185:トイリア組と服飾店へ

トイリア組を迎えたレナたちはパジャマパーティをしている。
アリスが持ち込んだのだ。
パトリシアが「スライムグミフラワー」を開花させると、どんどんといろんな味のグミが実り続ける。

「植物の実だからお菓子よりも身体にいいし、夜に食べても安心だぞ」

「わーーい! パトリシアお姉ちゃんありがとう〜!」

幼児たち、とても世渡り上手。首を傾げたミディとキサには「「いいからお姉ちゃんって呼んどこ!」」とクーイズが耳打ちした。
レグルスみたいな? との説明に「「ああ〜」」と後輩も納得。

パクパクもぐもぐ、グミを食べ進める。
グミの味は様々。ラズベリー、マスカット、ミルク、カスタード、桃、はちみつ、大当たりはなんとチョコレート。

「なんとも不思議。グミが実るなんて」

「今さらだぜ、レナ。トイリアにいた時に食べてたじゃん」

「そうだけど。クドライヤさんがめちゃくちゃ驚いてたのを見て、改めてすごいなぁって」

「褒められちまったな! そうそう改良して、さらに味が増えてるんだよ。
花屋のバイトをしてくれてる男の子がいるって話したじゃん。なんだよその期待した顔……10歳くらいの緑髪の子だよ。こここ恋人とかじゃないって。
けっこうセンスが良くて、あの子が花を作ると上品に仕上がるんだよな。チョコレート味のグミが実ったのはあの子が手を加えたからだ」

レナがにこにことパトリシアの近況を聞く。
パトリシアは照れくさそうに「へへっ」と鼻をこすった。花屋経営は順調なようだ。

ひらひらメルヘンパジャマを着た従魔たちが、[サンクチュアリ]の内部でまくら投げをしている。
たまにハマルやスライムも投げられた(合意)。

大人たちは収穫したグミをちまちまとつまみ、炭酸水を飲む。
じゅわっとグミが口の中でとろけて堪らない食感!
モスラははちみつグミと完熟アップルティーを組み合わせていたので「甘ったるくて胸焼けしそう」とパトリシアにげんなりされた。

▽まくら投げに聖霊が参戦した。

『祭りか!!』と飛び出してきた聖霊も、気にせず一緒に遊び始める幼児たちもすごい。なんかもうよく分からないけどすごーい。

「レナ?」
「レナお姉ちゃん?」
「レナ様?」

「はあーーーーーーーーーーーい!!!!」

元気良く返事をしたレナの前に、どさっと3冊の|事典(オテガミ)が置かれる。

「ひいいい! ……って、これだけ? いえなんでもないです! わぁ! お友達からのおせっ……ご進言!!ありがたく!!」

墓穴を掘りかけたレナは即座に取り繕って、にこにこにこにこと微笑んでみせた。
三冊でお説教がすむならありがたい!!
そんなわけはなかった。

<[ウィンドウ]オープン>

キラがレナの前に四角の電子ウィンドウを作り上げる。

<[赤の信者の進言]項目をタップして下さいませ!>

押したくない。しかしトイリア組の笑みが深まっている。
▽レナ、押したーー!

ずらぁりと並ぶお手紙の山、山、山。スクロールバーのゴマのような小ささにレナは気が遠くなった。

「レナお姉ちゃんに伝えたいことを手紙に書き記していると物量が増えるし、すぐに読むこともできないけど、電子データだったらいつでもぱっと開けるもんね?」

「ひぃぃ!? アリスちゃんがIT世界に順応しているー! キラー!?」

▽トイリア組が 見ている。

「ありがとう……」

「どういたしましてマスター♡ PDFデータなのですが、なんなら私が音読いたしますよ! ヒップホップのリズムに合わせて♪」

「ノリノリだね!?」

キラがリズミカルに韻(いん)を踏む。見事な音楽に仕上がっている。レナの望みはそうじゃない。が……聞きやすいのでこれでよしとしよう。お手紙を読み尽す時間も気力もないのだ。
決戦の時がもう、近い。

