261:チョココ♪バレンタインデー2

 

レッスンフロア。
アップテンポのダンスミュージックが流れていて、ミラーボールが光と影を作り出し視界を混乱させる。
そんな中、四つのシルエット。
激しい戦闘訓練が行われている。

「はあっ」
「ヤッ!」

重い音を立てて、シュシュとリリーの飛び蹴りがオズワルドとレグルスに命中した。

しっかりと腕を交差させて受け身をとった二人は、シュシュとリリーを投げ飛ばす。

「だいぶ蹴りに重みが出てきてる! 上出来」
「やったあ♪ でもっ」
「まだまだまだおりゃあああァァア!」
「がむしゃらじゃなくて芯を貫け!……でも狙いは悪くないな!」
「「押忍!!」」

再び、蹴りと腕を交えようかという時……

▽チョココが 現れた!×4

「「「うわぁ!?」」」
「スキル[|重力操作(グラヴィティ)]!」

オズワルドのとっさの判断で、戦闘していた4人の体重がふわっと軽くなる。

ぽすんぽすん、とマシュマロのように蹴りが当たった。
チョココはきゃっきゃっと喜んでいる。

「た、助かった……よくやったオズワルド」
「おう。……かなり焦ったけど。チョココ蹴ったとなれば後味悪くてどうしようもないだろ」
「「分かる〜」」

シュシュとリリーがふわふわ浮きつつ、チョココの前にやってくる。

「どう、したのっ? そんなに小さくなっちゃって……」
「しかも分かれちゃってるし。不思議な現象だね? クーイズ先輩とはまた違うのかなぁ」

つんつん、指先で戯れる。

レグルスは軽すぎる体重に苦戦しているようだ。
足元がおぼつかない。
オズワルドが重さを戻すと、三メートルほど浮かんでいたレグルスはスタッと華麗に着地した。

二人はコツンと拳を合わせて、チョココに向き合う。

『『『『ハッピーバレンタインデー!』』』』

「……なにかそういうことを思いついたんだな」
「ぴんとこないけど、ハッピーなのはいいことだと思うよ? 押忍!」
「それとチョココの分裂が関係しているのか……?」
「んっ?」

クンクンと甘い匂いを嗅いで、鼻を動かしたリリーが、おぼろげな記憶を探る。

「んー? んー? あっ! 思い出したの。ミレー大陸の……トイ……トイ……パトリシアたちが、いたところでー。魔法菓子の、お菓子屋さんか、あったんだよねっ」
「へえ」
「そうかぁ」

唐突なリリーの思い出は、バレンタインデーへの疑問とはちょっと趣旨が違ったのだが、オズワルドとレグルスは優しい目で受け流した。
▽慣れてる。

「リリー。それとチョココが関係あるの?」

▽シュシュの豪速球質問!

「……魔法菓子、似てるなぁって! チョココと。前に見たのはねー、薔薇グミとかね、瞳の色が変わるキャンディ……雪遊びができる雲を作るもの、とか。あったよ」
『むむ。そういうものも作りたいですー!』
『食材魔物として嫉妬なのです』
『わたしたちだって魔法効果のあるお菓子にもなれますし? たぶん』
『愛を魔法に変えてしまいましょう〜』
『ラブアップチョココ』

▽チョココたちは 張り切っている!
▽ランクアップの 予感がする。

「それで、バレンタインデーって何?」

▽シュシュの豪速球質問!

『好きな人にお菓子を贈る、愛を伝える日らしいのです』

ホワイトチョココが愛にとろけながら答えた。

「ご主人様ご主人様ご主人様!!!!」
「落ち着けシュシュ……主さんのことはまた後で考えよう」
「だな。今はチョココがバレンタインデーのためにやってきた件で。つまり目的は?」

ここまで長かった。

『『『『スウィートミィ! みなさんのことが好き好き大好き!』』』』

「きゃっ♡」

リリーがうっとりと頬を染めて、三人もほうっと微笑んだ。

チョココがぱたぱた手を動かして『[|お菓子な魔法(スウィーツマジック)]!』

<従魔:チョココのレベルが上がりました!+1>
<ギルドカードを確認してください>

▽ぽふん!
▽レベルアップしたチョココの味とは?

