179:先輩従魔は羨ましい

夜、こっそりと先輩従魔たちで話し合はいが行われていた。
イズミが声を潜めて「ぱふぱふ〜」と言う。

「たまには早起きして朝ごはんのしたくを終わらせて、レナをおもてなししようよ〜。後輩にもかっちょいいとこ見せないとだもんねっ!」

リリー、ハマル、シュシュ、ルーカ、キラ、オズワルドが頷く。
いつも手伝いをするものの、料理はレナが中心になって作るのだ。

「シュシュ、賛成。ご主人様にしっかりがっつり休んでもらうんだもんねっ」

「分かりましたー。ボクはどうしましょー? ベッドになってるわけですがー」

「レナを起こさないように[快眠]を重ねがけしておいて。後輩3人にも。そして、僕たちのことは朝早くに起こしてほしい」

ルーカが言う。
「それがいいね!」とみんなが賛成した。

<私がアラームで、まずハマルさんだけを起こしましょう。こういうサプライズ、大好きですもの♡>

キラが「(≧▽≦)」と絵文字を映してみせる。
ご飯の時のBGMなど、演出についても話し合っていく。

「オズは最近、白炎で活躍してるからお休み係しててよっ」

「……ふぅん。どうしたらいいんだ?」

シュシュの言葉に、オズワルドはぴくりと眉を上げたものの、穏やかに聞き返す。
他のみんなにチラリと目を向けたが、揃って頷いているので同意らしい。
オズワルドがシュシュに視線を戻した。

「ハマルと一緒に、ご主人様たちの快眠を守っててくれるかなっ?
ご主人様をそのもふもふ尻尾で温めるの!
あと、後輩が起きないかも気をつけててほしい。特にレグルス!」

シュシュの説明に、なるほど、とオズワルドが頷く。

「うわぁーオズってば毛布係するの〜? 毛並み良いもんねぇ。それは認める〜。金色ブランケットができるまで頑張ってよね〜」

ハマルがにやにやとからかうと、オズワルドは呆れたようにハマルを小突いた。

「いいよ。レグルスは起きやすそうだから注意、ってのも了解。4人、近くで面倒みとく」

「お願いするぜ!」

イズミが快活に言った。

笑い転げていた大人気ないルーカが落ち着いてから、朝ごはんメニューを相談する。
レナの好物を揃えよう、ということになった。

せっかくだからレナでもあんまり作らないような凝ったやつを! というアイデアも出たが、時間をかけていて従魔が寝不足になったら悲しませてしまう。それでは本末転倒である。