「ーー私たちを呼んでくださってありがとうございます。レナ様」

モスラが歓喜に潤んだ瞳でレナを見つめて、傅いた。

「ああもう最高の贈り物です!! レナ様の敵を完膚なきまでに屠る権利……!! ふふふふふふ!!!!」

「言い過ぎ! モスラ! でもその笑顔可愛いね! 来てくれてありがとう、とっても頼りにしてるよ」

レナが黒髪を撫でてあげると、モスラはそれは幸せそうに微笑んだ。
モスラの従属満足ゲージが1000分の1ほど満たされた。

(だいぶ長い間離れていて従属衝動がたまっていたからなぁ……)

ルーカはモスラを視て苦笑。
そちらに注意していてマタタビグミを食べてしまったので、赤い顔で机に突っ伏した。

▽服屋[エルフィナリー・メイド]に行こう!

「ふふ、ふふふふ……!! 楽しみぃ!」

有名家具店ルネリアナ・ロマンス社のデザイナーがいると聞いて、接触を待ち望んでいたアリスが怪しい笑みを浮かべている。
この笑い方、昨夜のモスラにそっくりだ。
モスラの常識はスチュアート家譲りなのだろう。

従魔たちは小さな魔物型になっている。
珍しくルーカも子猫型で抱えられている。

「貴方がここまで小さくなっているのは珍しくて、面白い光景ですね。ふっ……!」

モスラが小さく笑いながら、レナに抱えられた金色子猫をからかうが、

『フーン。羨ましいの?』

ルーカの反撃がえげつない! 核心ズバリ! モスラが「それはもう私はギガントバタフライですから抱えてもらうことは叶いませんしええ羨ましい限りですそうかもしれませんね」と恐ろしい顔でぶつぶつ返事をする。

「こ、こらルカにゃん! モスラは二歳児ですよ、優しく! ね?」

「まあ私はレナ様を背に乗せて飛ぶことができますけどね!!!!」

持ち直したモスラが言い放つ!

「飛び火ーーーーー!?」

「風耐性マックスの私がレナを抱えたらいいしな! ほら大大大大親友だし!」

「パトリシアちゃんに退路を断たれた!? うっモスラの期待の眼差し……」

「レナお姉ちゃん、これ魔法防寒具」

「アリスちゃんのトドメ!!」

流れるような連携プレー!(と書いて囲い込みと読む)
▽レナの バタフライライドが 確定した。
▽[騎乗]スキル取得を目指そう!

久しぶりに会えて嬉しいのだろう。
トイリア組はレナと遊びたくて仕方ないようだ。

後方の護衛部隊が、わちゃわちゃ歩くレナパーティを見守りつつ、そっと話す。

「微笑ましいっつーか……待て……あのさ……バタフライライドの護衛も俺らがすんの? だよな?」

「え!? 護衛部隊が護るのって王都の中だけって話なんじゃ……」

「いつの規約の話をしているんだ、ドリュー。情報は更新しろ。今やレナパーティがどこにいようが、”聖霊対策本部”は聖霊様についていかなくてはならない」

「ひょえーーーーーー!! そうでした!」

「ドリューその前のやつ捕まえて! 魂が黒よりのグレーなのよ」

「人使い荒いですリーカ先輩!(仕事ができるお姉様素敵です!)」

ドリューは不審者捕縛後、リーカに叱られた。
マリアベルは今日も単独で、夢組織の最終調査に向かっている。

バタフライライドまでに飛行型の後輩が配属されることを祈ろう。
もしくは優秀な者を捕まえてこよう。

パトリシアがぱっと超速フラワーを咲かせて、落ち込んだ様子のレナの髪に飾ってあげた。クリムゾンレッドフリルローズという新品種の赤薔薇だ。
クドライヤはそれを眺めて「……俺たちもあんな風に平和な植物だったら良かったかもなー」とそっと呟いた。ギルティアの苦しげな顔を思い出した。

***

▽服飾店[エルフィナリー・メイド]に 辿り着いた!

