206:新たなステージへ

『では〜♪ おやしきの再生をはじめましょうー! そのために私がきたんだもんねー』

大精霊シルフィネシアことネッシーが、にぱっと笑った。
彼女と因縁があるイヴァンも退治したので、とってもごきげん。
もはや恐れるものは何もないのだ。

『キラの電波召喚のおかげで今、とてもいい気分よ〜♪』
「えへへん! と、ここでは胸を張っておきましょう」

キラが得意げに腰に手をあてて、ウインクした。
仲間数人がぷっと吹き出して、笑う。

空気が華やぐ。

『屋敷の再生……か。ふむ。太古のならわしでは、信者たちが聖霊に願いを乞う時、祈りの踊りを捧げたものだが。現代ではどうなのだ? ネッシーよ』
『あっ! それ楽しそうでいいね〜! そうしようよ、いま、大精霊がきーめたっ』

ネッシーが「いえい!」とカルメンに手のひらを差し出す。
カルメンはにやりと笑って、ぱしんと手を合わせた。

▽大精霊シルフィネシアと 白炎聖霊カルメンが 親友になった!

((ああああああ))

ロベルトとマリアベルの苦悩は今更だが、アネース王国との国家間調整も考えると、より頭がいたい。

((頑張って下さいねサディス宰相……))

何事も適材適所だ。
実戦派の護衛部隊と魔王はトラブルの現場対応、頭脳派の宰相は打ち合わせなどの内部事情をお願いしよう。
サディスティック仮面? 宰相とは無関係ですけど? のスタイルである。

『踊るには……みんな、疲れすぎているのではないかしら……』

屋敷精霊が困ったように控えめに発言した。
段下にいる従魔たちを眺める目は、もともと魔物使いであったときの彼女らしいいたわりと慈愛に満ちている。

疲れているのは自分のせいだわ……と思いつめて、肩を落とす。

レナがそんな屋敷精霊の肩を抱いた。

「ルージュ。貴方との縁も、きっと赤の運命なのだわ。私たちと出会ったこと、喜び誇ってくれてよくってよ!」

薔薇色の瞳が見開かれて、レナの凛々しい笑顔を映し出す。
レナは、ルージュの瞳に映った真っ赤な姿の自分を視た。

「(さすが[赤の女王様(極み)])」
「(こらルーカさん、ちゃかさないのっ)」

ルージュは花びらが開いていくようにゆっくりと優雅に微笑むと、貴族のお手本のようなきれいな|淑女の礼(カーテシー)を披露した。
深く膝を折り、しばらく、そのまま。

『赤き衣を纏いし魔物使い、レディ・レナ。貴方の鞭さばき、本当にお見事でしたわ。わたくしも魅せられてしまいました。この赤きご縁に感謝を……』

ルージュが背筋を伸ばし、レナの鞭に触れる。
レナは微動だにしなかった。
もう、これが自分のものだと確信しているからだ。

その様子を嬉しそうにルージュが眺める。
生前、彼女自身も開花させられなかった薔薇鞭を不慮の事態とはいえ完全な魔道具として目覚めさせ、姿を見られたこと、適切な魔物使いが所有したことが嬉しかった。

『貴方にこそふさわしい薔薇鞭。本当によくお似合いですわ。……あとは鞭攻撃ができれば完璧ですけれど。
レディ・レナは[精霊の友達]の称号をもう持っていますから、わたくしからあげられるものは限られているのです……。そう、鞭攻撃の指導』

「(まじですか!?)」
「(本気みたいだね。ご主人様頑張って!)」

『と』

「(と!?)」
「(ご主人様ちょー頑張って……)」
「(テンション下げて不安煽るのやめて下さいルーカさぁん!)」

『このお屋敷、そしてわたくし自身を娶って下さいませ。従えて?』

ッキャーーーーーーーーー!! と従魔たちから黄色い歓声が上がった。
精霊に尽くされるご主人様すごい! 知ってた! といつもの主人喝采である。

ロベルトとマリアベルの目玉が飛び出さんばかりだ。
グルニカは爆笑した時に本当に義眼がポーーンと転がっていってしまった。慌てて追いかける。

(わ、私、どうしたらいいのおおお!?)

