193:VSギルティア

<えー、テステス。ところかわってこちらは|砂漠の魂喰い花(デザートギルティア)がいる大部屋!
子どもたちは3名。補助要員のようですね?
パトリシアさん、キサさん、ロベルトさん、張りきっていきましょうーー!>

▽カーーン! とゴングが鳴った。

「アナウンスがうるせええええ!」

ギルティアが、キラの分身体の声にぶちギレる。

「お前たち。この声の元を見つけて壊せ。監視されながら戦うなんて、胸糞悪い!」

「オッケーギルティア」

「分かったよお姉ちゃん」

子どもたちが敵を警戒しながらも、じわじわ下がった。
魔眼で辺りを視て、キラを探す。

<オホホホホホホホ捕まえられるかしらぁーー!?>

レナの真似でキラが煽る。
分身体を強烈に光らせて、ぶんぶんと部屋中を羽虫のように飛び回った。子どもたちが慌てて追い回す。さらに煽る。
ギルティアの額に青筋が浮かんだ。

「ああ、キラが捕まっちまったら大変だな。私たちが帰る術がなくなっちゃうかもだし」

パトリシアの言葉にギルティアが注目する。
キラがいればここを脱出できるかも、と言ったのだ。

(もちろんフェイクかもしれない。でも……この屋敷を脱出するのは、あたしたちの望みでもあるんだ。
侵入して来たことも含めて、このレナパーティには”何かある”。
精霊を従える術を持っている? 余計に、負けてやるわけにはいかないな!)

「指示変更。その光、捕まえろ!」

「そうなの? 分かった!」

子どもたちの動きが変わる。

「おっとそうは行かないぜ。私が百花繚乱と名乗った理由をみせてやろう。
咲き誇れ超速フライングマッチョマン!」

▽パトリシアは植物の種を水球で包んだ!
▽目 覚 め よ!

瞬く間に種が成長し、美しい花が咲き、ギルティアがそのことに嫉妬したほんの一瞬後にホワイトマッチョマンが実る!
自らの回転で房から離れ、スチャッと着地、からの大ジャンプ! そのままギュンギュン宙を飛ぶ!

「「「「ぎゃーー!?」」」」

ギルティアと子どもの絶叫があがった。
ゾワゾワと粟立つ肌をさする。

「それ、ラミアの里であの魔物使いが使ってたクソ不気味なやつ! てめーの仕業だったのかよ!」

「お友達レッドをなめんなよ? レナの大大大親友だからな」

「知るか!! 撃ち落とせ!」

|砂漠の魂喰い花(デザートギルティア)のツタが伸び、

「付与魔法[防御力向上]」

子どものサポートにより硬さを増したムチが、マッチョマンを打つ!
飛行能力を重視したマッチョマンたち数体は、ぺしょんと潰れてしまった。

「スキル[光結界]」
「熱魔法[ドライ]」

天井付近を飛んでいたマッチョマンを閉じ込めて、乾燥で倒す連携を子どもたちがしてのける。
ギルティアが頷きで褒める。

「……あッ!? 何してやがる!? そこの友達ごっこ野郎! スキル[|棘棘(トゲトゲ)]」

サディスティック仮面が置いていったヤドリギの種を物色していたパトリシアに、ギルティアの棘のツルが迫る!

「水魔法[クリスタロスドーム]」

「氷魔法[氷結]」

美しく強硬な氷のかまくらがパトリシアの前に現れて、強烈な一撃を塞いだ。
ビシィィ!! と破裂音がして、氷の破片が飛び散る。

<アーーン! 猛烈ぅ〜!>

キラが余計な一言を高らかにアナウンス。
ギルティアが顔を真っ赤にしながら天井を睨む。

「なんのために俺たちがいるのか分からなかったのだろうか?」

「妾たち全員が戦力なのじゃ。そう簡単にこの乙女が攻撃できると思ったか?」

キサとロベルトが冷たい息を吐き出す。

「スキル[氷の息吹]」

「スキル[氷結]」

部屋の壁も床も、凍ってしまった!
ギルティアにとっては苦手な環境だ。砂漠植物の動きが鈍ってしまう。
それに氷の床では、新たに種を発芽させることができない。

(ここまで図ったのか!? あの温泉での戦いを元にして、配員を考えて。
くそっ、絶対に炎使いが来るはずだと思ってたのに違ったのは、そういうことかよ!)

