191:夢組織との戦闘開始!

|夢の支配者(ナイトメア)バクが指揮をとる犯罪組織。
拠点にしていたお屋敷の空間が、精霊の気まぐれで歪められてしまったので、移動もままならず、精霊を”堕として”活動をやめさせた。
すると部屋や階段への経路がおかしかったところは直り、かろうじて生活できるようになった。
ベルフェアの巫女・スイの声で精霊を操ろうとしたのだが、精霊は姿を消してしまった……。
お屋敷は現世から隔離されたままで、組織が外に出ることは叶わない。

「もしもここに敵が攻めてきたら?」

組織の者たちは警戒し、自分たちを守るために、様々な罠を張った。
力を磨き、敵がやってきた時に備える。

「……身内だけでこうして穏やかにいられるなんて、楽園のようにも思えますね」

スイがどこか憧れるように言った。
罠を張りながら。

「いずれ食料が尽き、敵が攻めてくる心配さえなければ、穏やかにここで暮らすのもいい人生だと思うのだがな」

組織のトップ、ナイトメアが苦笑する。
お屋敷に残されていた魔道具を修理して、魔法を施した。
全員が大きな傷を負わないように、と切に願う。

(はぐれ者や嫌われ者が集うここの者たちは、心の傷はもう十分に負った……。甘い夢に癒されて、やっと回復してきているところだ。
これからの幸せを望んで、何が悪い)

ナイトメアは奥歯をギッと噛みながら「付与魔法[魔法効果付与][夢枷]」と、またひとつ魔道具を作る。
スイがそっと寄り添った。

「私たちの幸せを勝ち取りましょう。マルク様。きっと、やれますわ」

「……ああ。ありがとう、スイ」

スイの特別な声は、ナイトメアを甘美に勇気付ける。

持って生まれた恐ろしい才能だ。
たった一声で他者の精神に干渉するし、スキルとして発声したら様々なものを操る。
それゆえ声の一族が厳重に封印していた巫女姫は、今や自由の身である。
彼女が望むのは……ただ”私たちの幸せを”。

スイの声は自らの精神にも影響していて、ナイトメアと歩むこの道が素晴らしいものだと疑わせない。

(マルク様が導いてくださったの、私も自由に発言して、陽の下で生きられる道を……!)
ーーそう疑わない。
想いを寄せてあたたかくなった胸の温度は、スイにとっての宝物だ。

この組織を発展させたら自分たちの未来が輝かしいものになる。誰もがそう信じていた。

「ところでこの布陣には異論がある」

イヴァンにはまるで通じないのだが!
基本的に並列思考、人の話を聞かない、他人に遠慮しない、自分の趣味嗜好こそ正義(ジャスティス)な彼は堂々と我が道をゆく。

心地よい空気をぶち壊された組織のメンバーがげんなり眉を顰めて、スイの額に青筋が浮かぶ。マルクはため息を吐いた。

「みんなが生き延びるため、最善の配置を考えました。だから従って下さい! いいですね?」

「イヴァン、協調性を育んでくれ。君だって死にたくはないだろう」

「ふむ。赤の女王様に一度殺されるならそれは悪くないが」

「「悪い!!」」

イヴァンが自分から魔物使いの攻撃に当たりに行かないように、とマルクとスイが全力で釘をさす。

「まあ、組織の目的は分かっているから安心しろ。
赤の女王様のところに単騎乗り込みたかったが……仕方がない。
俺はこの従属の首輪の契約により、スイに従わなくてはならない。従属契約文は”組織の絶対的な味方となること”だったな」

「そうです。裏切りはダメですからね!」

スイが頬を膨らましながらしっかり言葉にした。

(うう。契約はしているけど、イヴァンの制御は大変すぎるわ……。でも技能がとびきり優秀だし、マルク様を救った時にナイトメアの力の半分を共有している。彼をなくすわけにはいかない。
彼の配置は少し保守的に、ね……)

スイの心配など気にもせず、イヴァンは最近与えられた中レア度の杖をいじっている。
ラミア温泉の戦闘で愛用の高級杖が壊されてしまったので、機能が劣るものをうまく使わなくてはならないのだ。

