19:別れとレベリングとご飯

[身体能力補正]スキルを持ち主に返還したことで、妖精契約は終わったとみなされ、レナとルーカの2つ目の手首の百合印も消えた。

お別れの時が近づいてきている…。
レナたちが、ルーカに丁寧に頭を下げた。

「いろいろと、本当にありがとうございました。
何度もありがとうって言ったけど、まだまだ、お礼を言い足りないくらいです…!
王国から逃げ切れたのは、ルーカさんのサポートがあったからこそですもん。
とっても感謝しています!」

『『『ルーカ、ありがとうねーー!』』』

ルーカも楽しそうに笑って、レナたちの礼を真似して頭を下げる。

「…お互いさまでしょう?
僕も、一人だけの力じゃ逃げられなかったんだよ。
助けてくれてどうもありがとう。
それに、貴方たちといられてすごく楽しかった!
また、どこかで会ったらよろしくね」

「はいっ」

「ふふっ。
…まあ、ひとまずの行き先はお互いにガララージュレ王国とは反対方向の街だし、そのうち出会う気もするね。
その時までには、僕も貴方も、今よりももっと成長していると思う。
ここにいる皆が、まだまだ世間を知らないから。
普通の生活をしている人々に触れて、色んな景色を見て、学ぶべきことがたくさんあるはずなんだ。
お互いに一段階大人になってから、また会おうね」

一人一人が先生と握手していく。
スライムはぐよーんと伸びて、人の手の形をわざわざ作っていた。ホラー…

『『『またねーー!』』』
「また会えるの、楽しみにしていますね」
『ふにゅぅぅ…』

居眠りヒツジが最後に、寝言のような声で一人でふにゃふにゃとしゃべる。
その様子がおかしくて…なのだろうか?皆、瞳には少しだけ涙をにじませていた。

日が落ちる前に出来るだけ王国から離れておきたいと、ルーカはレナたちに伝えていた。
レナと従魔たちの死亡捏造はしてきたが、王子自身は、いまだに行方不明者として王国に捜索されているのである。

レア7【魔眼】を、そう簡単に諦めてくれるとは思えなかった。
彼の妹の[遠視]は国内しか視ることはできなかったが、万が一にも見つからないよう、用心しておくことに越した事はない。
少しでも早く、ここより遠くに行きたかった。

…再度の逃亡生活開始となるが、もう危険な王国からは脱出したし、彼(ルーカ)を縛っていた首輪もなくなり、心はどこまでも明るく晴れ晴れとしている。
レナたちと愉快な旅生活をおくったことも、いい気分転換になったのだろう。

仲間との別れが寂しくもあったが…。
それ以上に、再会がまた楽しみだった。

笑顔で、ルーカは「またね」とレナたちに告げて、くるりと踵を返し、手を振る仲間からゆっくり遠ざかっていく。

ーーいつかまた、きっと会える。
お互いにそんな予感がしていた。

先生の背がだいぶ小さくなるまで見送ってから、レナは改めて従魔たちに向き直る。

「…さて!」

彼女たちは彼女たちで、この草原で、早々に居眠りヒツジのクラスチェンジを目指すつもりなのだ。
1つでもレベルを上げたら進化するというのだから、強くしておかない手はない。

「居眠りヒツジくーん。クラスチェンジしーましょ。起きようー?」
『むにゅぅ…』
『『コッケコッコーー!!昼だよー!』』

しかし起きない。

リリーが、レナにある画期的な方法を耳打ちする。
…冷や汗ダラダラで、ご主人さまはなんとかソレに合意した。
長くここに留まっている訳にはいかないのだ。
ガララージュレ王国からは彼女たちとて早めに離れておきたい。

頑張ってヒツジの耳元で、精一杯のこわーい声を出してみるレナ。

「…あら。炎鞭をお望みなのかしら?」

こうです。

『(びっくーーーんっ!)』

『『『ああーーーッ!レナ様!従えてぇぇーーーッ!!』』』

炎の女王様は、今だに彼のトラウマになっているらしく、大成功だった。
快眠状態からヒツジがガバッと勢いよく目覚める。
他の従魔たちのたたみかけるような声援と、ヒツジの涙目に、レナの心は深く傷ついた…。
…そんなつもりじゃなかったらしいけど、今更遅いし、自業自得である。

