140:異変

最近、オズワルドとシュシュがぶつかることが殊更(ことさら)多い。
今朝も口喧嘩して、二人でミルクの飲み比べを始めて、体格差もあり負けてしまったシュシュは荒れていた。
勝ったオズワルドも別に気分が良さそうなわけでもないのに。
どうしてこうなってしまうんだろう?

レナとルーカが内緒話する。

「(オズワルドとシュシュ、どちらに原因があると思う? 二人とも機嫌が悪いのは分かるけど、魔眼には変なものは映っていないよ。
喧嘩を止めるために[サンクチュアリ]に閉じ込めた時にも、浄化(パージ)効果が発動しなかったから、悪い魔法をかけられているわけではないと思う。
心が問題かな)」

「(……お互いに意見をハッキリ言うタイプではあるけど、理不尽な理由で喧嘩をしかけることがあるのはシュシュです。
オズくんはつい応戦してしまう風に見えました。
元々、シュシュもオズくんに対して”先輩がパーティでの暮らし方を教えてあげる!”ってお姉ちゃんらしく主張していたのに。今はオズくんのあらゆる行動があの子の気に触るみたい……。
オズくんはまだ距離があるけど理想的にパーティに馴染んできているのに。
シュシュはちょっと突っ走るところがあるけど、相手を思いやれる良い子ですよ?
……今の様子は正直、おかしいな、って思いますね)」

「(そうだね。ずっと二人とも僕たちと行動していたから、なにか状態異常のきっかけがあれば、見逃すはずがないんだけどな。
シュシュは徐々に不安定になってる気がする。
喧嘩の時にキックが出るようになってきてるし。
本当に危なくなったら僕たちが力づくでも止めるよ)」

「(ありがとうございます)」

「(まかせてご主人様)」

ルーカがちゃかして返事をすると、レナもやっと肩の力を抜いた。

その間にも、従魔たちはお宿♡の室内でにぎやかにじゃれあって、シュシュがオズワルドに絡む。
ハマルが[快眠]スキルで『おちつきなさーい』と強制寝落ちさせた。

レナが苦笑して、オズワルドとシュシュを膝に乗せる。
慈しむように撫で始めた。

「二人の人生が最上級に幸せなものになるように。
ご主人様はたくさんおせっかいしちゃうからね」

『『あーんっ従えてぇーーー!』』

愉快な仲間たちに囲まれながら、シュシュとオズワルドはすやすや眠る。

夜にたっぷり寝たので疲れは溜まっておらず、最初はスキルにより深く眠っていたが、やがて眠りが浅くなり、夢を見始めた。
ハマルは二人を眺めるが、夢の世界への干渉を確認することはなかった。
…………。

***

今日はまたロベルトが教官となる獣化訓練の日だ。
訓練場に集まって、それぞれが特訓メニューをこなす。

「ルーカはずいぶん獣型での行動に慣れて、動きが自然になったな。
獣型の時はまあ……物理攻撃力はないが、白魔法[ボルト][パラライズ]を駆使する戦法はとても良いと感じた。小さいから見つかりにくい上、感電技術が突出している。奇襲向きだ。
今日の訓練は、半獣人になってひたすら歩く練習にしよう」

「はい」

子ネコ型についてあれこれ言及されたルーカのジト目を、ロベルトは顔を逸らしてかわす。

「ハマルとシュシュ。前回の訓練で膝まで獣化できているし、動きも申し分なかった。
ただ、脚全体を獣型にできたならもっと速く走れるはずだ。その域まで到達することをまず目標にする。
今日の訓練は二人で追いかけっこをすること。
ハマルは[駆け足]スキルを使い、シュシュは[逃げ足]スキルを使用する。
つまりシュシュをハマルが追いかけるんだ。
ハードな特訓となるが、頑張れるな?」

「「はーい!」」

幼児二人が手を挙げて明るく返事した。
さらに訓練をハードモードにするために、本人たちの希望で、先ほどレナが[鼓舞]スキルをかけている。
まだ慣れない半獣人未満姿で、二人は脚の痛みを我慢しながら思いっきり走ることになる。

護衛隊が「鬼畜かよ……」「や、やめたげて」「ストイックだなぁ」「その心意気、良し」などと心配しながらコメントしているが、シュシュはやる気マンマンに力こぶをつくり、ハマルは恍惚とした笑顔だ。

