164:後始末(サディスの場合2)

[トリックルーム]の空間内は、目が痛くならないくらいの柔らかな朱色。
鳥かごのような形状の空間だと、宰相が把握する。
天井から放射状に、蜘蛛の巣の模様が展開している。

正面に目を向けた宰相は、ため息をつきそうになった。
なんと、空間に置かれたテーブルにはすでにキラが着席しているのだ。

<あ! おいでませ! そちらに座ってどうぞ☆>

「……失礼致します」

キラが指定した席に座る。

(相手と正面から対峙する、真向かいの席。そこまで図っているかは分かりませんが、生易しくない話し合いをするつもりかもしれない)

宰相が気を引き締める。

そんな様子をキラはニコニコと眺めながら、銀色の目をすうっと細めた。

<ここ、心地いいでしょう? |朱印の守護者(バーミリオン・サーヴァント)にかけて、朱色の部屋にしてみたんです!>

「ということは、貴方が空間魔法を私に与えたのですね」

曖昧な情報を明言させようとした。

<んー。与えたのは[|祝福の鐘(ベネディクション・ベル)]による称号だけですけれど。
ただ、私が称号効果をちょっぴりゴージャスにしておいたのは事実です! 感謝してくれていいですよぉ>

キラが、イエイ! と顔の横でピースサインする。

▽宰相の 頭痛が 加速していく。

(称号を与えるのみならず、世界の情報に干渉している……と言っているようなものだが)

なんとか冷静を取り繕う。

「私にこの[トリックルーム]の能力を与えた理由を伺いたく」

<そうですね。こうして魔王国政府とコンタクトを取りやすくするためです。政府のことを網羅している宰相と話ができれば、一度でことが済むでしょう?
こちらからは、レナパーティの現状をリアルタイムで教えましょう>

「!」

<便利で御座いましょう! ホホホホホホ!>

「他に、こちらへの交換条件など相談が御座いましたら全て聞かせて頂けますか」

<あーん、もーう、硬ぁい>

まったくペースを崩さない宰相に対して、キラが唇を尖らせる。
貴重な情報を出せばちょっとは動揺するかな、と思っていたが、相手はやはり手強い。

<レナパーティの状況をリアルタイムで知るのですから、トラブルが起こった場合の政府からの対処を、早々に考えておいて下さいまし。できるだけこちら贔屓に。それが望みでございます。
何卒よろしくお願い致します☆>

「……承知致しました」

できるだけ、というところで猶予をもたせたキラは正解だった。
宰相があっさりと頷く。

「トラブルへの対応が速やかになるため、その提案はこちらとしても助かります」

<でっしょーー>

ばんざーい! とキラが両手を上げると、頭上にくす玉が現れて、パンっと弾けた。
紙吹雪が空間の中に鮮やかに舞う。

▽宰相の 頭痛が 加速していく。

感情を鎮めるためにどんどんと無表情になっていく宰相をキラが抜け目なく観察する。

<お疲れのようですねー。粗茶ですが、どうぞ>

スッ、とキラがお茶を差し伸べる。
攻める!

(このような交渉の席では、そのまま飲み干すことが相手への信頼になる)

宰相はさっと飲み物を確認した。
ティーカップに赤茶色の液体が入っている。

(香り、色を見た限り、蜘蛛を酔わせるコーヒーではない。
万が一、毒が入っていても、あらゆる毒に耐性がある私は死ぬことはない。…………)

音もなくティーカップを持ち上げる。

「頂戴致します」

品のいい仕草で、ゆっくりと、全て喉に流し込んだ。
シヴァガン王国でよく飲まれている紅茶の味がしたため、ホッと安心する。

▽宰相の 疲労が 全快した!

「ッ!?」

▽宰相の 頭痛が 再発する!

