178:お互いの成果の報告

リリーたちと合流して、レナパーティがお宿♡に揃う。

『ただいまっ! ご主人さま、これ。受け取って♪』

リリーがチョーカー型のロケットペンダントをレナに渡した。
すでに呼び笛をふたつ首から下げているので、長さを変えてみたのだと説明した。

「うわぁ素敵! 上手に作ってくれてありがとう」

『ブローチにも、なるんだよっ。魔法で、布に接着させられるし。さらに! 私……レベルアップしたの!』

えへんとリリーが胸を張る。
「おめでとーー!」とみんなでたくさん祝福した。

「リリーちゃんが制作作業でレベルアップしたのは初めてだね」

『付与魔法[光沢付与]を覚えたから、宝飾品は、私が……ピッカピカに、してあげるっ♪』

リリーがレナの手首の宝石を撫でると、いっそう輝きを増す。きらびやかだ。
今後、アクセサリーのメンテナンスはリリーに任せてもよさそうだ。

「妖精のクリエさんは元気だった?」「どんな風にアクセサリーを作ったの?」など会話が弾む。
リリーは目隠しをして[心眼]を使用し「磨き石」を加工したのだという。
「磨き石」は姿を映したものに一度だけ魔法効果を付与するので、このように対処した。

シュシュとハマルはレナの膝の上でとろーんもふーんとリラックスしている。
付き添いを見事にこなした二人は、丁寧にブラッシングされて褒められた。
しばらくぶりのパーティ勢揃いを満喫する。
まあ離れていたのは数時間なのだが。

「あとはモスラもいたら完璧なんだけどねぇ」

レナがしんみりと言って、ミレー大陸の方角を向いた。
もうしばらくで到着するので楽しみに待っているといい。

レナが、クドライヤとリーカにぺこりとお辞儀する。

「宝飾店メディチまで、うちの子たちの護衛をありがとうございました。
えーと、疲れたでしょう?」

二人は若干くたびれているように見える……。
服が少しよれているし、レナに声をかけられたら苦笑を返したのだ。

「可愛い子どもたちは注目されるからねー。寄ってきたのが可愛いもの好きなレディとかなら問題ないんだけど、不審者が紛れていて……さりげなく守るのに苦労したわ……」

ステルスに特化した不審者がいたらしい。リーカの目だからこそ見つけられた。
魂が黒寄りの灰色だったので、警備員に引き渡したとのこと。

「その注目の中、時間通りに宝飾店に送り届けるミッションはなかなかの高難易度でしたねぇ。最終的には俺が肩車して送っていきましたけど?」

「あ、ありがとうございます」

レナが再びそう言うと、

「「まあ、仕事だから」」

諜報部で鍛えられた大人二人は悟った目をして微笑んだ。

「本当にいつもお疲れ様です。えーと、気分転換に……褒めましょうか? レグルスはそれが好きみたいですし」

「レ! ナ! 様!?!?」

レグルスが真っ赤になってレナの口をふさぐ。
肯定にしかならない。
護衛仲間が微笑ましそうに口元を緩める。

「レグルスが馴染んでいるみたいでなにより!
レナ様、褒め言葉なら、俺たちよりもロベルトとドリューを労わってやって下さいよ。なーんか、すごく疲れた顔していますから……なにかトラブルがありましたよね?」

トラブルを確信されているのが辛いところである……。
レナがエリザベートについて話すと、「ほんとすんごいご縁」と同情をぶち抜いていっそ感心された。

レナが眺めてみると、ドリューは明らかに疲労が分かるが、ロベルトはポーカーフェイスだ。
上司・部下として付き合いが長いクドライヤだからこそ分かる変化があるんだろうな、と思った。

