236:レストラン会合2

紅茶を飲んで、一服。
お皿はほとんど空っぽになった。
あとは、バスケットからちまちまとミニパンを取り出してクーイズたちが齧っているくらいだ。

「サディス宰相。あの、うちのパーティでお預かりする夢組織のメンバーについて、尋ねてもいいですか?」
「ええ。こちらがリストです」

レナに求められて、宰相がすばやく書類をテーブルに置く。

「早い! 三名、この子たちで決定ですか?」
「そのように会議いたしました」

従魔たちも参戦して。

「最も難がないメンバーを選出しています。ご覧いただけますか」

レナが目を通す。
それぞれのステータス、それから現状の様子が書かれている。

「名前:ジレ
種族:煉獄火蜥蜴(れんごくひとかげ)♂、LV.15
装備:華族の衣装、服飾保存ブレスレット(黄)、※従順の首輪
適性:赤魔法[炎]、黒魔法[闇]

※体力:30
※知力:21
※素早さ:20
※魔力:18
※運:11

スキル:[切り裂き]、[暗躍]、[地を這う黒炎]、[毒溶岩]
ギフト:[体幹]☆5
称号:遺族、魔人族、精霊のトモダチ、犯罪者」

「名前:マイラ
種族:シルクゴースト♀、LV.10
装備:ワンピース、服飾保存ブレスレット(黄)、※従順の首輪
適性:青魔法[水]、黄魔法[付与]

※体力:12
※知力:24
※素早さ:15
※魔力:20
※運:14

スキル:[炎耐性]、[浮遊]、[スプリングシャワー]、[アクアボム]
ギフト:[虚無]☆3
称号:魔人族、精霊のトモダチ、犯罪者」

「名前:アグリスタ
種族:スケルトンホース♂、LV.12
装備:長袖シャツ、半ズボン、服飾保存ブレスレット(黄)、※従順の首輪
適性:黒魔法[闇]

※体力:20
※知力:14
※素早さ:30
※魔力:20
※運:8

スキル:[怨嗟の声]、[暗躍]、[幻覚]、[ネガティブオーラ]、[ロックオン]、[疾走]
ギフト:[共感]☆4
称号:魔人族、精霊のトモダチ、犯罪者」

「表示がおかしい……? この※マークって……あ、ステータスが表示より低下、ですか。詳細が出てきました。首輪による制限ですよね……?」

宰相が頷く。

「ええ。レナパーティの【仮従魔】となっている間は、首輪制限は必須でしょう。その後、うまく馴染んで従魔となり、魂が清らかになったことを確認後、首輪を外します」
「私の従魔であり、でも魂が黒い間は?」
「首輪のデザインを変えますよ。いかがでしょう?」

宰相はさりげなくルーカを眺める。

ルーカは耳を伏せて、猫ながら苦笑のような表情になり、でもしっかり胸をはると、チョーカーチャームがきらりと赤く光った。
レナがよしよし撫でる。

「わかりました。ではそんな感じで。どんなデザインだとその子たちに似合うかな〜って、あとでリリーちゃんと考えます」
「おまかせなのっ!」

パンで頬をリスのように膨らましたリリーが、はいはい!いえーい!と諸手を挙げた。
こんなにおてんばだけれど、アクセサリーデザインは優雅で素晴らしいのだ。

「あ、宝飾店メディチのクリエさんのところでリリーちゃんの宝飾のお稽古も。覚えとかなきゃ」
「やること、いっぱいだねっ。キラ先輩に……たすくかんり? お願い、しなきゃー」
<ハアアアアイ! リリーサァァン! マカセテェェ!>
「きゃっ」

リリーの身につけていた服飾保存ブレスレットから、キラの声。
なるほど、世界中に磁気を飛ばして、通話可能なわけである。

▽宰相のメンタルが…………まだまだ! 持ちこたえているぞ! 想定内だ!