騒がしい4名を連れて、ご主人さまは、倒すべきモンスターを探して草原を進みだした。

***

この草原は、ダナツェラの周囲にあるものより更に広い。
所々に木が自生しているものの、基本的には丈の低い草ばかりが生えた平地で、それを餌とする草食獣が多く生息している。

レナがヒツジに、[体型変化]のスキルについて尋ねた。

「最大でどれくらいまで大きくなったことがある?」

『んーとねー。
今までで一番大きくなった時は、確か、高さ2メートルくらい?だったかなー?
でも、魔力を多くこめたらもっと大きくなれそうー』

「そっかそっか。
ちなみに、効果継続時間はどれくらいかな?」

『変化する時に魔力がいるだけで、あとはずっとその大きさのままだよー。
継続時間とかはなくて、小さくなりたい時に、またスキルを使う感じ?』

「なるほど。
低燃費でとっても素敵です」

『ふふーん。撫でていいよー』

「わぁいもふもふーーー!!」

簡単に欲望に負けるご主人さま。
だって、ヒツジくんの毛はさっきまでポカポカ照らされていてお日様の良いにおいがするし、とてつもなく誘惑されたのだ!
先輩従魔たちも、ついでにと毛に埋もれ…むしろささりにいっていた。

このまま寝てしまいたかったが、衝動をなんとか堪えつつ、レナはクラスチェンジのための作戦を皆に告げる。

「まず、ヒツジくんに巨大化してもらうでしょー。
そしたら、薄く伸びたクレハとイズミが、盾みたいに彼のおでこに貼り付いて[超硬化]するの。
その状態で、ヒツジくんには、頭を低くしながら魔物に向かって[駆け足]してもらおう!
きっと上手く魔物を”轢(ひ)ける”よー?
リリーちゃんは、私と一緒にヒツジくんに乗って索敵をお願い」

『『うわーお!楽しそうーー!』』
『…まかせて、ご主人さま!』

『はーい。レナ様のおおせの通りにー』

「ヒツジくんだけ何か違うよ…」

作戦はこの通り。
とってもシンプルに、物理で跳ね飛ばすつもりらしい。
ヒツジが[体型変化]で巨大化したら、体積にともなって体重もドンと増えるので、とんでもない重量戦車が出来上がることだろう。

主人はまだ知らなかった。
この作戦によって、彼女自身と獲物たちに、どのような悲劇が起きるのかを…。

「さっそく試してみようか」

『『『『おおーーーーっ!』』』』

この日、草原は荒れた。

***

高さ3メートルはあろうかという超巨大ヒツジが、鼻息あらく興奮した様子で足踏みしている。
ご主人さまの[鼓舞]スキルの効果だ。
より獲物を撥(は)ねやすいよう、けっこうな魔力を[鼓舞]にこめている。

スライムたちが2体重なってぐよーんと伸び、ヒツジのおでこには[超硬化]による紫の強力な盾が出来ていた。

リリーは彼の首すじに乗っかって、周囲を見渡し、期待した様子で目をキラキラさせている。
獲物となるモンスターはそこかしこにいた。
隠れたところで、3メートルの高さから覗かれたのでは、獲物の姿は丸見えなのだ!
ニヤリ、と口角を上げる。
…これだけよく見えていれば、あとはヒツジを乗り回して草原を蹂躙するのみ!
基本好戦的な魔物たちは、無双が大好きだった。

背に乗ったレナは少し不安そうに毛をつかみながら、手短かに指示を出している。
自分のしがみつき能力が不安らしい。

「ヒツジくんは、リリーちゃんの誘導をよく聞いて従ってね?
弱めの草食モンスターを狙っていって。
数をたおしたら相手が弱くても、経験値の積み上げでレベルが上がるはずだから…よろしくね!
夕飯にもなるし」

最後の一文が本心な気もすごーくするが、従魔たちは特に気にせず『はーい!』と返事をしていた。
リリーが周囲を索敵をした限りでは、高レベルの危険そうなモンスターは見当たらない。
…さあ。
…どこまでも一方的な狩りがはじまる!

