187:オーダーメイド衣装、完成!

2日後、レナたちは「赤のオーダーメイド衣装が完成しました!」という手紙を受け取った。
エリザベートたちは疲れ切っていたのだろう、文字がへにゃへにゃでインクも滲んでいる。
ポストに向かう手間も惜しんで、高級魔道具の「記憶鳩の便箋(顔を明確に思い出しながら名前を書くと、その人のところに飛んでいく)」を使っているほどだ。
手紙が鳩の形になって、お宿♡まで飛んできた。

「わぁ。さすがにこの日程で完成するなんて予想もしてなかった……!」

レナが目を丸くして驚いている。従魔たちも同様。

「頑張ってくれたんだね」

嬉しそうに微笑んだ。
お礼にまた貴重品を持って行こうかな、と考える。

「エリザベートさんたちのことだから、作品作りに妥協はしていないだろうしねー。そこはすごく信頼してる。靴もできあがっているのかなぁ……?」

「”コーディネートをしておきながらバラバラで納品なんてデザイナーの美学に反するわ!” って考えているんじゃないかな」

アリスの返事が真理だろう。
一流の職人はそういう思考をする人が多いのよ、と商談経験に基づいて話した。
どこかで頑張ってくれていた靴職人にも「ありがとうございます」とみんなで手を合わせておいた。

「そうだ。疲れがとれるものを差し入れよう」

<粗茶で御座いますね!>

キラがイキイキと発言する。モスラと紅茶のブレンドについて相談を始めた。

「花をプレゼントしようかな」

優雅な発言に聞こえるが、心の癒しのために……なんてふわふわしたポエミーな理由ではなく、花職人パトリシア作成の「元気モリモリエナジーフラワー」を贈るという物理回復提案である。
あのエリザベートのことだから、メンタル疲労の不安はない。
きっと金毛に触れたハイテンションのままでレナたちを迎えるだろう。

▽[エルフィナリー・メイド]に行こう!

……と動き始めたら、護衛部隊から待ったがかかった。

「レナ様。オーダーメイド服はここまで届けてもらったほうがよろしいかと。
全員が試着するにはあの店舗は狭すぎますし、最高級品の披露ですから、守りが固い淫魔ネレネのお宿♡をオススメします」

「あっおはようございます。
うーん、確かに……。エリザベートさんたちは気合いで服を死守してくれそうだけど、万が一、白金色(スターライトカラー)の金毛刺繍が流出したら大変ですもんね」

あの店に金毛をうかつに預けてしまったかな……とレナが反省した。
エリザベートたちも危険な目に遭ったかもしれないのだ。

しょんぼりしていたら、
「あのエルフたちは自衛手段を持っていますし、金毛仕事は絶対に引き受けたかったでしょうから依頼は問題ないのでは。派手で目立つレナパーティの皆さんと高級衣装の組み合わせについて特に注意すべき、と思ったのです。一応、衣装作成の間はクドライヤと警護隊がそっと見守っていましたから」とロベルトがフォローした。

クドライヤの別件の仕事とはそれだったのか、とレナたちが納得する。気を遣わせないように配慮して詳細を告げなかったのだろう。
クドライヤにも粗茶とエナジーフラワーが贈られることが確定した。

「あれ? つまりこれから衣装を着て出歩くレナパーティが相当やばいって言いました?」

護衛部隊がスッと目を逸らした……。
彼らがしっかり守ってくれるだろう。それでいいじゃない。

「エルフたちを迎えに行ってきますね!」

リーカとドリューが逃げ……出かけて行った。

レナたちはエルフを待つ間、お宿♡の室内でダンスレッスンをして連携強化に努める。
キラの[テレフォン]により、大精霊シルフィネシアの清らかな歌声に合わせて踊った。

(いつ、緊急依頼が舞い込んでくるか分からないから。備えておかなくちゃね!)

