224:大浴場

▽浴場についた。

広がる|緋々色黄金《ヒヒイロカネ》の下地が、温泉の浴槽となる。
贅沢な素材を踏みにじって入浴するのだ。
えい! えい! とね!

大理石の床に、赤色のスライムジュエルも混ざって薔薇の模様になっている。
クレハが誇らしげだ。

「きんきらきんで目に眩しいくらいだよ……!? こ、このお風呂で落ち着く予感がしないんだけど……」
「乳白色のラミアの湯を流し入れて、湯気が発生したら、ちょうど目に優しい色味になるよう計画しておりますので心配はご無用で御座います☆」
「このしっかり者〜」

レナは力が抜けきったデコピンで、キラのおでこをつついた。

「ここがラミアの里と繋がるのじゃな!? キラ先輩!」
「そうですキサさん。早速始めましょう。ゲート・オープン」

キラが星の杖をくるりっと回して、光の輪を作る。

それを浴槽の大きさまで広げた。

ポコ、ポコ、と黄金の下地に水滴が滲み出てきた。
キラがウインク。

温泉水が流れ込んでくる!
ざっぶーーん!

「うわああああ!?」
「[サンクチュアリ]!」
「あっ、ありがとう御座いますルーカティアスさん☆ はい、ゲートクローズ」

キラがパチパチ二回ウインクすると、空間の接続が切れて、温泉の波が落ち着く。

ルーカの咄嗟の結界により、レナたちが服を濡らすことはなかった。
レナが撫でて褒めてあげる。

「キーラー……わざと?」
「彼女がわざとイタズラしたようですよ?」

▽カルメンがにやにやとレナを眺めている!
▽レナは 対応を迷っている。

「……こっちにいらっしゃいカルメン?」
『ほう、我々に何を施す?』
「お説教です! 危ないからキラの接続を邪魔するようなことはしちゃダメ! 何かイレギュラーが起こるかもしれないんだからね。ここは異……ラナシュなんだし」

ロベルトがいることを思い出したレナ、ファインプレー。

ヒクヒク動いているロベルトの雪豹耳をちらりと確認。
小声で「ミディ、ゴー!」「イートミィ!」「やめなさい!」というやりとりがあった。

▽この間、カルメンは放置プレイ。
▽マゾヒストがゾクゾクと昂ぶってきている!

「もうしませんって言って? カルメン」
「ククク、キラの空間魔法の邪魔はもうしない」
「約束ね!」

これがレナの新たなフラグになろうとは。

カルメンとキラがそっと目を細めていたことは、眼差しがとても柔らかかったので、背中を向けてしまったレナは知ることができなかった。

アツアツの湯気が立ち昇っている。
ほかほか、レナたちの体は早くも温まってきていた。

「源泉に近いところから引きましたから、少しお湯の温度が高すぎますね……」
「じゃあ、キサに調整をお願いしようかな?」
「ミィとロベルトおじさんも〜!」
「……三人で、うちの子たちの指導をお願いしても?」

レナがちょっと笑いをこらえながら、ロベルトに頼んでみる。

「いいですよ」

基本的にロベルトは指導を断らない。

一人でできるかな? と緊張していたキサは、ホッと安心したようだ。

「ミィね、氷魔法はまだまだナノヨー。でもお水はたっぷり出せるの!」
「ではミディがゆっくり少しずつ水を足す訓練。俺とキサ姫で温泉を冷やし、適温に調整しよう」
「了解なのじゃ!」

ミディの魔法は豪快だ。
それに子どもらしく注意力散漫で、もしかしたら毒を混ぜかねない。
それを、成長させる訓練にする。
毒は混じってしまってもキラがエリクサーにしてしまうので問題ない。

気持ちだけサポートするため、イズミがミディと手を繋いであげた。

「ミィ、頑張るノヨー!」
「ちょっとだけ、ね!?」
「ちょっとだけ頑張るノヨー! 青魔法[アクア]」
「うんその調子ィ」

ミディとイズミがケラケラと笑う。

魔力が水となり、温泉に少しだけ混ざっていった。

「温度は? ルーカさん」
「あと二度下げると適温」

キサとロベルトが唇に指先を当てた。

「「[氷の吐息]」」

ヒュオッ! と涼しい冷気が漂い、レナたちの火照った体をほどよく冷やしてくれて、心地よく目を細める。

ルーカが手を挙げると、二人は口を閉じた。

キラが杖を振り、水面がキラキラと光る。

▽温泉完成!

「効用は、疲労回復、お肌すべすべ、持病改善、幸運付与…………幸運付与!?」
「すごくすごい! だけどルーカさん、幸運付与は分かりますけれど、あなたの場合は期待して長風呂してのぼせる未来しか見えないからほどほどにしましょうねっ! ネッ!?」
「ウン!」
「本当に!?」

綺麗な笑顔で猫耳を揺らすルーカを見上げて、レナがものすごく心配している。

「レーナ? クーとイズは今日、男湯に入るからさー」
「弟分の調子しっかり見ててやるんだぜ!」
「ぜひお願いね!」
「「ういっす」」

クーイズが申し出てくれたので、レナは二人をぎゅっと抱きしめた。
にししっと笑う二人は、従魔の中でも年長者でしっかりしていて頼れる存在。

「一番どうするかわかんなかったクレハとイズミは男湯ね。キラはどうする?」

性別不詳の従魔もいるわけで。
レナは丁寧に希望を聞く。

「んー。人数割り的に、男湯の方に行きましょうかね? 女湯にはカルメンさんとルージュさんもいらっしゃいますし」
「ああ確かにね……それでいいの?」
「はーい! 明日はマスター・レナのお背中をお流ししますね♡」
「じゃあ、お願い」

レナはクスッと笑って、快諾した。

中性的な容姿のキラは、胸はぺたんこで性器もなく、食事はエネルギーに変換するのみという特殊な体だ。
まあ、[ダンジョンメイキング]の一環で自分の体を作り変えることもできるらしいので、必要であれば男子、女子として生きることもできる。

「マスター・レナたちから先に、お湯をどうぞ!」
「ありがとう。甘えさせてもらおうかなぁ。楽しみー! あとのみんなはロビーでくつろいで待っててくれる? 大人数で初めての浴場だから、ちょっと時間かかっちゃうかもしれないし」

「はーいっ」
「髪乾かす時には呼んでね! クレハドライヤーでお助けするよん」
「ゆっくりくつろいできて。ちょっ、ハマルはこっち」
「えええボクもまたレナ様とはーいーりーたーいー! オズ離してー!」
「……はあ。主さん、一回ギュってしてやって。あとこれハンカチ」

レナが受け取ったハンカチで涙を拭った。

「うわあああんハーくん大きくなったよねぇ! 成長が嬉しくもあり名残惜しくもあり……!」
「レナ様〜! つねって」
「……」
「痛みの余韻でいつまでもレナ様に触れてもらってるような気持ちでいたいんですー!」
「…………しょうがないな」

……キュ、とレナがハマルのお餅のようなほっぺをつねる。
薔薇色に染まった。

ハマルの主張を聞いた従魔数名が戦慄している。

(いつまでもご主人様に触れてもらってるような心地!?!?)

マゾヒストによる沼落とし。
今回はマゾが増幅しなかったが、ハマルが成長してさらに口上手になるであろう未来が恐ろしい。

「……撫でて」
「えっみんなも!? いいよ!!!!」

しばらく離れることになる従魔たちにコミュニケーションをおねだりされたレナは、満面の笑みで応えて、ホクホク顔で浴場に行くのだった。

脱衣所が修羅の場とも知らずに。

 

 

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