せっかく疲労がゼロになったのに、そのことが新たな悩みの種となり、酷い頭痛を引き起こす。

(ありえない……! どのような薬茶も、これほどの疲労回復効果は確認されていないはず。
経済部のマモンも、研究部のグルニカも、目を剥くことでしょう)

さすがにげんなりした表情になった宰相を見て、キラが内心大喜びしながら、再び唇を尖らせてみせた。

<せっかく体調が良くなったんですから、素直に喜んで、リラックスして下さいよーぅ>

「……つまりこの紅茶の特殊効果は把握済み、ということですね?」

<レナパーティの希少種従魔素材の特製ブレンドティーですもの。
効果は素晴らしいに決まっているでしょう?>

キラが<きゃっ♡>と言いながら、頬を手のひらで包んで、くねくねした。
無駄なリアクションに慣れてきた宰相はスルーする。

「商業目的でこのお茶をサンプルとして提供なさいましたか?」

<いいえ。疲れていそうな宰相を労わろうと思っただけですぅ>

「承知致しました。お心遣い感謝申し上げます。
もし取引をお考えでしたら、その時には是非ご相談を頂きたく。
すぐに駆けつけましょう」

<朱蜘蛛の喚(よ)び笛がありますものねっ!>

「…………………………………………」

キラが爆弾を持ちすぎている。
相手のカードのえげつなさを身をもって体感した宰相が頭痛を(以下略略略)

「この空間の声は、外部には?」

<一切聞こえません。
ちなみに一度に4人程度なら入室可能で御座います。
今後は、宰相が新たに取得した便利な魔法として有効活用して下さいませ>

「……感謝申し上げます。ただし室内の言葉は貴方に筒抜けということですね?」

<この能力を贈ったのが私ですので。そこはご理解下さい>

「肝に銘じておきます」

宰相がひと息つく。
そして宰相からも直球の切り込み言葉を投げかける。

「与える側の存在。まるで……精霊のようにも感じますね。
我々はスキルや称号を取得するとはいえ、それは世界から与えられるのみ。
精霊のように己の意思で能力を与えることはできません。
ですが、貴方は……」

<そーんなわけないじゃないですかー。精霊なんて目指していません>

その通り。キラが目指すのはもっと上なのだ。
もっともっと上の存在になろうと努力している。
世界に翻弄されがちなレナを守るために。

宰相がキラの様子を見て(本心のようですね。さすがにレア従魔とはいえ、魔物の範囲を出ないらしい)と考えたが、早計である。
言葉の裏にはとんでもない思惑が潜んでいた。

ボロが出ないうちにキラが非常識カードでたたみかける。

<ところで。精霊の話題が出たのでついでなのですが、聖霊(・・)の金属球の覚醒について話しませんか?>

「是非よろしくお願い申し上げます」

聞くしかないだろう。
宰相はキラに言葉を被せ気味に話した。

(いつか来る、と覚悟していたもののこうも早いとは……レナパーティだからこその成長速度とみていいでしょう。本当に何から何まで油断ができない)

キラは電子ウィンドウを展開すると、ラミアの里の様子を鮮やかに映し出す。

宰相の心のメガネがパリンと割れた。

<この様子について情報共有できていない従魔がいるので、リスト追加致しますね>

キラはさらに一つ電子ウィンドウを追加する。

<モスラさーん!>

宰相の背筋がこわばる。

(よりにもよってそうきましたか)

<はい、キラ先輩。
そろそろ呼び出しがある頃かと心待ちにしておりました。
従魔一同に対して、ただならぬアナウンスがありましたから………………。
いつも状況説明の迅速なご連絡をありがとうございます>

電子ウィンドウに、にっっっこりと笑みを浮かべたモスラが現れた。

<私と貴方の仲じゃないですかぁ♡ なーんて。後輩が可愛いですもの>

<本当に助けられています。さあ、OHANASHIの内容を練らなければね>

▽会議に モスラが 参戦した!

