203:目指せ終決!3

漆黒のドラゴンを黄金の光が力強く押して、廊下の端の壁を突き破るッッドゴォーーーン!!!!!

ドウッ!! とドラゴンが数メートル吹っ飛ばされて、倒れた。
とても硬い壁を尻で突き破ることになったため、甚大なダメージを負っている。

ぶるるっ! とハマルが誇らしげな鼻息を吐いた。

『やったねハーくん! サポートありがと、リリー』
『えへへー。みんなの勝利なのですよー』
『クーイズ先輩、成長おめでとう、なのっ』

従魔たちがお互いを讃え合い、盾となっている紫クーイズはブリリアントに輝いてみせた。

「ここ……隠し部屋なのかしら? 食堂……?」

にこやかに紫スライムを撫でていたレナが、不思議そうにこの部屋を見渡した。

ステンドグラスが飾られた、まるで教会のような雰囲気の広い一室には、大きなダイニングテーブルにたくさんの椅子が置かれている。

「私たちが侵入して来た廊下と同じところを戻ったはず。それなのに、どうしてこんな部屋が? …………。……屋敷の精霊は、どうしてもこの場所を守りたかったのかもしれないわ」

レナは鮮明にイメージする。
この食堂での光景を。

屋敷の主人と従者・従魔たちはともにテーブルを囲み、食事を楽しんだのだろう。
美味しい食事を食べ、談笑し、そんな優しい思い出をきっと何者にも奪われたくなかったのだ。
宝箱さえ暴かれた荒れ放題の屋敷の中で、この隠された一室だけは、金の食器(カトラリー)も盗難されずに存在している。

この部屋も火災に見舞われていたが、亡霊が精霊となり屋敷を作り変えた時に、修繕した。
その状態を、マルクが[|夢の世界《ドリームワールド》・反転]で維持しているということ。

今も、まだ。
正気を失っているが、マルクは仲間たちの安全のため、スキルを継続している。

レナは倒れている漆黒のナイトメア・バクに視線を移した。
リリーの[幻覚]が解かれて、その傷ついた姿をあらわにしている。

マルクの身体に纏わりついていた怨霊は、先ほどまで身体を噛み付いたり引っ掻いたりと暴れていたが、この部屋に入ってからは嘘のように大人しくなった。
怨霊の拘束が解かれたため、スイと精霊がぐったりと床に倒れている。

レナのポシェットから肘まで出ていた黒い腕は(あのアンデッドたちはもう大丈夫そうかナ)と引っ込んだ。
ポシェットの揺れが収まる。

マリアベルがハマルの頭から飛び立って、精霊の元に辿り着いた。
鞭を握りしめていた拳に、手を重ねて、そっと開かせる。
精霊の手は血のように赤黒く染まっていた。

「大変、だったね」

精霊をライトフェアリーの癒しの光が包む。
堕とされてしまった精霊は、苦しそうに呻いたが、外傷はすうっと消えていった。

「よかったぁ、効果があったー! まあ、あたしミラクルガールだし!」

マリアベルが涙を浮かべながらカラ元気で笑う。
精霊を縛っていた光の鎖の拘束もいつの間にか無くなっていて、「ほらほらミラクルガール!」とVサインした。
リリーがサインを返してあげた。最大のご褒美だ。

鞭をレナの元に返す。
精霊は取り返そうとはしなかった。

目を開けたもののふらふらしている精霊を、マリアベルがステンドグラスの下に導いた。

色とりどりのガラスは、赤いドレスを着た歴代最強であった魔物使いと、様々な魔物たちを描いている。
魔物が主人を包むような配置だ。

ステンドグラスから優しい光が差し込み二人を照らす中、精霊は涙を流した。
涙は赤黒く血のようで、不気味に頬を伝う。
次第に毒素が抜けるように、透明になっていった。
それとともに肌が白くなめらかに戻りはじめて、マリアベルは感激したように抱きついた。

精霊が首だけ動かして、振り返る。
口元がすうっと微笑んだ。

引き寄せられるように、ゆっくりと怨霊たちが精霊の方に向かう。
ステンドグラスの光に触れたものから透き通って消えて、成仏していった。

精霊は最後まで見届けて、流した涙はとても綺麗に輝いた。

怨霊の衣をなくしたナイトメア・バクはみすぼらしく無残な姿で、まるで死んでいるように横たわっている。
半分《・・》は元々死体のようなものだが。

「…………っ」

スイがぴくりと動き、呼吸をしようとして、喉を切り裂かれるような痛みに咳き込む。
びくびくと身体が跳ねた。

(マルク様……!)

