153:温泉戦闘2

「私たちだって本気で怒ってるんだからね……。称号[お姉様][赤の女王様][サディスト]セット!」

「はぁ?」

じろりとレナを横目で見たギルティアの目が、赤い光でくらまされる。
じんわり全身を熱されているようで、後退しそうになった。
レナからは悪党を制裁する[後光]がさしている!

「オーーーッホッホッホ!!!」

ギルティアの先ほどの高笑いにも負けない声量で、レナが声を響かせた!
ぴしりと鞭を一打ち!

<スキル[投影][音響]フゥーーーッ!>

キラが厳選に厳選を重ねたアイドルステージばりのライトアップが、レナに施される。
カラフルな光をまとい、その中でも何より赤色が美しく輝いているぅ!

「あっ。シュシュ、こんな時こそこれを……」

「そうだねリリー!」

▽シュシュと リリーは ポシェットから デコうちわを取り出す。×2

「「きゃーっ! ご主人様ぁ! 従えてーーっ!」」

『レナ女王様こっち向いて♡』『投げキッスして♡』のリクエスト通りにレナが行動すると、シュシュが「はうんっ」と胸を押さえて感激した。

▽シュシュの テンションが 上がっていく!
▽額のカーバンクルが 輝いている。

この空気をどうしよう。
さすがに対応が思いつかなくて無言でいるまだレナパーティに慣れていない敵とラミアよりも、リーカが素早く動いた。

「闇魔法[シャドウ・チェイン]」

「っ!」

天井から伸びた鎖により、ギルティアの首が締め上げられ、ぶらんと宙吊りになる。

これまでにも犯罪者を捕縛してきた、リーカの得意な魔法だ。

植物のツルで力ずくで切ろうとしてもビクともせず、ギルティアはツルの上に乗って、天井近くに上がり、鎖を多少たゆませて呼吸を確保する。
[シャドウ・チェイン]は少々の動きのコントロールは可能だが、一度伸ばした鎖を短くすることはできないと、ギルティアは知っていた。

ギルティアの行動範囲自体は狭くなった。
植物は根を張っている付近が一番太く頑丈なため、ツルの先端に登っている状態のギルティアは先ほどのように堅牢にツタの籠を作ることはできない。

今や、攻撃しやすい的(まと)である。

「スキル[自由の翼]」

「スキル[|軽業(かるわざ)]」

▽ハイテンションの リリーとシュシュが 飛び出した!
▽二人一緒に ハイジャンプ!

「うらあああッ[スピン・キック]ぅ!」

「[跳び蹴り]!」

▽ギルティアに 漢女(オトメ)の蹴りが迫る!

ギルティアの身体に打撃を与えようとした、その時。
ぱりんとガラスが割れるような音がして、懐に忍ばせていた魔道具「鏡蜘蛛のペンダント」が壊れ、攻撃を身代わりした。
一定以上の打撃が加えられそうになると、一度きりだが助けてくれる。
二度と再生しない希少種の鏡蜘蛛のツノから作られる特別な品。

「……お、ま、え、らっ」

ギルティアの額に怒りの青筋が浮かんだ。
仲間が身を切って作った品を壊されたことに激昂している。

「風魔法[暴風]!」

「「きゃっ」」

リリーとシュシュが吹き飛ばされた!
背中に生えた小さな[自由の翼]でシュシュは体勢を立て直し、リリーをなんとか抱きかかえる。

「[暴風]」

再び風が襲いかかったがーーシュシュの翼が急成長する。
カーバンクルと同じく薄桃色の光をまとった翼で羽ばたき、壁に叩きつけられることなく、ふんわりと着地してみせた。

「シュシュ……すごい。カッコよかった。ありがとう」

「リリー、無事で良かった! シュシュも……こうして仲間を守れるんだ」

無事を喜び合っている二人を尻目に、ギルティアは舌打ちする。

「ふぅん。……そうだ、こういうのもアリだな? くははっ、[暴風][|棘棘(トゲトゲ)]!」

空間で大量の棘が暴れまわる!
リリーの[魔吸結界]、リーカの魔道具でなんとか全員無事で持ちこたえるレナたち。

レーヴェが「なんやて……!?」と唖然と呟いた。

「さっきお前がやった方法を真似したんだ。
残念だったな、鍾乳洞の破壊に利用されちまってさ!
……お? 壁のひび割れから温泉水が噴出してきてる。
色んなところで温泉水の流れが変わっちまってるはずだし、ここの壁はぐちゃぐちゃだし、もう住処(すみか)にはいられないな!?
いーい気味!」