「!! ……攻撃されてるみたいだよ!」

「音が聞こえる」

青ざめた獣人の子どもたちが、そう言って耳をピクピクさせた。
鏡蜘蛛(ミラースパイダー)のイラがぐっと胸を押さえる。

「……ッッお屋敷の外部に張っていた鏡を破られた!
広範囲の物理攻撃で、ガツンと壊されちゃったね……。おれと相性が悪い力だ。欺くことはできても、鏡の場所を見分けられたら壊されてしまう」

「魔眼で判別、というよりも、あてずっぽうな攻撃だったのね……」

スイが唇を噛んだ。
(イラの[|鏡隠蔽(ミラージュ)]は組織の存在を隠してくれていた強力な力。それが破られるなんて)

「魔眼にも油断するなよ。ラミアの温泉にいた奴らの中には、レア魔眼の持ち主がいたからな」

ギルティアが吐き捨てるように言って、ぐっと背伸びをした。そのまま軽くストレッチ。
動き始める準備が整い、よし、いつでもやれる、と目つきを鋭くする。

「あああもう、そこの飼い犬が、組織の場所を魔物使いに教えたほうがいいって言うからー!
きっとあいつらも来てるぜ。……そんな気がするんだ。
すっげー損した気分だ、ちくしょう!」

「そうだろうな。古傷が疼く」

イヴァンが満足げに手の火傷跡を撫でた。
レナ女王様の赤の制裁の証。

ギルティアがドカドカ背中を蹴る。
イヴァンの笑みが深まるばかりで気持ち悪いので、視界が不愉快だとラズトルファに止められた。
なんであたしが止められるの、理不尽! とギルティアが叫び、みんなに同情される。

(……あのゴーストローズも来ているんだろうか)ギルティアがふと、魔王国軍の樹人族を思い浮かべた。
(絶対に、殺す!)
やつあたりの復讐心を燃やす。

ラズトルファは緑魔法でイラを回復した。

「ありがとう、ラズ兄」

「ん。……敵の状況は? 視えるか?」

ラズトルファはイラの頭を撫でると、横を向いて魔眼ギフトを持つ子どもに尋ねた。

「えっとね…………巨大な蝶々の魔物がいる! その上にたくさん魔人族が乗ってて……すごく顔が整ってるからレア種族だと思う……っんあ……!」

「どうした!?」

「蝶々の頭に乗ってる赤い髪の女、視ようとしたら……目が焼かれるように痛くなって……っ! うう」

「よく頑張った」

マルクが子どもの意識を強制的に遮断してやる。
他の回復技能持ちの子どもがあわてて駆け寄った。
回復してから、マルクが意識を呼び戻してやった。

「あの、あのね、怖いくらい壮絶に美しい人だったの……この世の生き物じゃないみたいに……」

子どもはカルメンについてそう語った。
ごくり、と組織の者たちが喉を鳴らす。
乾いていたのでヒリリと引きつった。

「赤い髪の女……? 温泉にはいなかったな。緋色の髪の獣人はいたが、男だ。
ということは、魔物使いパーティ以外のやつが一緒に来てるってことか。強力な助っ人を頼んだか」

ギルティアが舌打ちする。

「思惑は視れるか? 赤髪以外を対象に探ってくれ」

「うん。ーー組織のみんなを捕らえて連れて行く気みたい!!」

ざわざわっ、と場がどよめく。

「……随分となめられたものだ」

マルクが暗い怒りを声ににじませた。

「そうか。簡単に俺たちを屈服させるつもりなのか。正義の力とやらで押さえつけて、悪とされる存在はいてはならないと、蓋をして忘れ去るのか。その蓋の下には我々がうごめいているというのに。
ーー世界の天秤に制御されるのはもうごめんだ!」

組織の者たちが頷いた。
イヴァンは興味深そうにその様子を見ている。

(はたして、この者たちはどこまでやれるのだろうか。”世界の常識をひっくり返す”……本当にそんなことが可能なのか?
発想は実に面白いが)

イヴァンが思考を割いたのはそこまで。
手の甲がヒリヒリと痛んだので、味わうように撫でた。

マルクが指揮する。

「大勢が向かってきていて、目的は捕縛なら、一箇所に固まらないほうがいい……。
ギルティア、ラズトルファ、イラ、イヴァンに分かれて敵を迎え撃て。相手も分散するだろう。
打ち合わせていた作戦5のパターンだ。
それぞれ子どもたちを四人連れて行くように。
後の者は、移動や罠でみんなの補助を」

