262:チョココ♪バレンタインデー3

 

庭に、わたあめモムが群れになってやって来た!
園芸組が、怪訝な顔で見上げて、驚愕する。

「うわあっ!」

▽チョココが 降ってきた!
▽大慌てでキャッチ!

『ハッピーバレンタインデー!』
「はあ、なんだよ……なんて言ってんの?」

パトリシアがチョココをちんまりつまんでいる。
リオ、クドライヤも苦笑した。
従魔以外には、異種族の言葉は伝わらないのだ。

クレハとイズミが走ってきた。

「ヤッホーチョココ、ハッピーバレンタインデー! それってなーに?」
「豪快な登場じゃーん。で、軽快な分裂じゃーん。どーしたのさ?」

『チョココっ♪』

▽チョココたちは 踊っている♪

しょうがないので、クレハとイズミはパチンと指を鳴らした。

<バレンタインデー。好きな人に告白をしたり、愛する人に感謝を伝える日です。その方法とは! チョコレートを贈ること>
「「なーるほど」」

キラアナウンスがとても便利だ。

わあわあ、きゃいきゃい、チョココが飛び跳ねて賛同しているため、抱えている方は大変。

パトリシアの肩の上で飛び跳ねたり、リオの服の中に入り込んだり、クドライヤの髪にもぐりこんだり。

ジレの方に行こうとしていた一体はイズミが抱き上げて「いま行くと毒でマズくなっちゃうよー?」と諭した。

「チョココたち、ヒト型になってくれないか?……なれないのかなー、こんなに小さいと」

『うーん? できるとしても〜、今は無理ですっ』
『わたしたちは食べられるためにここに来ていますし? ヒト型になっている暇はありませんし』
『一刻もはやくあなたがたに愛を伝えたいんです♪』
『『『スウィートミィ!』』』

「あーうん、通訳なくても今のは何となくわかった。スウィートミィって言ってそう」

パチパチ! 一斉に拍手。

「大正解、ってね。そんな感じだな。……じゃあちょっと休憩にしよう。おーいジレ!」

パトリシアが呼ぶと、遠くで真面目にせっせと作業を続けていたジレが、やっと振り返った。
集中していたようだ。

グロテスクな蜥蜴の姿から、小柄な少年に変身する。
花壇を通り過ぎてから、装飾保存ブレスレットを使ってヒト型になった。
少々、土汚れがついている。

「ありゃ、ジレ。今日はけっこー汚れ残ってんね、浄化(パージ)かクリーンしたほうがいいかも?」
「サディスティックにパーフェクトクリーンいっちゃう?」
「えっ……と……」
「「困らせてごめんよ」」

からかいすぎたと反省したクーイズが、よしよしとジレを撫でる。
さりげなくツノを触られたのは、緊張で滲んだ毒を吸収されたような気がしたが……ジレはされるがままに、おとなしい。

(ねーイズ? あの装飾保存ブレスレットの効果さー、イマイチみたいだね。夢組織の仲間が一生懸命ハンドメイドしたらしいし〜未熟というか)
(うん、クー。黄石は荒削りだし、紐は毛羽立ってるでしょ。でもとっても大事なんだろうなぁ……)
(マイラもアグリスタも、絶対に手放さないもんねぇ)
(うっかりプチンといかないためにも、強化とかしてあげられたらいいんだけど)
(リリーに頼もう!)
(宝飾レッスン頑張ってるもんね。あ、同系色のセットのブレスレットをオーダーするのも良さげ!)

