190:夢組織の屋敷、潜入!

森の中を進み、お屋敷がある方向へ。
魔眼の者たちが先導するので、迷わない。

森の終わりが見えてきたところで、先頭が足を止めた。

「……さあ。ついたぞ」

魔王ドグマも黄金の目を瞬かせる。

「嫌な気配だ」

ため息をひとつ。

「頑張れよ。若者たち。送り届ける協力はする」

「よろしくお願いします」

ドグマの拗ねたような顰め面を眺めて(心配してるんだろうなぁ)とレナパーティの誰もが分かった。
ハマルがオズワルドを軽く小突く。

(おやー? オズの耳が揺れてるぅー?)
(気、に、す、ん、な)

オズワルドがツンと顎を上げて、前にずんずん進んだ。レナの隣に。

「何よりも魔物使いの主人を取られないように、だもんな」

レナは感激に泣き崩れる衝動を必死にこらえた。

「そうだぞオズワルド。よく言った! ふはははは!
聞けば、例の死霊術師(ネクロマンサー)は魔物使いレナを狙っているらしいではないか。
主人を失えば、レナパーティの指揮は乱れる。士気が下がり、統制がなくなり、援護魔法も使われない。主人を人質にされたら従魔は攻撃できないだろう。敵の陣地で、そのような事態に陥らないよう気をつけろ。
ーーそれに大事な存在を守ってこそ獣の雄というものだ。なあ?」

ドグマがにやっと笑い、息子に下世話な一言を付け足す。
親父は恋バナが好きなのだ。

オズワルドは「はあ?」と尻尾をぶわっと膨らませたあと「俺は従魔だから主さんが大事なのは当たり前」と冷ややかに返事をした。
レナが撫で撫で撫で撫でとオズワルドを可愛がる。
ドグマはつまらなさそうな顔になった。

「何やってんですかぁ。緊張感持ちましょ! ねっ!」

((いいぞマリアベルもっと言ってやれ!!))

護衛部隊が珍しく総意でマリアベルを褒めた瞬間である。

宰相が国で待機しているので(魔王が遠征中、政府の戦闘力を維持するため。サディス・シュナイゼは政府の統率に長けているし、戦闘力もドグマに次いで高いと言われている)今、魔王のストッパーをこなせる者がいないのだ。
ロベルトたちは慎重派なのでどうしても注意が遅れる。

「そうだな!!!!」

ドグマがどどんと言い放った。
鳥がいっせいに羽ばたいて逃げていった。

「声がでかい」

オズワルドが半眼で注意する。
とっさに魔道具でお屋敷に声が届かないようにしたリーカが、苦笑いした。

「ここから中が視えますか? ルーカさん」

「うん、ご主人様。敵はやっぱり精霊を”堕とし”てしまったみたいだね……怨念のようなもので空気が濁っている。
お屋敷に様々なトラップを仕掛けて、敵襲に備えているみたいだよ。
精霊を完全に支配下に置いているわけではないから、彼らは結界から出られないみたいだ」

「分かりました。……ルーカさん、今、わざわざご主人様って呼びました?」

「雰囲気出るでしょ? 従魔たちみんなで守るからね。ご主人様」

ルーカが言い、従魔に微笑みかけられたレナは、胸がジィンと熱くなるのを自覚する。
もともと突っ走っていって危険に晒されるタイプではないが、後方にいても従魔たちとともに自分の身を守らなくては、と強く思ったようだ。

「頼りにしてるよ! いつもありがとう、私の可愛い従魔たちっ」

▽レナの笑顔で 従魔のヤル気が グーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンと上がった!
▽モスラが ガキゴキと拳を鳴らした。
▽さあ、暴れようぜ!