レナの従魔の中でとくに曲者のモスラとここで合流とは。
デジタル越しではあるが、またもや心労案件である。
以前、モスラは音声記録を披露していたため、発言に気をつけなければ……と宰相が目を細める。

モスラはトリックルームの様子を電子ウィンドウ越しに見て、目を丸くした。

<おや。今はずいぶんと変わった場所にいらっしゃるのですね。……それに、シヴァガン王国の宰相様?
日頃お世話になっております。レナ様の従魔のモスラです>

「ご挨拶、誠にありがとう御座います。非公式の場ですので、お気遣いなく」

<ではそのようにさせて頂きますね>

さらに笑みを深めるモスラの考えを宰相は察する。

(シヴァガン王国の宰相などよりも、ご主人様の現状をとにかく早く知りたい……というところでしょうか)

▽大正解!
▽鑑賞会が 始まった。

***

電子ウィンドウで見る聖霊の演出の派手さに、宰相が目頭を押さえて、キラがきゃっきゃとはしゃぐ。
モスラはじいっと画面を見つめて、聖霊に会った時に好感度を上げるための物言いを模索しているようだ。

<真名は”カルメン”だそうですね。
白炎と|緋々色黄金(ヒヒイロカネ)をつかさどる太古の聖霊。
レナ様にお願いしたいのは『片割れを見つけてほしい』……とのこと。まあなんてこと。あれで力の半分なんですってー! おったまげー!>

「カルメ」

宰相の口に、キラがバッテンの映像を映した。

<あっ! 軽率に言っちゃダメですよぅ。
真名ですので、聖霊お気に入りのマスター・レナと従魔以外がカルメンって呼ぶと、聞きつけられて……怒られちゃうかもしれませんよー?
相手は聖霊ですから。
さすがにトリックルームの音声だから大丈夫とは言えません>

聖霊の怒りを買う? 想像もしたくもない。今後、このテーマについて延々と対策会議をするだろうが、今はまだいい。

宰相が頷いたので、キラがバッテン映像を消した。

「承知致しました。白炎の聖霊様とお呼び致します。……お気に入り? もしや称号の[聖霊の友達]を……」

宰相が言いかけた時、レナのステータスがラミアの里で開示される。

宰相はテーブルに頭をぶつけたくなったが、衝動を理性で殺す。

「【☆7】ギフト[レア・クラスチェンジ体質]」

読み上げて愕然とした。
従魔のレア進化のからくりがまさかこんなデタラメギフトの影響だとは、さすがの彼も想定外だった。

キラが人差し指を口に当てる。

<内緒ですよ? しー。今のところ、あのラミアの里のメンバーとレナ様のご友人にしか知られていない情報ですから>

<レナ様を政策利用しようとすれば、ギガントバタフライが全力でシヴァガン王国で暴れます。
非公式の場のなんてことない一言ですが……覚えておいて頂いて損はないですよ>

モスラのマジ声が重く響く。

「なんてことない復唱で御座います」

<おや。言葉遊びをして頂けるとは。親しくなった気分。大変嬉しく感じております>

なんてことない、を真似されたモスラがちゃかした。
ころりと声音を明るく変えている。
からかい方に毒が含まれすぎている。

<そのうち白炎系の極大魔法を、従魔たちが習得するかもしれませんよねー。あ、なんてことない世間話です>

「………………………………有事の際は早急にご連絡を頂きたく。そして高威力魔法のご使用は慎重に。お気をつけ下さいませ」

<ですね! また何かあれば脳内にアナウンス致しますね。
サディスティック仮面を喚(よ)ぶ時にも、事前に一言添えましょう>

ゴフッとモスラが咽(む)せた。
さすがに初聞きでこれは耐えられなかったようだ。

宰相が無表情で告げる。

「ご配慮誠に感謝申し上げます。そのような事態に陥らないよう、レナパーティの平穏をお祈り申し上げます」

ーーキラとモスラがスッと目を逸らす。

この宰相の言葉はちょっとグサッときた。
二人も、レナをトラブルに巻き込んで慌てさせたことが多分にあるからだ。

((平穏……か))