企画を安心して楽しんでもらえるように、子どもでも作れる簡単な料理を並べることに決めた。
包丁はルーカが、火はクレハが担当する。

『ほう、火か。手伝ってやってもいいぞ?』

「カルメン様の火は特別すぎるのでまたの機会に」

カルメンは断られたが、面白そうにしていた。

「ロベルトさんたちにも、事情を、言って、おかなくちゃねっ?」

<お供いたしますよ☆>

リリーとキラが[幻覚]で姿を消して、こっそりと廊下に出て行く。
途中、従業員淫魔ララニーに鉢合わせたので事情を説明して、ロベルトたちの部屋を訪れた。

「分かりました。いつもより遅めの時間に伺いますね」

と、予定合わせを快諾された。

「頑張って下さい」と応援されたので、リリーがほんのささやかな力こぶをみせつける。
ベッドの上で正座していたドリューを不思議そうに眺めてから、急いで部屋に戻った。

ここで、レナたちが洗面所から出てくる。
少し疲れているな、とルーカが視きわめる。

はしゃぐミディの髪を乾かしてあげて、キサにはスライムジェル美髪ケアの方法を丁寧に教えていたのだ。これがなかなか大変だった。
レグルスはお手伝い。

クレハはドライヤー魔法を頑張っていた。
そっとイズミと視線を合わせると、心が通じ合っているようにニッと笑いあう。

「さあ、みんなおまたせ。寝ましょうか」

「はーーい!」

「明日もきっとたくさん楽しいことがあるよ。みんなにとって良い日になりますように」

レナが微笑んでそう言って、大きなハマルにもふんと寝転がる。

「スキル[快眠]〜」

心地よい眠りについた。

***

早朝。先輩従魔たちがあくびをしながら起きる。

<さぁ! エプロンをどうぞ>

心強い協力者のキラからエプロンを渡されて「よし!」と気合を入れた先輩たちは、朝食作りを始めた。

「それぞれの分担は覚えているね? 作るのはレナお気に入りのモーニングプレートだよ」

瓶詰めされた『飴色たまねぎ』を鍋に入れて、水・角切りベーコン・夢産コンソメキューブとともにコトコト煮込んでいく。
これはイズミが担当。

「ルーカ。トマトとモッツァレラ、切れたっ?」

「うん。綺麗に並べてね」

「「はぁい!」」

リリーが輪切りにしたトマトとモッツァレラチーズを交互に皿に並べて、シュシュがルッコラを散らす。オリーブオイルと黒胡椒を少々。

「ウインナーを炒めるよ。これはイズミ、挑戦してみる?」

「うん!」

ルーカが隣で様子を見ながら、イズミはウインナーを炒めていい感じの焦げ目をつけた。
ルーカの包丁細工によるタコウインナー……ではなくイカ型ウインナーは子どもたちに大好評である。

テーブルに広がったクレハのスライムボディの上に、キラが卵をパカパカと割っていくと、ホットプレート効果で目玉焼きになる。
レナの分は安定の双子黄身で「ご主人様ってば本当に運がいい〜」と盛り上がる。
黄身の固まり具合はそれぞれの好みがあるので、ルーカが視きわめて皿に移した。

ワンプレートの大きなお皿の上に、レタス、目玉焼き、ウインナーが乗る。
さらに、モスラが作り置きしていたシンプルなポテトサラダも端っこに盛り付けられた。
ルーカとキラ曰く「これがレナに馴染みのある朝ごはん」らしい。

「あとはトーストを作ったら完成!」

クレハがオーブン型になった。
食パンがこんがりと焼けていく……。

さらに、オニオンスープのいい香りが部屋にたちこめる。

『……ん……?』

レグルスの鼻がひくひくと動き、尻尾が揺れた。

(うわぁお。[快眠]を重ねがけしたのに反応するなんてー、驚きの忠誠心だよねぇー)

ハマルがオズワルドに視線をやると、

『ん。いいから寝てろ』

オズワルドが、レグルスの後頭部にもふっと顎を乗せた。

『ここに適度な圧迫感があると、ネコ科は落ち着くらしいんだ。幼い時に母猫が咥(くわ)えて運ぶとこだから、本能的に安心するのかもしれない』

『なるほどー』

オズワルドの艶やかな尻尾はレナの毛布になっている。
レナはふにゃふにゃと微笑んで、心地よさそうに頬ずりした。

『ねー。嬉しいー?』

『従魔として悪くない気分』

ハマルのからかいに、オズワルドがそっけなく返事をした。

ルーカが「トーストが焼けた。OK」と合図を出す。

とっておきのモーニングプレートが完成した。
カプレーゼ(これは思い出の品ではないけどレナの好物)とオニオンスープもテーブルに並べられる。

先輩全員でそろりそろりとレナたちに近づいた。

((みんなまだよく寝てるね。ふひひっ、可愛い寝顔〜♪))

(あああご主人様の寝息がぁ……っ)

(シュシュ、堪えてっ。ううぅご主人さまの首筋が……[吸血]してって言ってるぅー!)

(はいリリーも堪えてねー。さぁ起こそうか)

小声で話し終わり、起こそうとするものの、あまりに幸せそうな寝顔なのでためらう。でもせっかくのご飯が冷めてしまうので動くことにする。

のそっとオズワルドが退いた。レナの手が名残惜しそうに尻尾を求めて動いたので、面白く思いながら人型になる。先輩従魔と並んだ。

「「「おはよう!」」」

<おっはよぅございまぁーーす!!>

みんなが声をそろえて言って、キラが目覚めの音楽をかけると、レナがぱちっと目を覚ます。
とろんとした目をこすった。

「あれぇ? おはよう……えっ。みんなどうしたの? 私、寝坊しちゃってた……?」

『寝坊させちゃったのー。おはようございまーす』

ハマルがすぐにバラして、大きな鼻先でレナに頬ずりする。
ハマルの顎がこすれたミディが「キャハハ! もふもふくすぐったいノヨー!」と笑いながら起きて、キサも起床、レグルスはこれまで寝こけていたことを猛省しているようだ。

