175:新従魔たちのブレスレットを買おう!

「レナ様。本日のご予定は?」

「キサとミディの装飾保存ブレスレットを買いに行きます。皆さんも一緒に来て頂けると心強いです」

「かしこまりました」

早朝から護衛部隊がレナパーティのもとを訪れて、1日の予定を聞く。
もはやお互いに慣れているいつもの流れである。
護衛部隊もとい聖霊対策本部の仕事は、|白炎聖霊杯(カンテラ)を守ることなので、レナパーティ・カルメンと行動を共にするのは当然なのだ。

呆れたように微笑む淫魔ネレネに見送られながら、レナたちはわいわいと高級商店街に繰り出した。

「お店の近くまで、空便(そらびん)を使いたいと思います」

「ギルド長を呼びますか?」

「いえ……空便業者のラギアさんに頼もうかと。というか、ギルド長は私たちの専属じゃないですよね!?」

「冗談です。彼は今頃、シヴァガン政府と対組織対策を打ち合わせをしていると思いますよ。我々も付いていくので、2便依頼しましょう」

ロベルトがレナたちに話しかける口調は敬語のままだが、随分と打ち解けた内容になっている。
お互いに、距離感をだいぶつかめてきたようだ。

空便を利用するので、籠のスペースを圧迫しないように、従魔たちは小さな魔物姿になる。
オズワルドやレグルスは大型獣なのでヒト型のままだ。
ギルド長の魔物姿・エメラルドドラゴンに乗った時は高速移動だったのでみんながヒト型で乗り籠にしがみついていたが、観光用空便の場合はのんびりと過ごせる。

レナたちが青緑色の大きなワイバーンを見つける。

「ラギアさん、お久しぶりです。空便を利用したいんですけど、良いですか?」

レナが両手いっぱいに従魔を抱えながら話しかけると、ラギアがぐるりと振り返る。
相変わらず微笑ましい光景を見て愉快そうに笑った。
魔物型の彼が笑うと、豪快に喉が鳴る。

『久しぶりだな、お嬢さん。今日はどこまで乗っていくんだ?』

レナの腕の中にいる金色子猫のルーカが、ラギアの言葉を聞き取り、にゃあにゃあとレナに翻訳する。

「以前と同じ、高級店街までお願いしますね」

レナは堂々と答えた。
もし悪者に狙われても護衛してもらえるため、発言に躊躇いがない。
ラギアが頷いてみせると、人混みに紛れて気配を消していた護衛部隊がさっと登場した。

「私たちも同乗しますので、あと1便、信頼できる仲間を紹介して頂けますか」

……安易に頷いたことをラギアは後悔した。
青ざめて後ろを振り向くと、仲間たちがサッと目を逸らす。
政府役員の運送など、誰も進んで受けたがらない。

『そこの緋色のワイバーンがオススメですよ』

『ちくしょう! ご利用ありがとうございます!』

ラギアと緋色ワイバーンのクルスに、レナたちは二手に分かれて搭乗する。

『出発しやすよ』

グオオオオッ! とワイバーンが離陸の声を上げる。

久しぶりの観光空便をレナたちは満喫した。
ラギアとクルスの良い仕事ぶりは、シヴァガン王国政府にしっかりと伝えられた。

***

[アンベリール・ブレスレット]にたどり着く。

「ほわあぁ。立派な佇まいの商店じゃ……屋敷のようではないか」

「シヴァガン王国のブレスレット専門店で、一番の高級店らしいよ」

「なんと!」

キサがレナを見る目がいっそう輝く。
主人は財力と人脈がものすごい。
信仰心に磨きがかかっているようなので、宣教師ルーカが嬉しそうにしていた。

「私たちはみんな、ここでブレスレットを買ったんだー。キサたちのもいいのを選ぼうね」

「「わーいっ」」

キサがうきうきと返事をして、ミディは返事をしながらも(ブレスレットは食べ物じゃないのよネー? 残念)と食欲まみれの思考をしていた。

護衛部隊が、レナたちの様子を伺っていた不審者をさっと捕らえて、リーカの目で魂の濁りを暴く。厳重注意対象として警備員に引き渡した。
本日二人目。
レナパーティの護衛を始めたころと比べて捕縛人数が減っているので、王都は日々安全になっているようだ。

店の前に来ると、魔道具で外を確認していたインテリレディが慌てて出てくる。

「レナパーティの皆様。ようこそ[アンベリール・ブレスレット]へ」

素早い登場と、前回とはまるで違うほがらかな歓迎にレナが驚く。

「こんにちは。今日はこの子たち二人分のブレスレットを買いたいんですけど」

キサとミディを見たインテリレディが「まあ」と頬を染める。
二人とも高級ブレスレットがよく似合うだろう、と考えて気分が良くなった。

「ありがとうございます。綺麗なお嬢さん方ですね。是非、店内においで下さいませ。新作を色々と入荷しておりますわ」

(前に大きな買い物をしたのが効いたんだろうなぁ。今回も確実に買い物をするし。お姉さんが言う通り、キサもミディも従魔たちはみーんな可愛いしー!)