ギルティアの目がギラギラ光る。
不利な状態になってしまったので、出し惜しみはもう一切なし。
後ろ手のハンドサインを見て、子どもが頷く。

「付与魔法[集中力向上][魔力増大]たっぷりと!」

「スキル[|魂喰い(ソウルイーター)]ァァァ!」

魂喰い花の漆黒の花弁がぐわっと開いて、ロベルトとキサ、パトリシアの力を根こそぎ吸い込もうとする!

「ぐ……ッ! これは、強烈だな……ッ」

「妾は【☆7】ギフト[壮絶耐久]によって、しばしの間は意識を失うことはない……っ」

青白い顔をしているものの、キサはしっかりとギルティアを見据える。

「スキル[|氷の槍(アイスジャベリン)]」

壁がゴゴゴゴゴっと音を立て、太く鋭い氷の槍が生えた。
|魂喰い花(ギルティア)の花弁を貫く!
この戦いに備えた訓練が活きている。

「チッ……!」

ギルティアが身体をくの字に曲げて激痛に耐え、舌打ちした。
現在、部屋には縦横無尽に氷の槍が伸び、ギルティアたちにとって動きにくくなっている。

ロベルトとキサはごくっと小さな瓶詰めの粗茶を飲み干した。
みるみる体力が回復する。

ギルティアも、ロベルトたちから奪ったエネルギーで魔力は上限まで回復した。
ぐいっと口の端ににじんだ血を拭う。

ーーどこに辿り着いても厄介者で、時には冒険者に蹴られ踏まれたことをギルティアは思い出した。
はるか人里を離れたところに行ってもギルティアは有害で、自然を壊すとして人の方が追いかけて来る。排除のために。

(今回も同じだ。こいつら、追いかけてきやがって)

ロベルトが半獣人の姿になった。
その横で、キサが妖艶に微笑む。

「スキル[魅了]」

「サポートだ! 発芽[超速ブリリアントローズ]」

ふわんと魅惑の甘い香りが満ちて、パトリシアに薔薇を手渡されたキサの美しさがより際立った。
[邪ヲ断ツ祝福ノハサミ]でちょきんと斬られた薔薇はいっそう花弁を赤く染めている。
ちなみにパトリシアが花を贈呈する姿はたいそうサマになっていた。

子どもたちの視線が釘づけになった。
一瞬だが、ギルティアも動きが止まって隙を見せた。
美しい花への、ドス黒い嫉妬の感情ゆえに。

ロベルトが姿を消していた。

「しまっ……!?」

ギルティアが慌ててキョロキョロすると、氷の槍を足場に素早く動いている。
子どもの首に、黒いアクセサリーが押し当てられて……

ガチャン!

「一名捕縛、完了」

子どもの首には、黒く無骨な「従属の首輪」がつけられていた。
急激に魔力を奪われたので、ぐったりとしてもう動くことができない。
ロベルトが抱えて運び、ギルティアから離れた場所に降ろす。

「光の結界籠」

魔道具を発動させて、子どもを閉じ込めた。
鳥かごのような結界は強固で、魂が黒いものが触れると激しい痛みを伴う。

「この野郎!」

ギルティアが目をガッと見開き、腹の底から声を出す。

「「いやあああああ!?」」

他の二人が恐怖の叫び声をあげた。
涙を流しながら、涼しい顔のロベルトを思い切り睨む。

「あたしたちにとってこの組織だけが居場所なんだよ!! 捕まってなんかやるもんか!」

「「絶対にイヤぁ!」」

子どもたちも声を揃える。

「そいつ、返してもらうぜ。まずはお前たちを倒してからなッ! スキル[|魂喰い(ソウルイーター)]」

[|魂喰い(ソウルイーター)]を牽制に使い、ロベルトたちの動きを奪う。
このスキルの影響を受けていると足元がふらつくので、派手な反撃はまずこない。

「煉獄火蜥蜴。やれ!」

「で、でもギルティアおねえちゃんが……」

焦げたような赤銅髪の子どもがためらう。

「ここで踏ん張らなきゃ全員しょっぴかれて拷問死だぞ」

「や、やる!」

子どもはギルティアを気にかけて涙目になりながらも、スキルを発動。

「スキル[地を這う黒炎]」

ゴウッッッ!!