ギルティアに煽られているとは分かっているので、レーヴェは冷静に思考しようするが、自分の能力内での対策を思いつけない。
ギリギリと歯を噛み締めて、瞳孔を開いてギルティアを睨んでいる。

ふと、レナがレーヴェに寄り添った。

「あら。せっかく美しい顔が台無しだわ?
私(ワタクシ)がなんとかしてあげましょう。だからまた綺麗な微笑みを見せて頂戴な?」

「……え、ええと……。そうか。今は船上にいた時のように、赤の女王様ってことなんやね……?」

驚いたレーヴェが惚けたように言うと、レナは凛々しく笑い、

「その通りよ。レナ様とお呼び!!」

高らかに宣言した!
キラが大興奮のままにハートマークを投影する。

レナはとてもかっこいい仕草で、真っ白な種が入った魔道具を起動させる。
発芽には水が必要なので、エリクサーをぶっかける。

「誕生せよ! 超速|鈴生(すずな)りマッチョマン!」

シャランララララン! と鈴鳴りの音を発して、ミニマッチョが芽吹く……!

▽ミラクル!
▽レナ・クラスチェンジ!
▽鈴生りマシュマロボディマッチョマンが誕生した!

わらわらと生まれたマッチョマンたち。茎からぷちんと離れて飛び降り、ぽよよんっと床で弾む。
むにむにん! とマッスルポージングを決める!
ボディはいかにも柔らかそうで、ぽこんと上腕二頭筋が丸く盛り上がった。

「くそ不気味だな!?」

身構えていたギルティアが思わず叫び、顔を引きつらせる。

「あら。私の僕(しもべ)に対して失礼ね。わきまえなさい悪党」

レナが腕を大きく横に振る! バサァっと[赤ノ祝福ヲ賜リシ覇衣(ハゴロモ)]がなびく。

「さあマシュマロボディマッチョマンたち。貴方たちの役目は、鍾乳洞の壁に空いた穴を塞ぐこと。
私が望んだ通りに進化したんでしょう?
いいわね? では、お行きなさいな」

レナが指示すると、小さなマッチョマンたちは柔らかい弾丸のように四方八方に駆け出した。

ギルティアが植物のツルをバタバタと動かすも、マッチョマンたちは巧みに避けて、壁に到達する。

ハイジャーーンプッ!

手足を広げて大の字になる体勢で、ぺとっと壁の穴に張り付いた。
大きな穴には十数体のマッチョマンが重なって張り付く。

「…………ッ!?」

珍妙極まる光景に、リーカとレーヴェたちすらも顔を引きつらせた。

「こ、これが、レナ様の見出した、か、活路……?」

レーヴェが早くもレナ様呼びに適応している。

「ええ。私は奇策が得意だから、期待してよろしくってよ! オーーッホッホッホ!
キラ」

<はぁいマスター♡>

レナたちがテレフォンで打ち合わせをする。
マスターの内心が身悶えしていて可哀想だな、とキラはちょっぴり同情した。
しかし演出に手は抜かない。

<ブラックボックス>

壁際には、小さな黒い小箱がたくさん現れた。

「解放!」

レナが鞭をピシッ!! としならせる。
いっせいにブラックボックスの蓋が開いた!

▽灼熱球が 飛び出した!
▽マシュマロボディマッチョマンたちの 身体を熱があぶる……
▽とろりと とろける。

なめらかに壁の穴を塞いでいて、温泉水の流出をふさぐマシュマロボディ。
一滴たりとも温泉水が漏れ出てくることはない。

みんなの目が丸くなった。

「うふふ。場を仕上げましょう。ラミアのお二人にも協力してもらうわ」

< [スペースカット]、[スペースペースト]!>

まず、灼熱球をキラが切り取り、なんと……

▽ギルティアの花の中心部分に 灼熱球が現れた。

「ぐうっ!?」

自分の身体の一部が弱点の炎で焼かれてしまい、思わずくの字に身体を折って、ギルティアが苦しむ。
砂漠の魂喰い花は乾燥には強いのだが、生気を吸い取って潤っている時には、炎がよく効くのだ。
レナはそれを視(・)抜いていた。