レナが大真面目に踊ってすっ転びかけ、モスラに手を取られてそのままダンスした。くるり! さすがにエスコートし慣れている。
面白がった他の従魔たちも手を取り合って、くるりくるりと回った。
せっかくなのでロベルトも混ざり(空気を読んだ)、幼児たちのお遊戯につきあう。

軽やかに回転したリリーと次に踊るのは、キラ。

「……。……? あっ! 違和感があると、思ったら、キラ先輩……実体化してる!」

<フフフフフフフフ☆>

きゅきゅっとリズミカルにステップを踏んで、キラがリリーの腰を支えてポーズをキメ!
頭の中にじんわり響くようなキラの声は、ヒト型になっても変わらないな、とリリーは思った。
楽しげな顔をまじまじと見上げる。

「キラ先輩、レベルアップまだなのに。予備経験値、使っちゃって……良かったの……?」

<世界のアナウンスが遅れているだけで、私には真理が分かっていますから>

キラがウインクした。
その言葉通り、ワンテンポ遅れて祝福のベルが<リーンゴーン>と高らかに鳴る。

<従魔:キラがレベルアップしました!>
<従魔:キラが称号[魔人族]を取得しました>
<ギルドカードを確認して下さい>

「……わあ! やったねーー!」

リリーが我が事のように喜び、感極まって瞳を潤ませて、キラに抱きついた。
<アーーッ! リリーさんそんなぁーーッ! やーん!>
それなりに勢いがあったので、キラは受け止めきれず尻餅をついてしまった。二人で床に転がった状態でケラケラ楽しく笑って騒いだ。

<嬉しいです!>

キラが噛み締める。
また、夢に一歩近づいたのだ。

(マスター・レナの役にたてますように)

盛大に拍手してくれるレナを眺めて、キラが微笑んだ。ぶんぶん手を振る。

「おめでとうーキラ先輩〜!」

後輩たちがわいわいとお祝いの言葉を贈る。
「祝いだ!」とパトリシアが薔薇の花を開花させて、なんとカルメンによる小さな花火も披露された。ルーカが慌てて[サンクチュアリ]で家具を守る。
後輩に埋もれたキラにレナが近づく。

「キラ、本当におめでとうっ! これからはいつでも実体化できるんだね。貴方とも毎食一緒にごはんを食べられるの、とっても楽しみにしてたの! たくさん美味しい食事を作るからね」

<マスタァーー! お優しいぃ〜♡>

後輩だらけで動けないキラは<ご慈悲を!>と両手を広げてレナを見つめたので、レナがぎゅっと抱きしめてあげた。
キラは幸せに震える。

ーー冷たい機械のスマホだったキラは、レナとともにいることで心を持ち、生身の身体を得て、今ではレナに自分のあたたかさを伝えることもできる。
スマホに触れてくれた手のぬくもりを返すつもりで、キラはほわんと染まった頬を敬愛するマスターにすり寄せた。

<パンドラミミックのキラは、マスターのためにここにいるのです!>

つい本音が出ると、

「そのマスターはキラが幸せになってくれることが何より嬉しいんだからね?」

なんて注意されたので、たまらなくなってふにゃっと表情を緩めた。
珍しいキラの表情を、アリスが魔道具ですかさず激写する。(レナに後で何度もお礼を言われた)

<ネッシー様もありがとう御座いました! おかげさまで成長が早まりました☆>

『あらあら〜いいのよ〜♪ こちらこそ、おかげさまでレナたちと遠く離れていてもお話できるし、感謝しているの〜! 祝福の歌をうたいましょうね。ラララ〜♪』

部屋に癒しの祝福が満ちた。
みんなの心が凪いでいく。
効果がありすぎたのか、ロベルトは悟ったようなうつろな目でそっとシャボン生物が泳ぐトンデモ光景を眺めた。
室内でパチンパチンと弾けて、爽やかな水色の光のシャワーを降らせた。

「ネッシー様の成長効果のおかげでー、髪が伸びたのかもー?」

ハマルが短くなった毛先をちょこんとつまんで、そんなことを言う。

「えっとね、うん……1ミリくらい伸びたかな?」

「ルーカのイジワル〜!」

「でも一時間でそこまで伸びたらすごいことだよ」

これからハマルの育毛のためにも大精霊シルフィネシアが頻繁にコールされるのでは……という恐ろしい予感はきっと当たっているだろう。
ロベルトがいっそう遠くを見つめた。

