはさすがである。

『レナ様……。従魔の羽根だから無駄にしちゃいけないな、って考えませんでしたか?』
「あっ、それはあるかも」
『集中の源だと思うんです。なにが自分の力を引き出してくれるのか? 把握しておくといいでしょう』
「はいっ。あ、ハーくんのドラゴンキラーに似てるかも……」

レナがハマルを振り返った。
倒れ伏していた羊が、のっそりと起き上がる。

『えーと〜。夢組織のボスと戦った時にドラゴンの幻覚を使って〜、ドラゴンキラーとして戦闘力を底上げしたんだよね〜。ふふーん』

さすがのルージュもプッと吹き出してしまった。

『少しだけ知っていますわ。……そうですね、自分の力の引き出し方ですから、似ている例だと思います』
「じゃあ、私が鞭を使うときは従魔のためって思えばいいんだ!」

レナがぱああっと顔を明るくする。
ルージュがハマルを手招きした。

鞭の特訓。
呼ばれる自分。
楽しみ!!!!
ハマルが驚くべきスピードでやってきた。

『従魔のためですレナ様。ね?』
「……んえええ!?」
『せっかくの気づきなので利用しましょう。さあハマルさん、動き回って。あの羽根よりも早く。できますね、あなたのモチベーションは主人のはずですもの……』
『レナ様に叩かれたーーーーい!! ご褒美くださーーいっっ!!』

▽ハマルの 高速移動!
▽びゅんびゅんびゅんびゅん!羊反復横跳び!
▽レナは かえって混乱している。

(落ち着いて、私にスキル従順のつもりで、落ち着いて〜……! よーしよーし、ハーくんに最近こうやって構ってあげることも減ってたからね、うんご褒美)

▽性癖は ひとそれぞれ。
▽称号[マゾヒスト]の底力が光っている。

▽レナは 呼吸を整えた!

ルージュが空気の変化を感じてピクリと眉を動かした。

「称号[サディスト]セット! よーしサービスタイム開始っ!!」
『めええええっ!』

ピシーーーーン……!
スカッ
パシーーーーン……!
スカッ

それはマゾヒストとサディストの負けられない戦いであった。

▽レナたちは一時間 全力で追いかけっこをした。

荒い息を吐いて横たわるハマルの金色もふもふに、汗だくのレナが頭を突っ込んで倒れている。
ゼエゼエと肩が上下していて、足と手がピクピク痙攣していた。

『いつだってボクはレナ様に完敗です〜……!』
「そんなことないよぉ。私の従魔は最高なんだからね。ハーくん、ナイスファイト……! ぜえぜえ……」
『レナ様の方に飛びついていきたかったけど〜、その衝動を轢き倒してでも逃げなさいって指示だったから〜、頑張りました〜』
「マゾヒストってすごいな……」
『サディストの方がすごいですー!!』

『おしゃべりはそのくらいにしておきましょうか』

▽ルージュ先生の 教育的指導。
にっこり笑った唇の赤色が鮮やかである。威圧感がある。レナたちは黙った。

『はいレナ様。従魔に手伝ってもらうことで鞭のパフォーマンスを上げましたね。まだまだまいりましょうね。さあ』
「……?」

やけに優しくなっていくルージュの声音に誘われるように、レナが振り向くと、

「ご主人様♡♡」

▽チアガール衣装のシュシュが 現れた!
▽レナは 満面の笑顔になった。

「あーーっ……! 可愛い! よく似合ってるー!」
「ンフフご主人様の熱烈コールは私の生きる糧……! あ、背中はこうなってるの」

シュシュがくるりと後ろを向いた。
背中が大胆に開いたチアガール衣装、そこから自由の翼が現れている。
技アリ! それにセクシー!

「めちゃくちゃいいよ!?」
「ンウフフフフフフ!」

レナに褒められたシュシュが盛大に照れて、ぴょんぴょんと大きく羽ばたく。

安定して飛べるようになるのは早いかもしれませんね……とルージュが呟く。
天使族のサポートを受ける必要はあるかもしれないが、それはさておき。

▽シュシュは スポーツドリンクを持っている。
▽レナは グイッと飲んだ!
▽エリクサー効果で疲労が全快した!

『五分眠ってください、レナ様。それから練習再開です』
「はい。ルージュ先生……」
『一時間猛特訓、従魔の癒し後、エリクサーと五分睡眠で体力回復。これが最善プランです』
「なんだか既視感が。この効率感、さてはルージュ先生……ルーカ先生と組みましたね?」
『ウフフ、影の魔物を通じて相談したのは確かですよ。彼、よほど羨ましかったのでしょうね。それでも従魔の癒しを導入したのはわたくしの意思ですからね?』

ルージュは一息に言うと、レナの隣にぽすんと寝転んだ。

『わたくしも可愛がってくださいませ、レナ様♡』
「そーいうの本当にもう……ルージュってば〜」
『今ですハマルさん』
『スキル[快眠]+[周辺効果]〜。まあプラン通りにね〜』

▽最善のタイミングで 一匹と乙女三人が 眠った。
▽五分。
▽起きた!!