「ステータスを確認しておくよ」

とても久しぶりの開示になってしまってすまない。
まあ見てくれ。

ギルドカード:ランクD
名前:藤堂(とうどう) レナ
職業:|魔物使い(モンスターテイマー)LV.31
装備:レディコート、ミニスカート、粛清(しゅくせい)ヲ授ケシ淑女ノ赤手袋、乙女ヲ彩リシ赤キランジェリー、赤ノブーツ、Mバッグ、赤ノ祝福ヲ賜リシ覇衣(はごろも)、モスラの呼び笛、赤ノ棘姫(いばらひめ)、M服飾保存ブレスレット(赤)、朱蜘蛛の喚(よ)び笛、白炎聖霊杯(カンテラ)、磨き石のブローチ
適性:黒魔法・緑魔法[風]

体力:43(+2)
知力:79(+6)
素早さ:31(+3)
魔力:79(+2)
運:測定不能

スキル:[従魔契約]、[鼓舞]+2、[伝令]、[従順]、[従魔回復]+1、[みね打ち]、[友愛の笑み]、[薙ぎ打ち]、[仮契約]、[体力向上]

従魔:クレハ、イズミ、リリー、ハマル、モスラ、シュシュ、ルーカティアス、オズワルド、キラ、レグルス、キサ、ミディアム・レア

ギフト:[レア・クラスチェンジ体質]☆7
称号:逃亡者、お姉様、赤の女王様(覇道)、サディスト、精霊の友達、トラブル体質、聖霊の友達、白炎聖霊杯(カンテラ)の司祭、祝福体質、退魔師」

「名前:クレハ
種族:スター・ジュエルスライム(赤)LV.30
装備:オフショルワンピース、ニーハイソックス、革靴、M服飾保存ブレスレット(赤)
適性:赤魔法[熱、炎]

体力:57(+4)
知力:44(+2)
素早さ:49(+2)
魔力:31(+1)
運:24(+2)

スキル:[溶解]+2、[超硬化]、[伸縮自在]+1、[火達磨]、[火炎放射]、[束縛技術]、[状態変化・マグマボディ]

ギフト:[全状態異常耐性]☆4
称号:魔人族、悪喰(あくじき)」

「名前:イズミ
種族:スター・ジュエルスライム(青)LV.30
装備:オフショルワンピース、ニーハイソックス、革靴、M服飾保存ブレスレット(青)
適性:青魔法[水、氷]

体力:54(+3)
知力:41(+2)
素早さ:55(+3)
魔力:32(+1)
運:23(+2)

スキル:[溶解]+2、[超硬化]、[伸縮自在]+1、[氷のつぶて]、[鉄砲水]、[束縛技術]、[水流制御]

ギフト:[全状態異常耐性]☆4
称号:魔人族、悪喰(あくじき)」

「名前:リリー
種族:ハイフェアリー・ダーク♀、LV.28
装備:短ジャケット、バレリーナスカート、ショートブーツ、M服飾保存ブレスレット(水色)
適性:黒魔法、黄魔法[付与]

体力:29(+1)
知力:36(+1)
素早さ:34(+1)
魔力:66(+5)
運:27(+2)

スキル:[幻覚]+3、[吸血]、[魅了]、[黒ノ霧]、[紅ノ霧]、[魔吸結界]、[消費魔力軽減]、[跳び蹴り]、[|軽業(かるわざ)]、[護身武術]、[光沢付与]

ギフト:[フェアリー・アイ]☆4
称号:魔人族、サポート上手

「名前:ハマル
種族:夢喰いヒツジ♂ 、 LV.33
装備:ミディアムジャケット、短パン、もふもふコート、ブーツ、M伸縮リボン、M服飾保存ブレスレット(藍)
適性:黒魔法

体力:55(+5)
知力:41(+2)
素早さ:42(+2)
魔力:34(+2)
運:34(+1)

スキル:[体形変化]+1、[駆け足]、[快眠]+2、[周辺効果]+2、[跳躍]、[夢喰い]、[夢吐き]、[頑丈]、[突進]

ギフト:[鈍感]☆5
称号:魔人族、ドラゴンキラー、マゾヒスト」

「名前:モスラ
種族:ギガントバタフライ♂、LV.30
装備:ロングコート、マント、Mフェニックスグローブ、重量バンド、革靴、M服飾保存ブレスレット(紅)
適性:緑魔法[風]