「オズワルド。組手をするか?」

「よろしく」

オズワルドが即答した。
先日のロベルトとの組手はとても楽しかったらしい。
今日こそは一撃食らわしてやる、とそわそわ足踏みする。

「では。それぞれ変身せよ」

「「「「変身!」」」」

ポーズをキメて、四人が半獣人姿になった。
護衛隊はにやけ顔になるのを遠方で堪えている。

「あ、相変わらず面白すぎでしょ、従魔の皆さん……! フッ!」

「真顔で派手なポーズするのやめてほしいよね、笑うから。
オズワルド坊ちゃんも以前はあんなにノリ良くなかったのに、すっかり馴染んじゃってまぁ。言っとくけど、それ普通じゃないからな?」

以前と同じく、護衛部隊のクドライヤとリーカが周囲の索敵にあたる。
ドリューとレグルスが訓練を観察しながら、ここに来るまでの間に捕縛した不審者について簡易報告書をまとめ始めた。
さすがに毎日数名の逮捕者がいるため、捕縛人数は日々減ってきている。
不審者ホイホイなレナパーティは、いつの間にやらシヴァガン王国の治安維持に貢献していたのだ。

幼児たちが追いかけっこする光景、うっかりレナから離れすぎて訓練場の罠の集中砲火をくらうルーカ(自分で対処できた)、応援するレナたちと、マイペースに組手するロベルトとオズワルド。

「平和だなぁ」

ドリューがのほほんと呟いた。
そんなバカな。

***

ハマルはいつまでたっても、すばしっこいシュシュを捕まえられなかった。
ハマルも持久力は高く、走り続けることこそできるものの、本来の種族的特技の差があり、どうしても距離を縮められない。

(……追いかけっこ、確かに有意義な訓練だけれど、もっと他のこともしたいなぁ)

シュシュがよそ事を考えて、ちらりと横目で、自分よりもハイレベルな訓練をしているオズワルドを見る。
羨ましそうに唇を尖らせた。

シュシュとハマルは現在、太ももの中間あたりまで獣の毛皮に覆われており、走ることによる脚の痛みもだんだんと感じなくなってきている。
自分もこの半獣人の脚で蹴り技を試してみたいな、とシュシュが軽快にステップを踏んだ。

「わわっ」

さすがにイレギュラーな動きには身体が対応しきれず、脚が痛みを訴えて、シュシュはよろけてしまう。
チャンス! とハマルが一気に走りこんでくる!

「スキル[跳躍]っ」

「きゃーー」

シュシュは後ろからハマルに抱きつかれる形で、地面に倒れこんだ。
ハマルがくるりと体勢を入れ替えて下になってくれたので、怪我をすることはなかった。

「あ……! 大丈夫? ハマル」

地面には草が生えているとはいえ、助走をつけたタックルで勢いよく倒れたのだ。

シュシュがハマルの上体を起こして、髪にくっついた葉っぱを取ってあげた
頭に触れてみたが、たんこぶはできていないようで、ホッと羽根耳を折る。

「うんっ、平気だよー。だってボク、頑丈ですしー。
シュシュこそ怪我がなくてよかったぁ。今さらだけどー、羊の角が当たらなくてよかったよねー? 反省ー」

「た、確かに」

てへへと笑っているハマルを眺めるシュシュは、冷や汗をかいている。
うっかり、角がグッサリという可能性もあったのだ。怖すぎる。

ハマルも、レナに褒められたくて頑張って訓練していた。だからチャンスを見逃さずに、ちょっぴり無茶なタックルしてきたのだろう。
シュシュは追いかけっこの最中に気を抜いたことを反省した。

「反省。……私、追いかけっこを真剣に頑張るよ。次はもっと上手に逃げるから。負けないからね、ハマル!」

「ボクもー。シュシュ、一緒に強くなっていこーね」

ハマルのほわんとした笑顔につられるように、シュシュもはにかんだ。
二人一緒に立ち上がる。

ハマルの方が背が高くて、シュシュは上目遣いに見上げた。
ふと後ろを振り返ると、ハマルが駆けてきた足跡が地面にくっきりと残っている。まだ走り方を調整中なので、強く蹴りすぎたわけだが……ハマルの脚力を思い知った。
もふもふベッドの柔らかいイメージがあるハマルだが、以前ドラゴンと力比べをして打ち勝ったこともあるほど力持ちと聞いている。