「突撃ーーーーーっ!!」

ついに、[駆け足]開始の指示が出された!

地面スレスレにまで頭を下げた巨大なヒツジが、額のスライム盾を攻撃武器にかえて、草原をひた走っていく。
重い身体をパワフルに全力で動かしながら、土埃を上げてモンスターを跳ね飛ばしていった。

初めの犠牲者は、彼と同じ種の”居眠りヒツジ”。
しかし仲間ではないので、情け容赦なく突っ込んでいき撥(は)ねる。
パコーーンッ!!と、ぶつかる直前にわずかに頭を上向かせることによって、獲物は軽快に空にはね上げられた。

「まさに交通事故…!?」

必死で毛にしがみついているレナが、顔を引きつらせつつ小さく叫ぶ。
ここまで事故すぎる絵面になる予定じゃなかったが、従魔たちが期待に応えすぎたようだ。

小柄なヒツジは数十メートル先まで飛ばされて、脳しんとうでも起こしているのか、フラフラしていたところをトドメで更に踏まれている。
さすが、女王様のしもべー!
ひき逃げどころではなく確実に仕留めた。
獲物がプレスされたのを確認したリリーが、満足そうに頷いて、次の進路をテキパキと指示していく。

『…ん!ここから、ナナメ右側。
12メートル先に、丸ヒツジがいるよ』

『はーい、リリー司令ー』

『いい気分…!』

ノリノリで実に楽しそう。

パカーーン!パコーーン!と、次々と草食モンスターをリズミカルに轢(ひ)いていく巨大ヒツジ。
食物連鎖底辺の”居眠りヒツジ”と言えど、チートスキル・ギフト持ちで、これほど巨大化していれば、向かうところ敵なしのようだ。

約十匹目を撥ね上げたところで、食材の回収が大変になると思ったのか、リリーがいったん後輩の足を止めさせる。
主人はどうしてるのかって?

『…ご主人さま?顔、青いよー』

『レナ様ー。…だいじょーぶ?』
『『レナーーーッ!?』』

背中で上下左右にガンガン振り回されていたレナは、完全にグロッキー状態になっていた。
動きを止めたヒツジに身体をグッタリ預けて、青白くなっている。

「……ま、負けないよー…?」

それでも、何やら自分の中で、酔いと勝負をしていたらしい。
弱々しくだが居眠りヒツジにグッジョブサインを出していた。
たしかに、彼の今回の戦歴は素晴らしいものだ。

従魔たちは、弱った主人に無理をさせるほどの鬼畜では無かったので、レベリング兼ごはん集めは、今日はここまでで終えることにする。
やかましいほどの福音(ベル)が鳴っていたし、経験値は十分だろう。

ヒツジの[快眠]+[周辺効果]スキルでレナを無理やり寝かしつけた彼らは、倒したモンスターの回収をしていった。
撥(は)ねたのはどれも、ヒト族が食べても食あたりを起こさない草食獣ばかりなので、主人の美味しいゴハンになってくれるはず。
携帯食料ばかり食べていてずっと辛そうだったレナを、気にしていたのである。

すでに肉食獣にたかられていた獲物4体を除き、ヒツジなど約6体ぶんの死た…お肉が集められた。

『確か、ヒト族って毛皮は食べられないよねー?』
『骨や内臓も、ほとんど、食べないと思うよ?』
『血もいらないねー!』

『……?解体、するつもりなの?』

主人を背中に乗せて一人おとなしく座っているヒツジが、先輩たちに問いかける。

『『レナが食べる用に、溶かして部位わけするのよーー』』
『クーと、イズなら、細かな[溶解]で部位分けもできるんだよ?』

『へえ、そうなんだー。先輩すごーい』

『『えっへん!』』

よいしょされて、スライム先輩は簡単にドヤ顔になった。
風船状にふくれ上がった彼らの身体に、リリーが、とぷん!とぷん!と血濡れのお肉を次々投げこんでいく。
ゼリーボディで器用に血抜きしつつ、皮や骨などのヒト族が食べられない部分だけをスライムは溶かしている。
スライムは雑食なので、毛皮なども平気で食べられるのだ。