「ロベルトさん、褒めましょうか?」

「護衛は仕事ですから、お気遣いなく」

圧倒的に社畜気質である。

「もー癒されたぁーい! レナ様、甘ーく褒めて下さ〜い!」

社畜にはなりきれていないドリューが情けない声を上げたのは、ロベルトに叱られた疲れも影響しているかもしれない。
ロベルトが頭が痛そうに額を押さえた。

「ドリューお兄さんすごーーい!!」

「うわーーい! はぁ。レナパーティの皆さん本当に癒されるわー」

ドリューがゆるふわな空気に感化されすぎているので、ロベルトがさくっとヒレを凍らせて正気に戻した。

「つ、冷たい!」

「仕事中に気を抜きすぎだ。せめてそういうのは業務時間外にしろ」

まだまだ、ドリューの仕事ぶりは未熟。
ロベルトは内心少し焦りながら、ため息を吐いた。

エリザベートのことを聞いた宝飾店組の従魔たちは「迷惑をかけられすぎ!」とむすっと不機嫌になってしまった。
服を剥がれた過程まで詳しく聞かれたレナの精神が瀕死である。
それはおいといて、エリザベートが描いた「オーダーメイド戦闘服」のデザインラフ画を見せた。
するとみんな「素敵」とうっとりする。
エリザベートはその実力により、少しだけ評価を持ち直した。

「わあ〜! スカートがひらひら、可愛いっ。
この長さなら戦闘の邪魔にならないし、靴に[蹴り強化]の能力がついてるならもっと戦いやすそうだね! シュシュ、これ好きだよ。押忍!」

「もこもこコートだー。今のコートがお気に入りだからー、似たのをデザインしてもらえて嬉しいよー。コートは[一定適温]で温度を設定できるのー? くるっと包まったら暖かそうだね〜」

「私の、デザイン。バレリーナみたいで……素敵っ! ご主人さま。靴も、服屋さんで作ってくれるの?」

リリーが鋭く気付く。

「戦闘靴は服飾職人は作れないから、ルネリアナ・ロマンス社の有名靴デザイナーさんにお願いしてくれるんだって。
あの会社は家具中心なんだけど、いろんなデザインスペシャリストが揃っているみたい。
心強いよね」

「レナ様が特別扱いされたの〜。当然なのですー。ふふーん♪」

「「完全同意!」」

「みんな、すごく嬉しそうだね」

レナが困り顔で笑った。

ここで夕食の時間となり、みんなでわいわいと食卓を囲む。
”カルメンの希望として”、護衛部隊も一緒に食事をした。
大きな食卓の端から端まで、ズラリとごちそうが並ぶ。

メインディッシュはクラーケンの切り身がごろごろ入った煮物。
切り身程度なら、このお宿♡の中で[サンクチュアリ]を展開して焼くことができるので、カルメンににやにや見守られながら、オズワルドが頑張って白炎を操り火を通した。
柔らかいクラーケンと根菜類が、ほっこりと煮られている。
醤油とみりん、砂糖の優しい味付けである。

他のメニューも、鶏肉の出汁(だし)卵とじ、照り焼きラビット、お吸い物と少し和風だ。

ここで、護衛部隊と「また明日」と別れる。
ロベルト、ドリューはお宿♡の別室で待機、クドライヤとリーカはいったん自宅で休養する。
この配員はローテーションだ。

同じく聖霊対策本部所属のマリアべルはまだ、夢組織の拠点とされているお屋敷の偵察中。

定期連絡で、
「魔眼特化員が確認したところ、中にいるのは約30名ほど。魂が黒い魔人族が多い。特に強力な力を持っているのは6人、報告されていたギルティア級が3人と、あと3人はそれ以上の実力者」
「内部への潜入は不可能。[精霊の友達]であるマリアべルのみが中に入ることができたが、敵の索敵能力が高くすぐに撤退、その時に精霊の泣き声を聞いた」
……と報告があったとのこと。

この話はあくまで「連絡」としてレナパーティに話された。
レナたちも[精霊の友達]のくだりにいやーな予感がしながらも、ひとまずスルーしておく。
レナパーティと護衛部隊は、含みがある苦笑いを交わした。