手を伸ばすと、ぬるりとした感触と血のにおい。

このように棘(イバラ)で刺される道だと、納得して進んでいるつもりだった。
それでも、最愛の人から漂う死のにおいは、スイの進撃を立ち止まらせるのに十分すぎる衝撃だった。

大丈夫です、と言って鼓舞しようにも、声も出せない。
ありのままの現実と向き合わなければいけないのだ。もう声の誤魔化しはきかない。スイは心底恐怖した。

ひくっ、と息を吸うと、肺が引き攣るように動き、また咳き込んだ。

(どうしたら……っわ、私は、どうしたいの?)

助けて。

それはマルクと出会った時に一度だけ口にして、人生が変わった特別な言葉。
これからマルクと歩む道を変えたくなくて、もう口にしないと自戒していた言葉だ。

言えば、何かが変わるだろう。
しかしスイはもう声が出せない。

──心の中で強く祈り、あとは、運を天に任せることにした。
──救われなければ、マルクと心中しようと決めた。

レナの黒紫の瞳が瞬く。

「……ハマル。頭を下げなさい」
『ははーーっ! レナ女王様、喜んでーーッ!』

ハマルが見事に土下座すると、レナは頭から降りて、堂々と歩いていく。
その後ろには、人型に戻ったクーイズ、リリー、ハマルが続いた。

ステンドグラスからの光は魔物使いの行進を照らし出し、影が横にながく伸びて、レナたち皆の成長を現している。

「音の一族ベルフェア出身の巫女、スイ。特別な声で人の心を動かすもの。慈愛を込めて声をかけられたなら、貴方はたくさんの人を癒すことができるわ」

レナは膝を折って、スイをまっすぐに眺めて言った。
距離は少し遠い。
レナの覇光でスイがダメージを負うので、配慮した。

「自分たちのように辛い思いをしていない人々に癒しの手を差し伸べることなんて……と悔しく思うでしょう。
嫉妬なんて抱いては駄目、と強制はしないわ。声の癒しは、対価。もしくは、罪に対する罰、と考えてもいい。自分を納得させる表現は自由だもの」

スイの表情は固く、けしてレナに心を許していないが、すがるような目をしている。
自分の惨めさと浅ましさが恥ずかしくて俯きそうになり、でも顔を上げて、レナを言葉を必死で拾い集めた。

「”魔王国の法律に従ってしかるべき奉仕をする”……それが、スイたちを助ける条件よ。
貴方たちは世界的に”悪事”と判断される事件を起こした。子どもたちを甘く誘惑して、自分たちの元に連れ去ろうとした。それで助けられた子も確かにいるでしょう。でも、より傷ついた子もいる。後者への責任は、取らなくちゃいけないわ」

リリーがスイに近づく。

「別の道を、試しに歩いてみよう?
隣で、ずっと手を引いてあげることは、できないけど……道の先の明るい場所で、待ってるからっ。手を振って、笑顔で、光の道を見失わないように……声を、かけ続けるのだよっ!」

にぱっ! と笑うリリーの瞳の赤色に魅せられてしまって、スイは惚けたように口をぽかんと開けた。
反抗の声は、口にも心にも出てこなかった。

レナが黒紫の目をそおっと細めて、スイが反抗的ではないことを確認、ふう、とそっと息を吐く。

リリーの判断も内心で賞賛した。
手を引くよ、と全てサポートしようとするのではなく、あくまでスイたちが自分で歩むことを勧めたのだ。大切なことだと思った。
レナを見て育ったリリーは、導き方を知っている。