「寝かせてたんだから気にすんなって。俺たちが先輩として動きたかったんだ」

オズワルドがレグルスに言うと、納得していなさそうなジト目で見下ろされた。
しかしレナが感動しているので、文句を言って水を差すことはしなかった

「いい匂い!」

「「そうでしょー?」」

クーイズが「早く早くぅ!」とレナの手を引く。
レナはテーブルに向かいがてら、ブレスレットの機能で着替えた。
就寝用バスローブから部屋着になる。

机の上を見て目を見開いた。

「これって……! 私の好きなメニューだ。ありがとう」

レナが微笑む。
(懐かしいなぁ)という気持ちはそっと胸にしまった。
また大切な人たちと思い出のご飯を食べられることを、特別に感じた。

ルーカが「やったね」と従魔たちに小突かれている様子を、レナは穏やかに眺める。

「お手拭きの準備を致しました!」

「!」

レグルスがささっとテーブルに濡れタオルを置き始める。
いつもはそこまでしないのだが、レグルスも何かしら役に立ちたかったらしい。
レナが「ありがとう、気を遣ってくれたんだね」と言うと満足げに耳を揺らすので、先輩従魔が苦笑する。

「今日はロベルト隊長たちが遅いですね。俺が呼んできます」

レグルスが部屋を出て行こうとすると、ちょうど扉が開く。

「おはよう。今日はこの時間で、と伺っていたんだ」

「!? そ、そうでしたか。おはようございます」

レグルスが横に退いて、レナパーティと護衛部隊が挨拶できるように配慮した。
ロベルトはポンとレグルスの肩を軽く叩いてから、いつも通りにレナたちの予定を確認する。

「なーに、レグルス。ご主人様をおもてなしプチ作戦のこと知らなかったのか?」

「今回、俺に求められた役割は休むことだったんだ」

目の下にクマを作ったドリューが緩慢にレグルスに言うと、つっけんどんな返事が返ってくる。

「レナ様の眠りを守る係な。ふぅん、お疲れさん!」

クドライヤが上手に仲裁した。
少し機嫌を持ち直したレグルスの魂を眺めて、リーカがくすりと笑う。

「今日も朝食に招いて下さってありがとうございます。護衛がしやすいです。そういうことにしておきましょう」

「ですね! それから、カルメンの意思ということで!
ふふふ、それでは。私の可愛い従魔のみんなー! ありがとううううう!! 私の全五感で味わってこの朝食を頂きます!!」

「「わぁいレナが喜んでくれて良かったー♡ 普通に食べてー♡」」

クーイズがナチュラルに流れを修正するので、ルーカが吹き出してしまう。
レナが本気で味わうとなると、一口につき10分はかかりそうだ。
温かいうちに食べて欲しい。

「イートミィってコトー!?」

「「夜にね」」

ミディが「食べて♡」の言葉に反応してしまったが、これもクーイズが上手く流した。
今夜のメニューはイカ焼きそばである。

「頂きます!」

焼きたての食パンにかじりつくと、さっくりとふんわりのハーモニーがたまらない。
オニオンスープにはバターをひとかけら入れて飲むのがレナのオススメだ。
地球ではマーガリンだったが。

野菜はみずみずしいし、モスラ作のポテトサラダはさすがの味付けで全員をうならせた。
目玉焼きにかけるのは醤油か、ソースか、塩胡椒かそれぞれの好みを語った。
(私はずっと醤油で、お兄ちゃんはソースだったなぁ)とレナは懐かしんだ。

▽シンプルで美味しい朝食を 全員で堪能した!

▽朝のダンスレッスンをこなした!