『さあ始めましょうレナ様。肩の力が抜けたようで何よりですわ。さあ鞭の持ち方はこう……』
「うん確かに、ルージュが手を添えてくれてもね? なんか妙に緊張しないんだけどね? そーいう技がすごすぎてびっくりだよ!?」
『魔物使いたちで長年磨いてきた教育技術というものがありますから。ああでもレナ様への愛情は間違いございませんわ』
「疑ったことはないし、よく知ってるよ。いつもありがとう」
『あら……♡』

返り討ちにあった気分です、というルージュの言葉は甘ったるく。

しかしその後の訓練は、きつい基礎の繰り返し。
やわらかに薔薇鞭を導くルージュは、レナをまた自然に訓練に励ませるのであった。

「すごかったよぉ……!」

レナが夕焼けを眺めながら、ハマルに腰掛けて、唖然と語る。

「私……いつの間にかシュシュの羽根打ち上手になったし、ハーくんを叩く率77%になったし、帰宅したモスラとステップ踏めるようになったし、オズくんレグルスのフレイム球も鞭で叩いたよ……。いつの間にかだよ?」
『よくできましたね』

▽ルージュがレナの頭を抱いて撫でて、しっかりと甘やかす。
▽レナはちょっぴり赤くなった。
▽主人が無防備なので 従魔が驚く。

またレナが眠った隙に、ルージュがそっと囁く。
うしろに佇む従魔たちに語りかける。

『主人が他のものに心を許しかけたこと、みなさまはどう思われましたか?』
「……」
『わたくしは魔物使いとして正解を知っていますけれど。特殊なレナパーティのことなので、確認をしたいのです』

わかった、と口を開いたのはオズワルドだった。
従魔の中ではレベルが高い方だ。

「いつもとちょっと感覚が違った。魂が慕うだけじゃなくて、うーん……牙がうずくみたいな」
『正解。魔物使いが弱くなった時、従魔は喰らいたくなるようですよ』
「は? 本当なのか……?」
『前例があります。魔物を働かせてばかりで自分は楽をしていた魔物使いは、尊敬をなくしました。みなさまは魔人族ですからもっと理性がありますが』

牙についてはそれでしょう、というルージュの言葉は、すこしおそろしい響きを持って、従魔の耳に入った。

「今、レナ様は弱くなったわけではない。怠惰でもない」

レグルスが眉を顰めてルージュに告げる。

『ええ、もちろんです。みなさまは魔人族、きっとそれがキーです。感情が複雑なのです』
「予想するところだと、他者に啓蒙する主人を見ることで、嫉妬や羨望を抱く。それが魔物の本能と絡みあうのではないか、と言いたいのではないでしょうか?」

モスラが言葉を引き継いだ。
主人が他の人に、という感覚は分かりますからね、と呟く。

『正解です。同じ従魔ならまだしも、わたくしはレナ様の従魔ではありません。そこに、ヒト的な感覚の嫉妬があるのだろうと』
「レナ様は今、あなたを頼っていますからね……それは確かに羨ましいですよ」
『自分が一番上というのはプレッシャーがあるものです。甘えられる存在はちょっぴり特別。従魔ならわたくしよりもわかっているのでしょうね、慕う主人がいる気持ち』

「わかる……」

シュシュがしんみりと告げた。

「慕いたいの。ご主人様がいてくれて、嬉しいの」

「獣人であれば、群れの長に従いたいという欲求も強いな」
「分からなくもない」

オズワルドとレグルスがため息をついた。
横目で見てやったロベルトたちだって、魔王に仕える部下である。

『主人と従魔という関係は特別ですよ。レナパーティとなるとさらに特別です。どのように特別なのかは、みなさまがこれから作っていくのでしょうね』

だんだん軽やかになっていく声でルージュは告げて、ウフフと微笑んだ。

従魔たちの中に、どのような仲間になりたいのか?という志の種が芽生えた。

『レナ様はとても慈悲深いから……それだけは心配ですけれど』
「そうでもないけど?」

レナの声。
ルージュが横を向くと、レナが起きている。
もそもそと目をこすり、うーん! と伸びをした。

『きっかり五分ね〜?』

ハマルがえへんと誇らしげなのは、ルールを守れたからだろう。えらい!

『わたくし、話し込んでしまいましたわね』
「ルージュに言っておかなきゃいけないことがあるな〜」

レナは、ルージュの頬に手を添えて自分の方を向かせる。

夕やけに赤く照らされたレナの顔は凛々しく。

「私はね、けして慈悲深くはないよ。たとえばギルティアたちを迎えることにしたのは、オズくんが呪いをうけたから助けるためが理由。従魔のために動いただけなんだー」

身内になったから大切にしてるの、とレナは苦笑する。

「世界ごと博愛主義になれるような強さじゃない。私は、従魔に強くしてもらってるんだ」

(わたくしのほうが、甘えた目で彼女を見ていたのかもしれません。尊ぶあまり。レナ様の主張はずっと同じだったではないですか……)

ルージュがうっとりとレナを見つめた。

『はあ……魅了されるのがわかります』
「そう?」

レナは立ち上がると、ルージュも引っ張り上げた。

そしてうしろにいた従魔たちに嬉しそうにぶんぶんと手を振る。
数倍のラブコールが返ってくる!!

「みんなー! ご主人様まだまだ頑張るねー! あっ」

▽レナがコケた。
▽さすがに今日は訓練しすぎた。

「み、みんなの力を私に分けてちょーだいー……!」
「喜んでーーーー!」
『あらあら。それじゃあ……』

ルージュ先生がうっとり笑った。

『交代ですわ。カルメン様』
『我々の出番というわけだな!!』
『レグルスさん、オズワルドさんも帰ってきていますしね』
『白炎の火種はあるということだ』
『あら、クーイズさんたちも帰ってまいりましたね。シートベルト、とやらもありますし』
『『ふふふふ!』』

▽カルメン先生に交代した。

▽夜狩りの始まりだ。
▽久しぶりに 敷地外に 狩りに行こう!

 

 

 

 

 

 

pixiv fanbox

 こちらにはイラストまとめ、創作裏話、ホームページ制作の記事を書いています。ぜひお楽しみいただけますように。
 100円ご支援いただけることは、書籍一冊買ってくださったのと同じ助けになります。
みなさまいつも応援ありがとうございます!