「おまたせレナさん。お客様よ」

淫魔ネレネがエリザベートたちを案内してきてくれた。

「レナちゃーん! オーダーメイド戦闘服、できたわよ……!!」

目の下にクマを作ったエリザベートがふらふらしながら現れた。
店主は店舗で撃沈しているとのこと。
後ろに控えていたクドライヤたちと、ロベルトが頷き合った。
目で(おつかれさん)と語る。

「ありがとうございますエリザベートさん! すごく頑張って下さったんですね」

「金毛で裁縫するのが楽しくってつい……! おっと。レナパーティのために最大限努力させて頂きましたわ」

きりりと言い直したが、一度口にした本音の印象が強すぎる。
エリザベートはレナパーティに軽く恩を着せようとしたのだろうが、徹夜の理由は、前者の発言で間違いがない。

「こちらが完成した衣装です」

微妙な空気をごまかすように、エリザベートがマジックバッグから衣装を着せたトルソーを取り出した。部屋に並べられる。

「わぁ! 素敵……!」

▽レナパーティの オーダーメイド衣装が 完成した!

「キサさんの着物も渡しておくわね」

「早い!」

「なんの。裾直しくらいなら朝飯前だもの」

▽キサの 裾直し済みの着物が 納品された!

それぞれの衣装を、レナたちがまじまじと観察する。
あまりに綺麗なので、自然に顔がほころんでいる。

「それぞれの従魔に似合う、街歩き用のカラー。白金色のさりげないけど豪華な刺繍。うわぁい!」

従魔がおめかしした姿を思い浮かべたレナが悶える。
しかも、これから着用姿が見られるのだ! 最高! 号泣する準備はオッケー! ……と思ったが、視界が滲んでしまうのはもったいないので涙は引っ込めようと決める。気合いだ。

「衣装効果が戦闘向きでとてもいいですね。[防火][撥水][ジャストフィット][耐久強化][衝撃吸収][汚れ防止][超軽量化]など、靴には[足音消去]も」

ルーカが目を細めて観察。

「なによりもブローチの[色彩変化]が素晴らしいです」

「パーフェクトよ猫耳くん!」

エリザベートがパチンと指を鳴らした。
自分の作品や技能が褒められるのは大好きなのだ。

「あははっ! 説明の手間が省けたわ。そうよ、とくに[耐久強化][衝撃吸収]については期待してくれていいわ。そんじょそこらのナイフじゃ傷1つつかないんだから! 戦闘時に軽やかで強靭な盾になってくれるわ。
たくさんの魔法効果は、エルフ族が施した付与魔法技術と、魔物素材由来の特殊能力の合わせ技なの。
靴は大工房のベテラン職人に頼んで特急で作ってもらったわ。
服の縫い合わせの単純作業は信頼してるハペトロッティの手を借りて急いだの」

店主が代々手伝いを依頼している優秀な血筋のハペトロッティがいるのだとか。
金毛刺繍は携わらせていないからね、口外しない約束だもの、とエリザベートは念を押した。

「猫耳くんが言う通り、この控えめな色味のオーダーメイド服はカラーチェンジするわ。
お望みの”高貴な赤”にね!
ブローチは一流の宝飾職人に依頼したわ。[アンベリール・ブレスレット]の専属に頼んだんだけど……レナちゃんたちのことよく知っていたわよ。本当に有名人ねぇ。
さあさあ着替えて見せて。私が魔法を使うのはそれからだわっ」

エリザベートがわくわくと椅子に座る。
着替え後の姿を眺めるまでテコでも動かないつもりらしい。
椅子について「あら。私がデザインしたものじゃない。淫魔ネレネさんったら趣味がいいわね」なんて自画自賛した。

色変化を人質にとられたレナパーティは苦笑しながら、着替えのために別室に。
もともとエリザベートには衣装を着た姿を見せるつもりだったのだが。

「……もしかしたらエリザベートさんは、私たちにちょっと嫌われてるって感じているのかな? あんなに『帰らないから』ってアピールするなんて。用が済んだら追い出されると思ったのかも。
そうではないんだよね。……かなり彼女の勢いに驚いちゃうだけで……」