戦闘経験もステータスも、成長率も、まだまだ仲間には追いつけないなぁ……とシュシュはしょんぼり自分の未熟さを自覚した。

ふと、眠そうにシュシュが目をこすり、一瞬焦点をぶれさせる。
ハマルが首を傾げて、シュシュの様子をじーっと眺めた。

ロベルトから声がかけられる。

「二人とも、長く走っていられたな。お疲れ様。
小休憩してから、気分転換に別の訓練をしてみるか」

「えっ、本当! 何をやらせてくれるのっ?」

シュシュが眠そうな顔からパッと覚醒して、ロベルトの方に走っていく。
ハマルはのんびりと後を追いかけた。

「組手を興味深そうに眺めていたな。シュシュ、ハマルも挑戦してみるか?」

「やるーーー!」

ぴょんぴょん飛び跳ねて、シュシュが喜んでみせる。
ハイテンションに任せて、ロベルトと手のひらを合わせてタッチした。

ーー不思議な感覚があったので、ロベルトはさりげなく自分の獣の手を確認する。……ほんの少し爪が、伸びている。この一瞬だけで。

ロベルトは何も気にしなかったようにとり繕い、歩行練習中のルーカにも視線を送るふりをして、その後方にいるリーカに目で指示を飛ばした。

(ん? ロベルトさんが企み顔。あーなるほど)

ルーカには全てお視通しであった。
後ほど、レナパーティの間でシヴァガン政府を黙殺する会議が開かれる、と言っておく。

レナの元で従魔たちが休憩して、後半の訓練に入る。
短時間の[快眠]、[従魔回復]によって体調は万全だ。

半獣人姿のルーカは、控えめに飛び跳ねてくる二体のジュエルスライムを避ける訓練。
キラが音楽を鳴らして、それに合わせてクーイズがアタックしてくるので、踊るようにルーカが動く。
やはり脚は痛むようで、少しフラフラしている。
定期的に休みながら訓練を続けた。

シュシュとオズワルド、ハマルとロベルトが向かい合っている。
一礼。

「「よろしくお願いします」」

だが、シュシュは不服そうだ。

「……オズがシュシュの相手かぁ」

「なんだよ。不満なわけ?」

今朝の喧嘩を二人ともちょっぴり引きずっている。
シュシュが頬を膨らませた。

「だって。私に対して、いつもオズは手加減するじゃない。それが不本意なのっ」

「俺とシュシュじゃステータスが違いすぎるから、戦闘訓練するなら同じくらいの力量でやるべきだろ。分かんないわけじゃないはず。
シュシュは無駄に張り切りすぎなんだよ。
まだ半獣人姿に慣れてないのに無茶してさっきもフラついたの、俺は見てたぞ。
そんな状態なのに全力で相手したら、怪我をさせるに決まってる。
そうなったら俺の気分が悪いんだけど?
これは”訓練”なんだから、自分の技量を上げることが目的って考えないと」

「……うーーーー!」

気遣われはしているのだが、思いっきり「お前はまだ弱い」と言われたシュシュが涙目で唸って悔しがる。

あちゃー、とキラのアナウンスを聞いたレナたちが、遠方で額を押さえた。
オズワルドの物言いは確かに正しいのだが、とげとげしくて良くない。

「ハマルはまだ蹴り加減が苦手で、とにかく脚力が強いから、攻撃を受け流してフォローできる俺が相手をするんだ。
シュシュは脚の動かし方がすでに上手だと感じた。だから軽快な動きが得意なオズワルドと相性がいいと思い、組むよう指示を出している。
……お互いに納得してくれるな?」

ロベルトが仲裁に入る。
ここで口喧嘩をやめないと、おそらく組手訓練は中止となるだろう。

シュシュとオズワルドは何とかモヤモヤを飲み込んで、戦闘体制に入った。
さりげなくロベルトに褒められたシュシュは少しだけ機嫌を持ち直したようだ。
ロベルトはいつも厄介な部下を教育しているだけある。
レナたちが万能隊長に感謝の視線を送った。

