219:【赤の教典】

「オズくんとの出会いを本にしたいの!」
「やめて!」

レナが高らかに主張して、祈りの手を天井に向けて突き上げた。
オズワルドがレナの二の腕にぶら下がり、体勢を崩す。

「うわっ」
「[|重力操作《グラヴィティ》]……軽く」

座り込んだオズワルドの足の上に、ふよふよとレナが降りていく。

「ありがとうオズくん。とってもいい子だよね、本当に大好きだよ! だからね本にしよう!?」
「あるじさっ」
「正しくは赤の教典ですね」

キラがずらりと、これまで作ってきた「旅立ちのレナ」「友人とレナ」「赤の女王様・爆誕」「緑精霊とレナ」「船旅とレナ」「女王の風格」……と分厚い本を並べていく。

こういう攻め方をされると、オズワルドも断りにくく、主さんやめて、と言いかけた口をいったんつぐんだ。

むぐぐ、と唸って耳を伏せさせ、主人のきらめく笑顔と自分の羞恥心とを天秤にかけて、盛大に悩む。

なお内心のレナはタイトルに悶えているが、(オズくんの説得まであと一歩!)となんとか笑顔を継続している状態だ。

「大丈夫、大丈夫! 僕ももうね、出会いから全部本にされて書かれているから…………ね! 仲間仲間! ようこそオズワルド!」
「ルーカの笑みの闇が深いんだけど」

「クーイズが明るく慰めてやるんだぜ! いえい!」
「キラが独自に情報収集した宝石黒歴史の袋とじページがあるんじゃなかった……? 笑みに闇が深い気がするんだけど」

「私、リリーが! オズを励まして、あげるのだよっ!」
「うん、リリーは汚点が無い気がする……そっかぁ……」

「ほらほらオズ〜、ボクたちとの出会いを記録しちゃおーよ? レナ様とは初期にいろいろあったけどさー。戯れって〜、恥じらうものじゃないでしょー? 嬉しい愉しい悦びだよー! んふふー」
「自己肯定がありまくるとこうも強いかよ……ハマルらしい……。……ん? リリーも汚点が無いというよりどちらかといえば自分が気にしてないだけなのかも……? つよい……」

「魔王様も宰相も一緒ですから、恥ずかしいのは自分だけじゃないですよ。頑張れ!」
「さりげなく恥を強調するとこお前の腹黒さが出てるからなモスラ? あと応援がすげぇ雑」

「私も出てるノヨー!」
「ミディは……クラーケンストーンか」

「あがあああァァ!! ご主人様に無礼をご主人様に無礼をご主人様に無礼を……ッ! シュシュのばかばかばか! でもおバカなおかげで(?)ご主人様の人格の素晴らしさを綴った物語になった……? くっ、赤の教典最高ォ!!!!」

シュシュがまばゆい光を放ち四枚の自由の翼をバサァッと広げたので、言葉はアレだったがひどく神々しい光景になった。

ここはキラダンジョンの中。
つまりはキラの思うがまま、華やかな光を散らして追加で散らしてレッツパーリィ! と盛り上げに余念がない。

「俺の場合も……そういうことになるのかなぁ……」

出会いのしょっぱな、ツンデレ9:1をキメたオズワルドは、比較的シュシュと従属の経緯が近い。

遠い目で、光を放つシュシュをぼんやりと眺めた。

「いつまで床に座っているつもりだ? オズワルド。主人も床に座らせているという自覚を持った方がいい」

レグルスがひょいと、座り込んでいたオズワルドと軽くなったレナをまとめて抱え上げて、ベッドに運ぶ。
そっと降ろした。

「ありがとレグルス」

……顔面蒼白である、と確認した。

「あー、お前も……似たような経歴だもんな……ドンマイ、レグルス」
「う……ッ!」
「魔物使いとの従魔契約なんて絶対いやだ? からの、俺が必ず守ってみせますご主人様?」
「ええい! あえて繰り返すな、オズワルド! 底意地が悪い!」

真っ赤になったレグルスと、言ってて結局恥ずかしくなった赤ら顔のオズワルドが、むっすりと睨み合う。

「みんな可愛い〜!!!!」

レナの前でそんなことをしていると、ぎゅーっと抱きしめられるに決まっているのだ。

わしゃわしゃと髪を撫でられる。
ぼふっと幻覚の炎をレグルスが纏い、オズワルドはため息をついた。

二人は、従魔契約の効果もあり急速に気持ちが落ち着いていくのを感じて、はあー……と肩の力を抜いて、レナに身を委ねた。
ネコ科のレグルスは喉の下がポイント、犬科のオズワルドはどこを撫でられても心地よさを感じる。

パシャリ、とフラッシュが三人を照らした。

三人の後ろには、なぜか従魔たちがサッと並んで、ピースをしている。

ふやけきっていたレグルスとオズワルドは、ビクッと飛び上がった。

「いえーい、ベストショットなのじゃ!」

キサがにんまりと美しい微笑みを浮かべて、パンドラミミックの本体を振ってみせた。

「真正面に回り込まれて気付かないとは。……まあ、諜報部員がそれくらい心を許す時間があってもいいだろうが」

キサの隣で同じくにんまりと笑っているのは、ロベルトである。
レグルスの羞恥心が燃え尽きて灰になった。

その後、レナの、どうしても! というリクエストで改めて、キサとロベルトも含めて撮り直す。

「いやー、いい一枚になりましたね! パトリシアさんとアリスさんも一緒に入れて、大集合写真マンゾクマンゾクぅ☆」
「カルメンやルージュ、影の魔物たちも一緒に写っているから……うわぁ背後最終列、心霊写真みたいになってる」

レナがしげしげと画面を見ながら感心して言うので、ルーカが笑い崩れた。

わいわいと大人数が集いながら、みんながだいたいレナの側から離れないので、こんなに広い空間なのに小ぢんまりとまとまっている。

その輪の中に当たり前に自分がいることに、なんだかホッと安心してしまったオズワルドは「本、別に、いいよ」と小さな声でレナに囁いた。

「や、やったーーーー!! バンザーイ!!」

レナが両手を上げてこれでもかと喜びを露わにする。

その様子に、ふふっと数人が微笑み、数人がレナのまねっこをして、一人が鼻血を出して大騒ぎだった。

キラが出会いの記憶を文字にして、紙に綴っていく。
光の線を文字の形にして、宙に浮かせた紙に刻むという圧倒的なパフォーーマーーンス!!

赤の紐で綴じられて、また一冊の「赤の経典」ができあがった。

レナたちの旅は、まだまだ続くー!
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