レナの意見に、うんうん、と女の子たちが頷く。
男子は別室だが、似たような会話をしていた。
「仲良くしましょう、って改めてちゃんと伝えたいね」と、丁寧に作られた服を眺めながらレナが微笑んだ。

そしておめかしした従魔の女の子たちを惚れ惚れと観察して、一足早く崩れ落ちる。

「なんっっっっって可愛いのみんなあぁぁぁ!!」

「「えへへ、ありがとうご主人様っ」」

「シュシュはロマンチックなオレンジ色。リリーちゃんはクールな白と黒。はぁ……よく似合う……本当に可愛い……可愛い……! 豪華な服を見事に着こなすうちの子たちってば本当に素敵。
キサは恋色の着物に似たピンク、ミディはクラーケンイメージの紫色。クーイズは二人の瞳みたいな黄色ベース。レグルスの色も落ち着いていてカッコイイ。
パトリシアちゃんとアリスちゃんもお上品で好き」

レナがつらつら話し、悶えながらずっと自分の服を手に持っているので、女の子たちが手伝おうとした。

「ご主人サマのお着替えも見たいノヨー♡」

「「おりゃあああ着替えじゃあああ!」」

「待ってぇ! ちょ、クレハとイズミ引っ張りすぎ……やめてよして心の準備が! あああ! ちょっ待っっっっ」

レナが大慌てであとずさったが、すみやかに脱がされて着替えが完了した。
ナイスバディな女の子たちの前でスレンダーな胸元を晒すのが恥ずかしい、という事情があった。しかし怒涛の勢いにのまれて照れる暇もなかったようだ。着替え終わって、呆然としている。
パトリシアとアリスが合掌した。

「「「可愛い!」」」

みんなが声をそろえると、レナはやっと照れ笑いした。
わいわいとお互いの服を見て褒めあう。
空気がキャピキャピしている、とキラなら答えただろう。

<もういいですかー?>

噂をすれば。ウキウキとキラが入室してくる。
キラは無性別のパンドラミミックなので、まあ女子更衣室に入っていても問題はない。その辺はレナパーティらしく基準が緩い。従魔契約による仲間意識の強さも、このゆるやかさに拍車をかけているだろう。

<キャーー! みんな可愛いですぅ〜! 思わず記録しちゃいたくなっちゃいますぅ〜!>

キラがグーにした手を口元に持って行ってぶりっこポーズして騒ぐ。気分はギャルなのだ。
ちゃんと録画している。

「キラ先輩も、よく似合ってるの! 素敵!」

仲良しのリリーと「赤のタスキは、絶対なのね?」<赤の女王様の記録係兼広報部で御座いますから!>と話した。
レナが苦笑しながら、みんなをリビングへと促す。

「おまたせしました。わぁ! 最高の眺め…………ッッ!!」

従魔のきらびやかなおめかし姿に、レナが再度崩れ落ちた。
同じ仕草をした人物がもう一人。エリザベートがドッと膝をつく。痛そうな音がした!

「これだからこの仕事はやめられないわぁーーーーッッ!!」

絶叫。
似た人がいるのでなんだか冷静になったレナが立ち上がり……さっと表情を取り繕った。耳が赤い。他人の振り見て我が振り直せ、なのだ。なおエリザベートはまるで気にしていない。

(これ、すでにめちゃくちゃ目立つ……)

護衛部隊が目配せして気持ちを共有した。
色変化前は比較的落ち着いた色合いなのだが、布地など全て最高級、天才エルフがデザインし、衣装を着る魔人族たちもみんな美形なのである。

(ここに、さらに?)

「ではエリザベートさん。カラーチェンジをお願いします」

「この時を待ってたわぁ!」

キラが照明を変えた。
赤色が一番よく映える、白っぽい光を満たす。紅白で縁起がいいね!