ヒツジの咥(くわ)えるマジックバッグの中には、部位分けされたジンギスカン肉が大量にストックされていく。

ルーカ先生が、複数持ち出してきていたマジックバッグをひとつ譲ってくれたのである。
お金も、僅かだがちゃんと半分こして渡してくれていた。
感動したレナがまた泣いたのは、余談だろうか。…「お兄ちゃんみたい」とポツリとこぼしていた。

今回のグロい解体作業は、頼りになる従魔たちによって、全てきれいに仕上げられる。
ずっと頑張ってきたご主人さまを甘やかしてやりたい…!という気持ちから、気を効かせたのだ。
焼肉(ジンギスカン)パーティをする準備は整った。
一様にレナを見つめて、やさしく微笑んだ従魔たちは、心をこめて彼女を呼ぶ。

『『レーナ!』』
『ご主人さまーー!』
『レナ様ーー…?』

こちらを狙って突撃してきた無粋な魔物たちには、容赦なく食材になってもらった。

…ご主人さまが目を開けたら。
きっと夕飯の焼肉セットを見て、喜んで、いっぱい褒めてくれるだろう。
期待に従魔がワクワクと胸を踊らせている中、レナの瞼がピクリと動いて、黒い瞳が覗く。

「んーー…。あれっ。私、寝てたの?」

『『もぅー、レナってば寝ぼすけさーん!
ごはんの準備もう出来ちゃったよーー?』』
『…ふふっ』
『おはよー。レナ様ー』

“寝かされた”覚えは主人に無いらしいので、この際黙っておくことにする。

やたらと良い笑顔で起こしてくれた従魔を、不思議そうな顔で見ていたレナだが、言われた言葉をようやく理解できたのか、パッと花が咲くように顔をほころばせた。

腕の中に飛び込んでいった魔物たちは、望み通りにやさしく抱きとめられて、幸せそう。
見て見て!と騒がしく、ゴハンが披露される。

「わ…!
すごい。これ、全部あなたたちが準備してくれたの?
…可愛くて強くて、その上気遣いもできるなんてみんな素敵すぎーーーっ!」

『『『きゃーーーっ!ご主人さまー!』』』
『相思相愛だねぇー』

この後、めちゃくちゃ焼肉した。

ひろった細い小枝に厚切りのラム肉を刺して、クレハのフレイムで香ばしく焼いてから大きく口を開けて噛り付く。
じゅわっと肉汁が溢れて、美味しさに、思わず笑顔になるレナ。

「あああ、おいしいぃーーー…!!」

マズイ非常食によりさんざん痛めつけられていた味覚が、一気に正常に戻ったようだ。
表情までとろけている。
塩や香辛料があればなお良かったが、この大自然のド真ん中でそこまで望むのは贅沢だろう。
塩は、次に訪れた村か町で調達しよう。

「ヒツジくんはお肉を食べれないんだっけ…?」

大きな身体のまま一人葉っぱをもしゃもしゃ食べていたヒツジに、主人が控えめに話しかけた。

『そうだよー?
ボクのゴハンはいつもこれだしー。
…そんなに気にしなくてもいーのに?レナ様。
葉っぱ、美味しいよー』

「お肉もとっても美味しいから、出来れば食べてもらいたいんだけどね。
…あ。
魔人族の姿になれば、あなたもお肉を食べられるようになるかな?」

『魔人族?』

「クラスチェンジして希少種の魔物になると、魔人族としてヒト型をとることが出来るようになるんだって。
味覚もヒト族みたいになるらしいの。
試してみる…?」

『レナ様が言うならー』

ギルドカードをサッと取り出したご主人さま。
おいしいご飯を、彼にも食べてもらいたいのである!