体力:45(+3)
知力:35(+2)
素早さ:47(+2)
魔力:32(+2)
運:24(+2)

スキル:[吹き飛ばし]、[威圧]、[風斬]、[旋風つむじかぜ]、[風避け]、[|風斬翅(カザキリバネ)]、[アイアンボディ]、[ハイステップ]、[話術]、[体幹強化]、[豪腕]、[豪脚]

ギフト:[大空の愛子]☆5
称号:魔人族、カリスマ、クラーケンキラー、努力家、万能執事」

「名前:シュシュ
種族:羽根飛ビウサギ♀、LV.22
装備:ドレスワンピース、ペチコート、リボンブーツ、M服飾保存ブレスレット(ピンク)
適性:白魔法[光]

体力:32(+3)
知力:25(+2)
素早さ:42(+2)
魔力:26(+2)
運:777(+772)

スキル:[逃げ足]、[スピン・キック]、[|駿足(しゅんそく)]、[ステップ]、[|暗躍(あんやく)]、[衝撃覇]、[石頭]、[自由の翼]、[腕力強化]

ギフト:[|幸運の加護(カーバンクル)]☆6
称号:魔人族」

「名前:ルーカティアス
種族:ネコミミヒト族
職業:魔法剣士 LV.29
装備:ロングコート、髪リボン、マント、従属の首輪、ブーツ、Mバッグ、魔剣+5、M服飾保存ブレスレット(紫)
適性:白魔法[光、雷]

体力:58(+3)
知力:66(+2)
素早さ:62(+5)
魔力:53(+4)
運:5[+-100]

スキル:[身体能力補正]、[瞬発]、[感電]+1、[雷剣]、[雷光]、[雷の毛皮]

ギフト:[魔眼]☆7
称号:麗人、制雷マスター、器用裕福、話題のイケメン、赤の宣教師、精霊の友達、調教師、笑い上戸
(従属状態・主人:藤堂レナ)」

「名前:オズワルド
種族:デス・ハウンド♂、LV.35
装備:ミディアムコート、半ズボン、ショートブーツ、尾の飾り布、M|身護(みまも)ペンダント、M服飾保存ブレスレット(金)
適性:黒魔法[時空]、赤魔法[炎]、黄魔法

体力:77(+2)
知力:43(+1)
素早さ:69(+2)
魔力:43(+1)
運:34(+1)

スキル:[嚙み砕き]、[心眼]、[観察眼]、[咆哮]、[炎爪]、[炎の毛皮]、[リトル・ボム]、[|重力操作(グラヴィティ)]、[持続力]、[冷静]、[シャドウ・ナイフ]

ギフト:[限界突破]☆5、[|巨人の血筋(タイタンクラン)]☆4
称号:魔人族、魔王の子」

「名前:キラ
種族:パンドラミミック LV.15
装備:ジャケットコート、短パン、ショートブーツ、赤のタスキ
適性:白魔法[光]、黒魔法[空間]、緑魔法[風]、青魔法[水]

体力:12(+1)
知力:46(+8)
素早さ:14(+1)
魔力:34(+7)
運:15(+2)

スキル:[空間創造]、[スペースカット]、[スペースペースト]、[テレフォン]、[投影]、[音響]、[ステルス]、[|理(ことわり)の理解]、[魔力回復]、[撮影技術]

ギフト:[アース・データベース]☆7、[創造者]☆7
称号:魔人族」

名前:キサ・ファリーナ
種族:蘭美亜(ラミア)♀、LV.14
装備:花飾り、オフショル服、ロングスカート、ブーツ、M装飾保存ブレスレット(パール)
適性:青魔法[氷]、黒魔法、黄魔法

体力:23(+1)
知力:32(+2)
素早さ:19(+1)
魔力:32(+2)
運:22(+1)

スキル:[蛇睨み]、[魅了]、[アクアミスト]、[|氷の槍(アイスジャベリン)]、[氷の息吹]

ギフト:[壮絶耐久]☆7
称号:魔人族、ラミアの姫君」

「名前:レグルス・カーネリアン
種族:火炎獅子♀、LV.15
装備:短ジャケット、マント、白スキニー、サイハイブーツ、M装飾保存ブレスレット(緋色)
適性:赤魔法[炎、熱]、黄魔法