これから戦闘だというのに、シュシュの瞼がとろんと一瞬落ちかけたのを見て、オズワルドが不思議そうな顔になる。
シュシュの動向を気にしていたロベルトも、ピクリと耳を反応させた。

(……これは、もしかして。今、事案が多数報告されているあの現象か?……警戒しておこう)

「始め!」

ロベルトが言い放ち、四人が地を蹴った!
主に足技が繰り出される。

ーー戦闘の様子を眺めているレグルスは、険しく眉を顰めていた。ギラギラした視線はオズワルドに固定されている。

「そーんな顔してるのは良くないぞ。どうしてお前が不機嫌なんだよ?」

ドリューが苦笑しながら尋ねた。
レグルスの返答は苦々しい。

「……以前、俺もオズワルドに勝負を挑んで、戦ったことがある。その時、オズワルドはまず俺の申し出を断ったんだ。
一緒にいたドグマ様に説得されてようやく勝負を受けたが、俺に対して全力で戦わなかった。
……そのことを思い出して不愉快な気持ちになった」

「あー。オズワルド坊ちゃんはドグマ様よりも慎重だからなー。
それに気遣い屋でもあるしさ。
レグルス、えーと、それで負けたの?」

ギロリ、と強烈な視線が向けられる。
ド失礼な発言を天然でしてのけたドリューが、やっべ、と青ざめた。

「あ、あは。いつもの半獣人の姿で勝負挑んでたのか?
それだとオズワルド坊ちゃんはかなり高性能な魔法衣装身につけてるしー、魔王夫妻遺伝子のブラックドッグだし……その。レグルス色々不利だったんじゃないの。
んで、王宮の中だったから控えめに戦った、とか。
オズワルド坊ちゃんのさっきの発言聞いてたらありえそうだろ?」

「ドグマ様は王宮の中だろうと全力で俺の相手をしようとしてくれた。
あの方を尊敬している」

「……それ、指定場所以外でデス・ケルベロス姿になっちゃって、サディス宰相にめっちゃ怒られてたやつじゃん。
原因お前だったのかよ……」

レグルスは魔王ドグマの勇姿を思い出して目を輝かせて、ドリューはげんなり顔になっている。
今回初めて組んだ部隊員が思った以上に戦闘バカだったので、先が思いやられてため息が出てしまう。

「はぁ。
獣姿で戦えば、ブラックドッグは小型だし、炎獅子に勝機があったかもしれないけど。
レグルスは頑なに変身したがらないよなぁ。
炎獅子の魔物姿って俺は見たことないけどさ、どんなの?
そーだ。今度変身してみてくれよ。炎のたてがみを持ってるんだろ」

「噛み殺すぞ」

「なんで!?」

ーーギラッ!
レグルスは史上最凶にきつい視線でドリューを睨んだ!
またレグルスの大地雷か!? とドリューが後ずさる。
二人の間に焦げるような嫌な空気が流れる……。

「……レグルス、ドリュー。ちょっと話をやめて、あのウサギ獣人の子に注目してて」

「「!」」

リーカが二人の肩を叩いた。
大きな桃色の両目を視開いている。
額の[第三の瞳]すらもうっすら開きかけている……。

「あの子……何か、おかしいわ」

リーカがじっくり凝視するほどの事態。
ドリューとレグルスが頭を切り替え、戦闘を注視した。

レナたちも違和感を感じ始めている。
ステップを中断したルーカと、レナが真剣にアイコンタクトを取った。

シュシュの足技がどんどん繰り出されている。
ダメージなどまるで無視するような無茶な動きだ。

「おいっ……! いい加減にしろ! こんなところでがむしゃらに動いてどうするんだよっ」

オズワルドが焦りながら対応する。
シュシュが脚を痛めないように、気をつけて蹴りを受け流すのは大変だ。

シュシュがぶんぶんと大きく頭を振る。
攻撃をかわすオズワルドを瞳に映すと、目つきが鋭くなった。

「……オズぅ……貴方が手を抜くところ、とっても嫌なの……。誰よりも、恵まれた環境と、生まれ持っての能力があるのに。
……頑張ればどれだけだって強くなれるのにぃッ! 戦闘中、楽しそうな顔してるのを知ってる。
それなのにどうして、本気でやらないの!
どれだけ頑張ったって高みにいけないどころか、生きることすら、運に左右されるしかない底辺の存在がいること、私は……よく知ってる……っ!
わざとチャンスを潰そうとしてるオズ、見てると、うう……イライラするのッ!!」

シュシュが叫ぶように言って、苦しそうに頭を抱えた。
フッ、と目からイキイキとした生気の光が消える。
オズワルドにひときわ強烈な蹴りを繰り出した!