リリーがごそごそと黒のアクセサリーを取り出し、クーイズはマルクの身体を這い回り『うわーお、なんつー猛毒! ゴチになりまーす』と解毒していった。

スイもマルクも動かない。

安堵しかけた、その時。
レナの目前の空間がぐにゃりと歪んだ。

──助けて。
スイの救難信号を受け取ったのは、レナだけではなかったのだ。
子飼いのケダモノが一人、契約主人の願いに引き寄せられてしまった。

ズザーーーー!!!
滑るようにレナの視界に入ってきたのは、緑の死霊術師(ネクロマンサー)。

「っきゃ……!」

尻餅をつきかけたレナをハマルが軽々抱き上げる。
敵を前に後退したら、きっとレナ女王様はあとで後悔すると思ったのだ。

「この時を待っていた!」

イヴァンが覇光の痛みをものともせず、登場の勢いのままレナに詰め寄る。

ガッ! と足を掴まれる。イヴァンが。

「うるせぇ退け!!」

ラズトルファがナイスな蹴りを入れた!
イヴァンが吹っ飛んでいく。

「お前まで抱えてる余裕はねーんだよ!」

吠えて立ち上がったラズトルファは、子守中の親のように子どもを三人も抱えたままだ。

レナがほんの少し親近感を抱いた。

「蹴りが、弱い」

鼻血をぬぐいながら立ち上がったイヴァンは蹴りの威力にダメ出しをして、すぐに前進!

ピクピクと目元を引きつらせたラズトルファの横をすり抜けて、レナの目前へヌッと現れた。
赤の覇光がザクザク刺さるように痛いが、まだまだ。

「レナ様の渾身の一撃が欲しいものだな」

赤の女王様の軽蔑の視線はご褒美。

「これなら差し上げるわ」

交流するほどイヴァンの活力となるのは目に|視えて《・・・》いるので、レナは美しい装飾のブローチを掲げてみせた。ホレホレと振る。

イヴァンがそれを直視する。
すると、喉に魔法がかけられた感覚があった。

「ほう。新たな贈り物か……最高の気分|デス《・・》」
「こっちも最高の気分よ?」

にっこり笑ったレナは、鏡石の「言葉遣いが美しくなる」魔法がかけられたことをひとまず喜んだ。
ここだ! と直感で感じたのだ。

(うえぇ……嫌なマゾヒストを見ちゃったぁ……)
(本当に頑張ったね、レナ。僕たちももうそちらに着くから! 全員集合できそうだよ)

内心のルーカとの会話で、レナは傷ついた心を癒す。

イヴァンがマジックロッドを振った。

ここまで連れてきたアンデッドたちが、床を破ってぶわっと這い出てくる。
イヴァンは地下の灰などを混ぜ込み、自らの命令を聞く忠実なしもべとして作り変えている。
もはや屋敷の亡霊とは呼べない駒であり、精霊の呼びかけも聞こえていないようだ。

それらで、背後から殴りかかってきたリリーとクーイズを足止めした。

マジックロッドはレナめがけて迷いなく振り落とされる。
全力で攻撃したら、全力の反撃が返ってくると知っているのだ。

「愚か者」
「その方が人生が愉しいではないデスか?」

ニヤリと嗤ったイヴァン。
どのような反撃がくるか、レナが手にした鞭に期待していると……視界が黒く塗りつぶされ、レナの姿が見えなくなってしまった。

ポシェットから黒い手がにゅっと飛び出してきたのを、イヴァンの[観察眼]が捉えていた。

「……ッ!? 赤では、ない、デス……ッ」
「アーーーッハッハッハッハァ〜! ごーめんねェ〜!?」

視界が塞がれたまま、イヴァンがズガガガガガ! と床に擦り付けられて壁際まで運ばれた。
背中が床に押し当てられていて、何者かに馬乗りになられる。

イヴァンの身体の削れた肉片は元の場所に戻ろうとする。
あーそういうアンデッドタイプね、と中性的なハスキーボイスが聞こえた。

片目だけ、イヴァンの視界が解放される。

「バァ」

つぎはぎだらけの奇妙な顔。
ベースはエルフ族のようだが、アンデッドの一種だとイヴァンは本能的に理解した。

「もー、女の子を怖がらせちゃダメじゃナイ? アンデッドの風上にも置けない。好きな子ほど苛めちゃいたくなるの、分からなくはないけどネ!」
「残念だがアンデッドをまとめる側の者デス。使役させてもらいマス」