▽チョコレートグミ赤薔薇ジャム入り
▽チュールリーフチョコレート
▽チョコデニッシュパン
▽ホットチョコレートドリンク

「うわーーっ!? 皿!!」
<はいはーい☆>

▽キラが 皿とコップを出した!
▽お菓子とドリンクを受け止めた。

ほっ、とみんながひと息つく。

「あ、危なかった……とっさにチョレートドリンクを手で受け止めようかとしてしまった……」
「レグルスのが一番危険だったよな」

レグルスは、赤いマグカップに入ったチョココドリンクを眺めた。
鼻をヒクヒクと動かす。

「いつもより濃厚なチョコレートドリンク……という感じか? 香りも色も濃い、ビターテイスト?」
「よかったねっ! レグルス、ホットチョコレート、好きだもん」
「まあ、そうだな。俺はシンプルな料理が好きだし、チョコレートドリンクはさっと飲めて栄養が長持ちするのがいい」
「諜報部は効率的だよな」

そういうオズワルドは、チョコデニッシュパンを持つ。

「それぞれの好物を出したみたいだな。それにしても……パンって。初めてじゃないか? こんなの」
「チョココがレベルアップしたのと関係あるのかも? お菓子のバリエーションが増えたとか」

シュシュはチュールリーフチョコレートを指先でつまみ、くるくると回している。
葉っぱ型の薄いチョコレートが、七枚。
色はホワイト。

「ご主人様に、エネルギーリーフをもらって進化したときのことを思い出すよぉ。えへ、えへへへぇ……」
「ヨダレふけよ」

ハンカチでシュシュの口元を拭いてあげるオズワルドは甲斐甲斐しい。
生あたたかい目で眺めていたレグルスを「なんだよ」と睨んでみせたが、もはや可愛いものだ。

「グミ!」

リリーがグミをつまんで、ミラーボールライトにかざしてみせる。
チョコレートグミの中心にうっすらと、赤色の薔薇ジャムが見えて、うっとりと舌舐めずりした。
赤い舌が唇を濡らして、大きくなった牙がキラリと光る。
最近、レナがリリーの吸血を痛がるはずである。

「それじゃ、チョココからの贈り物? ってことで……」
「愛情を伝える日、らしいからな」
「「かんぱーい!」」

四人がそれぞれのチョコレートスウィーツを、コツンと触れ合わせた。

まずはひとくち。

「ん! グミ……スイートなお味♡ それから薔薇ジャムは甘酸っぱくて。グミの形が、綺麗だよねっ。このまま花壇に咲いてそう」

「チュールリーフチョコレート。ぱりぱり歯ごたえが美味しい! クランベリーパウダーの赤色も好きだよ。うふふご主人様……ああ! アーンってしたいなぁ」

「チョコデニッシュパン、ビターテイスト。これすごい、焼きたてから30分経った辺りが一番好きなんだけど、まさにそれ。チョココよくピンポイントで変身できたな。素直にすごい」

「チョコレートドリンク、ビターテイスト……リッチな味だ」
「マシュマロ落としていい?」
「アリ蜜加えていい?」
「すまないが、甘すぎるのは好みじゃない」

リリーとシュシュのからかいにも、ふわりと笑って対応するレグルス。
いつもより表情が柔らかいな、とオズワルドは観察した。

▽全てを食べ終わった!

ふう、と甘く幸せな吐息とともに。

「「「「”好き好き大好き愛してる”っ」」」」

口が勝手に動いた。

がッ!! とレグルスとオズワルドが、自分の口を押さえた。
顔は真っ赤になっていて、耳が伏せてピクピクと、尻尾がブワッと膨れている。

((なんて恐ろしい魔法菓子だッ!?))

「なにこれ、すごーいっ……! お菓子の甘みがとても、”好き好き大好き”♪」
「ご主人様ご主人様、”愛してる”♡」

((やばい))

好きなもののことを呟いたら、自動的に”好き好き大好き、愛してる”が追加されるラブハッピーな魔法がかかってしまった。

(レナ様に会ったら?)
(主さんが現れたら?)
((確実にやばい!))

今日は部屋に引きこもろうかと、レグルスとオズワルドが思った瞬間、ドアが開く。

▽ミディと ルーカが 現れた!

「あー! 一歩遅かったノヨー」
「ほんとだ。ところで、レナを喜ばせるスペシャルサプライズ、みんなも参加してみない?」

タイミングが最悪というか、チョココの手のひらの上というか、赤の運命というか。

レナの名前を聞いた上で口を開けば、愛の告白がすべり出てくるのは目に見えていたので、レグルスとオズワルドは黙って頷いた。
尻尾がゆらりとゆれる。

シュシュとリリーはハイタッチして、愛の告白を歌った。
ミディも参加して、愉快なコーラスとなった。

 

 

 

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