アリスが服の襟を直している間に、従魔たちがどやどやと店内に入っていってしまった。
もはや勝手知ったる場所なのだ。
アリスが苦笑して後に続いた。

「モスラ」

「仰せのままに」

アリスの斜め前にモスラが出る。
デザイナーエルフとすぐにでも取引の交渉をしたい気持ちはあるのだが、今日はひとまずレナパーティの採寸が目的なのだ。
その目的を邪魔して悪印象を与えたくない。
まずは顔合わせ。急いては事を仕損ずる。

(あと、レナパーティはキサちゃんの着物の裾直しを依頼したいんだったね……)

「身長187センチ、上から97、75、95! 肩幅41センチ、股下90センチ」

突如現れた美人エルフがモスラをガン見して、パチンと指を鳴らす。
目測でモスラの採寸を終わらせた。

さらさらっとデザイン画を描くと、ドヤ顔でモスラに差し出す。ウルトラハイセンス。

「お見事です……」

「そうでしょう!!」

強烈な洗礼であった。

((服変態とは聞いていたけど、ここまで……!?))

こらこらまだ序の口だ。

「じゃじゃーーーん! レナちゃんたちのオーダーメイド服〜!」

「わぁ!? もう完成してるだなんて!?」

服変態エリザベートがさっそく取り出したのは、なんと先日採寸・デザインした従魔たちのオーダーメイド衣装。
[手縫い][早縫い][集中]スキルで丁寧に仕上げられている。

「すごい……!」

大切な従魔に着せるスペシャル衣装なのだ。
レナが細部まで姑のように細かく眺めたが、縫製はまるでミシンを使ったように完璧。異世界スキルさまさまである。
着る物にこだわるキサも惚れ惚れと眺めた。

「短期間で貴重な素材を奪……手に入れて、特急で仕上げたのよー。
本来なら追加料金をいただきたいところだけど、特別にタダにしちゃう! その代わり……レナパーティが持つ激レア素材、弾んでね♡」

「包み隠さないですね!!」

「レナちゃんたちの衣装に使うんだからいいじゃない〜私すごく頑張ったのよ〜? 昼間は走り回って素材を集めて、おばあちゃんと一緒に徹夜で裁縫しちゃった。
裁縫欲は大目に見て〜そして思いっきりレアな素材出〜し〜て〜!」

本当に包み隠さない。エリザベートはレナの腰に縋りつかんばかりだ。
勢いにレナが引く。
そしてエリザベートの前に従魔たちが立ちふさがる!

「負けないんだから!」

「やめなさいエリザ」

従魔を乗り越えようとしたエリザベートの頭を、店長がぱこんと叩いた。

……アリスが額を押さえる。取引したい人物なのだが、クセが強すぎる。職人系は変人が多いというけれど、別格だ。

(でもこれしきで諦めないわ)

幼女商人は強かった。
策を練りつつ、モスラとともにエリザベートの元へ。

「こんにちは。初めまして。私、レナお姉ちゃんの友達のアリス・スチュアートといいます。商人をしていまして」

エリザベートがアリスに注目する。
正確には、マジックバッグを掴んだアリスの手元に。

「貴重な素材をお探しだそうですね。ミレージュエ大陸特有の、この布地はいかがでしょう?」

「うわああああああい!!」

「エリザベート!」

店主のお叱りなんて気にも留めない。エリザベートは布地を受け取ってしまった。
ジーニアレス大陸では手に入らない、ヒト族職人の極上の手織り品。
一度触れたら、裁縫マニアならもう手放せない!
アリスがニッコリ微笑む。

「あ、そうだ。アネース王国の<フラワーショップ・ネイチャー>からはこれを。
青魔法[アクア]開花!」

パトリシアが水球を作り出し、花の種をとぷんと沈める。
▽[超速ベルベットオーキッド]が 咲いた!