マジックロッドを掴む。
しかし使役の魔法が発動しない。

「……驚愕デス……!」
「アタシ、今はカラダに心臓入れてないんだわー! ぜーんぶ魔王国においてきちゃった☆」

魔王国研究部、複合(ユニオン)グールのグルニカ。
対死霊術師への対策として、呼吸を必要としない彼女は、マジックバッグの中に潜んでいたのだ。
ケケケケケ! とおかしな笑い方をした。

「オッケーレナチャン! 残りのアンデッド、昇天やっちゃって〜!」
「よくってよ」

レナが堂々と立つ。
ふらりとよろけたが、ハマルが後ろからしっかり支えた。

「称号[退魔師]セット、|魂の昇華(ウルトラソウル)ッ!!」

ハアッ!! とレナの気合いの一喝により、アンデッドたちが一掃されていく。

透明になり消えてしまって、混ぜ込まれていた黒の灰はカルメンが燃やして浄化してしまう。跡形も残らなかった。
レナの浄化の光景は力強く、神々しくさえあり、この場の全員が思わず見惚れた。

「レナ様すごーい!」

ハマルがレナをまた抱き上げてくるくる回る。
疲労が酷く、主人がもう一人で立っていられないのを察している。

レナは「当然よ」と言いながらハマルにぐったり体重を預けて、ふう、とひと息。
称号も解除した。
ハマルの白くもっちりした頬に白金の柔らかい髪が愛情たっぷりに押し当てられて、レナの心がぐんぐん癒されている。

(ああああ慕ってくれる子はやっぱりこうじゃなくちゃ〜!)
レナがじぃんと感動した。
変態|死霊術師(ネクロマンサー)など断固お断りである。

「……あの必殺の一撃に巻き込まれたかったデス……ッ!」

イヴァンが珍しく心底悔しそうに歯噛みしている。
ハマルの羊耳がぴくりと動いて、その呟きを拾った。
(ふーん?)

「レーナ様。あとでボクと鞭で戯れて♡」
「よくってよ」

これでもかと見せつけられたイヴァンが、ダァァン! と拳で床を叩いた。羨ましすぎて。

グルニカは(こいつぁやべーわ)と思いながら「やーいやーいべろべろばー」と煽っておいた。

「っ……」

イヴァンの首輪が主張する。
スイの”助けて”を伝えているのだ。

目の前にレナの味方のグルニカがいるので、これを無視してレナの元に行くことはできない。

スイの方に視線をやると、ラズトルファが最大級の[エンジェル・ヒーリング]でスイとマルクを回復しているところだった。
スイに付けられていた魔王国の首輪が、パキンと壊れる。

イラが苦しげに呻いて耳を塞いでいたので、イヴァンは口の中でそっと[シャドウホール]を唱えて結界でガードした。
そういう契約だ。
夢組織の者を守れ、と。

「「『レナ様ーーーーッ!!』」」
『ご主人様ぁ!』
「ご主人サマー」
『主さんっ』
「「レナー!」」

ドガァァァン! と壁を拳で破壊して、モスラ、シュシュ、オズワルド、レグルス、ルーカ、ミディ、パトリシア、キサ、ロベルトがやってきた!

「ご無事でしたか!?」
「見ての通りよ、モスラ。私が可愛い子たちを応援したのだから、負けるわけがないのだわ。みんなの活躍も、あとで褒めてあげましょうね」

「光栄です!」
「ご主人様の! 褒め!? やったああああ!!」

レナパーティは歓喜に沸いた。
レナ様に褒められるのが楽しみ!!!!
そしてすぐ、注意深くマルクたちを観察し、捕縛のためにどう動こうかと画策する。

「……ッギルティア、捕まったか」

ラズトルファがいらいらと呟いた。
夢組織側に保護したかったが、レナパーティのメンバーがずらりと揃っているところに突っ込んでいっても勝ち目などない。

(俺たちを包んでいる光の結界だって、もういつ魔力が底をついて壊れるか分からない。くっそ!)