「はぁ……最後にちょっと疲れちゃったね」

バタンと扉を閉めてから、レナがため息をついて呟く。

「金色もふもふで癒されますかー?」

「癒されるぅ!!」

部屋のフリースペースいっぱいに大きく[体型変化]したハマルにみんなが寝転んだ。
ふわんふわんの金毛にうっとりと埋もれる。

<今回はブレンドジュースをエリクサー化させてみました☆>

「いただきまーす!」

レナたちはちょっとお行儀悪く、ハマルに埋もれたままジュースをストローで飲む。

<衣装図を展開しましょうか。[ウィンドウ]オープン>

寝たままでも全員が見やすいようにと、キラが大画面でオーダーメイドデザインを映し出してくれた。
ここで、護衛部隊には内緒の相談である。

「白と赤でクラシカルに仕上げてもらったの。私の故郷では『紅白』って縁起がいい色なんだよ。素敵でしょ?
ただ、もっと赤色じゃないと祝福装備として変化しないかもしれないみたいで……。
エリザベートさんの能力で[カラーチェンジ]のブローチを作ってもらって、必要な時だけ全身真っ赤にしたいんだけど、珍しい服飾素材を対価に欲しいって言われちゃってねぇ」

レナが言うと、

<こちらが今のマジックバッグの中身一覧で御座います>

キラがウィンドウに中身をイラストで表示してくれた。
その下には推定価値が表示されている。
ほぼレア素材ばかりなので、ゼロの数がやたらと多い。

「『うわぁ』」

レナパーティは自分たちの財力に呆れた。
キサはスタージュエルなどを輝く瞳で眺めて、ミディは保存ごちそうリストを眺めて、レグルスは全体的なアイテムの希少価値に頭を抱えていて反応は三者三様だ。

カルメンが『このことは政府に言ってはならぬぞ?』とレグルスに適当に言った。
政府所属と兼任しているレグルスは、レナパーティの情報を報告する義務があるが、聖霊の発言をなによりも最優先にすること、と決められているのだ。
なので、カルメンが釘をさす流れは、レナの秘密が明かされるたびに一応行われている。
カルメンの対応が慣れきっているのも仕方ない。

「公(おおやけ)にすべきではない希少な素材ばかりだと思います」

レグルスが自分の常識と照らし合わせて言う。
ルーカもウィンドウを眺めながら頷いた。

「だよねぇ。それに一つしかないような素材は取っておきたいしね。
服を作る時に使える素材で、すでに世界的に認知されているもので、かつ珍しいもの……」

みんなが首を傾げた。
ぽふん、と頬にハマルの金毛が触れる。

「ん?」

もふもふ。もみもみ。みんなが可能性に気づいた。

『ふひゃぁ! くくくすぐったいですぅ〜! ボクは痛みには鈍感なヒツジですけどー、くすぐりは普通に効くのでー、もう勘弁してくださーいっ。ひゃあぁ!』

震えて悶えているハマルに、レナが明るく声をかけた。

「ハーくんの金毛の提供! どうかな!?」

『えーー? ふひゃっ』

お腹にクーイズが潜り込んでくすぐるので、ハマルは笑ってしまって喋ることができない。
レグルスとルーカに、レナが視線で尋ねる。

「いいと思いますよ。金毛羊(ゴールデンシープ)の毛皮は超高級品として流通しています。
金毛羊(ゴールデンシープ)は美しさに特化した魔物なので、自然界では生き残ることが難しく、これまで発見された個体は全部亡骸のみなので、新たに素材を得ることがとても困難です。
金毛羊(ゴールデンシープ)の毛皮は、サンライト・ムーンライト・スターライトに分類されますが、ハマルは最も希少価値が高いスターライトカラーです。
きっと服飾職人に喜ばれるでしょう」