さっき鳴りまくっていたベル音の中には、”☆クラスチェンジの条件を満たしました”のお知らせもあった。
項目をレナが確認していると、先輩従魔たちが『なになにっ?』と、お肉片手にカードを覗き込みにくる。

まず、クレハ・イズミ・リリーの現在のステータスから確認していこう。
それぞれレベルは2つずつ上がっている。

「名前:クレハ
種族:ミニ・ジュエルスライム(赤)LV.8
適性:赤魔法

体力:29(+2)
知力:21(+1)
素早さ:30
魔力:20(+2)
運:14

スキル:[溶解]、[超硬化]
ギフト:[全状態異常耐性]☆4
称号:魔人族」

「名前:イズミ
種族:ミニ・ジュエルスライム(青)LV.8
適性:青魔法

体力:28(+2)
知力:21(+1)
素早さ:31
魔力:20(+2)
運:14

スキル:[溶解]、[超硬化]
ギフト:[全状態異常耐性]☆4
称号:魔人族」

「名前:リリー
種族:ダークフェアリー(幼体)♀、LV.6
適性:黒魔法、黄魔法

体力:18
知力:16(+2)
素早さ:19(+1)
魔力:35(+2)
運:15

スキル:[幻覚]+1、[吸血]、[魅了]
ギフト:[フェアリー・アイ]☆4」

「みんな、強くなったねー」
『『『えへん!!』』』

褒められてとても嬉しそうな先輩たち。

クレハとイズミは、今回はヒツジを捕まえる時に魔法をよく使っていたので魔力値が伸びていた。
リリーは早くも[幻覚]スキルに+1の追加効果が現れている。
ご主人様のギフトの成長補正だろうが…恐ろしいほどの成長だ。

レナ本人のステータスを見てみると、レベルは2つ上がっている。

「ギルドカード:ランクG
名前:藤堂(とうどう) レナ
職業:魔物使い(モンスターテイマー)LV.4
装備:セーラー服・革靴・鞄・Mバッグ・ローブ
適性:黒魔法・緑魔法

体力:19(+3)
知力:51
素早さ:14(+2)
魔力:52
運:測定不能

スキル:[従魔契約]、[鼓舞]、[伝令]、[従順]、[従魔回復]、[みね打ち]

従魔:クレハ、イズミ、リリー、居眠りヒツジ
ギフト:[レア・クラスチェンジ体質]☆7」

ルーカの[身体能力補正]を借りて動いていたためか、今回は体力面がよく伸びていた。
取得した[みね打ち]は、初の鞭スキル。

ーーー
[みね打ち]…相手の体力をギリギリを残して、殺さず痛めつけることが出来る。一回の攻撃力は体力値による。
ーーー

…とのこと。…ラナシュ世界には過去に、鞭打ちだけで相手を死に追いやった脳筋でもいたのだろうか?

まあ、それはいいとして。居眠りヒツジのステータスを確認しよう。
クラスチェンジ先がとても気になる。
一番活躍した彼のレベルは、一気に3つも上がっていた。

<進化先:ゴールデンシープ>
<進化させるには、種族名項目をタップして下さい>

進化先はゴールデンシープという希少種らしい。
美モンスターになりそう。

「…ゴールデン!」
『『金色ピカピカなの!』』
『毛色が、白から変わるのかなー…?』
『よく分かんなーい』

「少し体が熱くなるかもしれないよ、ヒツジくん。
頑張って耐えてくれるかな…?」

『おおせのままにー』

…この傾向はあまり良くないので、また後で彼の女王様イメージを改善させようと、レナは心に決めた。
カードの進化先項目を軽くタップしてみると、ゴールデンシープの詳細な説明文が浮かび上がってくる。

【金毛羊 (ゴールデンシープ)】
…かがやく黄金色の毛をもつ、希少種のヒツジ。
さわり心地バツグンの毛の価値は、最高級の絹よりもはるかに高価。
裁縫界の至宝と言われている。
とても美しい姿をしていて、ゴールデンシープを神獣として崇めている地域もある。

戦闘面での際だった特色は無さそうだが、主人と先輩従魔の目はなにより「さわり心地バツグン!」という一文に釘付けになっていた。
崇められているという厄介そうな部分は見なかったことにしておく。

今でさえあの最高のフワフワ感触なのに…さらに先があるというのか…?
なんという素敵ベッド!