憎しみの視線で、レナ女王様を睨むギルティア。

「ラミアのお二人。
マシュマロボディマッチョマンを冷やして下さるかしら? それでとても頑丈に固まるはずだわ」

「そ、そう。ーー分かった」

「レナは凄い奥の手を持っていたのじゃな! ゾクゾクしたぞっ。妾も助力するのじゃ」

「レナ様とお呼びなさいな」

「失敬。レナ様ー!」

「「スキル[氷の息吹]」」

キサとレーヴェが形のいい唇をすぼめて、極寒の吐息を吐き出す。
氷の息吹は壁に沿って広がり、マシュマロボディマッチョマンを瞬く間に冷やした。

「[|棘棘(トゲトゲ)]」

ギルティアのスキルもツルの攻撃も、マシュマロボディがぱちゅんっ! と弾く。

ギルティアがいらいらと地団駄を踏む。

応急処置だが鍾乳洞の崩壊は免れて、レーヴェたちがホッと息を吐く。

「スキル[伝令]。ルーカティアス、[サンクチュアリ]を解除なさい」

(了解、ご主人様)と、レナの脳内にルーカの応答が伝わる。
あまりの女王様感が彼の笑いのツボに入り、震えていることが[感覚共有]で伝わってきたので、内心のレナが(あとで子猫を撫でくりまわして褒めてあげますからねッ!!)とヤケクソで思考した。
意外にも、ルーカは照れつつも嬉しそうなのが伝わってきて、レナは(くうっ。従魔になってからルーカさんも可愛くて困る。いや困らない)と主従愛にひたる。

表向きは女王様のままだが。

「私の従魔を馬鹿にしたり、傷つけたりした大罪、炎の熱で反省してもらうわ!」

焼き尽くす! とばかりに炎がギルティアの身体を舐め回す。
ギルティアは花を再び乾燥させることで、なんとか全焼は免れてみせた。
しかし、ヒト型の肌は煤けて、髪も一部焦げてしまっている。

ーーもう瀕死に近い、とリーカが視て、勝利の可能性を実感してぐっと拳を握りかけた。

「…………。あたしの体力を削ったらさぁ、どういうことが起こるか分かんないのか……?」

しかし、ギルティアの目は不屈にギラギラと光っている。
余裕がなくなった者が放つ、明確な殺気をリーカは感じ取る。

「飼い犬、遅すぎ……。ったく。
ここまでお前たちが私にダメージを与えたことには驚いたぜ……?」

諜報部としての経験から、ギルティアの危なさを察したリーカが大慌てで結界を展開する。
それから、鏡のようなもので遮られて視えづらいギルティアの思考を、メドゥリ・アイの気合いで覗いて、第三の目を見開いた。

(まさに外道だわ……!)

「おめでたい奴らめ」

ギルティアの花は、なんとレナたちではなく外側に向かって広げられる。

「[|魂喰い(ソウル・イーター)]!」

鍾乳洞中からラミアの甲高い悲鳴が上がった。
現在の生気をほぼ根こそぎ吸い取られてしまう。
もともと弱っていたラミアは気を失って倒れている者もいるほどだ。

「この鍾乳洞中のやつらが人質だ!
お前たちには守りきれないだろう!」

ギルティアの宣言は、レーヴェとキサの心を震わせた。
キサが涙目で、羽織っているバスローブを握りしめる。

ーーそれでは次なる作戦を。
内なるレナが、ルーカとともに頭を急速回転させている。
従魔たちもいるこの空間を、レナ女王様は何としてでも守ってみせるのだ。

(魔法も、スキルも、戦闘協力者も、魔道具も……なんだって使って勝ってみせる!
みんなが大怪我せずにこの場を切り抜けられることが、私にとっての勝利だ)

(ーーレナは復讐に走らないから安心できるよ。いつも従魔のことを第一に考えてくれてありがとう。
絶対駆けつけるから、それまで持ちこたえて、レナ!)

レナは凛々しい瞳でギルティアを視ている。

 

 

 

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