マルクが代表四人に魔道具を渡す。
イヴァンの[トライ・ワープ]を組み込んだ、短距離移動装置だ。
お屋敷に残されていた魔道具が数個しかなかったので、貴重品である。

最終的には敵を倒して[トライ・ワープ]で合流、逃げ出すつもりだ。
居場所を知られたら、ここにはもういられないのだから。
それが魂が黒い犯罪者の生活。

ギルティアが(この魂はずっと黒いままなんだ)と生い立ちを振り返り、拳を握りしめた。
辛い過去を忘れてしまいたくて[|魂移し(ソウルリリース)]で記憶を消し去ろうとしたこともある。
しかし思いとどまったのは、記憶がまっさらになったギルティアは本能のままに栄養分を摂取し始めて、またいつの間にか大量殺戮をして……同じような人生を歩むだろう、と判断したから。
だからといって死にたくはないし、と気持ちを持て余していらいら足踏みした。
この怒りを正義気取りの敵にぶつけてやるつもりだ。

「スイは攻撃手段が特殊なので、私とともにいること」

「はいっ」

マルクの指示に、スイはぱああっと頬を染めて返事をする。
子ども数人がにやっとしたので「あっ」と耳まで赤くなった。

「スイ、精霊を見逃すな。
隠れていても、堕ちているからには、我々の目にも見えるはずだ。君の役割は……」

「わかっておりますわ、マルク様。やり遂げます」

真剣なマルクの言葉に、スイが清らかな声で返事をした。
最終的にはこの屋敷から逃げ出す必要がある以上、スイの働きが重要だ。
全員の命がかかっている。
この肩の重さも、大切なものが増えた証。スイの足は軽やかに動き、美しい一礼を披露する。

「必ずや、みんなとともに幸せになるのです」

祈るように告げると、組織の士気がグンと上がった。

「それでは健闘を。……行くぞ!」

ラナシュ世界の幸運になど祈らない。
組織の幸せの旗印はマルクだ。

「「「「はい!」」」」

組織が散って、大広間にはマルクとスイが残った。

▽精霊は 様子をうかがっている。

***

レナパーティは爆速でお屋敷の廊下を爆進中!!!!
ドガガガガガガガガガガガガ!!!!!

壁はつき破り、罠は壊し、|精霊の元に(・・・・・)ひたすら進む!!
夢組織の者たちを捕らえて、最終的にはこのお屋敷を解放するつもりなのだ。

「あっちだよ! モスラ」

『承知致しました』

ルーカが指差した方向にモスラが行く。
「精霊はお屋敷の最も奥にいるから、その途中にいる夢組織と戦っていこう」とルーカが告げた。

【☆7】[魔眼]ギフトで視えないものはほとんどない。
紫の目がぎゅっと細められる。

「……精霊は自衛のために、自分の思考や技能などを視られないようカモフラージュしている。まあ、それも近くまで行ったら僕は視えるよ。意思疎通はまかせて」

「さすがルーカさ、ああああああ」

風圧に負けているレナの口をパトリシアが塞ぐ。
パトリシアに掴まっているため風に振り落とされることはないが、風圧は存分に食らってしまうのだ。

「喋るな、レナ。舌噛むぞ! ルーカと目を合わせてテレパシーしたらいいじゃん?」

「(はあい……パトリシアちゃんの言う通りだね。
ルーカさん、キラと連携してみんなのサポートをお願いします。戦いながら負担をかけちゃいますが、期待していますー!)」

「了解。ふふっ、頑張るね。
ーー精霊はみんなの目に映る。堕ちているからね。シルフィーネの時と同じだよ。
こっちは”精霊の友達”の称号を持っているから、近づいたら精霊が助けを求めてくるはず」

「救いたいね」

マリアベルが真剣な声ではっきり告げた。
レナパーティが頷く。

『敵の分布はどうですか? ルーカティアス。一番適したルートをこまめに指示して下さい。そのように飛びます』

「はーい、モスラ。でも細々と話すより、いったんみんなで情報共有しよう。
キラとの連携、さっそくいくよ」

<呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーーーン☆>

キラがレナの懐から飛び出した!