レナがにやける。

実はレナの買い物は、個人客としては、アンベリール・ブレスレット史上最も高額の買い物であった。
それを楽々としてのけたちびっこパーティを商売人が忘れるはずがない。
レナがのほほんと(あーうちの子を飾る買い物って楽しい)なんて考えている間に、インテリレディは目を光らせてキサとミディを見ている。

そして、後方にいた護衛部隊に気づいて驚愕した。

視線を向けられたロベルトが説明する。

「我々は今、レナパーティの護衛任務をしています。店内にも同行しますが、お気になさらず」

「え、ええ。もちろんですわ。最高の商品を紹介すると約束申し上げます」

政府役員が来るなんてもしや商売状況に問題が!? と冷や汗をかいていたインテリレディは、彼らがいる理由を聞いて、ホッと胸をなでおろした。
そしてレナパーティの”やばさ”を再認識する。

(以前はミレージュエ大陸の凄腕商人を連れてきて、ハット卿の紹介状を披露したものね。
このお客様はやっぱり油断ならないわ……中途半端な商品は販売できない。もちろんそんなの当然だけれど。この店舗で取り扱うものは最高級品ばかりですもの。
満足させてみせましょう。
今日はとっておきの新商品がある。さあ、バトルよ)

インテリレディは商売に燃えていたが、それを微塵も感じさせない柔らかさで、レナたちを店内に招いた。

ルーカとリーカが、生あたたかい目で彼女を視ている。
インテリレディの接客の見事さも、政府に報告された。

キサが感動しながら、きらびやかなブレスレットが飾られた店内を見渡す。

「どこを見ても美しいのじゃ!」

自店に誇りを持っている従業員の表情が和らぐ。
自然に溢れた賞賛は嬉しいものだ。

「光栄です。店内を自由にご覧下さいませ。気になる商品があればお声掛けください。詳しく説明いたします。
今ブレスレットに付けられている宝石は偽物(イミテーション)ですので、後でお好きなものに交換が可能です」

レナがキサとミディに確認する。

「二人とも、分かったかな? 好きなブレスレットの枠(わく)を選んでね」

「「はーい」」

キサとミディを中心に、レナパーティがわらわらと店内をうろつき始めた。
他にお客もいないので色々と小声で話し合っている。

「…………ああああ決められないのじゃーー!」

案の定、キサが早々に頭を抱えて悶絶しながら声をあげた。
その間にもショーケースのブレスレットをきらめく瞳で見まくっているのはさすがだ。
店員が微笑ましげにキサを眺めている。

「装飾保存ブレスレットはいくつも買うものではないしねぇ。
キサはオシャレが好きだから、着替えのパターンをたくさん登録しておくのもいいけど……」

レナがちらりとルーカを見た。

「えっとね、装飾保存ブレスレットは一人にひとつが限界だよ。複数付けてると、お互いの魔法効果が混乱しちゃうみたい。コーディネートがおかしなことになるんだ。
一つのブレスレットで着替えパターンがこんがらがったりしないように、宝飾職人が調整してるから……もしも、ペアでつけることを想定して作られたブレスレットならふたつ装着することも可能かも。
でも、キサはいろんな職人のブレスレットがどれも素敵って思っているんだよね?」

「まさに!」

キサが力強く頷くと、店の奥から宝飾職人のクールとテグリピピッタがそっと顔を出す。

お客の声が嬉しくて作業を中断してきたのだが、妖精の王族候補リリーを見てしまった妖精族のクールは真っ赤になってバタンと倒れた。
テグリピピッタが呆れながら介抱する。
リリーは様子を見てクスクス笑った。

「もしよろしければ、我々がオススメの商品を紹介してもよろしいですか?」

「えっ。でも……」

インテリレディに提案されたキサは、困ったようにレナを見た。
勘付いたレナは、安心させるように微笑む。

「私がこの間、自分で選ぶように……って言ったことを気にしてるかな?
最終的にキサが『これにする』って思えたらいいんだよ。心から気に入ったものがあれば、それはキサが自分の心で選んだことになるんだから。
お店でプロのアドバイスを聞くのっていい経験になると思う。
柔軟に考えていこう」

「うんっ」

キサがぱあっと笑ったところで、レナが「きちんとアドバイスを覚えていてくれて嬉しかったよ」とフォローする。

店員たちがサッとキサを取り囲んだ。素早い!