居眠りヒツジは身体の内側からの熱に耐えている様子。
白い毛が、だんだんとハチミツのような透明感のある黄色みを帯びてきた…

最終的には、とろけるような黄金色に変わる。
ギラギラした下品なものではなくて、星を思わせる上品な輝きの白金色だった。
ジュエルスライムに負けず劣らず、きらめきが眩しい。

「きれーい…」
思わずレナがほうっと息を吐く。

『そうー?撫でてもいいよー』
己の身体の変化に、彼も得意げだ。

▽居眠りヒツジは ゴールデンシープに 進化した!

「名前:ゴールデンシープ(仮)
種族:金毛羊(ゴールデンシープ)♂ 、 LV.9
適性:黒魔法

体力:31(+12)
知力:24(+11)
素早さ:16(+7)
魔力:20(+6)
運:23(+6)

スキル:[体形変化]、[駆け足]、[快眠]、[周辺効果]
ギフト:[鈍感]☆5」

目に見えて強くなったヒツジ。
ステータス値はバランスがとても良かった。
クラスチェンジによる種族追加スキルは無かったが、もともとのスキルが頼もしすぎるので問題など何もない。

「お疲れさま…!
よく頑張ったね。一応、[従魔回復]スキルを使っておくよー。
さっそくヒト化してみる?」

『はーいっ』

キラキラしいヒツジが、わくわくした様子で返事をする。

「身体をまず普通サイズに戻してくれるかな。
その上にローブをかけるから…ヒト化できたら、シャツとズボンを着てね?
自分がヒト族になるイメージをしてみて」

さすがに今回は、裸対策もバッチリ。
レナがヒツジにローブをかけてやると、上手くヒト化のイメージができたのか、だんだんとヒト族のように身体が変化していく。

短い毛に覆われていた顔は、みずみずしい子どもの柔肌に。
黄金の毛はくるくるカールした長めの金髪になる。
元のモンスターの特徴として、白い耳とヒツジ角が残った見た目の、子どもの魔人族になった。
…いったん裸ローブになったことは気にしないように。

<従魔:ゴールデンシープが魔人族として承認されました!>
<称号:[魔人族]が追加されました>
<ギルドカードを確認して下さい>

『…お肉、食べれる気がするよー?』
「ほんと!」

さっそく身体の変化を感じたらしい。

『『『良かったねぇ、後輩くんーー!』』』
『ありがとー、先輩ー』

知力の高い後輩は、なかなかに世渡り上手なようだった。
上手く先輩たちになじんでいる。
クラスチェンジしてヒト化までしたら、そろそろきちんとした名前が欲しいところ。
悩みに悩んで…レナは彼に、”星の羊”の名前を贈った。

「貴方の名前は…ハマル。
ハーくん、は、どうでしょう?」

『それ、ボクの名前なのー?…すごく嬉しいー!』

気に入ってくれたようである。
ゴールデンシープの名前は、ハマルに決まった。
ギルドカードにもしっかりと新しい名前が記載されている。

魔人族になったハマルが試しにお肉を食べてみたら、何事もなくおいしく食べることが出来た。
ヒト族特有の繊細な味覚にビックリして、目を白黒させている。

周囲に人目が無い事を確認して、クレハ・イズミ・リリーもヒト化した。ご飯を美味しく食べるためなのだ!
…衣類が足りず、相変わらずの裸ワイシャツ姿なのはもうしょうがない。
魔人族になったリリーは、翅(ハネ)のない、少し尖った耳が特徴的な子どもの姿である。

「ハーくん、お肉焼けたよー」
『あーん』
「あ、はい」

『『レーナ!こっちにもあーんしてー!』』
『ご主人さまっ、食べさせてあげるー』

「はいはーーいっ」

騒がしくも、レナと従魔たちはしっかりと新鮮な焼き肉を楽しんで、その日の夜は極上のゴールデンベッドで眠った。
[快眠]+[周辺効果]スキルもちゃっかりかけてもらっている。

もうこれ無しじゃ寝られない気がする…
それくらい最高の寝心地だった…

▽皆の 疲れが 全快した!

 

 

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