レナの動揺により間が開いたので、キラがフォローに……フォロー……フォローとは、なんだっただろうか……。

「ただ頷けばいいのですよマスター・レナ! 宣誓みたいなものですから。すでにこの屋敷はパンドラミミック・キラが掌握した、ということは、屋敷精霊ルージュ様は私の配下という立ち位置でして。従魔の一員のようなものなのです!
あ、同じく私に召喚された大精霊シルフィネシア様も今ばかりは配下という立ち位置ですね!」

すでに賽は投げられている。
特大の賽だ。
レナは賽に押しつぶされずにいられるのか!?

▽運命の時!

ノリに乗ったネッシーも「よろしくおねがいしまーす!」と頭を下げてレナに手を差し出してしまった。

魔王国陣の心臓がバックンバックンと早鐘を|殴って(・・・)いる。
グルニカの心臓はシヴァガン王国の研究室でうにょうにょ動き出したので、エリート研究員達がパニックになっていた。

▽運命が 重い。

レナは……

「よろしくてよ! たくさん可愛がってあげましょう」

二人の手を取って言い切ったァ!
従魔がやんややんやと盛り上がる。

「キターーーー! さっすがマスター・レナ! 素敵! 痺れる! 憧れちゃうぅ!! この素敵タイミングを逃してなるものか! 私の額のミラーアクセサリーにも、触れてもらってもよろしいでしょうか?」

キラが素早くおねだりした。
なにやらワクワクと企み顔だ。

しかしレナの両手は塞がっている……と気付く。首にはカルメンの手が巻き付いていて、精霊・聖霊まみれ。

「んー、触れて頂きたいのですが……あっキスでもいいですよ? 私たちが出会ったばかりの頃、通話する際によく画面に唇が触れちゃってたじゃないですか? きゃっ♡」

ちゃかしてクネクネした。

成長したキラはレナよりも少し身長が低くて、ちょうど目の前に額がある。

特大の覚悟完了を終えていたレナは顔を寄せてそのままミラーに唇を触れさせた。

「今日、とてもよく頑張ったわね。キラ、えらいわ」
「……しんじゃう……人型だとやたらと照れるものなのですね……!? 神になるからしなないけど私のナイステンションがしんじゃうっ……ッアーーマスターーのためにアップデート頑張っちゃうんだからあああーーうわぁん! そーれ!」

キラの額のミラーアクセサリーに、アップデートのラナシュ文字が走った。
先ほどのキスは、進化のギルドカードタップと同じ意味があったのだ。

キラが眩しい光に包まれる。
頭の上に、輝く輪が浮かんだ。

「………アップデートが完了致しました。パンドラミミック・[|黙示録(アポカリプス)ver1]で御座います!
私はマスター・レナの栄光の道を記録し続けます。信者を貴方の教えの通りに導く記録者となる。
ラナシュ世界に伝説を刻むのです!
これからも神を目指してより頑張っちゃいますよっ」

宙に浮かんで、かっこいいキメポーズ。

「[創造者]ギフトもより極まっておりまして。
まずは小世界の神──[ダンジョンマスター]とでも呼んで下さいませ」

<従魔:キラが、称号[ダンジョンマスター]を取得しました!>

▽キラが 進化した!
▽神に一歩近づいた!
▽やったあああああああああ!
▽やっぱり夢は掴むものですからね☆

▽おっと……いつもの調子に戻ります。

「あらあら、キラ、顔が真っ赤だけれど?」
「だってーーだってーーマスターが尊いので。ふふふふふふふふふ!」

むず痒い気持ちと途方も無い嬉しさをごまかすように、キラが照れ高笑いした。

「……さあ、みっなさーん! ぽかんと口を開けて私の成長に驚いている場合ではありませんよっ。これからもよろしくお願い致しますね☆
体力回復してー、宴じゃーー!」

キラの一声で、シャボンフィッシュがぱちぱちん! と弾けてエリクサーシャワーを降らせる。

レナがふうっと息を吐く。
さあ、主人としての命令を。

「ダンジョンマスター・キラ。仲間のルージュと手を取り、お屋敷を作り変えなさい」
「仰せのままに!」

▽Next! お屋敷を再生させよう
▽踊れー!!!!

 

 

 

 

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