「まあまあ、白いお肌にどのようなブレスレットも映えそうですねぇ。本当にお綺麗ですから」

「手首だけを飾るものがいいか、手の甲まで覆うものがいいか。ああ、イメージが捗ります。
お嬢様は華やかな顔立ちなので豪奢な装飾もお似合いでしょうし、逆にシンプルなものも……」

取り囲まれてぶつぶつ言われたキサは少々ビビっている。

モデルがいいので興奮してしまった店員たちの様子を見て、インテリレディがこめかみを押さえた。
注意しよう、と近寄りかけた時、つぶやきの一片を聞いたキサが声高に発言する。

「シンプルなものを見繕ってほしいのじゃ! 妾の美しさをより引き立ててくれるような質のいいものを望みたい」

「まあ」

店員たちの目がキラリと光り、インテリレディが迷いなくキサを誘導した。
とくに厳重な防御魔法がかけられたショーケースに。

「つい先日、素晴らしい真珠が入荷致しました。
アクセサリーに加工したばかりなので、店頭に出すのは今日が初めての逸品です」

「なんと! 運命的なのじゃ」

キサはショーケースを覗き込んで、うっとりと頬を染めた。

「美しい……」

「キサ様に紹介できて光栄に思います。
こちらは偽物(イミテーション)ではなく、本物の真珠なのです。お目が高いですね。
特殊な製法で真珠を数珠つなぎにしたので、本物をそのまま展示しています。
『神秘のマーメイドパール』……竜宮城から地上に卸されたのは初めてというレアジュエル。マーメイドの王妃が眠る貝殻で包まれて作られるとのこと。
柔らかく色付いた真珠のツヤが本当に素晴らしいでしょう?
一般的な真珠ですと、装飾保存のような負荷がかかる付与はできませんが、これは特別なのです」

キサの背後で「はあ!?」と悲鳴が上がっていたのだが……これは後回しにしよう。

「妾はこれがいいと思う!」

キサの一切迷いのない言葉に、レナも頷いた。
ピンときた直感は重要だし、店員の説明も申し分ない。レナ自身もこの美しい真珠が気に入った。

「キサに絶対に良く似合うよね! では、この子のはこれで」

「ありがとうございます」

レナとインテリレディがにこーーっと笑いあった。

キサは自分の髪につけられた真珠を指でつつく。

「これともお揃いになって、よいコーディネートではないか?」

嬉しそうに言うキサを見て、レナが我が子可愛さに泣いた。

▽ミディが 物欲しげに 涙を眺めている。
▽レナは 頑張って泣き止んだ。

レナの持ち直しに一役かったミディはえらい……かもしれない。

「あのネ。ミィも海のものがイイノヨー。なんだか懐かしい気持ちになるモン」

ミディがレナの服の裾をつかんで主張する。

「そうだね。まだこの真珠のアクセサリーはありますか?」

「はい。こちらに。”マーメイドパールシリーズ”として2点作っていましたので」

「ワオ! ミィの分もあるなんて運命的ネー! じゃあそれにしようっと」

ミディは商品を見る前にすぐ決めようとしてしまう。
レナが困ったように声をかける。

「きちんと見てから決めようか、ミディ。
このお店の商品はどれを選んでも素晴らしいけど、職人さんが丁寧に作ったものを見ずに買おうとするのは失礼だよ」

「そーなの……? はぁい」

「……ミディも目を瞑ったままなんとなくクラーケンボディを喰べられるのは嫌だよね?」

「ヤダー! 理解したノヨー!」

ごめんねブレスレット、とミディが謝った。
レナの説明はミディにとってとても分かりやすかったが、予想外に無機物に対して仲間意識をもたせてしまったようだ……。
教育の難しさをレナが痛感する。
高級店の店員は、不穏な会話をそっとスルーしてくれた。

「これ、なぁに? 教えてほしいノヨー」

「はい。マーメイドパールを主役に、竜宮城に満ちる光をあびて成長したとても希少な桃色|珊瑚(サンゴ)、海の眠り木から採取したヒトデと貝殻を組み合わせたブレスレットです。
お気に召しましたか?

