226:大浴場3

一波乱あったわけだが、まあ入浴しましょうや!

脱衣所から大浴場に入ると、空気がぽかぽかとあたたかい。
湯気が裸体をしっとり包んだ。

ビジュアルの豪華さは見学した通り。

せっかくの温泉にバスタオルなんて粋じゃない。
ここはマイホームでもあるのだし、すっぽんぽんでくつろごう。

「いっちばーん!」

ミディが滑り込んでいく。

「こらこら危ないっお風呂場では足を滑らせやすいから歩いてっ」
「ミィーーー!」

▽イカスライディング!

腰のあたりからゲソ尻尾を一本生やして、バランスを保ちながらあえて滑って加速!

ばしゃーん! と温泉飛沫が上がった。

そのあとに早足で追いかけたシュシュが飛び込み、リリーは[軽業][護身武術]でハイジャンプ! 高いところから飛び込む。

三人娘のはしゃぎっぷりを見たレナは、どう注意すべきかとても悩んだ。

「いいですかー? ここはくつろぐ場所でーす! そしてエリクサーの温泉水はキラがとっても頑張って仕上げてくれたものだから、大切にしようね!」
<ああんマスター優しい♡>
「いた!?」
<いつだって皆様を見守っておりますよ! 常識の範囲内でねっ>

レナはキョロキョロするが、キラの分身体が飛び回っている様子はない。

<ここは私が管理するダンジョンですから>
「ああ〜」

ポン、と手のひらを打つレナ。
常にキラの感覚の中を誰かが駆け回っているようなものだ。

しょんぼりしている幼女三人を、レナがちらりと横目で見る。

「……じゃあさ。温水プールとか、この浴場の隅に創ったり、できるかな?」
<お安い御用で御座います! [ダンジョンメイキング]>

浴場の一角に光線が走り、その光が空間をレーザーカットするように形取った。
パチン! と指を鳴らす音。
<<ぱんぱかぱーん!>>と響く可愛らしい声は、クーイズの録音音声を流したのだ。

▽ドーナツ型の流れる温水プール!
▽くるくる長ーい滑り台!
▽キッズコーナーができあがった!

「「「っきゃーー!」」」

「待って三人とも、体を温めるために温泉に浸かって三十秒数えて、それから遊びに行くこと!」
「「「いーちにーいさーん……!」」」

レナが微笑ましそうにそれを眺めて「キサもまず一緒に行く? 後にする?」とそわそわしている美少女に声をかける。
「んっ!?」とキサがピクッと反応したので「みんなの様子を見守ってくれると助かるんだけど」「承知したのじゃ!」とフォロー成功。
キサも一緒に温泉に浸かって、数を数え始めた。

「温水プール……」
「お安い御用……」

遠い目をしていたアリスとパトリシアは(まあいつものか)と気持ちを切り替えた。

「ダンジョンメイキング、侮りがたし……くっ、どこまで報告すべきか本当に悩むな、というかなんでもできるんじゃないか……!? なんでもの範囲とは……報告……キラ先輩は成長もするし……」
<オホホホホホホホ! レグルスさん、後ほどシヴァガン王国への報告書類サンプルを差し上げますね! 上手いこと調整しますよぉ?>

……レグルスは先輩にお任せすることにした。
愚直に頑張るだけでなく上手に手抜きすることも大事だ、と言ったクドライヤの言葉を思い出して、己を納得させた。
もちろんクドライヤはこんな事態までは想定外だが、まあなすりつけておこう。

つっ立っていたお姉さんたちを、幼女たちがニコニコ手招きして呼ぶ。

「うん、私たちもいーれて!」

「っきゃー! ご主人様〜!」
「あっ、シュシュ、中断しちゃって……いくつまで数えたか……分かんなくなっちゃったよ!?」
「えーとね、さんじゅうナノヨー!」
「ミディ、それはちょっとズルイのじゃ。フフ、では二十五から再開しよう」

まったりとみんなで温泉に浸かる。
幼女の甲高い声もどこかゆっくりと、エコーする。

とろりとしたお湯が肌に浸透して、ぷるぷるに潤していった。
転んで擦りむいていたレナの膝のすり傷も痛みなく治る。

身体の芯から温められて、ほうっと息を吐くとほわほわ浮かんでうさぎや猫の形になった。
みんなギョッとしたが、「そういう空間」らしい。
ダンジョンダンジョン、なんでもあり!

ぷうっ! と思い切りミディが息を吐くと、イカリングができあがった。
イルカの如く、素っ裸にイカゲソ尻尾の幼女が曲芸を披露する。

温水プールでやろうな。

「「「「さんじゅう!」」」」

幼女たちが走り去っていった。

途中、装飾保存ブレスレットを起動!
機能性バッチリな水着姿になる。

アリスとエルフ服飾店の共同開発品、カラフルな花柄でフリルがひらひらととても可愛い〜!
水による摩擦抵抗を無くすので、ビュンビュン滑り台で加速できることだろう。

滑り台でくるくると降りてくる幼子たちを眺めながら、レナがほうっと息を吐いた。
ハート型の湯気になる。

大人たちはしばらく沈黙して、まったりと手足を温泉に浸らせた。
浸かる栄養剤みたいなものだ。
こうしているだけでも、1UPしたような気がしてくる。

カルメンとルージュも裸体ビジョンとなって浸かり、実際は体をお湯がすり抜けているのだろうが、雰囲気を楽しんでいる。
ぽかぽかする、という感覚はあるらしい。

 

 

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