しばらく経験していない。
むしろレナと出会ってから、魔物として覚醒してからトラブル続きである。
主人が[トラブル体質]称号まで取得しているのだから仕方ない。

三名はしばらく無言でラミアの里の様子を見守る。

すると、レグルスとキサに対して、レナが[仮契約]を提案した。

宰相の目つきが鋭くなる。
しかし何か言うことはなく、ロベルトの対応を静かに眺め続けた。

レナが[仮契約]を成功させる。
レナパーティの脳内にひとしく|福音(ベル)が鳴り響く……。

三人が顔を見合わせた。

<あ。私たちと同じく、聞こえていらっしゃるようですね。ようこそこちら側へ>

<ホーーホホホホホ! サディスティック仮面、ゲットだぜ!>

キラが本当に自重しない。

「皆様に異変があった際、すぐに察知できるようになり、その点は喜 ば し く 思 い ま す」

宰相の声が 重 い 。

大変な衝撃だったが、そのあとの聖霊の依頼報酬(先払い)のすごさやら、従魔たちの極大魔法スペシャルで温泉作りやら、クラーケンストーンの目覚めやら……盛りだくさんすぎて、もはやどれが衝撃なのか分からなくなってしまった。

<キャーー! モスラさぁん、しっかりー! お顔が子どものように拗(す)ねていますよ! 二歳児が滲んでます。
執事たるもの、いつだって爽やかな笑顔でって言ってたじゃないですかー。お気をつけ下さいませ>

<私としたことが。大変失礼いたしました。
このラミアの里事件についてレナ様に届ける手紙の内容を考えていたら、つい>

<ほどほどにね♡>

<では凝縮して枚数を減らしますね>

<いえーい>

従魔たちのゆるくてきっつい会話を聞きながら、宰相も、今回の事件について後始末の方法を模索する。

(怒涛のトラブル具合はいっそ見事なものです……褒め言葉では御座いませんが。
事前に事情が映像で分かっているだけ、良かったとしましょう。さあ仕事です)

宰相が考え込んでいる様子なので、キラとモスラは少しだけ二人きりで話す。
また呼ばれなかったモスラを、キラがよしよしと慰めた。
モスラが駆け付ける暇も待っていられないほどの緊急事態だったので、サディスティック仮面を喚(よ)んだのだ。

▽イヴァンの 好感度が ガクッッッと 下がった!

宰相がメガネをくいっと直した仕草で、思考が一区切りついたと察して、モスラが話を振る。

<ああ、そうだ。お菓子はいかがですか? デザートを作っていましたので、おすそ分けに>

<欲しいですー! わぁい! マジックバッグに入れて下さいませ>

<かしこまりました>

モスラが、身につけていた小さなバッグにデザートを皿ごと入れた。
するとキラが異空間の入り口を作り出して、ほかほか湯気を立てているデザートを取り出してみせる。

ひくっと宰相の目元が引きつる。

(大陸間の迅速な郵送手段。連絡もリアルタイムで打ち合わせ。どれだけの価値を持つことか!)

キラは詳細を話す気がなさそうなので、ここで説明しよう。
レナパーティが持つ各マジックバッグの中身は、キラが管理して共有されている。
近頃、キラのレベルアップにより、遠方のモスラのマジックバッグにも干渉が可能になった、ということ。