瑞々しい大きな花弁の蘭(オーキッド)。
パトリシアは花弁を剪定バサミで落とすと、スプレーをかける。

「なめらかな花びらの感触をそのままに、布地として使えるようになりました。どうぞ」

「素晴らしいわ!!」

エリザベートが感激しながら素材を抱えてくるくる回り「ヒト族の発明品って斬新ですごいわよねぇ」とスプレーを羨ましそうに眺める。
自分が「斬新な服のアイデアが出ないのよぅ!!」と悩んでいることと重ねて考えたのだろう。
スプレーをパトリシアから譲られて、奇声を上げて喜んだ。

「ハッ。お代は……!?」

店長が「ほらみなさい」とため息をつく。
後出しで対価を払わなくてはならない展開は危険なのだ。

▽アリスの 上目遣い!
▽パトリシアの 誠意の一礼!

「私とパトリシアお姉ちゃんの服もオーダーメイドして頂きたいんです。仲良しのレナパーティのみんなとお揃いにしたくて」

「よろしくお願いします」

きょとんとエリザベートが少女たちを眺めて、

「分かったわ、ドンと任せなさいな!」

二つ返事で承諾した。
どちらにせよレナパーティの服は追加で仕上げるのだし、似た系統の服を追加で作るくらい彼女にとっては簡単だ。

パトリシアの服の代金はあの花だけではとうてい足りないが、今回はアリスが「従業員のために」と残りの代金を払うつもりのようだ。
これからパトリシアも戦闘に加わるので、装備を揃えておきたい。
魔王国政府が支払いを……という打診が昨夜あったが、余計な恩を作りたくなかったのでパトリシアはアリスの提案を選んだ。

((仲良しの友達の服を作るのって、レナパーティに好印象だしね!))

エリザベートとアリスが同じことを考えている。
思考を予測しているアリスの方が一枚上手だ。

▽希少素材を提供したアリスと パトリシアは 好感度を上げた!

クドライヤが「なんっっっっだアレ!?」と店の窓から覗いてまた驚いている。

アリスとパトリシアの衣装も、エリザベートが即座に描き上げる。
アリスは淑女の正装とも見られる上品なデザイン、パトリシアは動きやすいパンツスタイルをお願いした。レナの希望で「可愛い乙女らしさ」も含んだデザインだ。
赤くなったパトリシア(実は可愛いものが好き)をレナが肘で「このこの」とつつく。

前回この場にいなかったシュシュ、リリー、ハマルの採寸とデザインも終わった。

幼児のハマルを眺めたエリザベートが、

「ん……? この子……何か……私の服職人としての勘が……んん……?」

と呟いた。
服変態恐るべし、とレナが引く。

「もうちょっとでボク、ぐーんと成長する予定なんですー。だからかなー? 服のサイズが気になっているのかもー? 裁縫職人のお姉さんすごーい」

ハマルがからかった。
「そうなのすごいのよ!」とご機嫌でハマルの髪を撫でようとしたエリザベートの手はばしっとはたき落とした。
ハマルは相当な身内びいきで、部外者には触られたくないらしい。

エリザベートは気にしない。

「さあ!! こちらの用事は済んだわよレナちゃん。
今日注文された衣装も超特急で仕上げてみせるわ。
アリスちゃんから頂いた生地もたっぷり使って豪華に仕上げるからね♡ うふふふふ希少布……♡」

レナたちの服に使う予定なので頰ずりこそしないものの、珍しい布地をエリザベートは舐めるように眺めて恍惚とした顔をしている。
(やっぱり触られたくないなぁ)とハマルは思った。

「失礼! 落ち着いたわ。
レナちゃんたちの対価の希少素材を頂けるかしら?
それでオーダーメイド衣装のポケットやステッチ、刺繍などの細部を仕上げたいの。
全て終わってから魔法をかけるわ」

エリザベートの瞳が虹色に輝く。

「分かりました」

ハマルがヒツジに戻り、レナに抱えられる。

「ん? そういえば、さっきは髪の色が白金色だったのに、真っ白ヒツジなのよね……」

「(とんでもなく勘が鋭い!)リリーちゃん、お願い」

「はぁい、ご主人さま♡ [幻覚]解除」

▽ハマルが ゴールデンシープ特有の輝く毛並みに戻った!

▽エルフ族二人が 涙を流してお祈りを始めた!
▽刺激が強い!!

 

 

 

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