<[ウィンドウ]にルーカティアスさんの[テレパシー]で受け取った内容を反映させてー……そぉれ!>
<マップを表示します>

モスラの目前に大きな電子ウィンドウが現れて、レナパーティの現在地と、敵の配置を見事に映し出した。
まるで近未来車のフロントガラスのよう。
矢印とルート予想のキラナビゲーションつき。
ひっっっどいチート戦術である。

「おっそろしいわぁ……! うわぁ君たちが味方でよかったぁ……!」

マリアベルが敵に合掌しながら呟き、ロベルトが深く頷いた。

「(マップ、まだ真っ黒だね)」

自分たちが通ってきた場所は映像として現れているので、黒いところは未到達地点なのだろう。ゲームマップのような仕様だ。
キラらしい、とレナは思った。

<んー、このマップを全て埋めたいですよね〜!
”最終奥義を使うために。”
予想していたよりも、お屋敷の隔離結界の力が強いです……。精霊が心を閉ざしたためと……ああ、鏡蜘蛛(ミラースパイダー)の力のせいですね。外部と連絡が取りづらくて不便。プンプン!
マップを埋めたら、私、成長できそうなんですよ>

途中で助言をしてくれたルーカに、キラがお礼を言う。

「(成長!? そうなんだ……キラはそろそろ進化ということですか? ルーカさん)」

「キラの成長期待値はかなり高い。スマホから魔物になり、二度目の進化をまだ経験していないからね。モスラでいうとまだジャイアントバタフライ・ネオって段階。
今回の戦闘でたっぷり活躍できればキラの進化もありえるよ」

<キャーーー! 頑張っちゃいまーす! わーいわーい!>

「ちなみに他の従魔たちも可能性の塊だから。ファイト!」

「『えいえいおー!』」

レナパーティの勢いに、マリアベルとロベルトが震えた。
しかしまあ、身内が強くなるのはいいことなのだ……。面倒ごとは宰相たちにも一緒に悩んでもらおう。

レナがよしよしとキラの表面を撫でる。
<はわわわわわ>と嬉しそうな声が聞こえてきた。

「……前! 鏡蜘蛛(ミラースパイダー)の防壁があるから、気合い入れて!」

『突っ切ります!』

モスラが勢いに乗ったまま頭突きーーー!!

バリバリと鏡が割れた。
破片はカルメンが『邪魔だな』と溶かす。
カルメンの熱を利用するように頭突きしたことには怒っていないようだ。たまたまだろう、と思っているのかもしれない。真相はモスラのみが知る。

「……さあ、敵の本陣にきたね!」

ルーカが周囲を鋭く視渡しながら言う。
敵が想定していた侵入経路ではないため、罠はレナたちの方を向いておらず、仕込み槍が逆方向に飛んで行った。
しかしここからは罠がさらに多く、監視の目もあるのだという。

モスラがスピードを落とした。
ルーカが進路を指す。

「あちらに|砂漠の魂喰い花(デザートギルティア)、発見!
ロベルトさん、キサ、パトリシア、向かって」

「承知した!」
「行ってくるのじゃ」

ロベルトがキサを抱き上げて颯爽とモスラの背を降り、駆け出す。
パトリシアはレナをルーカに譲った。

「絶対に落とすなよ」

「まあ確かにレナは運動音痴だし、僕は悪運持ちだけど?」

「「「みんな一緒だから心配ないよー!」」」

ルーカの背後からイズミ、リリー、ハマルが顔を出してそう言ったので、パトリシアは仏頂面を和らげてフッと笑った。
手を振り、ロベルトたちを追いかける。
新装備のヒールブーツには[駆け足]の魔法が付与されているし、大親友ネッシーに教えてもらった方法で風をまとって、余裕で獣人と並走した。

ルーカが別方向を視る。

「もう少し先、左の暗い通路の先に白淫魔がいるね……。
攻撃力の高い魔人族の子どもと一緒だ。白淫魔が高度回復と補助、子どもが攻撃をしてくるみたいだよ。
キラ、ナビを更新してくれる?」

キラナビゲーションの表示が修正される。
数分前に特定した場所からはわずかにずれていた。敵は動き続けているのだ。

<むーん。分身体を飛ばしてリアルタイム更新をしなければ……ね! ヴァーチャルアシスタントは常に前向きに成長するのです!>

キラはパトリシアにも分身体を付着させていた。
敵地に着いたら敵に付着させ、動きを監視する仕組みである。

(リアルタイム追跡機能? とてもやばーい)

マリアベルが一瞬白目を剥いた。
まだまだ、こんなもので驚いていられないぞー!