「つ、疲れたぁ」

<粗茶です♡>

レナが休憩している。

「レナ様。タオルを」

「あっ。ありがとうレグルス」

「髪を整えます」

「あはは。でも先にシャワーにしようかな。今日は張り切って踊ったから汗をかいちゃった……」

「お背中を流します」

「そこまでしなくてもいいよ!? さっとシャワーするだけだから……気持ちはもらっておくね」

レナ(とキサとミディ。一緒にいたいらしい)がシャワールームに入ると、レグルスは甲斐甲斐しく着替えとバスタオルを用意して、脱衣所の前で待つ。
櫛を手に持ち、レナの髪も整える気でいるようだ。

つい一週間前までは先輩たちがみんなで支度を整えていたが、やることがない。
途方に暮れて、眉尻を下げた。

(後輩にレナの近くを譲るのは、成長を促すために大切なこと。
でも先輩だって、触れ合いたい)

さみしい気持ちがこみげてくる。
ルーカの不安に反応して、レナの頭にアラームが鳴ったらしく、シャワールームから「うわあああっ」と悲鳴が聞こえてきた。
「あっ」とルーカが口元を押さえる。

「しまった。不安なことはちゃんと言って、自分の幸せを大切にしてねってレナに言われてたのに。
…………黙って悲しんでるんじゃなくて、相談するべきだよね。
僕たちは敵じゃない。魂が繋がった仲間なんだから」

ルーカの言葉に、先輩たちがハッとする。

「遠慮しすぎていたみたい……?」

「もう後輩たちもクラスチェンジして、レベル11になったんだよねぇ」

「そうだよね。後輩と、相談……したいなぁ。きっと、私たち従魔みんなの……最適な距離感が、見つかるはず」

みんなで頷き合った。

レグルスは慌ててレナの様子を見に行ったものの、ルーカの不安が和らいだので、アラーム音は消えたようだ。
「ルーカさんの不安の種を聞いてきて」と頼まれたので、厳しい顔でルーカのところにやってきた。

「今、考えていることを話せ」

「はーい」

「なんだその軽い返事は」

「あのね。あまり重く捉えないで聞いて欲しいから」

「ふむ……」

レグルスは少し表情を和らげて(軽く聞くように努力しているらしい。尻尾だけは不機嫌そうに床をペシペシ叩いている)ソファに座った。
すると肩やら足の上に幼い従魔たちがわらわら乗ってきたので、ぎょっとする。
肩に乗ったジュエルスライムを落としてしまわないように静止した。

「レグルス。レナの髪を三つ編みにするの、僕がやってもいい?」

ルーカが聞く。

「……? やりたい、というなら………………譲る。それで不安が晴れるのか?」

「うん」

にこやかなルーカを眺めて、レグルスは頭上にハテナを飛ばした。

「結局、不安の種はなんだったんだ」

「あのさ……ちょっと言いづらいんだけど、僕たちはレナに触れ合う時間が減ってさみしかったみたい。距離感もそうだし、支度とかしてあげることも。
主人に尽くすのって従魔の喜びだから、レグルスたちが羨ましかったんだ」

レグルスが目を見開いた。
そして、自分の中の”忠誠心”と向き直る。
レナと[仮契約]を結んでから、日ごとに愛情が増してきていた。
それならば、先輩従魔たちは…………

「……なるほど。理解した」

レグルスが話を続けるようだったので、先輩は静かに聞く。

「俺は、今までの仕事のスタイルで動いてしまっていたんだ。新人はどれだけでも進んで働くべきだと思い込んでいた。
しかしレナパーティは軍隊ではなく、仲の良いものが集っている”輪”だ。
主人は一人しかいないのに、支度を独占していたら不平等だ。俺ばかりが恩恵を受けていて、すまなかった」

レグルスが謝る。

「調整してくれたら嬉しいなって思ったんだ。
さっきも言った通り、重く捉えないでほしい。レグルスが馴染んでくれるのは嬉しいことだから」

「そうだなぁー……諜報の働きは”仕事”でしょー。主人へのご奉仕はー、自分への”ご褒美”って覚えたらいいんじゃないー?」

「ハマル、説明が上手」

「えへへー♪」

レグルスはなんだか恥ずかしそうに顔を赤くしている。

「分かりやすい」

「でしょ!」

しかし素直に肯定した。

「じゃあ……」

従魔たちで役割分担が決まった。
レナの隣で眠る順番なども決めておく。
みんながこのあたたかい輪で平等に癒されるように。

▽シュシュの ご主人様観察ノートが 出現した!