「オズくん!」

「分かってるよ。主さん」

オズワルドは応戦せず、またシュシュの攻撃をかわした。
犬歯を剥き出して唸る。

「……なんだよ……ッ、勝手なことばっかり言いやがって。シュシュ。
才能がある、なんてずっと言われ続けてる。確かに、一般魔物よりかははるかに優秀な遺伝子を持ってるだろうさ。俺の下層の生物はたくさんいる。
……だからって、生き方を決められなきゃいけないのか?
そんなのごめんだ、って最初に言ったはずだ!」

「綺麗に理由をこじつけてないで……いい加減に本心を聞かせなさいよぉ!
オズはしょっちゅう退屈そうにしてるくせに!」

「…………しつこいぞ!
……言ったところで、俺の気持ちなんて理解できないくせに。
スタートから能力が違うことがシュシュのコンプレックスなのか?
最下層の生物が食料を求めて歩き回っているだけの間に……俺が……どれだけの魔物を倒して強くなる努力をしていたか、全く想像できないだろ?
だから、誰にも言わないって決めたんだよ。俺は俺にしか理解できない。
安易に深入りしようとするな!」

少しだけ、オズワルドの本音が覗いた。
それだけ本気で、仲間(シュシュ)に向き合ったということなのだ。
レナがハッとした顔をする。

シュシュの身体からは、黒い靄(モヤ)が溢れ始めていた……。

「ううううっ」

また、がむしゃらにオズワルドに向かっていこうとするシュシュ。

「[|重力操作(グラヴィティ)]!」

シュシュの身体がズドンと重くなり、地面に倒れ伏した。
だが、這いずり前に進み続ける。
オズワルドのすぐ真下にたどり着き、涙目で見上げた。
異様さにオズワルドが硬直する。

「光魔法……」

ルーカが黒い靄(モヤ)を警戒して、サンクチュアリで囲うことで[|浄化(パージ)]を実施しようとした。

「重力魔法は、オズがお母さんの血で貰った力だよね……。オズは、お父さんからも、お母さんからも愛されてる。…………ッ!」

シュシュの唸り声が、みんなの耳に痛々しく響く。

シュシュの心は、不自然に増幅された嫉妬の感情に飲み込まれかけている。
リーカもルーカも息を飲んで、目を細めている。

「聖結界でシュシュとオズくん、私を囲って下さい、ルーカさん!」

ルーカが頷いた。
シュシュのみを対象に結界を展開しようと考えていたが、素直にレナに従う。

レナの従魔への愛情を信頼しているのだ。
レナの表情をチラリと見て、何か打開策があると確信した。

レナが鞭を握り、立ち呆けているオズワルドとうつ伏せのシュシュに向かって駆けていく。

「称号[お姉様][赤の女王様][サディスト]セット! 変身!」

さらに、走りながら称号をセットして、衣装チェンジまでこなしてみせた。
▽キターーーーー!

ピシンッ! とレナ女王様の鞭が地面を打つ。

「スキル[従順]!……シュシュ! 貴方の女王様が命じるわ。自分自身の心を見つめ直して、今、裁きなさい!」

レナがシュシュに、強い口調で”命令”する。
シュシュは……従魔として条件反射的に、レナの指示を最優先で実行した。

「光魔法[|聖(ホーリー)・ジャッジメント]ッ!」

シュシュとオズワルド、レナが聖結界に包まれる。
結界の中に光が満ちた。

「……貴方たちの気持ち、全部受け入れて、愛してあげるから。安心なさいな。私(ワタクシ)は貴方たちの主人だもの。信じられるわね?」

レナはどこまでも優しく、二人を抱きしめた。

オズワルドとシュシュはレナの腕の中で、うっとりと瞼を閉じた。
自分の心と向き合う時だ。

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