「|砂漠の魂喰い花(デザートギルティア)について」

レナが慎重に尋ねる。

「ええと……名前はギルティア? でいいんですよね……」
「名付けられていないため、自らの種族名を口にします。夢組織もそのように呼んでいましたから、それでいいのでしょう。名付けしたい場合は、慎重に」
「心を傷つけてしまうかもしれないですもんね……信頼を得てからにします」
「賢明です」

宰相がニスロクに手の動きで指示、するとレナの前にプリンが現れた。

「ふふ。ありがとうございます」
「苦労をおかけしますね」
「まあまあ」
「それでも引き受けてくださったこと、感謝申し上げます。あの樹人の更生は一筋縄ではいかないでしょう。彼女はシヴァガン王国の囚人業務で一生を終えていたかもしれないところ、大きなチャンスをもらったのだと思います」

活かせるといいですね、と話す。
穏やかな声は、ノアがいるからなのか、レナパーティとの関わりで宰相が変わったからなのか。

「パトリシアちゃんが乗り気ですし、クドライヤさんも協力してくれますし。ギルティアさんが救いの縄につかまってくれますように……。あのお屋敷って、庭がとっても広いんです。だから私たちは樹人さんがいらっしゃるのは大歓迎! 教育頑張りますよ!」
「心強い。クドライヤを正規従業員にお望みですか?」
「んー。優秀な諜報員をくれるわけがないんでしょう? 週の半分は来ていただきたいなーって」
「しばらく住み込みで貸します」
「いいんですか! やったぁ」
「シヴァガン王国から通うよりも効率がいいですし、ギルティアの不手際でレナパーティの皆さんを傷つけさせるわけにはいかない。それは我が国の責任でもあります。見張らせます。寝床だけご用意頂けますとさいわいです」
「はーい。クドライヤさんひとりが24時間気を張ってるのって、大変じゃないでしょうか?」
「ロベルトも貸しますよ」
「やったー」

レナがうりうりとロベルトを小突く。
おおせのままに、と従順な返事が返ってきた。
もともとロベルトは、夢組織が仮従魔のうちは見張り業務の予定だったので、この会話はおあそびのようなものだ。

常識的な大人が増えたことで、レナの負担がはるかにかるくなったような気がした。
リゾート経営について、実際に住んでみたふたりからよいアドバイスがもらえるだろう。

疲れきった大人たちである。
どうすれば癒されるのか? うんうん、本当によいアドバイスがもらえそうだぞ!

レナがほーっと胸を撫で下ろして、プリンを掬い、膝の上の金色子猫のおおきくあいた口にポイッと入れる。
自分もひと掬い、プリンを食べる。

「『ン〜〜!』」

ふるふると震えた。
なめらかな舌触り、卵のゆたかな風味、シンプルな材料でていねいに作られている。

「ほんと、美味しそうに食べてくれますねぇ」

他の従魔たちにもプリンを配っていたニスロクがにこにこにこにこと、今後のサービスメニューを考える。
このお客たちの舌を喜ばせるのは楽しそうだなぁ、と考えながら。

「必要なお話は終わりですかね」

レナがのほほんとプリンをつついて、完全に力を抜ききったタイミングで、宰相がすこし言い澱み、

「そうしましょう」
「ぜんっぜん良さそうじゃないですね……!?」
「この和やかな雰囲気を壊してしまうのは申し訳なく。しかし一つだけ聞いてもらいましょうか」
「さっと聞きます!」

いなやことは早く終わらせて、あらたに来る魔物幼児たちのこれからの予定を立ててあげたいのだ。
レナが、どの魔物がやってくるか知ったのは、今朝なのだから。レナは。げふん。

(えーと、服飾保存ブレスレットを新たに買うから”アンベリールブレスレット”、服を買ってあげるためにエルフ服店”エルフィナリーメイド”、お屋敷の脱衣所を拡張して〜、それぞれが落ち着くまでは個室もあたえて〜)

「死霊術師(ネクロマンサー)の灰の郵送が終わりました」
「お疲れさまです。ああ、鎮めの墓地にって言ってた……」
「そうです。墓守たちしか入れない特別隔離区域。白魔法の祈りによって、怨念もいずれは浄化されるでしょう」