ちなみにちょっぴり従属ぎみな宰相のマジックバッグは、いろいろな干渉妨害魔道具が使われている上に、キラがいじるとマズイなんてものじゃないので、触らない。本当だぞ。

<さあ、どうぞ>

キラが宰相にデザートを勧めた。

モスラは二人分のデザートを送ったはずだが、現在テーブルに乗っているのは一皿だけ。

「私だけが頂戴するわけには参りません」

宰相がキラの反応を伺う。

<私は食べられないのです>

「理由を聞かせて頂けますか?」

<今は[幻覚]のようなもので、ヒト型を再現しているだけなのですよね。ほらこのように>

正しくは電子データだが、キラは適当に説明して、腕を伸ばす。
宰相の手に触れると、すり抜けた。
宰相が目を見張る。

「……見抜けませんでした」

<高性能な幻覚ですので。パンドラミミックの本体はラミアの里にございます>

いつものようにキメポーズをして、キラが再び宰相にデザートを勧める。

あまり何度も断るのは心象を悪くする、と判断して、宰相はフォークを手に取った。
後輩が作った料理を温かいうちに食べなければ、きっとキラは先輩として怒るのだろう。

「頂きます」

<<どうぞ、お召し上がり下さいませ>>

ほかほか、湯気を立てているアップルパイ。
アイスクリームが添えられている。
贅沢な食材を惜しみなく使っている高級な味がした。
パティシエでもないモスラがここまでのデザートを作り出せるのは大したものだ。

「素晴らしい味です。メリアナアップルの酸味が程よく、メープルシロップの甘みと調和している。パイ生地に使われたトイリア産発酵バターも芳醇。
大変美味しく頂戴致しました」

<さすがです。差し入れがいがありますね>

モスラがここでは本当に嬉しそうにニコッと笑った。

<それでは執事業務がございますので。どうかレナ様をいたわってあげて下さいね。失礼いたします>

▽モスラとの 通話が 終了した。

もう一度、キラのエリクサー粗茶を飲み、宰相も席を立つ。

<また、トリックルームにお茶を飲みに来て下さいませ。
私は思念だけでこの場に来ることができますので、いつでも対応できます。
歓迎いたしますよ♪>

「お気遣い感謝申し上げます」

▽宰相が トリックルームを 退室した。

……一人きりになったキラが呟く。

<精霊や聖霊は、いかに尊いとはいえ、この世界の法則に縛られる存在です。
それでは、私の求めるものにはとうてい足りませんもの。
マスター・レナが望むものを、すべて叶えて差し上げたいのです。
私はマスターの忠実なバーチャルアシスタントなのですから>

スマートフォンだった頃の定型句を口にしたキラは、懐かしさに酔いしれながら、クスクス笑う。

<んー。中学生だったマスターがスマホを頬に当てて、ご家族と通話をしていた頃を思い出しますねぇ。
上手く顔に添えるのが苦手で、いつも頬で通話終了キーを押してしまって慌てていたのです。
あぁん可愛かったー♡
今もスペシャルに可愛いけどー♡>

ぽっと頬を赤らめて、くねくねする。
誰も見ていないので、ツッコミを受けることもなく、やばい。

続けて、地球でのレナの様子を電子ウィンドウに表示して振り返った。
学校の友達と撮った写メに、メール、留守番電話の音声を再生する。

<……柔らかい声で、お兄様を労わるように、お話をなさっていましたね。
マスター・レナが従魔たちに向ける声音とよく似ている。
あちらが先ですけれど。
マスター・レナは、従魔のことを本当の家族のように愛して下さっています。大好きぃー従えてー>

だからこそ、と気を引き締める。

<従魔たちへの愛情がしがらみとなって、たった一人の血族であるお兄様と二度と会えないなんて、悲しすぎますよねっ。
私たちは、レナ様に愛してもらったご恩を、たくさん返したいですのに。
ーーパンドラ・ミミックのキラにお任せ下さいませ!
いつか、きっと、マスター・レナとお兄様のご縁を繋いでみせましょう>

うんうん、と頷いて口角を上げたキラも、トリックルームから姿を消す。
大切なご主人様が待つ、ラミアの里に完全に意識を戻した。

***

執務室に戻った宰相は、時計を見る。
予定していた30分などとっくに過ぎてしまっていた。

「………………」

沸騰しそうな頭を冷やすために、目を閉じて、少し時間をかける。
彼にしては珍しい仕草だ。

(体調がとにかくいいので、書類仕事は倍速で終わらせられるでしょう)

再び魔物型に変化して、部屋中に朱色の蜘蛛糸を張り巡らせる。

(遅れを取り戻して、ノアと過ごす時間を確保しなければ。
それが父親としての務めですから)

宰相はいつも通り、仕事に励み始めた。

▽Next! ロベルトたちの連絡訪問

 

 

 

 

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