体力:41(+3)
知力:26(+1)
素早さ:27(+3)
魔力:22(+1)
運:17(+2)

スキル:[炎爪]、[熱風]、[瞬発]、[持久力]、[暗躍]、[観察眼]、[|陽光吸収(フレアチャージ)]、[|陽光強化(フレアブースト)]、[騎乗]、[炎耐久]

ギフト:[獅子の風格]☆5
称号:魔人族、勤勉実直、問題児」

「名前:ミディアム・レア
種族:デリシャスクラーケン♀、LV.16
装備:マリンケープ、ミニスカワンピース、手袋、ショートブーツ、M装飾保存ブレスレット(パール)
適性:赤魔法、青魔法[水]、黄魔法

体力:39(+2)
知力:16(+1)
素早さ:27(+2)
魔力:36(+3)
運:25(+3)

スキル:[毒手]、[イカスミバブル]、[火耐性]、[うるうるボディ]、[鈍感]、[束縛技術]

ギフト:[超再生]☆4、[シー・フィールド]☆4
称号:魔人族」

レナパーティのスキルや戦闘手段はある程度政府にも開示した。
全員が無事に帰ってくるためなのだ。
もちろん他言は厳罰である。

同行者のステータスは全て明かされている。

「ギルドカード:ランクE
名前:パトリシア・ネイチャー
職業:花職人 LV.21
装備:エクセレントコート、黒シャツ、白スキニー、ヒールブーツ、Mポーチ、短剣、邪ヲ断ツ祝福ノハサミ
適性:青魔法[水]、黄魔法

体力:47(+5)
知力:27(+2)
素早さ:41(+3)
魔力:26(+5)
運:18(+4)

スキル:[品種改良]+1、[花鑑定]、[|投擲(とうてき)]、[筋力補助]、[色彩眼]、[緑の手]、[騎乗]、[魔改造]+1、[剣術]

ギフト:[剛腕]☆3
称号:少年、遺族、花屋店主、精霊の大親友」

「ギルドカード:S
名前:ロベルト
種族:雪豹(スノー・パンサー)♂、LV.51
装備:魔王軍制服、Mバッグ、M通信リング、M服飾保存ブレスレット(白)
適性:青魔法[水、氷]

体力:80(+1)
知力:68
素早さ:111(+2)
魔力:56
運:20

スキル:[駿足]+1、[切り裂き]、[暗躍]+2、[忍び足]、[氷爪]、[氷鏡]、[パウダースノウ]、[氷点下]、[冷気耐性]

ギフト:[耐久力]☆5
称号:魔人族、万能部下、万能上司
(従属状態:悪魔契約)」

「ギルドカード:S
名前:マリアベル
種族:光妖精(ライトフェアリー)♀、LV.60
装備:魔王軍制服、Mバッグ、M通信リング、M服飾保存ブレスレット(白)
適性:白魔法[光]、黄魔法[土、付与]

体力:40
知力:88
素早さ:50
魔力:130
運:49

スキル:[発光]、[光熱球]、[光の壁]、[魅了]、[友愛の笑み]、[気配遮断]、[ライトアロー]、[針術]、[幻覚]、[瞬発]、[逃げ足]、[毒無効]、[回復力]、[鑑定眼]、[聞き耳]、[ど根性]

ギフト:[フェアリーアイ]☆4
称号:魔人族、精霊の友達、ミラクルガール、落とし穴職人」

「みんなつよーーい!」

「<いえーーい!>」

「勝てる!」

「<ご主人様との平穏のためだものー! 頑張るー!>」

えいえいおー! とレナパーティが拳を振り上げた。
混ざりたくなったのかドグマとマリアベルが参加している。
が、まあいいやと誰も気にしない。

「俺たちも仕事を確認しようぜ」

「そうだな」

護衛部隊が淡々と自分たちのやるべきことを話し合う。
こっちまでゆるふわな空気に包まれていたら、話が進まなくなる。
ロベルトが妖精姿のマリアベルの翅をつまみ、相談の輪に加えた。レグルスは自主的に寄ってきた。