「付与魔法、スキル[カラーチェンジ]付与、発動!」

エリザベートが唱えると、レナパーティの衣装が輝きをまとった。

▽オーダーメイド衣装が 赤色になった!
▽お揃いの赤色戦闘服を 手に入れた!
▽ド派手!!!!!!!!

(目立つぅーー!!)

護衛部隊が額を押さえて頭痛を耐えた。
存在感の塊のような集団である。

「ふふふー。お揃いの赤色衣装! 嬉しいね」

レナの一言で、従魔たちのテンションはマックス! ご主人様とお揃い! 嬉しいに決まっている。

レナの前に、スッと鞭が差し出される。
ルーカの仕業だ。

「どうも、赤の宣教師です。せっかく赤色集団になったんだし、びしっと記念にキメてほしいよね!」

「楽しそうですね!?」

「うん! じゃあ、せーのっ」

「「「<ご主人様、かっこよく決めてー!!>」」」

(ああもう!)
「称号[お姉様][赤の女王様][サディスト]セット!」

レナがマントをばさっとはらう!

「その者、赤き衣を纏いて、運命さえも従え、悪党たちを裁きつくす。女王の導く運命に逆らうべからず。私の前に立ちふさがる、魂を黒く染めた者たち全て、跪かせてみせましょう! オーーホホホホホホホ!」

鞭をびしっと前に掲げた!

「レナ女王様の仰せのままにー!!」

従魔たちが声を揃えて、戦隊風の決めポーズ!
まるで劇団の舞台を見ているかのようだが、これは現実である。

大興奮で拍手していたエリザベートに、速攻で称号を解いたレナが、丁寧に頭を下げた。

「本当に素敵な服を作ってくださって、ありがとうございます。エリザベートさん」

「……!? な、なによぅ。服飾職人として当然のことをしたまでだわ」

ちょっとたじろいでから、でも誇らしげにエリザベートは言った。
レナに「はい。ありがとう」と[邪ヲ断ツ祝福ノハサミ]も返す。
レナがにこっと笑いかけた。

「お疲れでしょう? 夢喰い羊のハーくんのもふもふ毛皮で[快眠]していきませんか?」

「フアッッッッッッッ!?」

エリザベートの息の根が止まりそうだった。
レナが慌てて背中をさする。衝撃が大きすぎたらしい。

「かえって負担になるかなー? ねぇ、おねーさん」

ハマルが覗き込むようにエリザベートを見つめると、

「とんでもございませぇんよろしくお願いします!!」

涙と鼻水にまみれた土下座が披露される。
せっかく近付いていたハマルが一歩下がって顔を引きつらせた。が、約束は守るつもりだ。

「……はいタオル」

「あっ、ありがとうございます。ハマル様」

「まあ好きに呼ぶといいよー。じゃー、よだれ垂らさないでねー。はいっ」

▽ハマルが 羊型になった。

エリザベートが恐る恐る近寄り、そっと横になる。ふわっふわの極上感触! 視界一面が夢にまで見た白金色(スターライトカラー)!

「ふわっふあっひっ……ああああ……!」

かちこちに硬直しながら奇声を堪えている。
ハマルは(気味が悪いしさっさと寝かしつけよう)と決めた。

『スキル[快眠]〜〜[快眠][快眠][快眠]〜』

エリザベートが途中で起きてこないようにしっかりと寝かしつける。
スライムに戻ったイズミが、エリザベートの目にボディをちょこんと乗せて、アイスマスクで眼精疲労を癒してあげた。

『ねぇおねーさん。ボクの金毛を良い糸にして、綺麗に刺繍してくれてありがとー。
明日からの金色ブランケット作製も〜、どうかよろしくね〜?』

ハマルがめぇめぇと鳴いた。
エリザベートは夢見心地でそれを聞いているのか、心底幸せそうに寝息を立てている。
大人しいし、これほど喜んでいるなら少しだけベッドになってあげて良かったなぁ、とハマルが得意げに考えた。

今はブランケットがないので、わたぐものような尻尾をそっとエリザベートに被せてやる。
ブランケットも使ったパーフェクト金色ベッドは、大好きなレナパーティに一番に試してもらおうと決めている。