「喜ばれすぎるだろうから、提供量は調整した方がいいだろうね……。
スターライトカラーなうえに、ハマルは夢喰い羊にクラスチェンジ済みで、レナが毎日手入れしているから毛色が別格に美しい。
服飾一族のエルフ族は金毛羊(ゴールデンシープ)を御神体のように崇めているし、あのエリザベートさんだし……ね。
でもあれほど職人として熱意がある人だからこそ、希少素材を扱えるってだけでも満足すると思う。
儲けるために市場に流したりはしないだろう。そこは良かったね」

「うっ。ううう……適任の素材が見つかったのはいいけど、ハーくんの身の安全が少し心配……」

レナが悩ましげに、ハマルを眺める。

『ふぁ……レナ様に素材認定されてるぅぅ〜……!』

悦んでいる。

「………………ハーくん。少しだけ、金毛をもらってもいいかな?」

『ボクはレナ様の所有羊ですのでー! どうぞお望みのままにぃー!』

レナが顔を覆って「ありがとう」と言った。
金毛提供について快諾されたし、主人への愛情も示してくれているのだが、なんというか……複雑な心境なのだろう。

「ハーくんは[体型変化]できるから、大型になったら毛刈りはほんの少しで済みそうだね」

『そうですねー。凄腕職人に注文ついでにー、ブランケットも作ってもらいますかー?
ボクは基本的に下側(マット)なのでー、上にかけるものがあるといいかなーってずっと思っていたのですー』

「そうだねぇ。確かに……。
エリザベートさんは金毛を無駄にしないだろうし、噂を広めることもなさそうだもんね。
次に訪問した時の様子を見つつ、頼んでも大丈夫そうだったらブランケットも注文しよう」

交渉の時は手伝ってくださいね、と言われたルーカはにこっと頷いた。

ハマルは満足げ。
幼従魔たちはゴールデンブランケットをわくわくと楽しみにしていて、レグルスが「縁取りだけでも王家への献上品になる金毛羊(ゴールデンシープ)の素材で日常使いのブランケットを……!?」と青ざめている。いつもお疲れさま。

<相談は整いましたね☆>とキラがウィンドウを閉じた。

「あれ? キサ……」

キサの手首の輝きにリリーが注目する。
[アンベリール・ブレスレット]で購入したマーメイドパールブレスレットが、着物の袖から覗いていたのだ。
手首を見せるのははしたない、とラミアの常識としてキサは語っていたのだが。

「ねぇ。キサの、着物の、裾直しは……どうなったの?」

リリーが尋ねると、キサが眉尻を下げた。
レナの服の裾をちょんとつまむ。

「ああ。えっとね、今回はエリザベートさんが大興奮していたから、キサは怖かったみたいなの。
この着物は”カラーチェンジ魔法がかけられた特注品。虹色の目のエリートエルフに発注した”らしいから……多分エリザベートさんが携わっているし、布地の色の変わり方とか、根掘り葉掘り聞かれるような気がするんだよね。
だから、エリザベートさんが少しは落ち着いているであろう次回に相談するつもり」

「相談ごと、いっぱい、なのねっ?」

残念エルフがレナたちの脳内で高笑いしている……。
次はきっと落ち着いていてくれるはず。
(新たな従魔との対面になるし、金毛羊(ゴールデンシープ)素材を持っていくけど……)
……………………………………………………信じたい。

「キサー。ミィが買ってもらった幅広リボンを巻いておくとイイノヨー」

ミディがキサの手首に可愛らしくリボンを巻いた。
うまく結べなかったので、レグルスが蝶々結びにしてあげる。

「ありがとう」

仲良く過ごしている後輩たちを、先輩が微笑ましそうに、そしてちょっと羨ましそうに眺めた。
レナのすぐ隣に、三人がいるのだ。

成長を促進するためとはいえ、先輩従魔たちは主人と物理的距離が少し遠くなっているので「レナの近く、いいなぁ」と思ったのである。
ぶんぶんと首を振って「先輩なんだから!」と気持ちを切り替えた。

「今日は楽しいことがいっぱいあったね。また明日もいろんな経験をしよう」

レナに笑いかけられた従魔たちみんなの心がほんわかとした。
ゆっくりと眠る。

 

 

 

 

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