「うん! とっても可愛いって思った」

「光栄です」

ミディはショーケースから出したブレスレットを手につけてもらって、ご機嫌だ。
商品をきちんと見て決められたので、レナもホッとする。

キサもブレスレットをつけてもらう。
二人とも腕が細いので、ブレスレットと手の間に空間が空いている。

これを修正するのが宝飾職人の仕事だ。

「『お任せください』」

クールとテグリピピッタが現れて、付与作業を始める。
クールがキサを、テグリピピッタがミディを担当する。

「『対象はマーメイドパールのブレスレット。付与魔法[魔法効果付与][オンリーワン]』」

ブレスレットがぽわわっと光を放つ。
この柔らかい効果も、マーメイドパールならではとのこと。

クールは妖精姿なので、全種族に声を届けられるテグリピピッタが説明する。

「今の魔法でブレスレットの持ち主が決まりました。
以前ご来店した時には、たしか……『金属のブレスレットには細かいマジックストーンが練りこまれていてそれに[オンリーワン]などの効果を与える』と説明しましたが、マーメイドパールは特別なので、この真珠自体に魔法を重ねることが可能です」

「そうなの? ミィは初めて聞いたヨ。テグ……ピピ……? すごーい!」

「フフフ。テグーとお呼びください」

ミディはテグリピピッタの名前を覚えることができなかったらしい。
微笑ましそうに接客されている。
キサも興味深げに話を聞いた。

「妾のもの、と登録されたからブレスレットがぴったりサイズになったのじゃな?」

「その通りだよ……あっ、しまった、おっしゃる通りです。魔物型になった時にも本人に合ったサイズに変化しますからね。
キサ様のブレスレットにはマーメイドパールが贅沢に使われていますよね。その数だけ、服のコーディネートを登録できますよ」

「なんと!」

キサは大喜びで、頭の中で服のコーディネートを考え始めた。
ウフフと口元がゆるむ。

「お会計をしますね」

レナがマジックバッグから金貨を取り出す。
ルーカの魔眼でぴったりの枚数を把握した。

(テグリピピッタが丁寧語を心がけているのは、前にハマルに馴れ馴れしくしすぎたことを店員に叱られたからみたい)とちょっとした補足情報もレナに告げられた。二人で笑いをこらえる。

希少なマーメイドパールをふんだんに使ったブレスレット二つ分の値段は、あのインテリレディがニコニコになるくらい超高額だった……と言っておこう。
高給取りの護衛部隊たちが何十年働けばいいのだろうか?

キサとミディは新しいブレスレットを買ってもらって嬉しい、レナは可愛い従魔が喜ぶ顔を見られて大満足、店舗は最高級品がサクッと売れてホクホク。
全員にとってよい買い物になった!

「またのご来店を店員一同お待ちしております」

また来る時があるとすれば、従魔がさらに増えた時だろう……
見送りの声を聞きながら(そろそろ拠点とかが必要なのかなぁ)とレナがぼんやり考えた。

店の外に出たので、レナがレグルスに声をかける。
さすがに店内では言えない話だ。

「レグルスはもう炎獅子家系のブレスレットを身につけているもんね……。貴方には服を買おうねっ」

「散財し過ぎではないですか?
俺は基本的にシヴァガン王国の制服で過ごしますし、私服も今の手持ちで問題ありません」

「えー! 可愛い服とか着ないの?」

「興味がありませんので」

レナが驚く。

(てっきり、レグルスも可愛いものが好きなのに言い出せなかったんだろうって思い込んでた。トイリアのパトリシアちゃんみたいに。
反省しよう……ちゃんと本人と話さなくちゃ分からないよね。みんな好みは色々なんだもん)

「いくつか質問させてね。可愛い服はいや?」

「いやです。華美な装飾は戦闘の邪魔です」

「そ、そっか。じゃあ綺麗なドレスとかも?」

「命令でしたら着用しますが……。個人的な興味は一切ありません。
えーと……女物を着ることに抵抗があるというより、ただひたすら不必要だと感じるだけです。
あの、レナ様。おそらく俺は一般的な女性とは感性が違うのではないか……と、思っています」

レグルスは否定的な意見を述べたが、レナの気持ちを受け止めて、自分なりに歩み寄ろうとしている。
困ったような表情。
レナが内心で従魔が愛おしくて悶える。

「そっかぁ。レグルスが別にいらないっていうものを無理やり押し付けたりはしたくないから、女性ものの服はいったん諦めるね。
……例えば、パーティの席とかで女の子たちがお揃いのドレスを着る時には、レグルスも一緒に着てくれる?」