黒くねばついた炎が壁一面を這うように燃える。
燃え跡はドロっとしていて、猛毒。
この突然変異種の子どもが忌まれる理由だ。

「う……! なんと不愉快な空気じゃ。喉が焼ける」

「焦げくさいな」

「そうかよ。お前たちがそうやって嫌うあたしたちも、生きてんだよ!!」

ギルティアは無理やりヤドリギを撒いて発芽させた。
毒を吸い上げながら、花が咲く。

「[|棘棘(トゲトゲ)]。今度の棘は……当たるとヤバイぜ?」

毒の影響で青白い顔をしたギルティアがニヤリと口角を上げた。

「ぶちかます!」

太いツタが暴れる!
氷柱を割り、毒がついた破片を降らせた。

「ぐっ」

キサが氷の盾を作って破片を避けようとするが、

「スキル[つむじ風]」

子どもが風を操り、猛毒を運ぶ。
破片がキサを切り裂こうとした。怖さに顔が引きつる。

<氷の破片かと思った? キラで御座いまーーす!>

▽風に巻き込まれていた キラが ウィンドウを大展開。
▽氷の破片を防いだ。

「キラ先輩さすがなのじゃ〜!」

キサがふんわりと分身体を手で包む。涙がぽろりと落ちた。

「あそこだ」

殺気を背中に受けて、キサは肩を震わせた。
ギルティアたちはキサを照準にした。いや、手の中のキラを。

獄炎火蜥蜴が走りこんでくる!

ロベルトが捕らえようと並走する。
手を伸ばしたら、子どもが消える。
魔物姿になったのだ。
赤黒いウロコに覆われた不気味な見た目の煉獄火蜥蜴が、地面を低く走る。

「させるかよ」

ギルティアはロベルトを狙い、ツルを暴れさせた。
ロベルトが離れた。

パトリシアが駆ける!
自分とキサを打とうとしていた毒のツルをスパンッと切断した。

「はぁ!? なんでお前がそんなことできるんだよ! 花屋じゃないのか!?」

「元冒険者だし。努力したからだよ。剣術は父親に教わったな」

パトリシアの手には[邪ヲ断ツ祝福ノハサミ]が変形した中型剣が。
|波打つ刀身(フランベルジュ)の剣。
赤い模様が美しい。

「これさー、レナに貸してもらったんだよね。私のお守りにしてって。ホント大好き」

「うるせぇーー!!」

ツルが8本、パトリシアに襲いかかる! 避けられない。

「ちっ、青魔法[|水面(みなも)の砦]」

「なに!?」

パトリシアを水面(みなも)模様のドームが守った。
当たったツルは泡になって消える。シャボンが天井に登り、それは美しい光景だ。
一日一度しか使えない極大魔法。

「こっちは大親友のネッシーにもらった力」

パトリシアは冷や汗をかきながらも、勝気に笑ってみせた。
ギルティアは警戒していて、動かずに様子をうかがっている。

(今なら話ができるかな)

「私、レナに泣きついたことがあるんだよね。両親が死んだ悲しみから立ち直れなくて、荒れててさ……。苦しいから助けてって。すごい情けないけど。
そうしたら縁ができたよ」

ギルティアはピクリと眉を上げて、パトリシアの動向をうかがっている。
パトリシアは続けることにした。

「私嫌な奴だったけど、それでも手を差し伸べてくれる存在がいたんだ。
アンタだって、助けてって言っていいんだと思う。必ず報われるとは言えないけど、チャンスが生まれる。
少なくとも、ここにいる私たちはただ傷つけて捨てるためにアンタたちを捕縛するつもりじゃないって考……」