「こちらからの参加はロベルト、マリアベル、レグルス。
いざとなったら敵の命を狩ることを躊躇するな。今のレナパーティにやらせることではない」

「「承知しました」」

マリアベルも「うへぇ」と舌を出しつつ頷く。
猛毒の吹き矢を隠し持っている。

「屋敷の内部に潜入したらレナパーティはグループに分かれるので、俺たちも分散すること。これは打ち合わせ通りに。
敵はできる限り捕縛、逃がすな」

「「はい」」

「精霊のことはマリアベル……頼んだぞ」

「はぁーい!」

マリアベルが眉尻を下げて悲しそうにしながらも、手をブンブンと振る。

「あの子のことも救ってあげたいからねぇ。精霊って、清らかな信仰心をたくさん集めたとても尊い存在なんだよ。大切にしてあげなくちゃ。
犯罪組織の温床になっているのがあの子の異常の原因だから、それを取り除いたらきっと元気を取り戻すはず」

赤薔薇を擬人化したような美しい少女の精霊なのだという。

護衛部隊も「よしやるぞ」と手を合わせた。
マリアベルがどうしてもと誘うので、仕方なく。

「うおおお若者の会合っぽい」

「やめろドリュー。実年齢を考えると寒くなるぜ……」

「心が若ければいいのよ! 照れたら負けだわ……!」

「リーカ。顔が真っ赤だぞ。うん、努力は認めよう」

護衛部隊は気まずそうに手を離したが、マリアベルは満足そうにニッと笑った。

「じゃあ私、レナパーティに『従属の首輪』を渡してくるから。ちょっと特殊なアクセサリー加工をしてるから、使い方も教えてくる」

マリアベルが去る。手招きされたので、レグルスも後に続く。

「ロベルト」

クドライヤが静かに呼び止めた。

「……|砂漠の魂喰い花(デザートギルティア)のこと、えっと、連れて帰ってきてくれると助かる。
……贔屓、ってことになるのかもしれないけど、有害指定植物の樹人族なのは俺も同じだから、なんとなく思うところがあるんだよ。ぶっちゃけちまえば、同情心だな。すげーモヤモヤする感じ」

苦い顔をしている。
政府所属員としての責任感と、特殊な樹人族同士の仲間意識の板挟みになっているのだろう。

「ちくしょーうまく言えねーな。よろしく頼む!」

「承った」

ロベルトはすぐに了承した。

「どちらにせよ捕縛が任務だ。それに俺は屋敷でギルディアがいるエリアを担当するから、ちょうどいい。
連れて帰る。
その後の担当はお前に任せるぞ。心を開かせて魂の浄化作業を快諾させることができれば、更生する道も残されているだろう」

クドライヤが少し目を見開いた。
確かに、便利な力を持った犯罪者が改心の意思を示したときには、特例として首輪付きで表の業務に就くこともある。

例としては、グルニカのような場合だ。重犯罪レベルのことを数件やらかしているが、魔道具を発掘・検査・開発する才能が唯一無二なので、処刑されずに首輪付きで政府で働いている。

「死の道か、茨の道か、少しチクチクと困難な棘の道か……。どこに送り出すかはお前次第ということだ、クドライヤ」

「……はー。しんどい言い方、どうも。頑張るわ」

「では俺も頑張ってきますので」

「おいやめろ。今の俺はお前の部下なんだぞ」

クドライヤが魔王の背中を横目で眺めて、ヒヤヒヤ忠告する。
魔王ははしゃいでいて気付かないし、そんな身分礼儀などどうでもいいと思っているが。
気にしているのは部下だけだ。