モスラが翅(はね)で壁を破壊しながら進む。
精霊が管理しているため、お屋敷が崩れ落ちる心配はないとのこと。存分に暴れられるね!

「右手には鏡蜘蛛(ミラースパイダー)がいる。
よし、そろそろ僕たちも分かれよう」

ルーカがレナから手を離した。

「クレハ、イズミ、リリー、ハマル。レナのことを一番近くで守り抜いて」

「「「まっかせてー!」」」

レナが自分たち全員を鼓舞するように微笑んで、

「称号[お姉様][赤の女王様(覇道)][サディスト]セット!
スキル[伝令]みんな、お聞きなさい。
私は赤の女王様レナ。さあ、私が宣言するわ! 私と従魔たちが得るものは勝利のみよ! きらめけ幸運! 刮目せよ世界! 赤の覇道を突き進むわ!」

「『<キャーーー従えてーーーーー!!>』」

いつもの流れをこなした。
やっぱりレナパーティは最高〜! とみんなの心が弾む。やったね!

緊張感を待つよりもこっちの方がこの子たちには合ってるのね、とマリアベルが苦笑した。

「モスラ、前にまたいっそう強硬な鏡がある……というか出現した!
鏡蜘蛛(ミラースパイダー)と一緒にいる子どもが、こっちの様子を視ているようだね。
あっ、”呪い”効果が付与されている……破片に当たらないで! いける?」

『風で防御をしてみましょうか』

それとも[サンクチュアリ]を使う? と、ルーカが自分の悪運体質を振り返りつつ呪い判定を恐れながら考えていると……

「私におまかせなさいな。最初から全力でいくわ」

レナが朱色の笛に手を伸ばす。
オラァーーーーーーー!!

「召喚! |朱印の従者(バーミリオン・サーヴァント)!」

”ピィーーーーーーーーーー!”

朱色の蜘蛛糸が進行方向に張り巡らされた。
召喚魔法陣が描かれて、朱色の人物が現れる。

すでに仮面をつけていてフルスタンバイ!!

(ッッアーーーーーーーー!?!? これが噂のおおおおっ)

マリアベルがガクブル震えて激しく咳をした。
ルーカが口の中を噛んで笑いの衝動を堪える。

クーイズがスライム触手を伸ばして、サディスティック仮面をモスラの背に引きずり込むぅ!!

「っ……!?」

「はいその朱印の召喚魔法陣が消えないうちに鏡を壊すよーー! ゴーーーー!!」

ルーカの早口の説明があり、

ギチギチギチギチギチ……バリィィィン!!

朱印魔法陣は言うなれば鏡に触れないようにオブラートとして使われたのだ。

『おや。鏡自体は脆くないですか? 蜘蛛糸を引きちぎる方が大変でしたね』

モスラが飄々と言う。
ギガントバタフライの突撃力が凄いだけである。

呪いは不発に終わった。

「よくやったわ! ……っ!」

「あっ、レナ女王様、舌噛んじゃったー? はいスライムグミエリクサー」

ハマルがレナの口にグミを放り込む。
ルーカは自分でグミを食べて、キラに目を合わせて伝言を託し、ぶんぶん手を振りながら無言で立ち去った。口の傷を癒したのだ。
肩に乗ったシュシュがケラケラ笑っている。

<さーて、代弁しますね!
ルーカティアスさんとシュシュさんは白淫魔ラズトルファのところへ向かいました。
そしてオズワルドさん、レグルスさん、ミディアム・レアさん、鏡蜘蛛(ミラースパイダー)のところに行ってらっしゃいませーー! ご武運を!>

「「了解!」」

「ミィーー! 頑張ってくるノヨー♪」

獣人が軽快にモスラの背を降りた。
出がけに父に発破をかけられたオズワルドが、小声で言い残す。

「……主さん、こっちが済んだら駆けつける。気をつけて!」

「俺も後から急いで向かいますからね!!!!」

「きゃー! ミィもー♪」

「……ありがとう」

もっきゅもっきゅとグミを咀嚼していたレナは、ごくんと飲み込むと、微笑んで手を振った。

(従魔が可愛くても今は叫んじゃダメ、また舌を噛む。くぅぅぅ!)