うんうん、と頷くクーイズの両肩に、ちいさなチョココの姿。

ようやく事態に気付いたジレは目を見開いて、固まった。

「あ、チョココがね、ハッピーバレンタインデー! ってさ〜」
「説明しよう! バレンタインとは? 大好きな君にチョコレートを贈る日♡ らしいぜ!」
「「や〜ん甘々〜♪」」

ジレは、先ほどとはまた違った固まり方をしている。
赤黒い目がゆらいで、蜥蜴の尻尾がしょんぼりと静止した。

((ありゃ))
「「好きだよ!」」

「…………え」
「「いつもがんばってお仕事していてえらいね!」」
「…………ちょ」
「「とっても助かってるよ!」」
「……う……!? し、仕事なので……」
「「助かってるよ!」」
「……それなら、よかったと、思います……っ……でも」

ジレがうかがうように、クレハとイズミを見た。

「そんなに簡単に、好きだなんて言葉を、俺たちに使うのは間違いです」

ジレの純粋な苦悩くらいは、クレハとイズミでもカバーできる。

「いつも真面目にお仕事してることは、えらいし好き」
「それ以外にウムムな所はあるけどさ、ぜーんぶ完璧な存在なんてそうないよ」
「「今日はバレンタインデーだし。愛を叫ぼうぜ!」」

▽ジレの表情が「照れた」!

((よっしゃ! 改心成功))

クレハとイズミはぱちんとウインクした。

『『『早く食べられたーい!』』』

チョココがジタバタとしている。
太陽の光にあたったせいか、トロリと溶け始めている。小さくなったぶん、環境への耐久性がないようだ。

クレハとイズミは、ぱっぱっとジレの服の裾などを払って土をおとしてあげると、手を引いてガーデンの中央に戻っていく。

「おー。おつかれ。テーブルセッティングしといたよ、すごいだろ」
「はいはい、お褒めに預かり光栄ですよ」

パトリシアがちゃかしている。クドライヤがテーブルクロスを敷き、見事な手際で、銀のフォークとスプーンを並べてくれた。チョココたちを、ゴーストローズの蔦(ツタ)で構ってあげる手腕もよい。

手伝おうとしたけれど上手く出来なかったリオは、申し訳なさそうな顔をして、ちょこんと椅子に座っていた。
ローズガーデンに可愛らしい容姿の少年、そこだけは妙に絵画的な雰囲気が漂う。

パトリシアは青魔法[アクア]で周辺花壇への水やりを終えて、一緒に席についた。

クーイズとジレも加わり、六人の賑やかな食卓になった!

『『『『『お皿をくださいまし』』』』』

▽チョココの 成長が 眩しい!
▽キラがそっと目頭を押さえる。

▽お皿が 現れた×5

「皿が欲しいと言えば、異空間から現れる、それが赤の聖地。いや〜すげぇわ」
「完全同意っすね、すげぇわ」
「わ、わかります」

クドライヤが深く頷き、リオがキラキラした目で皿を眺めている。

「どしたの?」
「なんて美しい皿だろう、と」
「か〜っ。感性が違うね」

パトリシアが見たところ、シンプルな白の皿は(キラが出してくるんだから高級品だろうな)としかわからない。この感覚なのでよくモスラに叱られてしまう。

「愛(バレンタイン)の受け皿。という点もステキです」
「リオさぁ……頭の中お花畑? ちょっと見てみたい気もするよ」

リオの感性はきっとうつくしい花を作るだろうな、とパトリシアは想像した。

クレハとイズミが合体して、紫のひとりになった。

「クーイズにひとりのチョココ、って判断みたいだし?」
『クーイズにいさま、ねえさま?』
「両方〜」
『じゃあ、カンタンですね! どっちでもいいんですから』

クーイズは正直感心した。男子でもあり女子でもある、自分のことを複雑なタイプだと思っていたので。
チョココの純粋な考え方は、いっそ心地いい。

居心地が悪そうなクドライヤに、チョココが一言。キラの通訳<チョコリンガル>

『<ダイジョーブですよ、甘いお菓子を食べたら、愛されているってよーくわかりますからねっ>』
「ゾワゾワしますねー」

ジレがすこし同意して、こっそり首を縦にふった。

『『『『『ハッピーバレンタインデー! [|お菓子な魔法(スウィーツマジック)]』』』』』

▽ぽふんっ!

 

 

 

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