起きたエリザベートは、ティーパーティに誘われた。
モスラが淹れた極上の紅茶と、淫魔が差し入れたお茶菓子を食べる。
紅茶のありえないほどの疲労回復効果に目を剥いた。

「なにこれ!?」

<粗茶です>

「粗茶」

護衛部隊が全力で首を横に振っていたので、まあ服のことでもないし、エリザベートは詳細を尋ねることは諦めた。

お茶の席のついでに、アリスが上手にエリザベートの悩みなどを聞きだす。「斬新な服のアイデアが出なくて困っている」とのこと。
何か考えた様子を見せて、アリスは一枚の名刺を渡す。自分のものではない。
エリザベートの目がキランと光る。

両者、にっこり笑顔で握手した。

何か、新しい商談が結ばれるのかもしれない。
アリスも含めてすっかりレナパーティを気に入ったエリザベートは、今後もスペシャルな衣装作りにたくさん貢献してくれるだろう。

▽エリザベートが 帰って行った。
▽お土産に エリクサー紅茶を持ち帰ってもらった。
▽レナパーティは 赤のオーダーメイド衣装を ブレスレットに登録した!

***

午後、訓練場。

「おー! 随分大きくなったんだな、夢喰いヒツジのハマル少年」

「やっほーギルド長さん〜! 負けないよー!」

「今日はお前さんの訓練を集中的に行うんだったな。いいぞ、全力でくるといい」

『メエエエエエエエエエエエ!』

ハマルが羊型になり、超巨大化する。
ヒト型も成長したためか、前よりも羊の身体を軽やかに動かせるようだ。
足が力強く動き、大地を蹴るッ!!

空にたたずむエメラルドドラゴンが迎え撃つ!!

<ーー俺たちの戦いはこれからだッッ!>
<デーーーン!>

「こらこら、キラ。字幕まで、やめよう。ルーカさんが笑い転げてるでしょ」

『あはははははははっ!』

金色子猫がころころと地面を転がって笑っている。

そのすぐ横に、ズドォン! と脚が振り下ろされた。
地面が若干凹んでいる。

「ーーいい気分転換になりましたか? では久しぶりに私と訓練いたしましょう」

ルーカの笑いを物理攻撃と威圧笑顔で遮ったモスラが、対人訓練を誘う。

『ん、了解。レナを守らなくっちゃいけないからね?』

ルーカが機敏に飛び起きて、ヒト型になりニヤリと笑った。
おそるべき挑発に乗って、全力で戦う気である。
これは訓練だからね、とレナが念押しした。

<カーーーン!!>

キラがゴングを鳴らして、ルーカとモスラが組手開始。
キラは分身体で記録をする。

訓練場のあちこちでこのような光景が見られた。

「みんな闘気が満ちてるなぁ」

レナがぶるりと震える。

『おや。武者震いか?』

カルメンが現れて、レナの首にするりと腕を回した。
レナを試すように問いかける。
首がじんわりと熱い、とレナが感じた。

「ーーそうだよ。だって従魔たちが興奮していて、主人が高まらないわけないじゃない」

『よく言った! それでこそ白炎聖霊杯(カンテラ)の司祭だ』

立ち上がったレナが、鞭をピシリッ! と地面に叩きつける。

「スキル[鼓舞]ッ!!」

ぐーーん! と従魔のテンションが上がった。

咆哮が辺り一帯に響く。
訓練は激しさを増した。
ただ傷つけるわけではなく、|大切な人(レナ)の盾となるために、矛を磨くのだ。
心が白炎のように熱く、燃える。

レナのスキル使用により、従魔と訓練をしていたギルド長やロベルトは大変な目にあったようだが。彼らもたくさんの経験値を得たので、許してもらおう。
オズワルドと訓練の約束をしていたドグマも、そのうち同じ状況になり息子の成長に驚くだろうか。

訓練場の片隅で、毛皮の一部を白く染めた獣が舞った。

▽Next! 訓練! 魔王ドグマとの約束
▽Next! 緊急依頼?

 

 

 

 

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