バタフライライド中なのが悔やまれるほど従魔たちが素敵だ。
レナはにやっとしながら、高笑いもなんとか堪える。

珍しく、遠方で影響を受けたルーカの方が笑い出してしまったのは内緒だ。
レナの目はうっすらと紫色がかっている。
[感覚共有]である。

みずみずしいスライムグミはちょっぴりエリクサー化させてあったので、口内を治療し、魔力もすこし回復した。

「待たせたわね」

スライムに捕まったサディスティック仮面が無言でレナをガン見して指示を待っているのだ。
バチバチバチィ!! とレナ女王様と目があう。
お互いの覇気と威圧感がすんごい。
マリアベルが突っ伏した。土下座スタイル。

「サディスティック仮面。あなたはキラと組んで動いて頂戴」

<ハァーーイ! 先ほどぶりですサディスティック仮面さん♡ なんちゃって♡
私のマッピングに協力して下さいな。このお屋敷の全ての場所に行きたいのです! パンドラミミックを持って走って走ってぇーー!>

つまりパシリである。
彼をこんなに雑に扱うだなんて前代未聞だ。
王宮中が震え上がり、魔王が聞いたら爆笑するに違いない。

「承 知 致 し ま し た。……迅速にこなします」

サディスティック仮面はレナをちらりと一瞥してそう伝えた。
彼がここに居続ける限り、召喚者であるレナの魔力がじわじわ消費され続けるのだ。
そのための魔力回復スライムグミである。
マジックバッグに大量にストックしてある。

「さあいってらっしゃい。私の可愛い子|たち(・・)」

<ああん! レナ女王様、従えてぇーーー!>

叫ぶパンドラミミックをぐわしっと掴んで、サディスティック仮面は煩悩を殴りながら駆けて行った。
魔王を追いかけ回して培った機動力は素晴らしいものである。

(あああああ失言がーー!? 私の中のお姉様が荒ぶっちゃった……うう……!
サディス宰相、せっかく別の衣装に着替えてくれてたのにちゃんと見てあげられなくてごめんなさい……。いや言及されたくないかもしれないけど。
宰相との関連性をなくすためだろうなぁ……なんというか、その……ご苦労をおかけします。よろしくお願いしますね)

レナがそっと内心で考えて、鞭を握りしめた。

キラナビゲーションを眺める。

ギルティア、白淫魔、鏡蜘蛛のところに従魔たちが到達し、すでに戦闘を始めているようだ。
キラはサディスティック仮面とともに動き、マップがすこしずつ完成し始めている。
このマップが埋まった時、何かが起こる。

マップの中央奥には、|夢の支配者(ナイトメア)バクと、声の一族の巫女スイがいる。
その横の部屋にはイヴァンのマーク。

レナがごくりと喉を鳴らした。

『やっと、レナ様を苦しめ続けた最低野郎を懲らしめる時が来たのですね。なんと素晴らしい気分でしょう!』

モスラがイヴァンの担当だ。
相性がどうのではなく、絶対にそう言って譲らなかったから。
ヤル気を尊重することにした。

さあそれでは、奥の広間に、ドゴオオオオオオオン!!!!

壁をぶち破って現れた巨大なバタフライに、マルクとスイが戦慄する。
バタフライは魔人族モスラとなり、レナをふわっと抱きかかえて降ろすと、そのまま風のように走って隣の部屋に入っていった。
彼はイヴァンと対峙する。

夢組織のトップを前に、レナたちがポーズをキメる! コミカルキュート!
他の部屋でも同じような状況だ。

宝石が光り[カラーチェンジ]赤色の衣装が派手にひらめくぅ!

「「「「「赤の祝福戦隊ー! レナレンジャー、参上!!」」」」」

 

 

 

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