「仰せのままに」

レグルスはホッとした顔で礼をした。

「よかった、その時が楽しみだね。
じゃあ次は、レナパーティみんなでお揃いの衣装をオーダーメイドしに行こうか!」

「この人は……」

さっそく告げられた言葉に、レグルスが額を押さえた。

「えー。そんなに呆れた顔をしなくても。
以前から話していた、高性能な戦闘服の発注のつもりだよ?
それにキサの着物の裾直しをしてもらおうと思って」

「ああ……それなら」

「だよね。
従魔のみんながヒト型の時の装備って、ただのオシャレ服の子もいるから、怪我をしないようにきちんとしたのを買いたいんだー。
安全にはお金を惜しんじゃいけないよ。私なりに従魔のみんなを守りたいの」

レナはキリッと言って、クーイズの頭を撫でる。
資金源を生み出すのはジュエルスライムだが、運用するのは主人のレナだ。
従魔たちは気遣いをうけて、いっそう主人が好きになった。

「レグルスはこの場合も男性用がいいのかな?」

「そうですね。慣れている男性用の服の方が動きやすく、いざという時に迅速に貴方を守れますから」

分かった、とレナが頷いて、二手に分かれる相談をする。

リリーとシュシュ、ハマル、クドライヤとリーカが[宝飾店メディチ]へ。
残りのレナパーティとロベルト、ドリューがエルフの服飾小物店へ。
それぞれ向かうことになった。

『ご主人さまの、装飾品を作るんだもん。アクセサリー作りの練習……頑張るのっ!』

「リリーちゃん、シュシュ、ハーくん、気をつけて行ってらっしゃい」

ヒト型のシュシュの頭の上に、リリーと小型化したハマルが乗っている。
メディチの作業室は狭いので、邪魔にならないよう配慮した。
レナが「磨き石」を渡した。

「これの加工をリリーちゃんにお願いしたいの。
効果は『石を見つめると言葉が綺麗になる』なんだけど、一度効果を発揮するとただの石になっちゃうから、布に包んだままにしてある。
なんとか効果を保ったままロケットペンダントにしてもらえると嬉しいな」

『うんっ。行ってきまーす!』

ラチェリを出発したあたりで採取したアイテムだったっけ、とリリーたちに手を振りながらレナが懐かしく思い出した。

レナたちは別の方向に歩き出す。

「さあ、私たちも行きましょう。今日はまずお揃いの服を作ってもらう打診だから、デザインについて話す時にはまたリリーちゃんたちも誘おうね。
ふふふ、店主さんが一人で細々と運営しているからオーダーメイドは無理って言われてたけど、今はお孫さんが来てて注文を考えてもらえるって聞いたんだよね。
二回目に訪問した時、お孫さん本人には会えなかったけど、腕は確かだって店主さんが保証したから大丈夫でしょう。楽しみ。
いざ[エルフィナリー・メイド]へ」

「また凄い穴場を知っていますよね」

ロベルトたちが苦笑しながら「お供致します」と後に続いた。

ドリューはそおっと、キサとミディの手首に光るマーメイドパールを眺めて青ざめている。

「……マジかよ。なんで? 俺の家出に関係してたりしないよな? 竜宮城のやつらに、行動を前もって予測して圧力かけられてる……とか……ないよなぁ? うげっ」

ロベルトがドリューの耳をギュウッと引っ張った。
思わず声を漏らしてしまったので、レナパーティが振り返ってしまって、「な、なんでもないです」とドリューが赤くなった耳をさすりながら引きつった笑みを浮かべる。

(その件については政府内部の準機密情報のはずだが? ドリューを諜報部に迎えた時にそう決まっただろう。気をつけるように)

(も、申し訳ありません)

(厳重注意だと認識しておけ)

レナパーティにはもうこの事情も知られていそうだけど、と二人は遠い目でルーカの背中を見た。

平然としているように見えて、笑いをこらえているのか、ルーカの猫耳がぴょこぴょこ反応している。
レグルスの耳はドリューを叱るように憮然と上を向いている。

周囲に聞き耳を立てている他人はいないな、とロベルトが確認してから、ため息をついてもう一度ドリューの頭を軽く小突いた。

▽レナパーティお揃い衣装の相談をしよう!

 

 

 

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