「はあぁーーー!? あたしにとっての最善で唯一だ、ここは。貶めるのは絶対に許さない……!
苦しんでるのはなァ、お前たち偽善者のせいだよッッ!!」

(しまった! 私レナみたいに説得上手くないわ)

逆上したギルティアを眺めてパトリシアががっくり後悔する。

「不愉快だ。黙ってろ[|魂喰い(ソウルイーター)]!」

「だ、だめ! お姉ちゃんっ!」

ギルティアは毒気も吸収してしまう。
それでも、気絶するギリギリまで粘って敵を無力化しようと決めたらしい。

(じゃー説得は、捕縛してから!)

▽パトリシアが 水球を作った。
▽種が発芽! |レナ(・・)・クラスチェンジ!
▽神聖ホワイトマッチョマンが 実った!

▽ギルティアに生気を吸われて萎んでいく。

「!?!?おえっぷ……!」

ギルティアが目を白黒させながら[|魂喰い(ソウルイーター)]を止めた。

マッチョマンの栄養がモリモリすぎたのだ。
言うなれば生気容量オーバーである。
そして神聖ホワイトマッチョマンは浄化作用を持つので、黒い魂のギルティアを体調不良にして、猛毒は消した。

(レナに貰ったレア進化種、使っちゃった)

パトリシアはちょっぴり心細そうに指をふらりと動かした。
しかし、頼もしい仲間がいる。
キサがまた氷の柱を作り上げ、ロベルトはこの隙に煉獄火蜥蜴の捕縛に成功していた。

あとは回復と補助を行う子どもとギルティアだけ。

パトリシアが警戒しながらも一歩進む。
お揃いで作ったブーツは氷の上でも歩きやすい。

「生まれ持っての力は、変えられる。
機会さえあればな。今がその機会だぞお嬢ちゃん!
言ったな? 植物の品種改良は<フラワーショップ・ネイチャー>にまかせろってな!
変わるなら今のうち。さぁ叩き売りだよ持ってけドロボー!」

「あたしたちは世界の方を変えようとしてんだ。邪、魔、す、ん、な」

「くっそ頑なだな!」

パトリシアがダッシュ!

ギルティアはハサミ剣を警戒して、根を網状に集めてガードの姿勢。
子どもが「付与魔法[防御力向上]」と根を強化する。
ツタの部分は子どもをロベルトから守るために使っている。
ギルティアと子どもたちは組織の中で彼女たちなりの信頼を作りあげ、支え合っているのだ。

パトリシアが目を細める。

(ーーそれでも。この組織は泥舟だ。
アンタたちが沈みたいって思うのは勝手。じゃあこっちも勝手に救わせてもらう!
万が一ラナシュ世界がおかしくなっても困るんでね。
アンタたちが生きてるように、私たちだって必死に生きてんだよ!
改良後の責任はまあ、とる。あのゴーストローズの人と一緒に頑張るからさ)

メガトンパンチ!!!!
モスラ仕込みの強烈な一撃。
剣は使わずに根のガードを突き破り、ギルティアの頬を拳が掠めた。

「っ!」

「耐えることしか知らないの? 花が泣いてるよ」

パトリシアの手はギルティアの頭の葉を撫でた。
黒紫色と砂色でカサカサと乾いている。
指先で丁寧に愛でる。

「アンタも女の子。そんで、お花。じゃあ綺麗になれるよ」

ギルティアが手を振り払う前に、有言実行。

「スキル[品種改良]」

「ーーーーーッッッ!」

「お姉ちゃん!」

パトリシアを子どもの水魔法が吹っ飛ばした。
凍らせられるし魔力を食うのであまり使わなかったが、緊急事態だ。
[品種改良]は不発に終わった。

唖然としているびしょぬれギルティアが、この時一瞬だけ感じたのは、[品種改良]への希望だったのか絶望なのか……。

「緑魔法[グレートヒール]」

「……ッまだまだこれからだぜ」

厳しい状況の中、子どもの応援を受けたギルティアはぎゅっと眉を顰めて、精一杯の虚勢をはった。

 

 

 

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