くいくいとイラが袖を引っ張っているのがサインだとは気付かないくらい、ラズトルファには余裕がない。

「んあーもう! 目を離したらすぐこうなっちゃう……油断した自分に、反省」
「むむ。クーイズ先輩、私も、ご主人さまを狙われて、頭に血が上っちゃったの……スイから、離れちゃったもん。反省」

リリーとクーイズがぷくーと頬を膨らませて、ジト目で光の結界を眺める。

内部にいるラズトルファは弱気な態度を見せず、睨み返して中指を立てた。
下品! と従魔たちからブーイングが飛ぶ。

「……大天使ラファエル様の加護があろうと、まるで俺たちを助けてくれない。ほんとこの世界はくそったれだな。悪者退治は楽しいかよ!? そいつァいい趣味だなァ、ヘドが出るッ」

「あいつにはシュシュが一撃キメる!」

シュシュが人型になり、パァン! と手のひらと拳を合わせて「押忍!」と一声。

ラズトルファのあまりに歪んだ顔を、殴ってでも元に戻してやりたいと思った。
天使族系統であることも含めて、なにか縁があるような気がしたのだ。

ルーカがもにょもにょと耳打ち。

「ん? こう? [覇]ァァ!」

ゴッ! と足元の瓦礫片をシュシュの拳が砕いた。

<従魔:シュシュのレベルが上がりました!+1>
<☆クラスチェンジの条件を満たしました!>
<進化先:|幼天使《リトルエンジェル》・ネオ>
<進化させるには、種族名項目をタップしてください>
<称号:[始祖天使][戦乙女]を取得しました>

世界の福音(ベル)に、レナたちがハッとする。
レナがシュシュを見ると、燃える瞳で頷かれたので、ギルドカードを取り出し項目をタップした。

シュシュの[自由の翼]がぱああっと神聖な輝きを放ち、大きく広がると少女の身体を包んだ。
モスラの時にも似た、ハネのあるネオ種特有の進化光景。

進化のための身体を焦がすような熱など、シュシュのヤル気に注がれる燃料(ガソリン)のようなものだ。
オラァ! と拳を振り上げると、輝く翼は四方に分かれた。

桃色の髪が伸びた美しい少女の姿。
背中には四対の翼が現れている。

ラズトルファが愕然とする。

「……なんっだそれ……まるで……大天使像みたいな見た目じゃん……。ありえない……!」

シュシュは体の調子を確かめるため、トントンと軽くジャンプ。

「ありえない、なんてないんだよ。これまでに無かった道は、自分で新たに切り開けばいいの!! シュシュと拳で語り合おう……白淫魔ラズトルファ!」

シュシュがズダン! と床を蹴る。

「[衝撃覇]ァーーー!」

▽正拳突き!
▽結界を 壊した!

モスラがにこやかに拍手し、パトリシアがヒュウと口笛を吹く。

結界を破られたことでダメージを負ったラズトルファは膝をつき、シュシュはその上を素通りした。

「うわーっ!?」

慌てて翼をバタバタしている。

──やっと目を開けたマルクは、光の結界の欠片がきらびやかに舞う光景を見た。

これが自分たちに降り注ぐ祝福だったならどんなにいいだろう、と苦く考える。

ラズトルファの回復魔法を受けて命は取り止めたものの、蓄積されたダメージは大きく、さらにイヴァンが負った痛みも時間差で訪れたので、まだ痛みに呻くばかりで動くことはできない。

一切語らないスイが心配だったが、呼吸をして隣にいてくれることを目だけを動かして確認して、安堵のため力を抜いた。

<お待たせ致しました!>

B・G・M!!!!

天井から”朱色の蜘蛛の巣”が降ってきて、マルクたちを粘着質に捕らえる。

壁にぶつかりそうだったシュシュを、朱色の人物が抱えて助けた。

「あっ!」

シュシュは期待した顔でサディスティック仮面を見上げると、頷きが返ってくる。
彼のタキシードの内ポケットがキラリと光り、パンドラミミックが飛び出した!

<マップが完成しました>
<空間掌握・完了>

<これで外部と連携することができます! さあ張り切っていきまっしょい!>

<[|大精霊召喚《シルフィネシア・コール》]!>

締めとまいろう!

 

 

 

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