229:温泉入浴(男子たち2)

▽大浴場の扉を開けた。

「ふつうに遊園地! というか半分近く遊園地になってない!?」

魔眼で全体を見渡したルーカが驚きの声をあげる。

|緋々色黄金《ヒヒイロカネ》とスライムジュエル、赤薔薇がお湯に浮かんだちょースペシャル温泉の周りに、ぐるりとウォータースライダー!
お湯入りティーカップコースターにブランコ。
恐るべしキラワールド。

つい調子に乗って拡張しすぎてしまったキラがてへぺろと舌を覗かせた。

「「いえ〜い! ふつうに遊園地、サイッコーじゃん! これが我らのスタンダード!」」
「すべり台あるー。やったぁ、あれ行こーよオズー」
「……」

子どもたちが遊園地に向かってさっそくダッシュ! ……していきかけたので、大人たちが捕まえた。

「先に体を洗いなさい」
「髪も洗いなさい」
「それから髪が長い子はまとめて、風邪引かないようにしようね」

とても手際のいいしつけ。
しぶしぶとシャワーの場に子どもたちが集う。

▽クーイズが 合体した!
▽紫色の髪をきらきらんと輝かせる。

「オラオラァ! スキル[鉄砲水]熱魔法[ヒート]、ホットシャワー最強モーード!」

ドババババババババ!!
あたたかい水流が全員にぶつかった。

▽身体が洗われた(強制)!

「にゃははは!」
「やったなぁ〜!? クーイズ先輩、ありがとー! いい打撃だったぁ……んふふ……」
「ハマルーーー!!」

床にてろんと寝そべったハマルをオズワルドが引っ張り上げる。

「大理石で寝たら湯冷めするから!」
「そーいう叱り方〜? 興醒めでーす」
「キラ。主さんのパンプス1足出して」

スコン、とハイヒールのかかとでハマルを突いてやるとあっけなく起きた。

「髪洗ってあげるからおいで、ハマル。ほら、泡で長髪もどきにして遊ぼうよ」
「はーいっ」
「ルーカ、甘やかしすぎじゃないか?」
「ほら、僕ら全員が出ないと、ロベルトさんも温泉から出られないし? あの人雪豹だから、のぼせやすいと思うんだよね」

ルーカたちが後ろを向くと、さっさと髪を洗ったロベルトが温泉に浸かっていた。

ホカホカと湯気がロベルトを包んでいるためか、雪豹の獣耳がへにょりと伏せている。熱いのかもしれない。
それでも自分の好みで温泉の温度を下げたりはしないけど。

「早くみんなの髪の毛洗っちゃおう。称号[器用裕福]セット」
「「ぱふぱふ〜!」」

紫クーイズとハマルが声を合わせて、ルーカの前に並んだ。
きちんとバスチェアに腰掛けててえらい、とくすくす笑いながらルーカが褒める。

器用な指使いで頭皮マッサージしながら髪を洗ってあげると「「はにゃあ〜」」と二人は心地よさにとろけた声をあげた。

クーイズの髪は宝石を梳かしたみたいなつやつやの紫。
泡の中にあっても、ジュエルの輝きがきらきらと、泡全体を光らせるほど。

ハマルの髪はしっとりと柔らかくて、水に濡れるとボリュームダウンしてしまう。乾かすとまたぽわわっと広がるのだけど。
モコモコの泡でロングヘア風にアレンジしてあげると、「またレナ様への思いの丈を伸ばすの〜! よーしっ」と嬉しそうだ。

横からオズワルドがシャワーでハマルの泡をドバドバ流したので「こんにゃろー!」とプチ喧嘩になった。

そして子どもたちは遊園地に駆けていく。

モスラは丁寧にシャンプーしてから、さらに椿オイルで髪の毛をケアしている。
主人たちに撫でてもらう髪が傷んでいるわけにはいかない、と。

二人を洗い終わったルーカは、自分も鏡台の前に座って髪を洗い始めた。
まずは長い髪を根元までシャワーで濡らして、まっすぐにしていく。
クーイズのいたずらによって、肩にひっつくように乱れていた金色の濡れ髪が整った。

ぼんやりと湯気で曇った鏡に、金色長髪の人影が映っている。

急に背後が暗くなって……まるで金髪の亡霊みたいに見えてしまって、ゾワワッと背中を寒気が駆け抜けていった。

(ばあ!)

……影の魔物が後ろにいたのだ。
キュキュキュ、と鏡を拭いて、クリアにしていってくれた。

「あ、ありがと」

どういたしまして、と敬礼のような仕草をルーカにしてみせると、今度はロベルトに纏わりつきにいった。

「っ!?……冷ましてくれるのはありがたいが、ついでに驚かせるのは悪趣味だな」

ため息とともにそういう言葉を聞いて、ルーカは仲間意識を覚えた。
くす、と笑う。

寒気が走った体は、温泉の湯気に包まれて、またあたたかくなっていく。

「はー。びっくりしたぁ」
「そのようですね」
「うわっ!?」

びっくーん! と猫耳と尻尾の毛を逆立てる。

隣にいたモスラが呆れている。

「そんなに驚くとは貴方らしくない」
「モスラ。えーとね、なんだろう、気を抜きすぎてたから必要以上に驚いちゃったのかな?」

ふーん、とモスラのそっけない返事。
なにそれ傷つくー、と軽口を言って笑うと、モスラはルーカの猫耳をじっと見ていたようだった。

「……その耳が元気そうならまあ大丈夫なんでしょうね。はい、これ」
「あ、シャンプー。ありがと」

スライムジェルと花の蜜やハーブを配合して作られた、スペシャル美容シャンプー。リンスがいらないくらいツヤツヤになる。

レナパーティがいつも使用しているものを、アリスが魔王城にいる間にさらに改良したらしい。
非売品だけど、スチュアート商会のサインが書かれている。

レナパーティはみんなこの香りを纏っている。

温泉の方に歩いていったモスラの残り香を、猫の嗅覚で嗅いで、ああ種族変更したんだよなぁ……僕はレナパーティの一員でいるんだな、とルーカはしみじみ実感した。
きらんと赤のチョーカーが光り、ホッとした。

「ルーカティアスさーん!」
「なに? キラ」

隣にキラが座る。

「髪が伸びたから、ヘアアレンジやりましょう!」
「ヘアアレンジ」
「じゃあん、おさげ髪」

キラが濡れた髪を編んで、肩につくくらいのおさげを二つ作って、ケラケラ笑う。

「んー。じゃあリリーみたいな髪型とか?」

ルーカは頭の上の髪をまとめてみた。
あ、猫耳と被って面白いことになっちゃった、と苦笑する。

「次はくるりんぱハーフアップで御座います!」
「んー、じゃあツインテール」
「きゃあー! 猫耳金髪ツインテール! きゃあー! あとでマスター・レナに見せましょうっと」
「え、撮ったの?」
「常時録画で御座います。もちろんセクハラにならないように修正はしていますからご安心ください」
「まあいいけど」
「マスター・レナは私たちのことが大好きで御座いますからね!!」
「それを言われちゃあ、なんでもしたくなっちゃうよね」

くすくす、ケラケラ、ルーカとキラが楽しく髪型スナップを撮った。

女子たちも髪を乾かしながら、スナップを見てロビーで盛り上がっている。

 

 

 

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