レナが顎に手を添えて考える。
あの怨念がそう生やさしく浄化されるだろうか……? 怨念というよりはマゾヒストなのだ。

「お供え物があると、墓守たちが浄化をしやすいのですが」
「ええ……じゃあ……これ……」

▽レナは 神聖ホワイトマッチョマンの種を 宰相に渡した。

種ケースを受け取り、内容を聞いた宰相にメンタルダメージ77777777。

「ぜったいに水で濡らさないほうがいいと思います。発芽します」
「ぜったいに水で濡らさないようにしましょう」
「このままでも、闇を抑えて、魂の浄化をしてくれる効果があるらしいですよ」
「恐ろしい効能ですね」
「魔改造の達人パトリシアちゃんが品種改良して、私が持っていたことで幸運変化して、シュシュが光の祝福かけたから……」
「それはまた……」
「お墓のガーディアンにしてもいいですけど」
「その手綱が取れる人物がいるならば考えてもいいのですが。指導向きの樹人がおりません」
「うちがクドライヤさん確保しちゃったからですか?」
「クドライヤでも、あの墓地に長いこといれば気が狂うでしょう。そういう濁った場所です。けして清らかではない」

墓守の一族がずっと土地を浄化していても、いたちごっこ、怨念の力というのは恐ろしく土壌を穢すのだ、と。
アネース王国でシルフィーネたちが呪われていたことを知るレナは、ブルっと震えた。

▽種はそのままお供えにしよう。

「今度こそ、終わりです」

宰相がグルニカをちらりと眺めて、言う。
グルニカも、魔王と同じく、話の責任者ということなのだろう。いるだけでオッケー。

ごはんを食べさせるつもりがないようなので、ちょっぴりかわいそうに思ったレナは、ニスロクにお願いして、持ち帰りお弁当セットを作ってもらった。
外出時は脳機能の制限をかけられているが、王宮に戻ってからはふつうに食事をできるはずだから。

「グルニカにまでお優しいですね。あんなに迷惑をかけられましたのに」
「ニスロクさんのお料理がすんっっっごく美味しいので、食べられないの辛いよねって思いました」

なんて嬉しい!! とニスロクがぱあっと笑顔になり、いそいそとレナパーティのぶんのバスケットも作り始める。
いつも「店長サービスしすぎですよぉ!」と止める従業員たちも、あそこにはスペシャルサービスしておいたほうがいいよな……と上客を特別な目で眺めるのだった。

そろそろ行こうか、というところで、ノアが語る夢組織の様子がレナの関心を引きつける。

「イラくんとは、蜘蛛の巣遊びをよくするんです。指の先から蜘蛛糸をだして、ええと、東方でいうあやとりみたいな」
「わー! すごいー! それ……お城の形ヨー!」
「正解ですミディちゃん」
「他には? 他には? 戯れの話も!」
「え、ええと、イラくんの蜘蛛糸は透きとおる銀色で、鏡みたいにまわりの景色を映すんですよ。芸術的だなぁって感心しています。そのうえ光の屈折率を計算して、蜘蛛糸を擬態させたりもできるので、種族特性以上にイラくんは頭がいいしさまざま考えて行動してるんだと思いますよ」
「「ひゅーひゅー!」」
「ええええ……」

仲良しみたいでよかった、とレナは安心した。
ひとまずイラのことは問題なさそうだ。
鏡蜘蛛の命綱ともいえる擬態の方法までていねいに教えているならば、反逆を企てていることはないだろう。

オズワルドの腕に視線を向けて、はやく呪いのアザがなくなりますように、とレナは祈る。

ドグマも寝ぼけながら、息子にいろいろ口に放り込まれて、食事を終えた。

「ごちそうさまでした!」
「ご苦労様でした」

▽レナパーティが店を出た。
▽魔王国陣が店を出た。

「まーた来ーて下さいねぇ〜! 食材を持ち込んでいただけたら、このニスロクが直々に料理を作りますかぁら〜!」

ニスロクがブンブンと手を振っている。
なんなら翼ととんがり尻尾もブンブン揺れている。

プッと吹き出しながら、レナたちは手を振り返した。

▽二日後にチョコレートモンスターを探しに行こう。
▽四日後に夢組織従魔を迎えよう。
▽六日後にギルティアを迎えよう。

▽帰宅して、ダンジョンの成長を確認しよう!

 

 

 

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