「優秀な部下をたくさん送り出してきたクドライヤ元隊長なら、きっと上手く教育できますよ」

「……妙な言い回しをしやがって。ありがとうございます」

クドライヤとロベルトの会話は終わった。

ロベルトもレナパーティの元に向かう。
クドライヤはそっと、その背にむかって敬礼した。

「いいですかーレナパーティの皆さーん?」

「はーい!」

「この黒いリングをご覧下さい」

マリアベルがブレスレットくらいの大きさのリングをよっこらと持ち上げる。

「このリングを敵の首筋に押し当てるの! すると従属の首輪となって首に巻きついて、行動が制限されます。魔力を急激に吸って首輪に変化するので、敵は脱力して座り込みます。
あとは連れ帰りましょう。質問は?」

「はい。アイテムを奪われて、味方に装着される心配はありませんか……?」

レナが心配そうに聞く。

「大丈夫。この従属の首輪の効力は、魂が黒い者にしか効かないの。天使族に手伝ってもらって作ってるんだよ。
みーんな魂が清らかだから、レナパーティは大丈夫!」

レナたちがホッと息を吐いた。

「レナパーティ”は”……?」

「あ。えっとね……ロベルトとレグルスはちょっと魂がグレーなんだよねー。諜報部としていろんな裏方の仕事をこなしてきたからさ。でも首輪の効力が効かない範囲だから安心して」

「よかったぁ。……レグルス、ルーカさん、こっちに来なさい」

レナが手招きして呼び寄せると、わしわし撫でる。

「安心した?」

「お、おかげさまで……ッ」

「レナが撫でたかっただけなんじゃないの? 安心した?」

レグルスが気を遣った返事をして、ルーカはからかうように笑った。
(レナはこれを心配したんだろうね)と首にまきつくチョーカーをつつく。

「僕はこの幸運の証があるからもう大丈夫だし」

「言ってくれるじゃないですか……!」

レナがニヤッとする。
この根暗青年のメンタルもずいぶんと成長して、ご主人様は嬉しい限りだ。

「イイハナシダナーーッ!!」

マリアベルがだばっと泣いて、ちーん! と鼻をかむ。
入国審査の時を思い出して、ロベルトがため息をついた。

「装備は新作の戦闘服で統一なのね。魔道具の準備はいい? マジックバッグの中を確認しておいてね」

「問題ないです。笛に、磨き石のブローチに、[赤の棘姫(いばらひめ)]の鞭、[赤ノ祝福ヲ賜リシ覇衣(はごろも)]……」

ばっちりです! とレナが言う。
マジックバッグが元気に揺れた。
ぴょーんぴょーんぐみょーん。
レナが「こらこらおとなしくして」と押さえつける。
マジックバッグに触れながら(便利なものをありがとう)とレナは王宮に預けてきたアリスのことを思った。

「私も準備はできてるぜ。装備も、メンタルも! どんと来いだ! むしろ行く!」

パトリシアがモスラによく似た仕草でガキゴキと拳を鳴らした。
レナパーティとおそろいで新調した戦闘服に、遺品の黄甲剣を打ち直した短剣、そして[邪ヲ断ツ祝福ノハサミ]、マッチョマンの種など。

「植物のことなら花職人にまかせろ。<フラワーショップ・ネイチャー>は魔改造には定評があるんだぜ」

「パトリシアちゃん。顔に『ちくしょーめ』って書いてあるよ?」

「ヤケクソなのは否定しない」

「みんなー。パトリシアちゃんのことも守ってあげてね!」

「はーーい!」

本当はパトリシアとの連携に慣れたモスラにお願いしたかったが、モスラはイヴァンへ殴り込みをかける気が満々なので全員に頼んでおく。
パトリシアはギルティアと対峙するのだ。
大大大親友からの愛情を感じたパトリシアが照れた。

「では、いくぞ」

魔王ドグマが号令をかけると、全員が頷く。

「道を開けるのはお任せ下さいませ。スキル[ゴーストリンク]……植物たちよ、移動せよ」

クドライヤが植物を動かす。
植物の根元にゴーストローズが巻きついて同化し、命令に従い、さあっと横によけていった。
レナたちの前に広い道ができる。

ーー魔王がデス・ケルベロス姿になる! 堂々と道の真ん中を歩んでいく。

巨大で立派な背中を、オズワルドはしっかりと目を開いて見た。

”ガオオオオオオオン!!”
”ガオオオオオオオン!!”
”ガオオオオオオオン!!”