「「「うっっっわぁ……」」」

以前よりもさらに精密さを増した内容に数人が引くが、結局、みんな興味深そうに内容を読んでいる。
ここまでの精度になったのはキラとルーカがちょっぴり協力しているからに違いない。

「シュシュのノートに、分担を書いていくね!」

得意げに書いているので、その気持ちに配慮して、キラがノートのページを撮影するという遠回りな記録方法をとった。
<アナログとデジタル両方で保存をしておくなんて、シュシュさんはえらいです!>
と大雑把に褒めた。

レナがシャワーを終えると、先輩従魔が世話を焼く。
「あれ? みんなにこうしてもらうの久しぶりな気がする」とレナが微笑んだ。

レグルスはオズワルドを捕まえて、自分の気持ちの整理のために部屋の片隅で語る。

「……諜報部で仕事をしていた時には、自分ができることはなんだってやった。
別の部隊での話だ。
それは先輩の仕事だ、と文句を言われたこともあったが『成功したなら文句はないだろう。仕事が減ったと苦情を言うのではなく新たな業務を受けて政府に貢献してください』と反論して喧嘩になり勝ったこともあるな。
それで[勤勉][問題児]という称号を取得してしまったわけだが」

オズワルドは苦笑しながら話を聞いている。

「ロベルト隊長の下では動きやすかった。
俺が自主的に働くことを肯定して、色々と任せてくれたから。
『部下の働きをサポートして成長させるのが上司だ。部下が評価されたら、上司の評判も良くなるのだから、俺自身が褒賞されることにはこだわらない。全力で部下をサポートできるように、上司という立場が存在するのだろう?』と言って、失敗の責任もすべて請け負ってくれた」

「ああ、言いそう。すぐイメージできる。それが心地よくて、馴染んでしまった?」

「その通りだ。もちろん隊長のせいにするつもりはない。
彼のように柔軟な対応を見習いたいものだと思っている……レナパーティではどのような過ごし方をすべきなのか、おかしな点があったら、すぐ指摘してほしい」

レグルスが頭を下げたので、オズワルドが驚く。

「…………いいよ。気にしておく」

「助かる」

「レグルスはすでに柔軟になってきていると思うぞ」

そう言われたら、レグルスの耳がピンと嬉しそうに立った。

「ロベルト隊長が目標なんだ」

「頑張れ。苦労は背負い込まないようにな」

「お前もな」

オズワルドとレグルスは、こつんと拳をつき合わせた。

そしてレナたちに呼ばれて、輪の中へ。
お昼頃には[仮契約]の期限がくる。
どのような展開を迎えるのか、不安に思っている仲間は一人もいなかった。

***

食事後から、レナたちの部屋を遠方から眺めている護衛部隊。
お宿♡の壁に張り付いていた不審者を一人捕縛していた。

窓辺でオズワルドとレグルスが話し込んでいたので、リーカが思考を読み取り会話を取得した。
結果、ロベルトがからかわれている。

「ひゅーひゅー。ロベルト隊長、慕われてますねー! 耳が嬉しそうったら」

雪豹の耳と尻尾がパタパタと揺れている。
照れくささをごまかすためにため息をついたロベルトは、自分の尻尾をがしっと掴んで動きを止めさせた。
ドリューにデコピンした。

「俺のあの言葉はクドライヤ隊長の受け売りですけどね」

「おまっ……そこで俺を巻き込むなよ」

「ふふっ。ロベルト隊長が立派に育って良かったですねぇ、クドライヤ先輩。すごーい」

「リーカまでレナパーティの口調を真似るとはな……」

「あっ……! ロベルト隊長ずるいですよ!? 俺がのほほん空気に感化されたら正座でお説教だったのにぃ、女子には甘いー!」

「リーカは気を抜いているわけではないからな。ほら、額を見てみろ」

第三の目がパッチリと刮目している。

「すごく……覗かれている気がします……」

「オホホホホホ!」

「あっ、またリーカ先輩がレナパーティの真似した! ねぇねぇロベルト隊長! 見てましたー!?」

「「子どもか」」

ズビシッと二人に額を突かれたドリューは、ぐおおおお……と頭を押さえる羽目になった。

「そろそろ出かけるようだ。俺たちも行くぞ」

「護衛開始だな。今日は、特別席で『勇者の伝説』の劇を観るんだよな?
人混みで小さな従魔がもみくちゃにされないように気をつけないと」

「でも運動センスで考えると、一番もみくちゃになりそうなのはレナちゃんな気がするわ……」

「「「あー」」」

なんにしても全員護るまでだ、と話し合った護衛部隊は、お宿♡から出たレナパーティの後に続いた。

 

 

 

 

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