三頭がそれぞれ咆哮を上げる。

『炎魔法[デス・フレイム]!』

鮮やかな紫炎がゴウウウウッ!! と吐き出されて、精霊の結界を包んだ。
悲痛な叫び声が森にこだまする。
痛ましいが、精霊を助けるために必要な手段なのだ。

「……! よし、結界が揺らいだ!」

いける、とルーカが判断する。

「殴り込みですね。この時を待っていました」

ーーモスラがギガントバタフライの姿になった!

魔王よりも巨大。
[|風斬翅(カザキリバネ)]がえげつない輝きを放つ。

「さあみんな乗るよー! うひゃっ」

風によろけたレナをパトリシアが支えて抱え上げ、慣れた動作でモスラにまたがった。
魔人族たちも背に集まる。

「ま、まさか訓練前にぶっつけ本番バタフライライドになるなんてねぇ」

レナは苦笑いする。

「予想よりも結界が強硬になってたんだから、しかたないよな。
まあ安心しなって、私は大精霊ネッシーのおかげで風の影響を受けないから、レナのこと落とさないよ」

パトリシアがレナの腰を支えた。
(うわ細い。……こんなに華奢なのに強力な従魔たちをたくさん従えて、各所に気を配って、本当にいつも頑張ってるよなぁ)

「うん、よろしくっ」

「まかせろ」

ポンポンとレナの頭を撫でた。
早く戦闘を終わらせて安心させてやろう、と一段とパトリシアの気合いが入り、顔が真剣になる。

スライムになったクレハがモスラの頭に丸く絡みつく。上の方はとんがり、まるで王冠をかぶっているよう。

『空の覇者、天帝って感じ? 雰囲気出るでしょー』

『ありがとう御座います。クレハ先輩』

『ああ、とても気分が良いな!!』

白炎聖霊杯(カンテラ)から現れたカルメンが王冠の中央にどかっと陣取った。
頭に乗られたモスラがむすっとする。

<まあまあ、その怒りもぜーんぶイヴァンにぶつけましょう>

キラがモスラにヤる気の声を届けた。

さきほど開けた森の道は、モスラの滑走路にもなる。

「「「ご武運を!!」」」

クドライヤ、リーカ、ドリューが敬礼で見送る。

「藤堂レナ率いる、臨時レナパーティ! いってきまーーーす!」

ーーゴウッ!!!!

瞬発的にモスラが飛翔する!!
[アイアンボディ]の筋力を存分に活かした恐るべき機動力だ。

ナイフのような鋭さで瞬く間に森を抜け、デス・ケルベロスの脇を横切る。
獣の一頭が首を曲げて、レナパーティに力強い眼差しを送った。
オズワルドが目を合わせる。応援されたと感じた。

「水魔法[クリスタロスドーム]」

キサが進行方向に水の膜を作る!
さすがに大精霊が贈った極大魔法だけあって、デス・ケルベロスの紫炎でもなかなか蒸発しない。

『スキル[魔吸結界]っ』
「光魔法[サンクチュアリ]」

モスラは結界をまとった。
結界装甲ギガントバタフライが、水の膜ごと精霊結界をぶち抜く!!!!

ズドドドドドド!! ……バリーーーンッ!!

▽結界を抜けた!

レナたちが入ると、すぐに結界は塞がる。
結界の中で、精霊の反撃を受けたレナパーティの視界がぐにゃぐにゃと歪んでいる。
なんのこれしき! 進めや進め!

ズガガガガガガガガガガ!!!!

お屋敷の壁を粉砕して道なき道を進み、玄関からの敵襲に備えていた罠を理不尽に無効化していくーー!!
オラオラオラオラオラーーーー!!

『……頑張れよ』

ドグマは炎を吐くのをやめて呟き、半獣人の姿に戻った。
隣に来たリーカと頷き合うと、じっと屋敷の観察に努めた。
レナパーティのさっそくの活躍を知ると、くくっと愉快そうに笑った。

 

 

 

 

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